フラガSS エンディミオンの鷹 1/6
AAに帰投したメビウス・ゼロに通信が入る
「お疲れ様でした、フラガ大尉、さすがエンディミオンの鷹ですね」
「おいおい、その呼び名はやめてくれよ、ハゥ君」
本当に困ったような笑顔で答えるフラガ
「でもこれってエンディミオン会戦の英雄に送られた賛辞ですよ」
「英雄か・・・ハゥ君はどうしてこの名前が俺に送られたと思う?」
「えっ?、だからその戦いで少佐が活躍されたからじゃ・・・?」
「そうじゃない、戦いに負けたからさ。負けたからこそ英雄が必要だったんだよ
民衆の関心をそらせるためにね・・・・。」
「そ、そんなことないですよ、そんなこと大尉はやっぱり英雄です」
「ははっ、ありがとうハゥ君。それじゃちょっと一眠りでもするかな」
「はい、ゆっくり休んでくださいね、大尉」
ゼロを降り、自分の部屋へ向かうフラガ
「エンディミオンの鷹か・・・」
そっとこぼれ落ちたその言葉は誰の耳にも届くことはなかった・・・
そして、時はさかのぼる・・・・
フラガSS エンディミオンの鷹 2/6
地球軍、エンディミオン基地。
そこには既にNO1.MA乗りと呼ばれる一人の中尉がいた。
「お呼びでありましょうか、閣下」
「やぁ、フラガ中尉、忙しいところすまないね。ちょっとこれを見てくれるかな」
そこには、オレンジ色に着色された一体のMAがあった。
「これは・・・メビウスですか、しかしあれは・・・?」
「そうだ、これは我が軍が指揮官用に開発したメビウス、メビウス・ゼロだ。
通常のメビウスより全ての能力において20%は向上されている。
しかし、いまだに乗りこなせたものは誰一人としていないんだよ、どうしてだかわかるかね?」
「はっ、どうしてでありましょうか。」
「ははっ、さっきから君も気になっているようだが、あの装備だよ。
あれは有線式ガンバレルといってな複数のガンバレルを射出して遠隔操作で
攻撃が可能となるんだが、いかんせん扱いが難しすぎるようなのだよ」
「有線式ガンバレル・・・遠隔操作・・・」
フラガの目はゼロに張り付いたまま離れない
「どうやら君も興味を持ったようだね。どうだい?挑戦してみるかい?このメビウス・ゼロに」
「はっ、お願いします、閣下。自分をあのMAのパイロットに」
「期待しているよ、フラガ中尉。君が無理ならあれのパイロットは誰にも務まらないだろう」
「ご期待に沿えるよう、必ず乗りこなせて見せます」
これがムウ・ラ・フラガとメビウス・ゼロの出会いであった。
フラガSS エンディミオンの鷹 3/6
エンディミオン宙域、地球軍演習場。
「くそっ、全然ダメだ。なんてじゃじゃ馬なんだこいつは・・・」
ゼロに乗り込んで3週間、始めは基本ポテンシャルに驚かされたもののすぐに乗り
こなせられた。しかしガンバレルに至っては到底扱えたものではなかった。
「フラガ中尉、今日はこの辺でそろそろ・・・」
「まだだ、今日こそ使いこなしてやる・・・」
「そのセリフ、2週間前からずっと言ってますよ、気長に行きましょう、中尉」
「・・・わかった、帰投する・・・」
直後、フラガ演習隊の元へ通信が飛び込んできた
「中尉、12時の方向より複数の未確認機影が迫っています。・・・ちょっと待ってください、
機体照合・・・こ、これはZAFT軍のジグー・・・死神・・・・クルーゼ隊です!!」
「クルーゼ隊だと、奴さんとうとうこんなところまで現れやがったか・・・・
総員戦闘準備だ、これは演習ではない、繰り返すこれは演習ではない」
ラウル・クルーゼ・・・ZAFT軍のエース中のエースパイロット、彼の部隊に襲われたもので
生き残った部隊、基地は皆無。まさに地球軍にとって死神というべき存在であった。
そして数分後・・・、エンディミオン部隊とクルーゼ部隊が激突する
「エンディミオン基地か・・・少しは楽しませてくれよ、くくく・・・うん?」
下方よりリニアガンがジグーのそばを掠める、その先にはゼロの影が迫っていた
「よう、お前が死神クルーゼか。こい、お前の相手は俺がしてやる!!」
「はは、こんなところまで名前が知れ渡っているとは光栄なことだ、がそう言って私に
向かってきた相手はことごとく地獄行きだったよ、果たして君に私の相手が務まるかな?」
「ほざけっ!!」
メビウス・ゼロとジグーが激突する、これが2人の初めての戦いであった。
フラガSS エンディミオンの鷹 4/6
ゼロの動きは素晴らしい物であった、そしてパイロットの腕も、この組み合わせに
叶うものはどこにもいないだろう、そう今までは・・・
「くそっ、なんて強さだこのままでは・・・やられる・・・」
直後、ジグーのライフルが迫り直撃・・・したかに思われたがぎりぎりで機体を転進、回避した
「ほう、あれもかわすか。本当にいいパイロットだ、が世の中上には上がいるのだよ。
名残おしいがそろそろ終わりにさせてもらおう。」
猛スピードでジグーがゼロの背後をとる、ゼロもそれをさせまいと全力で振り払おうとするが、
「だめだ、機体の損傷が思ったより大きい、逃げ切れない・・・。いちかばちかガンバレルを展開するか?
