あなたに感謝をこめて……富野由悠季
あなたが、女性ならば、ひたすら男とはこんなものだと分かって欲しい
と思います。
あなたが、男性ならば、男はこれでいいんだから、頑張ろうよという思いを
こめて、男の愚直さを描いてみたつもりです。
このように書くと性別を意識しすぎだと、非難される方がいらっしゃる
のも承知していますが、これが正直な感想なのです。この感じ方がいけな
いのなら、性差を超えたものを見せて、勉強させて下さい。
今回のこの映画は、ぼく自身、初めての映画の仕事で、自分の未熟さを
さらけ出したこと、スタッフ全体が若すぎて、全体の表現技術が稚拙になって
しまったことで、見てくれと胸を張れないのは残念です。
プロのはずですから、こんなことを言ってはいけないのですが、心意気
だけは、一流の映画に負けていないつもりです。シリーズ化した作品を作る
苦しさからも逃げないで、未熟者同士が集まって、ともかくも作って見せた
という自負はあります。
若いスタッフのほとんどは、以前のガンダムで育って、今回の仕事に参加
してくれた若者です。そして、今日、また、このように映画にすることが
できましたのは、このパンフレットを読んで下さっているあなたがいたから
なのです。そうでなければ、この映画は製作されませんでした。
その意味では、この映画は、本当の意味でのイベントなのです。ですから、
この映画の本当の意味は、皆様よりも、映画を企画し、製作する大人の方々に、
一番分かって欲しいことなのです。
この種の作品は、敵と味方が単純に戦う図式にしなければなりません。しかし、
ガンダムは、以前の映画三部作の後に、テレビでシャアとアムロの友好関係が
語られました。
その上で、今回のストーリーを創作しなければならなかった点、殊に、シャア
は、敵でありながらも悪人ではない、というイメージを大切にしなければなら
ないということは、作者にとって過酷な条件でした。その結果が、今回の
ストーリーだったのです。
もちろん、誉めて欲しいというのが製作者すべての願いですが、ここまで
しか出来なかったという我々の力も認めざるを得ません。
とはいえ、我々は、このようなチャンスを与えられたことに感謝し、やること
はやってみたという思いはあります。今後も、機会があれば、恥じることなく、
もっと映画をやってみたいと思っています。いけませんか?