【言い訳】福田夫妻を処断するスレPart7【ウザイ】
主、かく語りき
あくまでも古典的かつ大衆的な作劇
―3人のヒロインの、対比が鮮やかだなあと思うんです。
福田 そうですか?
―3人とも、お姫様系のキャラじゃないですか。でありながら、
生まれながらのお姫様である者(ラクス)と、お姫様になろうとしていた者(フレイ)と、
お姫様であることに安住できない者(カガリ)というふうに、きれいにスタンスが違う。
福田 なるほど、確かにそうかもしれないですね。
そこは、僕らつくり手が無意識にやってることだけど、聞けばなるほどなあ、と思います。
―同世代のヒロインを3人設定したのは、どのような意図があるのでしょうか。
福田 うーん、今、現在動いているキャラと、当初プランニングしていたキャラとは
多少開きがあるので、うまくいえない部分があるんですよ。
ヒロインと呼べるのは本当はフレイだけで、カガリもラクスも
実は男の性格を持たせたキャラなんです(笑)。
一応、カガリは静御前、ラクスはオードリー・へプバーンの若いころ。「ローマの休日」の王女様。
自分の中ではそういう感じでとらえています。
フレイは……フレイは普通の女の子だと思うんですけど。
―普通ですか!?
福田 スタジオに「フレイが嫌い」とか視聴者からのはがきが来るんですよね……。
特に女の子には生理的な部分で嫌われているみたいです。
でも、世間を見回すと、ああいうタイプの子って、結構いるよな―と思ってますよ。
ああいう、野村沙知代を若くしたような(笑)。
でも野村沙知代って、視聴率取れるからって一時期バラエティ番組に引っ張りだこだったわけですし、
わがままな女性がたくさん出てくるTVドラマの「渡る世間は鬼ばかり」だって相変わらず高視聴率を取っているわけで、
日本人ってああいうキャラが好きだと思うんですよ。
そういう要素として入れたつもりなんです。
―確かに、彼女の存在のおかげで毎回がすごくスリリングです。
福田 フレイのモデルというか、ヒントは同じくドラマの片平なぎさなんです。
風間杜夫が堀ちえみと仲よくしていると後ろからフラ〜っとやってきて、
「あなたは一生、私のものよ〜」と言う。
つまり「SEED」は決して新しいドラマに挑んでいるわけではなくて、
その場その場でドキドキして「次回どうなるんだろう」
というふうに見られるドラマにしたいんです。
あくまで古典的で、大衆的なものなんだという位置づけです。
>>103 素直に商売に成功した事は誉めてやらんか?
一応、これも結果わけだし。∀やVよか成功してるのも事実だ。
ただ、作品の評価に結びつくとは限らんが、な!!
特定のキャラをひいきしない でもフレイは別です。
―ヒロイン3人で、監督の好みの女の子って誰ですか。
福田 いや、全員好きですよ。選べません。
いい子ぶって言っているわけじゃなくて本当にどの子も好き。
……ああ、なんかキラみたいなことを言ってしまったけど(笑)。
―では、特定のキャラをうっかりひいきして描いちゃうこともない?
福田 あんまりないですね。話の流れ上、厚く描きこむ部分はあるけれどひいきは……
ああ、でも一時期フレイにははまりましたね。彼女はひいきしました。
ちょうど彼女が暴れはじめたころ。楽しかったですね。あれはほんとに。
「もっと出てこいどんどん出てこい、とにかく画面の前に出てこい」みたいな。
アップショットをいっぱい拾ってみたりね。いや、フレイはほんとに楽しかった!
―過去形なんですか……?
もう、彼女本人が、そのころとは別のところにいますから。
もちろん、ずうっとあのままのキャラでいられるわけでもないですし。
砂漠の虎がキラに突きつけたものとは
―「公式ガイドブック 機動戦士ガンダムSEED―運命の再会―」(角川書店刊/税別本体1200円)
のインタビューで監督は、第1クールを「キラが追い詰められていく展開」と位置づけられていました。
すると、第2クールは、どのように位置づけられるものでしょうか。
福田 「キラが、戦うことに疑問をもつ」というクールですね。
ただそれは、キラだけに注目したときの話で、実際には話を引っ張ってくれたのはカガリかなという感じがあります。
―話を引っ張る?
