「お前……こんなのを舐めろって言うのか!?」
カガリは威きり立つキラのイチモツを眼前で見せられ赤面した。
「君が僕とフレイの夜の事を聞きたいって言ったんだろ?」
「し、しかし…。」
セックスというものがどういうものなのか、ある程度は知っていても、
男性器を口に入れるなどという行為がある事は、カガリは全く知らなかった。
「お前、私が何も知らないと思ってホントはからかってるんじゃないのか?」
性格上、素直になれず…、というよりも未知の体験への恐怖で
ついつい強気な態度でカガリはキラに食ってかかってしまう。
「フレイは…フレイは優しく僕のを口で包んでくれたんだ…。」
キラが俯き加減で、フレイとの行為を思い出している事はカガリにも容易に見抜けた。
「わ、分かった!! やればいいんだろ? やれば…。」
「君から頼んで来たんだから…。"させて下さい、お願いします"でしょ?」
「何でそんな事!!」
「じゃあ、もういいよ。今からフレイと…。」
「わ、分かった!! 言うよ、言えばいいんだろ…?」
ついにカガリはキラのペースに流されてしまい…。
「お願いします…させて下さい…。」
キラの顔にフレイと同じ笑みが浮かんだ。
だがカガリはキラのを凝視していたため、キラの表情に気付く事はなかった。
『ピチャッ…チュパ…ヌチュッ…』
ベッドに腰を下ろしたキラの股の間で、カガリは跪いてキラのを口にしていた。
コーディネーターのイチモツは、生殖能力が低下していると言われるナチュラルに比べて大きく、
初めてであるカガリの下手な舌使いでもビクビクと感じているようであった。
「お前、こんな事のドコが気持ち良いんだ?」
口を休めてもカガリは無意識にイチモツを両手で握り締めたままでキラに言った。
「あんまり気持ち良くはないけど…、興奮するんだ…。」
「興奮だと!?」
「君みたいな女の子が、ボクのコレを舐めてるだなんて…。すごく興奮するよ…。」
「やっぱりお前、馬鹿にしてるんだな!?」
カガリは立ち上がると踵を返して部屋を後にしようとする。
「そうはさせない…。」
「なっ!?」
キラに腕を掴まれ、女の…ましてやナチュラルのカガリにキラの力から
逃れるすべは無く、敢え無くキラによってベッドに押し倒されてしまった。
だが当然、カガリはキラがコーディネーターである事など、まだ知らないのだが…。
「やめろ、このっ!!」
手足を懸命に動かすもののキラの拘束を解く事はできない。
そんなカガリに対して、キラは余裕の表情を浮かべたまま言った。
「このベッドで…ボクとフレイは夜を過ごしたんだ…。」
「!?」
カガリは頭の横に、シーツに残されたフレイの破瓜の後を発見した。
「これは…!?」
シーツな残された血痕を凝視して、カガリは恐怖で身体の奥から震えた。
「怖がらなくても良いよ。すぐに良くなるから…。」
「なっ…、やめろっ!! くっ…!!」
抵抗空しく、カガリの服はキラによって引き裂かれた。
布切れとなった服の裂け目からカガリの白い肌と、形の良い胸が顔を見せた。
「へぇ、フレイより大きいんじゃないかな?」
カガリの胸を嬉しそうに観察するキラの拘束する力が、若干弱まった。
「今だっ!! …なっ、くぉっ!!」
力一杯、キラを押し除けようとしたカガリだったが、瞬時に見破られ
そのまま今度はうつ伏せにさせられてしまった。
「離せ、このバカ!! お前なんかっ!!」
腕をばたばたと動かしてもうつ伏せでは何も出来ない。
「力もないのに…、力もないのに抵抗なんてするからっ!!」
カガリの白い背中を片手で押さえ、もう片手でキラはカガリのパンツを引き千切った。
「ぐぅっ!!」
布製だったとは言え引き千切る時の衝撃は大きく、カガリの白い太股は赤く腫れ出していた。
「ゴメン。でも後は下着だけだから…。」
キラはカガリのショーツを脱がそうと…。
「止めろーっ!! もう…止めてくれ…。私を…許して…。」
出来得る限り首を後ろに回し、涙目でキラに訴えるカガリ。
「お願いだから…もう許して…。」
カガリはそのまま力なくシーツに顔の埋めて助けを請うた。
「…カガリ。」
キラはカガリの名を呟くと、ショーツを脱がそうとかけた指を離した。
「…許してくれるのか?」
カガリが顔を上げ振りかえろうとしたその時、カガリの腰が持ち上げられ…。
「ぐぅぁっ!!」
今まで感じた事もない強烈な痛みがカガリを襲った。
「いっ…、んぁっ!!」
何かが、何かが自分の中に入って来る。
