じつは、俺と同棲してる彼女は、ゴッグなんだ・・・。
最初に出会ったのは、三年前。
まだ、俺がリア工の頃だ。今さら自分で言うのもなんだが、頭の悪いガキだった。
ある日、学校から帰ってくると。
「こ・・・こ、こんにちはっ」
誰だ、こいつは。そんな感じで、びびった。
「私、ゴッグです。ゴッグ、っていいます」
うちの台所(兼居間)の椅子に座ってんのよ。ちょこん、ってさ。
オフクロが言うには『戦場で死んだ戦友のひと粒種なんだよ』とか言っちゃってんの。
そんでひどいことにはさ、このゴッグ、片脚が切られてんだよ。
「れ、連邦のジムに、ですね。あの、えっと・・・ジムっていうのは、ですねっ」
なんかすげえ必死な顔で、説明するんだよ。これがまた。
俺、連邦のモビルスーツ全部知ってるのに。で、話が終わると鶴の一声が。
『カアちゃん、仕事で忙しいから。あんたがお世話するんだよ』
もうマジかよ、って思ったね。その時は。
「よ、よろしく・・・お願いします」
二度思ったね。もうマジかよ、もうマジかよって。
その日から、俺は満足に友達と遊ぶことすらできなくなった。
家に帰っても、この片脚のお姫様のお世話をなさらなきゃならねえわけよ。
ちなみに逆らえば、オフクロのクラッカーが飛んでくる。俺はこの家の奴隷かよ、クソッ。
そんなわけで、俺は品良くゴッグの面倒をみる毎日さ。
もちろん今日も帰宅後の仕事は、ゴッグを二階へ運ぶことだった。
「あの・・・いつも、すみません・・・」
階段を登る時は、かならず俺が肩を支えるんだけど。
そんときに、ゴッグがモノアイを伏せて、これがまた湿っぽい顔するんだよ。
「わ、私、もともと地上じゃ満足に歩けなくて・・・でもでも、海ならすごいんですよ」
元気になったかな、と思ったら、またすぐ暗くなるわけよ。
「今は・・・、ぜんぜんダメですけどね」
空気がじめーっとした状態のまま、ゴッグを部屋まで運んだわけだ。
そしたらさ。
「た・・・たまには、お話。えっと、お話しませんかっ」
ベッドの端に腰かけて、そんなことを言いやがるのよ。
いつもだったら、お役目を終えた俺は、自分の部屋に戻ってZのDVDでも見てる頃だ。
まあそんときは、ちょうどジャミトフが暗殺されてムシャクシャしてたせいもある。
つまりヒマだったわけだ。俺は、ゴッグの話を聞いてやることにした。
「好きなモビルスーツって、ありますか?」
俺は言ったね。
当然『ガンダム』さ。そりゃそうだろ、なあ。勝った側だし、強いんだからあたりまえだ。
「そうですか・・・ど、ドム! ドムはどうですか? ホバーがついてるんですよっ」
ああ。言ったさ。
もちろん、『大キライ』ってな。三機だか十二機だか知らねえけど、とにかく負け側だ。
「はぁ・・・負けると、キライですか?」
そんな質問を上目遣いのモノアイで、横で座ってる俺に訊いてくるんだよ。
なんかもう、うざったくなってきたんで、シカトした。
したら、イキナリ。
「ガンダムハンマーって、すっごい威力なんです」
そう言いながら、こう、腕を前に出したんだ。
「ぐわーっ、ぎゅるぎゅるーって。当たったら死んじゃうかな、って」
そこで、クローをがしっと。
「でもですね。その気になれば、こう・・・がちっとキャッチできるんですっ」
で、自慢げに。
「それができるのは、ゴッグだけなんです」
とか言うわけさ。
なんかムカついたんで、ゴッグをからかってやることにした。
「え・・・え? え、ええっ」
目の前で、俺はズボンのチャックを下ろしたわけよ。
「きゃあっ」
かわいらしい声で叫びやがった。当然、むこうは逃げられないから、必死で目をそらす。
俺は『ほら。ハイパハンマーだ、キャッチしてみろよ』って命令してやったね。
「こ、こう・・・ですか?」
そしたら、ゴッグのやつは信じられねえことに、そぉーっとクローを伸ばしてきやがった。
俺は手首をつかんで、強引にハンマーを撫でさせた。
「ひ・・・」
まあ、ゴッグといえど立派なモビルスーナわけで。
正直、俺も若かった。すぐにギンギンの戦闘濃度にまで、達しちまったわけよ。
「あ、う・・・あ、あ、ひぃ」
ゴッグは怯えているだけで、泣きもしやがらねえ。
嫌がらせと実益を兼ねて、俺はジャベリンも触らせてみた。
「ひ・・・う、ううっ、ぅ」
そこまでやって、やっとゴッグは涙を流しだした。
ひどいやつだな、って我ながら思ったよ。