福田 キラが非常に苦しんで、悩みながら戦っているのに対してカガリは……あの子は難しく考えてないですものね。
環境とか、感情とか、そういうものに正直に動いてくれました。
彼女のそういうアクティブなところが、受動的なキラを引っ張ってくれたってことですね。
―第2クールは、バルトフェルドの存在感が印象に残りました。
「戦いをいつ終わりにする気なんだ」ということばもキーだと思うんですが。
福田 そうですね。それは、今回の作品のテーマとも深く関わる問題ですね。
現代の戦争でも、どこでどうやって終わらせるかというのは、当事者全員が考えていることですから。
「こういう条件を満たせば勝利だ」という戦争もあれば、「相手が全滅するまでやる」というのまである。
ところがキラはそんなこと考えていなかったんです。
敵が来たから戦いました、撃ってきたから撃ち返しました。
そんなのの繰り返しで、結局戦いを広げていってしまってるんです。
バルトフェルドが言っていたのは、シンプルな疑問なんですよ。
キラの鬼神のような戦いぶりを見て、
「おまえどういうつもりで戦ってるんだ、どこまで戦う気なんだ」ということを聞いたんです。
キラはたぶんあの当時、撃ってくる者がいなくなるまで撃ち返し続けるつもりだったんでしょうね。
でも、そんなことやってたら永久に相手も撃ってき続けるんですよ……
そこに気づいてキラは疑問を抱いたんですね。
それぞれが望む「戦争の終わり」とその不可能性
―ザフトと地球軍は、それぞれどういう「終わらせ方」を想定しているのでしょうか。
福田 ザフトは、自治権を勝ち取るための外交の延長として、条件闘争をやっている形ですね。
もちろん殲滅線をやるつもりはないので、まず核を無効化したうえで、
地球の人を地球に封じ込めておくために、宇宙港を中心とした拠点攻撃をやっています。
ただ、短期決戦のはずが長期化しているので、もっと厳しく、敵の中枢を積極的にたたこう、
という動きがパトリック・ザラたちから出ている状態です。
一方地球側としては、プラントの自治権を認めることは絶対にありません。
もともとプラントは彼らの所有物、植民地ですし、地球はプラントの資源に依存している
という事情もあるので独立されたら逆に生殺与奪を握られてしまいます。譲歩の余地なしです。
―では泥沼化していくしかない?
福田 泥沼で済めばいいですけど、いつ皆殺しの殲滅戦に移行してもおかしくないです。
地球側の根っこには「コーディネイターなんて人間じゃないんだ」という差別意識があります。
コーディネイターもナチュラルを「あいつら地べたにはいつくばってる遅れた人間だ」と思っています。
いずれにしても、一度、平和が脅かされたからには、双方とも容易には戦争をやめないでしょうね。
キラは現在破滅へのマーチを奏でている!?
―そういう悲惨な戦争状況を、キラがよい方向に導くことになる、というお話なのでしょうか。
福田 いや、キラだけが頑張ったところでどうにもならないでしょうね。
大体、キラとアスランですら仲よくなれない、わかり合えないのに、戦争をやめさせようなんてムリだと思うんですよ。
―これは、この戦争に一つの落としどころを見つけて終わる話ではないんですか。
福田 開戦から始まったドラマですから終戦まで描くつもりではいます。
だから落としどころはあると思いますが……でもまあ、それがメインのお話ではなさそうですね。
―キラ自身は、どういう落としどころを望んで、どこに向かおうとしているんでしょうか。
福田 それはまだ先のことですから……ただ、彼は戦争の悲惨を知りました。
彼は彼なりに考えました。でもそのとおりにやってみたら、どんどん戦いが広がってしまいました、と。
それが第2クールだとすると、「なら、ちょっと考え方を変えてみました」というのが第3クールの位置づけになると思います。
―なるほど……
福田 でも、今のところ彼は着々と破滅に向かっております(笑)。戦争状況的にも、人間的にも。
溝は埋めるよりその深さと広さを正しく知ること
―決定的に破滅する一歩手前でちゃんと引き返してきますよね?
福田 いやー、わかんないです(笑)。
―キラといえば、戦闘時に種子がはじけて覚醒するシーンが意味深ですが、あれはテーマに深く関わってくるものですか。
福田 いや、あくまで戦闘の見せ方でしかないです。
ああいう能力が発動したから、この戦争がどうなるというようなお話ではないですよ。
まあ、おかずのひとつと考えていただけるといいですね。
―うーん、あれは、なんですか。
福田 隠れた力です(笑)。
―超自然的なものですか。
福田 火事場のバカ力くらいに考えてください。
―遺伝子操作によって潜在能力が覚醒しているとか、そういう感じではない?