痛みの中、カガリはシーツを爪が食い込むほどに握り占めながら、それだけは何とか感じ取った。
「うぅっ…。」
頭の後ろでキラのうめきが聞こえたと同時に、その侵入は止まった。
自分の下腹部で、中で何かが脈打っているのが分かる。
「な、何だ…コレは…!?」
カガリには一体何が起こったのか、全く理解出来ていなかった。
痛みと何かの異物感があることは分かるのだが…。
「お、お前…何を…!?」
何とか両手で身体を支え、肘を伸ばし、カガリは四つん這いの格好になって後ろを振り向いた。
「どう? 女の子から大人の女性になった感想は?」
「えっ…?」
痛みで動転しているせいか、カガリはキラの言った意味がイマイチ読み込めないでいた。
「ほらっ。」
それを読み取ったキラは、カガリに認識させるべく一度だけ大きく腰を振った。
「うわっ!!」
カガリは、異物がニュルリと自分の中で動いたのが分かった。
「ねっ?」
「あ…ぁぁ……。」
ようやく理解出来たのか、カガリは身体を硬直させて声も出ないようであった。
だがすぐにハッとして、頭を下げて自分の下半身に位置する部分のシーツを見た。
「あっ…、血……?」
さきほど見た乾いたフレイのものではない、明らかな鮮血が数滴染み付いていた。
そしてカガリが見ているその時、また一滴の血がシーツに染みを作った。
カガリは初めに怖くて見れなかった、その血の出所であると思われる所に目を移した。
「あぁ…。」
先ほども見たキラの陰嚢が見える。
その先には、先ほどカガリが咥えていたペニスがあったはず…。
だがそれは付け根だけしか見え無かった。
付け根の部分から目を追って行くと、それの大半はショーツを横にずらしてカガリの…。
「うわーーーーっ!!!」
認めたくない事実が真実となり、カガリは絶叫した。
中に…、自分の中にキラが…、自分の中に男がいる。
男と一つになっている…、キラと一つに…、フレイとかいう女を抱いた男と一つ…。
「あっ、いや…ウソだ…。こんなのウソだ…。これは…現実じゃない…、こんな…こんな事…。」
「そろそろ動くから。」
頭を振り乱して叫び続けるカガリを余所目に、キラをカガリの中をピストンした。
両手でカガリの細い腰を抱えて、キラはカガリに腰を打ち込んだ。
「違う…こんなの…。」
そんなカガリも身体は正直なもので、キラの動きに抗おうとはせずキラ自身を締め付ける。
戦場に身を置いているわりに、カガリの身体は擦り傷一つ無く綺麗なものだった。
キラは腰の動きを止め繋がったまま、手をスルスルとカガリの肌に這わせ胸へと移動させた。
「うわっ!!」
ブツブツと続けていたカガリは突然、ギュッと両胸を揉まれて我に帰った。
「カガリ…。」
今度は優しく名を呼ばれて、背中にキス。
「…馬鹿野郎……。」
「えっ?」
キラが気を抜いた一瞬の隙を突いて二人の結合は解かれ、カガリは身体ごとキラを振り向いた。
「なっ…。」
バチンッと大きな音がして、キラは自分の左頬がジーンと腫れるのが分かった。
目に涙を浮かべたカガリは再び腕を振り上げ、今度はキラの右頬に一発お見舞いした。
「お前…、私は…私はっ!!」
私はオーブの…、それが喉まで出そうになったが、カガリは堪えた。
何も出来ない自分が悔しい…自分は所詮、女でしかないのか…。
それだったらもう…。
「もう…止めるよ。」
「何っ!?」
「悪かった…。もう君を傷つけたりしないから…。」
「ふざけるなっ!!」
カガリはそう叫ぶと、思わずキラを押し倒していた。
「ゴメン…。」
哀しそうな目でカガリを見上げるギラの目。
これにはさすがのカガリもキレずにはおられなかった。
「だったら初めから、こんな事するなっ!! 何のために私は…。」
純潔を失ったんだ…。
カガリの胸に再び悔しさが込み上げて来る。
だが、この悔しさは純潔を奪われた事に対するものと…。
「ちゃんとしろ…。」
「えっ?」
「私に恥をかかせるなっ!! ちゃんと責任持って最後まで抱けっ!!」
ここで何もされなかったら、自分は女としてすら認められなくなる。
カガリはキラのイチモツに手をやると、それは硬く大きく威きり立っていた。
「それ見ろ。お前のここは私の中に入りたがってるじゃないか。」
「カ、カガリ!?」
「ぅん…、くぅ…。」
起き上がろうとするキラを制し、カガリはキラの上に腰を落とした。
痛みを堪え、ゆっくりと…そしてカガリは全てを中に収めた。
「気持ち…良いのか?」
カガリは何を言って良いのか分からず、苦痛で少しだけ顔を歪めながキラにそう聞いた。