いや、ダメだ、展開する瞬間にやられる、くそ、一瞬でいい奴の動きが止まってくれれば・・・」
ゼロにライフルの標準をあわせるジグー、そしてロックオン・・・・
「チェックメイト、いや君は本当にすごかったよ、最後に名前を聞いておこうか。
私が名前を聞くなんて早々ないぞ、それだけ君がすごかったということだ、
誇りにしていい。といってもすぐに地獄行きだがな、くくく。」
「くそ、駄目か、お前は本当に死神だよ、俺の名前はムウ・ラ・フラガ。
おぼえていたなら、いつか線香の一本でもあげてくれ・・・」
「ムウ・ラ・フラガだとっ!?」
突然、驚いた声をあげ瞬間動きを止める、クルーゼ
「何だ、動きが・・・よし、いまだ。」
瞬時にガンバレルを展開しジグーに迫る
「何!!、くっしまった・・・」
必死に回避を試みるが、ライフルを持つ右腕に直撃。
「これでライフルは使えまい、形成逆転だな」
「遠隔操作のガンバレルだと、こんな奥の手を・・・・、しかしまだやれるぞ」
その時、ジグーの元に通信が入る、時を同じくゼロの元にも・・・
エンディミオン基地・・・壊滅・・・
フラガSS エンディミオンの鷹 5/6
「クルーゼ様、ここは退却ください、エンディミオン基地、部隊はほぼ壊滅
当初の目的は達成しました、ここで無理をする必要はありません」
「この私が退却とはな、目的はなった総員ガモフへ帰投せよ。」
ジグーが転進する・・・
「ムウ・ラ・フラガ・・・・、この次会う時はこうはいかまいぞ。
それまで生き延びていれば良いがな・・・」
そして彼方へと消え去るクルーゼ
『ムウ・ラ・フラガ、まさかお前が・・・運命とは皮肉なものだ・・・』
「ふぅ、形成逆転か、はったりもかましてみるものだな」
メビウス・ゼロはもうとても戦えた物ではなかった、動いているのもやっとだろう
「クルーゼか、死神相手によく助かったものだ、それにしてもあの時動きが止まった
のは一体・・・?まぁいいか、おい相棒基地まであとひとっ走り、頼むぜ・・・」
エンディミオン基地は壊滅した、地球軍はエンディミオン基地の放棄を決定。
決定的な敗北であった。
そんな中、クルーゼを退却させた一人の男とその機体を英雄として迎えた。
そしてこのときよりメビウス・ゼロはムウ専用機と正式に発表される。
エンディミオンの英雄、エンディミオンの勇者とそしていつしかメビウス・ゼロを駆る
その姿からこう呼ばれるようになる・・『エンディミオンの鷹』と・・・
フラガSS エンディミオンの鷹 6/6
再び時は、戻り・・・
評議会に向かうクルーゼとアスラン
「説得に応じなかった場合はどうするのかね」
「その時は、この僕が、ストライクを撃ちます・・」
『知り合いをそう簡単に撃てれば誰も苦労せんのだよ』
評議会への説明も終わり自室へ戻るクルーゼ
仮面を外し机の上におく、その横には裏向きの写真がひとつ・・・
「簡単に撃てれば誰も苦労せん、よな・・・ムウ」
その時、どこからともなく風が吹き込み写真が飛ばされ、机の下に落ちる
そこには笑顔で肩を抱き合う2人の少年の姿、そして一部かき消されたひとつの文
「C・E58 04/04 ○○○○○○とムウ・ラ・フラガ 海浜公園にて・・・」
〜 fin 〜