〇●グエン様は真性ホモだよね●〇

このエントリーをはてなブックマークに追加
51逆襲のグエン 1/2
かつての敗戦に故郷を石持て追われ、流れ着いた異国の地でも彼は希望を失わなかった。
―――――そう、敗れたら何度でも立ち上がればいい。
幸いにも、空に薄ぼんやりと浮かぶ月から彼が持ち出した過去の情報は、この異国の地でも大いに役立った。
ゆえに今、この船はアメリアを目指しているのだ。
かつて君臨したその国へ、侵略者として凱旋するために。
太陽は水平線の彼方に消えようとしている。
男―――グエン・サード・ラインフォードは、紫色に染まる空を見上げた。
視界を人型の巨大機械が横切って行く。
彼が月から持ち出し、ガリアの民に提供した技術で開発に成功した機動兵器。
気の遠くなる様な年月をかけ、異民族の国で頭角を顕し、ついに完成したこの機動艦隊。今やガリアの地で彼に並ぶ権力者は他になく、民衆は異国からやって来た新たな王を熱狂的に支持している。
「御曹司、そんなところに居ると波にさらわれるよ!」
胸ポケットの通信機から馬鹿にした様な声が聞こえた。
頭上で旋回する機械人形にはメリーベルが乗っているのだろう。
ギム・ギンガナムが戦場に散ってから、この少女はグエンと運命を共にして来た。
彼女の故郷は月だから、この星には自分以外に頼る者は居なかったのだろう。
なるべく不自由はさせない様にして来たが、この数年間は辛い想いをして来たに違いない。
この侵略作戦が成功し、宇宙に上がる手段を得られたなら、月に帰ろうとでも考えているのだろうか?。
それも構うまいと、グエンは思う。
52逆襲のグエン 2/2:03/03/07 23:24 ID:???
「お前こそ、機械人形を海に落とすんじゃないぞ。着艦には気をつけるんだ」
眼下に広がる侵略者の群れ。
戦化粧をした少女は自分の主を見下ろしていた。
もう少女とは言えない年齢に達しているだろうが、容貌は昔のままだ。
長年の闘争の結果、すっかり精悍な顔立ちになったグエンとは対照的と言っていい。
メリーベル・ガジットは、グエン直属の機械人形部隊の隊長を務めている。
何しろ、ガリアにはモビルスーツ乗りが一人も居ないのだから、メリーベルがパイロットを育てるしか方法がなかったのだ。
それでも、ギンガナム隊が瓦解し、ディアナ・ソレルが政権の座に復帰した今、彼女に帰る場所はない。
その自分に生きる目的を与えてくれたグエンを主と仰ぐのも、今ではさほど抵抗はなかった。
その時、メリーベルの横に同じ形をしたモビルスーツが並んだ。
背後には十数機のモビルスーツが編隊を組んで接近している。
彼女の教え子、そして部下達であった。
「ふん。粋がって落っこちるんじゃないよ」

星が瞬き始めた空へ舞い上がる機械人形たち。
彼らはアメリアに破壊と混沌をもたらす死の鳥となるだろう。
グエンはその軌跡を見上げながら、数年前の闘いを思い出す。
文明を封印するディアナ・ソレルは間違っている。
進歩する事を危険だと言うなら、ゆるやかに死んで行くのがあるべき人類の姿だと言うのか。
何処までも前に進む生き方が自分には合っていると思う。
だから、自分を昨日に縛り付けるものと決着をつけなければならないのだ。
「ローラ、お前に逢いたいよ」
昏い輝きを秘めた瞳で、グエンは呟いた。