「あぁ。カガリの中、温かくて気持ち良いよ。」
「そうか…。」
何となく嬉しくて、カガリはまた涙が込み上げてきた。
だがそれを悟られまいと、カガリはキラの腹に手をついて腰を上下させ始めた。
入れた時よりもスムーズに動けるようになっている。
どうやら血とは別のもので濡れていることにカガリは少し戸惑った。
「ど、どうやら…私も感じているらしいな。」
腰を動かしながら、カガリは照れ臭そうにキラに微笑みかけた。
それに対してキラもニコッと笑い、カガリは胸がキュンとして赤面する。
「そ、その…、えっと…。」
カガリが何か言おうとしたところで、キラは起き上がってカガリの胸に顔を埋めた。
「あっ…。」
キラは谷間に頬を擦りつけ、今度はカガリの可愛い乳首を口に入れた。
カガリは腰を止めて腕をキラの頭に回して軽く抱きしめ、キラの仕草を見届けてやる。
「んっ…、そんなに吸っても何も出ないぞ…。」
だがキラはカガリを優しく吸い続ける。
「…お前の子供だったら…産んでも良いかもな…。」
母性を刺激されたのか、カガリはついポツリと呟いた。
「カガリ?」
悪戯そうな顔でキラは顔を上げ、カガリを見上げた。
「い、いつかだ、いつかっ!! 今すぐなんかじゃないっ!!」
カガリは赤面し、それを見られないように顔を天井に背けて言った。
「っと…うわっ!!」
視界はそのまま反転し、何時の間にかカガリの目の前にキラの顔が来ていた。
それを見て、カガリは今度は自分が下になっている事に気付いた。
「まだ痛い?」
キラにそう聞かれてカガリは、あれほどの痛みが全く残ってない事に気付いた。
「あれ…? 痛く…ない…。」
「じゃあ、もう大丈夫だね。」
そう言ったキラの顔はカガリから遠のき、ズンッという衝撃がカガリの身体を襲った。
「うぁっ!!」
痛みではない、何とも言えない衝撃…。
それはキラの先端がカガリの奥にぶつかる度に起こった。
息をするのも忘れてしまいそうになるカガリ。
それが気持ち良いと感じてくるのに、そう時間はかからなかった。
「カガリ、僕…もう!!」
キラは目をきつく閉じ、歯を食いしばってカガリを突いている。
ますますキラのピストンは速度を増し、カガリも絶頂を迎えつつあった。
「私も…、一緒にっ!!」
「うぁぁぁぁぁーーーっ!!」
キラは最後に、カガリの中をえぐるかのように強く腰を突き入れて射精した。
「あっ…あぁぁっ!!」
キラの先端に子宮にまで入り混むかのような勢いで刺激され、カガリもまた大きな声を上げた。
まるで底無しのように溢れ流れ込んでくる生命の源を、カガリは全て奥で受け入れる。
そして出し切って力無く自分の上に倒れ込んだキラを、カガリは優しく抱き止めた。
「ハァ、ハァ…。」
「疲れたか?」
肩で息をするキラに、優しく声を掛けるカガリ。
そして今ならと思い、いつもの仕返しとばかりに意地悪な質問をした。
「どうだ? 私は女だっただろ?」
そうカガリが言ってすぐに、その返事とばかりに、また中でキラのが大きくなって来ていた。
「カガリの奴、最近明るくなったな。」
「…。」
サイーブは後ろで作業をしているカガリを横目にして言った。
だがキサカは何も答えず、カガリの方を見ていた。
確かに最近のカガリはキサカの目から見ても変わったと感じられる。
年が近く仲の良かったアフメドを失って、そう時間が経ってもいないのに…。
「二人とも、どうかしたのか?」
視線に気付いたのか、カガリはサイーブたちに問い掛けた。
「いや、何でもない。」
「…。」
サイーブがそう言うと同時に、キサカは二人に背を向けアークエンジェルの方へ向かって行った。
「どうしたんだ、キサカの奴?」
「カガリ、さっさと補給物資の積み込みを終わらせるぞ。」
「あ、あぁ…。」
不審に思いながらも、カガリはキサカを目で追うのを止め再び作業に専念した。
日も暮れ夜となり、火を囲んでのいつもの夕食。
カガリはすでに食事を食べ終え、皆から離れた高台で岩に腰を下ろして星空を見上げていた。
「カガリ。」
「うわっ!!」
突然、肩を叩かれカガリは飛ぶように立ち上がった。
「な、何だ…キサカか…。驚かすな…。」
ふぅと息を吐いてカガリはまた同じ場所に座り、キサカもまたその隣に座った。
「最近、夜はキラ=ヤマトの部屋に行っているのか?」
「えっ?」
カァッとカガリの顔が赤く染まったのを、キサカは見逃さなかった。
「な、何のことだ。何で私があんな奴の部屋に…。」
