ウッソたんハァハァ3〜男性専用〜

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891709
>877
>いつも気になる所で終わらせるなんて放置プレイじゃよ(;´Д`)ハァハァ
筆力劣る身、全ては皆様のご興味をつなぎとめんがための苦肉の策。
されば多少のあざとい手も、むしろ兵法と思し召しくだされ。

それでは、牛蒡に鰻の勢い借りて、書けるだけ書いたる本日分。
見てください!
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「逃げる?」
「そうだ。私はこれから、君と一緒にこの基地から脱出するつもりでいる」
「ええっ!?」
「ザンスカールを裏切ろうと言うんだよっ!さあ、服を着なさい」
「あ…はいっ」
とまどいと嬉しさの入り混じった、複雑な表情を浮かべるウッソ君。
(とは言うものの、どうやって逃げるべきか…
 …とりあえず、こいつは処分しておかねばな。)
「あのう…その人、倒れたまんまだけど…死んじゃったんですか?」
「いや、気絶しているだけだろう。だから、完全に息の根を…」
私は710号に銃口を向けた。
「あっ!駄目ですよっ!」
引き鉄を引く直前、ウッソ君が私に体当たりをしてきた。
「おわっ」
狙いが外れ、床に穴が空く。
「何のつもりだ?」
「別に殺さなくてもっ!」
「こいつを生かしておくと後々ヤバいんだよっ!俺が裏切ったことをチクられたら、一巻の終わりだ!」
「だからって…」
「…」
私は再び銃を構えた。
(お前の教えてくれた非情の精神とやら、早速実行に移させてもらうぞ。710号!)
しっかりと狙いをつける。
892709:02/11/25 01:00 ID:???
「ああ…」
ふと、ウッソ君の顔を見る。
実に悲しそうに目を潤ませ、私のことをじっと見つめている。
(ずるいよなあ、そういう目…)
自然と、手から力が抜けていく。
(あーあ、結局は感情に流されちまうんだよなあ)
銃をしまい、代わりにウッソ君を縛っていたロープを手にする。
「そんな世界の終わりみたいな顔しないでくれよ…
 分かったよ、目の前で人が死ぬところを見たくないんだろ?」
「ええ…そうです…」
710号の手首と足首をガッチリと縛る。
(他に使えるものは…)
スーツケースの中にガムテープを見つけたので、それを使って口も塞ぐ。
仕上げに体を転がし、ベッドと床の間の隙間に押し込んだ。
「これでいいか?」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
はじめて見る、ウッソ君の明るい表情。
(こういう子には笑顔が一番良く似合うよな、やっぱり)
つられて、私も顔をほころばせた。
(が、いつまでもニコニコしてはいられないんだよなあ)
ウッソ君を連れたまま外に出るのは、至難の業なのだ。
「僕は用意ができました。いつでも出られます」
「よしっ。…しかし、うまく脱出できるかどうかは…運を天に任せるしかないな」
「僕の姿を、基地の他の人に見られたら…」
「ああ、全てオジャンだ。もちろん、なるべく見つからない様に動くつもりではあるが。
 だが、もし…見つかっちまったら、強行突破するしかないな。覚悟しておいて…」
「そういうことなら、あれ、使えませんか?」
ウッソ君は710号のスーツケースを指差した。
「ほおう。なるほど、な」
私はウッソ君の機転に舌を巻いた。
893709:02/11/25 01:02 ID:???
710号のスーツケースを手にし、私は部屋から出た。
なるべく人の通らなさそうな通路を選び、早足で駆けていく。
途中、同僚たちやべスパ兵とすれ違うことも何度かあり、その度に私は肝を冷やしたが、
別段呼びとめられることもなく、なんとか無事に建物の外に出ることができた。
(ううう、寿命が縮むっ!)
そのまま、モビルスーツ倉庫へと向かう。
倉庫の中では、数多くの整備員たちが忙しそうに動き回っている。
「君、ちょっといいかい?」
「はあ、自分スか?」
私はダンボール箱を抱えてウロウロしていた整備員を捕まえ、身分証を見せた。
「私はこういう者なのだが…」
「へえ、諜報部の人で。何の用っスか?」
「ちょっとしたお使いに出かけなくてはならなくなってね。
 すまないが、使えるモビルスーツがあったら一機貸してくれないか?」
「はああ?そんな話は聞いてませんよ?」
「急に決まったことでね。あ、上層部の承認はすでに得ているよ」
「マジっスか?でも…」
「階級的に…私と君ではどちらが上かね?」
「…っかりましたよ」
「急いでるんだ。なるべく足の速い機体をまわしてくれるとありがたい」
「へいへい。でも、今は各地で作戦展開中っス。今使えるのは…あそこにあるゾロぐらいなもんスね」
「ゾロ?…まあいい、上出来だ」
「じゃ、今すぐ用意するっス…おーい!」
彼は他の整備員に声をかけ、すぐに発進の準備を整えてくれた。
894709:02/11/25 01:02 ID:???
「ついさっきまでジョイント部分の検査をやってたもんで、ハナっから合体形態ですが・・・」
「構わないさ」
「…それにしても、ずいぶんと大きなカバンっスね。何が入ってるんです?」
「そいつは軍事機密だ。教えられないよ」
「うへえ、そいつあ失礼したっス…どうかお気をつけて」
「ああ、ありがとう」
(うわあ、なんてラッキーなんだ俺は!五体満足のまま脱出できるなんて!)
口笛を吹きながらコクピットハッチを開ける。
だが、いい気になっていられるのもそこまでだった。
「709号っ!待てっ!」
突如、後ろから怒声が聞こえた。
「何ぃ!」
「どこに行くつもりだこの野郎っ!」
710号だ。
「待ちやがれ!…おい、お前ら!そいつは反逆者だ、行かせるなあっ!」
銃を乱射しながら、ものすごい勢いでこちらに向かってくる!