でも、止まんねえわけさ。男だからな。わかるだろ。
「ゆ、許して・・・許してください。ひぃ!」
俺は、ベッドの上にゴッグを押し倒した。
切られた脚のつけ根。股ぐらのあたりをのぞきこんでやった。
「やめ、て・・・み、みないで・・・見ないでくださ、い」
そこは無惨な断面だったのだろうけど、今は補修用パーツでふさがれていた。
俺は、傷痕の部分に、ジャベリンを押しつけた。
しかも『ここにビームサーベルをくらったのかよ。そん時は感じたか。あぁ?』と言った。
たちまちゴッグは、マジ泣きしやがった。
「ふええぇーん・・・」
さすがにこれは、俺もまずいと思った。
オフクロに知られたら、ヒートホークでまっぷたつにされる。
「うぇ、ぐすん、ひっく・・・えっ、うぅ」
しょうがねえなあ、と。
俺はゴッグをなだめるつもりで、メガ粒子砲のあたりを触ってみた。
「ひ・・・ぁ」
なんか、すんげぇイロっぽい声で鳴くわけよ。
もう俺は我慢できなくなった。
くりくりとビームの焦点部をこねまわしてやった。
「は、ぅ、あ、だ、だめ・・・ぃ、や、やめ、あひ」
ゴッグは体を固くして、陸に上がった魚みたいに震えてた。
「え、えっちなこと、しないで・・・くだ、さい」
ひぃはぁと息を荒くしながら、潤んだモノアイがこっちを見ていた。
そのうち辛抱たまらなくなった俺は、フリージーヤードに指を入れた。
「きゃ・・・ふぇ、ひ」
ここが感じるらしい。指先を何度も出し入れすると、だんだんとひんやり湿ってきた。
「お、お願い、もう・・・やめて」
ゴッグのやつは、ぼろぼろと大粒の涙を流した。
「戦場だって、こんなひどいことする人・・・いない。だから・・・しないで。お願い」
俺は笑ってやった。
それから『これが普通なんだよ。好きな相手となら、誰でもやってる』って言ったのさ。
ゴッグのモノアイがまん丸くなった。
「そう、なんです・・・か?」
俺は返事もせず、魚雷発射管にジャベリンをつき入れた。
ゴッグは、痛みのあまり声も出ない様子だった。
しきりに身悶えしながら、体をもぞつかせている。
「・・・ぉ、ひ、へ、あう。あぁ・・・」
あまりに痛々しい嗚咽だったので、俺は動きを止めた。
すると、ゴッグはクローをくわっとかかげる。
腕はすぐに落ちた。引き裂くような力で、枕をつかんだ。もちろん裂けた。
「頭に、アナ・・・穴を開けちゃうと、いけない・・・から」
わけわかんねえことを言いやがるんで、『なんだそりゃ?』って聞くと。
「すみません、すみません、すみません・・・」
そんなふうに、何度も謝りやがる。
俺が『動くぞ』って言っても、そのままだった。
そうこうしていると、じわーっと。
なさけないことに、反応炉を爆発させちまった。
「あ、ぅあ・・・や、で、出てる。お、お母さぁんっ、あ、ああっ、熱いよぉ」
おたがい一回や二回で収まるような、そんな歳じゃなかった。
けれど、三度目ぐらいからは、ゴッグも慣れてきたみたいだった。
自分で腰関節を稼働させて、モノアイを激しく点滅させやがる。
でも、やっぱり。
「すみません、すみません、すみません・・・」
そればっかり繰り返してた。
当然、オフクロにはバレた。
マシンガン、それから、バズーカでメッタ撃ちにされた。
そしたら、ゴッグがそれを止めるわけよ。
「違うんです。私が悪いんです、誘惑するようなことをした、私が悪いんですっ」
事を丸く収めるためかどうか、今となってはどうでもいい。
とにかく俺は今、ゴッグと同棲中だ。
でも、あんまりやらしいことはさせてくれない。
「私だけ気持ちよかったら・・・戦争で死んだモビルスーツたちに悪いじゃないですか」
そこで『そーかそーか気持ちいいのかこの野郎』と、うまく持ちこめれば、俺の勝ち。
休日なんかは、公園でキャッチボールをしたりする。
今は松葉杖とか使わせてるんだけど、ボールを投げると。
「えいっ」
とか言いながら、一本足で立って、クローではさんでボールをキャッチする。
「えへへ。すごいでしょ、ねえ」
とか、得意げに笑いやがるんだよ、これがまた。
そこで押し倒したいのを我慢するのが大変だ。
いずれ、機会があったらアオカンしてやろうかと思う。できるだけ、近いうちにさ。
「夏になったら、海かプールに行こうよ。泳げないけど・・・いっしょに行きたいな」
そしたら水の中で溺れさせて、そのままヤってしまおう、とか思った。