「さっきバジルール中尉に聞いた。毎晩のようにアークエンジェルに出入りしていると。」
「ふ、風呂を借りてるだけだ。私だって女だ…風呂くらい…。」
「そうか…。」
カガリから目線を逸らして、キサカは星を見上げた。
そしてしばらくの沈黙の後、キサカはカガリに告げた。
「キラ=ヤマトはお前の生き別れの双子の兄だ。」
「はぁっ!?」
カガリは慌ててキサカに向いたが、キサカはいつもの無表情のまま淡々と続けた。
「キラ=ヤマトはお前の双子の兄だ。バジルール中尉に彼の個人データを見せてもらった。」
「ば、馬鹿な!? だってあいつは…。」
「彼の現両親、及び出生の記録は全て我々が用意した偽造データだ。それが一致した。」
「そんな…。」
カガリは驚愕の事実に言葉を失った。
だって、私はあいつと…。
「彼と何もないのなら問題ない。この事はまだ彼には言うな…。」
キサカはそれだけ言い残して立ち去って行った。
いつもキサカは全部知っておきながら、このような言い回しをする事をカガリは分かっている。
「キサカは私とアイツが寝た事を知っている…。そしてその私とアイツが双子の兄妹だと…!?」
生まれて初めて、身も心を許しあえる対等な異性を見つけた気がした。
しかし、そのキラは肉親、しかも実の兄だったとは…。
「そんなの…今更納得できるはずないだろ…。」
そんなカガリの様子をキサカは岩陰からそっと見つめ、そしてキャンプへ戻って行った。
「どうぞ。」
いつものドアを3回ノックする音が聞こえ、キラはベッド横のパネルでドアのロックを解除した。
ドアが開き、キラの部屋に入って来たのは思った通りカガリであった。
「あれ? 今日はシャワー、浴びて来なかったんだ?」
「いや…、あ、後でな…。」
砂埃にまみれた姿のカガリに、キラは少し疑問を持った。
「あ…、こんな汚れた格好でベッドに座るわけにはいかないか…。」
「あぁ、そっちのベッドは使ってないから、そっちに座りなよ。」
「…すまない。」
カガリはキラの指差したベッドに座ると、俯いたままハァと大きく溜息をついた。
「どうかしたの…?」
さすがのキラも様子が変なカガリが心配になり、思わず駆け寄ってカガリの肩に手を置いた。
「お前…私のこと、どう思う?」
「えっ?」
「…好きか?」
頭を上げ、弱々しい目でキラを見つめるカガリにキラは一瞬困惑した。
「嫌いだったら抱いたりしないよ。」
キラは思ったことをさらっと言った。
「き、嫌いじゃなかったら抱くのか?」
「どうしたんだよ、カガリ?」
「お願いだ、教えてくれ!! お前は私をどう思っているんだ!?」
何かに怯えるように、必至になって尋ねているカガリに対して、
キラは少し考えると、平静にそして目を見て優しくカガリに言った。
「僕は君を愛してる。好きだから抱くんだ。」
「ホ、ホントか…!?」
「あぁ。ところで君の気持ちはどうなの?」
「えっ、私の…!?」
じっと目を見てキラにそう言われ、カガリは困ってしまう。
「わ、私は…私は…。」
またすぐに赤面してしまうカガリを、キラは何も言わずを見続けた。
見つめられたカガリは耐えられず必至に俯いたり、ブンブンと首を振ったりして抵抗する。
「どうなの?」
「私は…お前が…。」
チラっと目を開けてキラを見たが、案の定、目が合ってしまいカガリはまた目を閉じて俯く。
「そ、そんな事、言わなくてもわかってるだろ!!」
「カガリ!!」
「シャワーを…浴びて来るだけだ…。」
キラを押しのけて立ち上がったカガリは、キラに背中を向けたままそう言って部屋を出た。
互いの気持ちなんて確かめ合うことなくセックスしてしまい、今更確かめ合う必要なんてないと思っていた。
聞かなくても、言わなくても分かってる事なのに…キサカに言われてから…。
「カガリ…。」
「キサカ、お前…!?」
通路を歩きながらキサカの言った事を考えていたまさにその時、カガリの前にキサカが現れた。
「…ずっと私をつけていたのか?」
「…。」
「私とアイツは何でもない!!」
キサカは何も言わず、目でカガリに訴えかけてくる。
普段は口うるさくされない分、他のウルサイだけの大人よりマシに思えるところもあるが
こうまで何も言われずにいると、逆に馬鹿にされてる気がしてカガリは食って掛からずにおられなかった。
「…どこへ行く?」
お前の向かっている方向はアークエンジェルの出口ではないぞ、とキサカの目は言っている。
「シャワーを借りに行くだけだ。さっきも言っただろ!!」
「キラのためにか?」
「なっ!?」