福田 あ、それはあります。
―キラにだけしか発動しない特殊能力なんでしょうか。
福田 それはこれからのお楽しみです。
われわれは「シードをもつ者」と呼んでるんですが、これは発動する人としない人がいます。
―キラがそういう、かなり特殊なコーディネイターだとすると、AAの面々との溝はさらに広がりそうな感じがしますね……。
AAにとってのキラと、地球にとってのプラントって、“敬して遠ざけられ、利用もされている”という点で同じ立場だと思うんです。
そうなると、地球とプラントの間の溝も最後まで埋まらないんじゃないかという気がしてきました……。
福田 溝が埋まる必要はないのかもしれないですね。
それより、お互いの違いを認め合えるかどうかということが大事なんじゃないでしょうか。
「俺はこれだけのことができる、お前はこれだけのことができる。
2人して同じことができる必要ってあるのか?」という境地に立てるかどうかだと思いますよ。
キラとサイが、同じことをできる必要ないですし。
そのことを認め合えないでいるからお互いに不信感が生まれるんです。
それは、地球とプラントの関係にしても全く同じですよね。
お互いの役割を知って、認めて、相手への不信感をぬぐおうよ、ということだと思います。
ガンダムは兵器 だからこそ過剰な愛着はもたない
―ところでとても気になったことがあるんです。
主に「サイバーフォーミュラ」を念頭に置いて言うんですが、福田監督は、
「メカと人間の関係性」といったテーマが濃厚な作品作りの方だと思うんです。
ところがキラは、ストライクに対してフェティッシュな思い入れが全然ないですよね?
福田 今回はそれはやらなかったです。どうしてかというと、やっぱり兵器だからです。
「ガンダムは兵器だ」という認識が当初からずっと強かったんです。兵器に思い入れてどうするよ、と。
例えば現実に置き換えても「この銃大好き」とか「このミサイル最高」とか……やっぱり何かが違うだろうなあ、と。
それを言い出したら、このお話は変なことになっちゃいますからね。
―アムロにとってガンダムは自己表現の手段だったりもしたわけですが、それもない?
福田 ないですね。たぶんキラは、ガンダム捨てていきますよ、用がなくなれば。道具ですし。しかも戦争の道具ですし。
基本的に、兵器は禍々しいものであるという大前提に立って描いています。
そういうものを単純に賛美するスタンスにはしたくなかったですし、思い入れもかけたくないなあという気はしていました。
それだとキラが単なる戦争好きになりかねないじゃないですか。
とはいえこれは戦争モノですし、「どういう気持ちでその一撃を放ったのか」というのは重要なので、
そういうところはしっかり描いているつもりです。ただフェティッシュな気持ちがないだけですね。
―ではストライクからフリーダムに乗り換えても、キラはうれしいわけではない?
福田 そうですね。機体変更の作劇的な意味は、見せるものを変えてグレードアップしていかないと
同じものをずっと見せることになってしまうからというのと、
主人公の意識が一段高くなったときに新しい機体を手に入れるというのは
視聴者にとってカタルシスがあるだろう、という部分になります。
―逆にいうと、キラがフリーダムに乗り込むとき、彼の気持ちは一段突き抜けて高度なものになっているだろう、ということですね。
福田 そうです。そういうものの象徴として、フリーダムというものを用意したんです。
―どうしてフリーダムとジャスティスという名前なんですか。
福田 フリーダムは、この間、ファーストガンダムの資料を読んでいて、
最初は「フリーダムファイター」っていうタイトルだったんだなあと思って、
「じゃあフリーダムにしよう」ということで(笑)。
戦争とか兵器に対してかなり皮肉を込めたネーミングのつもりです。
最も強力な兵器に「フリーダム」=「自由」ですから。
シナリオ会議では、ゴロが悪いと、全員が反対しましたけど、
全員に反対されたので、これで行こうと思いました。
―語感がザラザラしていておもしろいからですか。
福田 一発で誰でも覚えます。
―負のイメージでもかまわない?
福田 かまわないです。
ジャスティスは、自由と対になる言葉は何だろう、というところからですね。
自由と正義、ぴったりじゃないか、と。
そこでひねりすぎると、何をやろうとしていたのか本質が見えなくなります。
こじゃれた名前をつけるのは簡単なんですけれど、それよりは、込めたい意味を正確に表し、
小学生でも耳にしたことがあり、一度聞いたら忘れない名前であることが大事だと思うんですね。
―先ほどのお話にもあった大衆性、王道主義とつながることですね。
福田 そうです。
以上NT5月号から。誤字・脱字があるかもしれませんが、ご勘弁を。