(もう抜け出してきやがったのか?いかん、急がねば…)
スーツケースをコクピットに投げ入れ、自分も中に乗り込もうとする。
奴はゾロのすぐ下まで迫って来ていた。
「逃がさん!くらえ!」
「ぐあ!」
710号の撃った弾丸が、私の左肩を撃ち抜いた。
「畜生っ!」
コクピットに転がり込む。
「ぐ…ぬああああっ!」
肩の痛みをこらえ、操縦桿を握る。
「行くぞうっ!」
倉庫の天井をぶち破り、私は大空めがけて上昇していった。
895709:02/11/25 01:03 ID:???
ある程度の高度に達したところで自動操縦に切り替え、
上着の内ポケットから携帯用の止血スプレーを取り出す。
腐ってもスパイ、こういう道具の用意だけはきちんとしているのだ。
傷口にたっぷりとスプレーをかけ、ハンカチで血を拭った後、私は足元のスーツケースを開けた。
中からウッソ君が顔を出す。
「ぷはあ!」
「ごめんな、この中で丸まってるのは窮屈だっただろ?」
「いえ、このぐらい平気です。…あっ!」
ウッソ君の視線が、私の左肩に注がれる。
「体、柔らかいんだな。うらやましいよ」
「それより、肩…どうしたんです?大丈夫ですか?」
「たいしたケガじゃあない。ちょいとズキズキするがな。…おっと」
機体がガタンと揺れた。
「わああ…」
「ととと、なんだ、バランサーの調子がおかしいのか?安定させねば」
再び操縦桿を手に取る。
しかし…
「くそっ、力が入らない…」
なかなかうまくいかない。
「操縦、僕が代わりましょうか?」
「君が?」
「このモビルスーツ、なんて名前なんですか?」
「ん…ゾロ、だが」
「ゾロタイプ!じゃあ、大丈夫です。前にも一度操縦したことがあります」
「はあ?」
「失礼します」
問答無用、ウッソ君は私の膝の上にちょこんと座った。
「おいおい…本当に大丈夫なのか?」
896709:02/11/25 01:05 ID:???
私の心配は、まったくの杞憂だった。
ウッソ君は慣れた手つきでパネルを操作し、操縦桿を操って見事に機体のバランスを取り戻してくれた。
「噂には聞いていたが…なるほど、すごいもんだな」
「行ったでしょ?小さいときから練習してたって」
「ああ、信じるよ」
夕陽が西の果てに落ちようとしている。
膝の上に可愛い少年を乗せ、茜色に染まる空を悠悠とフライト…
(なんか、いいよなあ、こういうの…)
非常時ではあるが、こういうシチュエーションだと、悪い気持ちはしない。
(このまま、ギュウっと抱きしめて…)
悪い考えが鎌首を持ち上げはじめたところで、ウッソ君が口を開いた。
「ところで…あなたのお名前、まだ聞いてませんでしたよね」
慌てて手をひっこめる。
「え、私の名?そうだなあ、『ナナヒャクキュー』とでも呼んでくれ」
「ナナヒャッキューさん?珍しいお名前ですね…
 どうして僕を逃がしてくれる気になったんです?」
「んー…ザンスカールの冷酷なやり方に我慢できなくなった…そんなところだな。
 私も君にはひどいことをしてしまった…本当にすまない」
「あ、いや…気にはしてません。むしろ、助けていただいて感謝しています」
言葉とは裏腹に、ウッソ君の表情に一瞬翳りが見えた。
またしても罪悪感に囚われる。
「…これからどこへ向かうんですか?」
「君が所属している部隊はジブラルタルに向かっているらしいな。
 我々もそこに行こう」
「了解です。あと、もう一つだけ聞きたいんですが…」
「何だい?」
「さっき見せてくれたカテジナさんの写真なんですが…」
「欲しいのか?」
「わっ、わっ、違いますよ!…ええと、もしかしたらカテジナさんは…」
「そうだ、今はラゲーン基地にいる。彼女も助け出したかったが、そんな余裕はなかった」
897709:02/11/25 01:07 ID:???
もちろん嘘である。
もし助けるチャンスがあったとしても、私は彼女を無視していただろう。
「そう…ですか」
「安心しろ、彼女はクロノクル中尉の保護のもと、手厚い待遇を受けている。
 怖い目にはあってはいないさ」
「それなら、いいんですが…」
「あの写真も、すぐ処分するよ」
「…」
そのままウッソ君は口をつぐんでしまった。
沈黙が、続く。
「なあウッソ君、よければ…」
静けさに耐えられなくなった私が話題を振ろうとしたその時…
レーダーに反応があった。
「…敵!」
「追手か?3…いや、4機も来ている!」
「振り切れるかっ?」
「出力、上げます!」
だが、敵との距離は縮まる一方だ。
「あれは…トムリヤットか!ぬうう、新型を差し向けるとは…分が悪すぎる!」
「駄目です、逃げ切れません!」
ウッソ君は機体をUターンさせた。
「おい、まさか…」
「戦わなきゃ、やられます!」
「無茶言うなよ!相手は新型、しかも4機もいやがる…勝てるわけないぞ!」
「とにかく、やらなきゃならないんですよ!…僕のこと、しっかり支えていてください」
「ったく…はあ…」
ため息をつき、シートベルト代わりの右腕をウッソ君の体にまわす。
(これまでもなんとかなったんだ…今回もなんとかなりますように…)
望んでいたのとは違う形でウッソ君を抱きしめながら、私は神に祈った。
(続く)