表情一つ変えず、キサカはさらりとカガリの図星を突いてくる。
ここまで追い込まれると、本来自分に真っ直ぐなカガリは我慢の限界に来てしまう。
「私が…私が誰と寝ようが何をしようが私の勝手だ!! お前にそこまで指図される筋合いは無いっ!!」
ようやくキサカの表情が変わったと思ったら、それは「やれやれ反抗期か」と言ったものにカガリには見えた。
保護者だか何だか知らないが、ここまで馬鹿にされては後には引けない。
「アイツが誰だろうと、私はアイツが好きなんだ!! 好きだから一緒に寝て、何が悪いっ!!」
そう言ってカガリはキサカの前から立ち去ろうとする。
「カガリ!!」
「うるさい!! お前なんか、もう私の前に姿を見せるなっ!!」
キサカを静止を振りきって、カガリはシャワールームの方へ走り去った。
「…。」
キサカはただ立ち尽し、カガリの背中を見送った。
"これ"もまたカガリを大人にするための試練になりえるのかと、キサカは自問し、
物陰から二人の様子を伺っていた赤い髪の少女の方向を一瞥してアークエンジェルを立ち去った。
「あら、アナタ確かカガリ…さん、だっけ?」
カガリが逃げるようにして駆け入った女子用のシャワールームには、先客のミリアリアがいた。
「あ、あぁ…。」
「アナタ、最近よく艦内で見かけるわね。」
鏡を見て髪をドライヤーで乾かしながら、ミリアリアは何の気なしに言った。
「それは…シャワーを借りてるから…。」
「ふーん。まぁ、女の子だもんね。向こうは大人の男ばっかりみたいだし…。」
「はは、そうだな。」とカガリが言おうとしたところで…。
「あっ、ゴメン!! アフメド君のこと…。」
しまったという顔でカガリを振りかえるミリアリア。
カガリ自身、今の今まで気付かなかった事であった。
「いや…気にするな…。」
異性として意識した事はなかったものの、あれだけ気が合った仲である
アフメドのことをすっかり忘れていただなんて…。
「アフメドとは別に…。」
カガリは、最近はキラの事で頭がいっぱいな自分を思い知らされる羽目になった。
そういえばアフメドは最後に何を言いかけたんだっけ…。
「ねぇ、アークエンジェルに気になる男の子はいる?」
「えっ!?」
髪を乾かし終えたミリアリアはドライヤーを置き、カガリの方に向き直って言った。
「その…アフメド君の代りってわけじゃないけど、新しいボーイフレンドとか…。」
「だ、だからアフメドは違うって!! それに気になるヤツなんて…。」
「そ、そうなんだ…。でも私たちの年齢で戦争ばっかりだと辛くならない?」
カガリにアフメドの事を思い出させて暗くなったしまった空気を、ミリアリアは努めて
明るくさせようとしているのだろうという事が、うっすらとカガリには分かった。
「別にそんな事は…。」
「ねぇ、キラなんかどう?」
「っ!!」
何の悪意もないのだろうが、いきなりキラの名を挙げられカガリは息詰まってしまう。
「な、何で私がアンナ奴と…。」
「そう、残念ね…。ヘリオポリスでキラがアナタのこと助けたって聞いてたから。それに…。」
ミリアリアは俯きかげんで続けた。
「キラとフレイ…何だか様子が変なの。」
「アイツが?」
「フレイね、実はサイと婚約ってわけじゃないけど、親の決めた許婚みたいなものだったの。」
ずっと立ちっぱなしだったカガリは近くの椅子に座って話を聞いた。
「…っていう具合で色々あったんだけど、それからフレイがキラに執着するようになって…。」
「そうか…。」
キラとフレイの経緯はキラから聞いたこともなかったが、カガリには関係のないことだった。
今のキラは私と…。
「そっか、キラはダメかぁ…。」
「あっ…。」
何だかキラとの関係をホントに否定された気になってしまうカガリ。
「そ、そうだ!! ほら、確かトールとかいう…アイツなんか…。」
このままではミリアリアの気遣いを無碍にしてしまう気がして、
カガリは適当に思い浮かんだトールの名を出してみた。
「ダ、ダメダメッ!! その…トールは私と…。」
頬を赤らめて慌てて手を振るミリアリア。
「す、すまない…。」
「それに…トールってアナタが一番嫌いそうなタイプだと思うけど…。」
そう言われてカガリは薄っすらとした記憶を掘り起こしてみた。
「そう言えばそうだな。トロそうでだらし無いような…。わ、、悪い!!」
「良いのよ、その通りなんだし。私はそこが好きなんだから。」
「そ、そうなのか?」
「うん。私がいないとダメねぇ、ってね。」
そう言ってカガリにウインクして見せるミリアリアに対して、
