── 『ブレンパワード』の宣伝コピー「頼まれなくたって生きてや
る」は、監督自身の作ですよね。『もののけ姫』を意識している
ことが伝わってきましたが。
富野 『エヴァンゲリオン』と『もののけ姫』が、97年に発表され
て、日本のアニメのいい区切りになったと思えたんです。その翌
年に1度、作品を形にしておかないと『エヴァ』と『もののけ』
がずっと続くんじゃないのか、それはさせたくない、というのが
ありました。ですから『ブレン』はその2つに対しての回答とか
なんとかではなく、現象を受けて僕が急いで作ったものなんだと
いうことに関しては、いわれてもしょうがないですね。2作品を
僕が知らずに『ブレン』を作ったということは、これは口が曲
がっても言えません。けれど企画の骨格とかストーリーの半分ぐ
らいは、あの2作品を観る前に創っておいて良かったと思ってい
ます。全部創るのを2作品を観てからやっていたのでは、もっと
ひどいものになっていたでしょうね。影響されすぎて。
とにかくあの時期で一度、幕を引く必要があったと思った。それ
はキャリア論として思ったんです。そうは言っても『ブレン』は
ご存知の通り、視聴率的にも、作品的にも成功しなかったと思っ
てます。では、無価値な作品かといえば、そうではなくて、わけ
の分かんないのだけれど何かを作ろうとしてると指摘してる文章
に出会って、ああ、やってみて良かったんじゃないのかなと思い
ました。少なくとも『ブレン』的なものは、うーん……もう1、
2度チャレンジする意味はあるだろうなと思えたし、そこから出
てくるものの作り方っていうのもありそうで、むだではなかった
と思っています。