カガリは理解できないといった感じで苦笑いするだけだった。
「あ、ゴメン。シャワー浴びに来たトコを長々と話し込んじゃって。」
「い、いや。気にしてないさ。」
言われてカガリも立ち上がり、いそいそと服を脱ぎ始める。
「ねぇ、良かったら後で私の部屋に来ない?」
「えっ?」
「個室じゃなくて大部屋なんだけど、ベッドも空いてるし…。」
「あ、いや…今日は遠慮しておく…。」
「そう…。じゃあ、またね。」
ああ、と後ろ向きに返事をして、服を脱ぎ終わったカガリはシャワーへ移動した。
ミリアリアはその姿を確認して、シャワールームを後にしようとドアを開けた。
「フ、フレイ!?」
「あの子…まだいるわよね?」
二人の声はシャワーでかき消され、カガリの元には届いていなかった。
「はぁ…。」
今は何もかも忘れて、カガリは棒立ちしてシャワーを顔から浴びていた。
そんな時、ギィとカガリのいる個室のドアが開かれる音がした。
「だ、誰だ!?」
振り向き、湯煙の向こうに見えたのは赤い髪の女だった。
その女は地球軍の制服を来たままなので、どう見てもシャワーを浴びようと
ぼーっとしていて他人のいるところに入ってしまった、という状況には思えない。
「お前は…フレイ!?」
カガリがその名を口にしたと同時に、フレイはカガリに近づき、
自分が濡れるのも構わず、肩を掴んでカガリを壁を押しつけた。
「ぐっ!!」
狭い場所での突然のことで、カガリは避けることすら出来なかった。
フレイは今度はカガリにグッと顔を近づけて言い放った。
「アンタ、キラの何なのよっ!!」
「は、離せっ!!」
カガリは抵抗するものの、何故かフレイを突き飛ばすことができない。
「キラはアンタになんか渡さないわ!! キラは私のモノなんだからっ!!」
「ぐぅっ…!! やめ…。」
鬼のような剣幕でカガリに迫るフレイは、続けざまにカガリの首を締め上げる。
「あの子はねぇ、私のために戦うの!! それをアンタなんかに渡すはずないでしょっ!!」
カガリは首を締められているものの、それは息が完全に出来なくなるほどのものではなかった。
所詮は戦いを知らない女の腕力。
だが、カガリはフレイの圧倒的は迫力の前に抵抗する力を失ってしまっていた。
「ふんっ!!」
フレイはカガリの首から手を離し、カガリは力無く床に膝から崩れた。
「ゲホッ、ゲホッ…。」
苦しそうに喉元に手をやるカガリ。
フレイもまた床を膝を下ろし、カガリと同じ目線となった。
「ここで…キラをたぶらかしたの?」
フレイはカガリの股間に手を伸ばして声の調子を上げて言った。
「ひっ!?」
濡れた赤い髪の間から、冷たくギラついた目が覗いたのをカガリは見逃さなかった。
その目はカガリの股間を射貫いており、カガリは恐怖から手を後ろについて下がろうとする。
だが後ろには壁があり、すぐに手は行き場を見失ってしまう。
「あ…あ…。」
カガリは後ろを振り向く…だが、やはりそこには壁がある。
「へぇ、綺麗ねぇ…。ここがキラのを咥えこんだんだ…。」
「…やっ…いやっ…。」
カガリのに手をやるフレイ。
ツマラナイものでも見ているといった声だが、目は冷たく、口元は酷く歪んで…。
「ぐぁっ!!」
濡れてもいないカガリの中に、フレイはいきなり人差し指と中指を突き入れた。
「へぇ、結構締まるじゃない。これならキラも嬉しいわよねぇ。」
ケラケラと笑いながらカガリの中の感触を確かめるフレイ。
「こ、このっ!!」
目に涙を浮かべながら、カガリは力を振り絞って思いきりフレイの顔面を足の裏で蹴り押した。
吹き飛び背中から床に叩きつけられたフレイは声一つ上げず、そのまま倒れた。
「ハ、ハッ…、コ、コイツ、頭がどうかしてるっ!!」
カガリは立ち上がるとフレイを飛び越え、濡れた身体のままタオルを巻いて
脱いだ服をガバッと握り締めてシャワールームを飛び出た。
「ミ〜リィ〜く〜ん。」
「ん、トール?」
ベッドに入ったばかりのミリアリアはトールの声に起こされてしまう。
「なぁ、今からしようぜ。」
ミリミリアのベッドを仕切るカーテンを開けるなり、トールは軍人らしくないセリフをあっさり言う。
「もうやだ!! アークエンジェルにいる間は我慢してって言ったでしょ。」
「良いじゃん。二人一緒に非番って最近めったにないぜぇ?」
「でも…。」
「サイやカズイはいないんだしさ。大丈夫だって。」
そう言いながらトールは強引にミリアリアのベッドに入った。
「ったく、私もカガリみたいな性格になろうかしら?」
「へっ?」
「こっちのこと。で、口だけで良いわよね?」
「ダ〜メ、本番本番。」
「もう、中で出さないでよね!!」
二人がいざ行為に入ろうとしたその時…。
「ハァ、ハァ、ぐっ、ハッ…、ハァ…。」
何者かの廊下を濡れた足で駆ける足音と、荒い息使いが聞こえた。
「カガリ?」
ミリアリアはカーテンを少し開け、廊下を覗く。
「どうした?」
「う、ううん、何でもない。ホントに今日は中はダメなんだからね。」
こうしてミリアリアとトールの甘い夜は更けていった。
「キ、キラっ!! 早く開けてくれっ!!」
ドンドンと忙しなくドアが叩かれ、ベッドに横になっていたキラは
何事かと慌てて飛び起き、ドアを開けた。
「カガリ!?」
「うぅっ…。」
ドアが開くなり持っていた服を床に落として、カガリはキラに抱き付いた。
「ど、どうしたんだよカガリ…。それにこんな格好で…。」
ガタガタと震えているカガリに気付き、キラはカガリの背中に腕を回した。
「何があったのかわからないけど、もう大丈夫だから…。」
だがカガリはキラの身体を押し退けてでも聞かずにはおれず、
キラの襟首を両手で掴んで言った。
「あっ、あの女…。一体何なんだっ!?」
「あの女…?」
「あのフレイとかいう女だ!! アイツは…アイツは私に…。」
「フレイと…何かあったの?」
「ア、アイツが…私を…。」
ここで…キラをたぶらかしたの?
「アッ…。」
「カガリ?」
綺麗ねぇ…。ここがキラのを咥えこんだんだ…。
「ち、違う!! 私は…。」
「カガリ…!? ねぇ、どうし…」
キラはアンタになんか渡さないわ!!
「ゃ…ぃゃ…。」
キラは私のモノなんだからっ!!
「うわーーーっ!!」
突然叫び出し、カガリは頭を押さえて床にうずくまってしまう。
「カガリ!?」
「アイツが…アイツが来る…キラッ!!」
泣きじゃくる子供のような擦れた声で、カガリはキラに訴えた。
最早カガリは完全に身体に力が入っておらず、立ち上がることすらままならないようだった。
「とにかく手を貸すから…まずはベッドに座って…っと。」
「キラ…。」
そのままカガリはベッドに仰向けに倒れると、目に腕を当てて
涙を見せないようにして、フレイとの経緯をキラに話した。
「うっ!! ……ハァ〜。」
「ハァ〜…じゃないでしょぉ。」
大きく溜めた息を吐く直前に、トールはミリアリアの中にも溜まったものを吐き出していた。
「あれだけ中はダメって言ったのに…。」
「まぁ、できちゃったらそん時はそん時だって。」
「まったくもう、ちゃんと責任取ってよねぇ…。」
そう言ってミリアリアが起き上がろうとすると、
トールはそれを「まぁまぁ」と言って再び横にさせる。
「もう1回だけ…。」
「トールッ!!」
「ん、誰だ…?」
ミリアリアがトールを叩こうと手を挙げた所で、今度はトールに廊下から誰かの濡れた足音が聞こえた。
「えっ?」
ミリアリアも手を下ろして耳を澄ませると、確かにさっきとは打って変わって
ヒタ…ヒタ…、と言った風なゆっくりとした足音が聞こえる。
この時間は見回りはないはずだし、あったらトールとこんな事してるはず…。
「ぁっ!?」
ミリアリアが廊下の音に気を取られている隙をついて、
トールが再びミリアリアの中に入り込んで来た。
「…ッ!!」
ミリアリアは心の中で「バカッ!!」と言いながら、声を殺して笑ってるトールの頭を叩いた。
濡れたまま、女は通路を歩いていた。
ゆっくり、ゆっくりと仇敵の女への侮蔑の思いを込めながら歩みを進める。
あの女だけは許さない…キラは私だけのものだから…。
でないと私がコーディネーターなんかに抱かれた意味ないじゃない…。
本当なら私は…。
こんな…こんな安い女で終わるはずないんだから…。
自分のベッドのある大部屋を素通りする。
そして、その隣の大部屋に差し掛かった時…。
「あれだけ中はダメって言ったのに…。」
「まぁ、できちゃったらそん時はそん時だって。」
「まったくもう、ちゃんと責任取ってよねぇ…。」
廊下にミリアリアとトールの声が漏れて聞こえた。
またあの二人…汚らわしい…。
大部屋のドアは常に開け放たれており、声は廊下に丸聞こえ。
逆を言えば廊下の音も部屋の中で聞くことは出来るということだ。
女は足音を殺すことはせず、そのままミリアリアたちのいる部屋の前を通る。
足音が聞こえたのか、二人の声が聞こえてこなくなった。
ふふっ…、後ろめたい気持ちがあるんだったら、私の前でそういう事しないで!!
女はその部屋の入り口を睨み付けて通り過ぎて行った。
その直後、部屋からはまた恋人たちの甘い鳴き声が漏れ始めていた。
「フレイが…そんな…。」
カガリの話を聞いたキラは信じられない、といった感じで俯いていた。
「アイツは…。」
カガリが言いかけたその時、突如インターホンが鳴った。
「誰だろ?」
「出るなっ!! アイツだ…アイツが来たんだ…。」
ベッドの上で頭を抱えて再び震えが止まらなくなるカガリ。
敵が来たという知らせならサイレンが鳴るはずだし、ブリッジにいる連中以外では
フラガ少佐は絶対寝てるだろうし、トールとミリアリアは…まぁ、一緒だし…。
となると来たのは…フレイ!?
「お、おいっ!!」
「ドアは開けない…。話をするだけだから…。」
そう言ってキラは回線を開いた。
「は…。」
「キラ!? ねぇ、ちょっとここを早く開けてよ!!」
キラが「はい。」というヒマすら与えず、フレイは妙に明るい口調でキラに喋りたてる。
「いや…、もう寝るから…。」
キラからはフレイの顔がモニター越しに見えるようになっている。
フレイの目が異常なまでに見開かれていることにキラは気付いた。
「そんな事言わないでよっ!! ねぇ、また抱かせてあげるから!!」
「い、いらないよ!! もう休むって言ってるだろ!!」
「…誰かいるの? ねぇ、あの女がいるんでしょ!? ねぇ、そうなんでしょっ!!」
「ひっ!!」
キラは恐怖を覚え、回線を切った。
モニターは落ちたはずなのに、キラの目にはフレイの般若のような顔が焼き付いて見える。
「キラ…!?」
「大丈夫…大丈夫だから…。」
カガリに言ったはずのその言葉は、まるで自分に言い聞かせているようでもあった。
あれがフレイの正体!?
何で…何で…こんなことに…。
「フレイが…フレイがどこかに行くまでここにいて…。僕が…カガリを守るから…。」
「キラ…。」
キラはカガリの頭を自分の胸に抱き寄せ、カガリもまたその身をキラに預けた。
「ふふふっ…ふふふふふっ…。」
フレイはキラの部屋のドアにもたれかかって床に座っていた。
「何が寝るよ、何が休むよ…。あの女がいる事はわかってるんだから…。」
そう言ってフレイは自分のものではないキラの部屋の前で消えている濡れた足跡を、目で見ずに触った。
「私より…あんな女が良いわけ…? あんな安い女が……キラはどうかしてるわ…。」
「フレイ?」
ブリッジに女子シャワールームのシャワーが出続けているという異常が知らされたため、
それをチェックに向かうべく、カズイが丁度キラの部屋の前に通りかかってフレイを発見した。
カズイが声をかけたのは確かにフレイだ。
全身が服ごと濡れていて、髪が濡れてまとまっており、表情はそのために隠されていて見ることはできないが…。
「どうかしたの? キラの部屋の前で…。」
面倒くさそうにカズイはフレイに尋ねた。
これでも一応、年上だしね…。
「ねぇ…?」
ようやくカズイに対してフレイが反応を見せた。
フレイはフラフラとよろめきながら立ち上がり、カズイに倒れかかって言った。
「私の身体……いくらだったら買う…?」
〜フレイ×カズイEND〜