ケンプファー開発記 悪魔に逆らったエンジニア 第五話
方向性は決まった。だが道のりは険しかった。機動性を優先とは言っても突入、離脱
に必要な稼動時間とエンジンの余力は確保されなくてはならない。その上での機動性
優先である。
「この程度か…」
一回目の設計でシミュレーションを行ったH氏は重くつぶやいていた。旧ザク以下の
装甲に継戦時間の短縮。それでもイメージする機動性には達しない。エンジンのパワー
が足りない。
無茶をするしかなかった。
装甲を削った。突入した敵陣で集中砲火を浴びれば多少の装甲など無意味だ。攻撃を
かわしきる機動性が必要なんだ。そう自分に言い聞かせた。そして装甲の薄さを補う
ために曲面装甲を採用した。僅かでも耐弾性を向上させるための、悲しいこだわりだった。
継戦時間を削った。突入、離脱間の継戦時間は武器をすべて撃ち尽くすのに必要な
時間だけでいい。二十分。この二十分間に性能を凝縮する。
エンジンにチューニングを施した。安定性を犠牲にして瞬発力を引き出した。
それでもH氏の求める性能には届かなかった。
「こんなものは特攻機にしか使えん」
暗い水の底で、水面がどこにあるのか解らないままに必死で水を掻いているような
気持ちだった。
「ゲルググのエンジンなら…」
思わずつぶやいていた。だが秘匿された開発計画に他社のエンジンを望めるわけが
なかった。そしてこれは逃げの発想だった。
「ゲルググのエンジンが欲しい」
問題に向き合おうとする度に、この考えが頭を支配した。行き詰まった。
思わぬ場所から援軍が現れた。フラナガン機関に所属するジオン公国直属の技術士官
I氏が、H氏のもとへ派遣されたのである。
I氏はフラナガン機関において、新型OS・EXAMを搭載する機体を作るために
イフリートの改良実験を行っていた。イフリートのエンジンはビーム兵器の使用に
耐える出力を持たない。その低出力なエンジンで、I氏はEXAMの要求する高い
機動性の実現に成功していた。それを聞き付けたH氏の上司が、突撃機動軍上層部
を通じて派遣を要請したのだった。
「素晴らしい」
H氏のバーニアによる機体制御理論を読み終えたI氏の一言だった。
「これは今後の高機動型MS開発の礎となり得る研究ですよ」
H氏は呆然としていた。闘士の開発データは、使い物にならない、無駄な失敗作だと
散々にこき下ろされてきた。そして失敗作だからこそ特攻機に選ばれた。それをI氏は
誉めた。信じられない思いだった。
「しかしこれは」
I氏は続けて言った。
「数年後に実用化されるべきアイデアではないでしょうか。今のMS技術では無理が
あり過ぎる。この理論を完全に形にしたMSを実現出来るのは、少なくとも三年は
後になるでしょう」
I氏はジオン公国直属の技術者だった。エンジニアとしては国内で最高のステータス
を持つエリートである。さらにMS開発の黎明期から研究に携わって来たベテランで
ある。そんな彼の言葉には説得力があった。
「それでも今やらなくてはならないのです。ケンプファーに最高の機動性を与えなく
てはならないのです。でないと」
ケンプファーは特攻機になってしまう。この一言を飲み込んだ。I氏はケンプファー
が特攻機として開発を望まれていることを知らない。またそれを知れば、開発に手を
借そうとはしないだろう。
「どうか、力を貸してください」
I氏は笑った。
「そのために私は来たのです」
第五話でした。稼動時間二十分というのは根拠ないです。MSの稼動時間って
正直見当もつきません。第二次大戦の頃、ドイツの戦闘機はロンドン上空まで
到達しても二十分程度しか戦えず、パイロットが困っていた、というのを読ん
だことがあります。二十分という数字はそこから取りました。
957 :
通常の名無しさんの3倍:02/05/29 01:54
イイ!!
958 :
通常の名無しさんの3倍:02/05/29 07:15
ケンプファーいいっす!
稼働時間、ホントに資料ない…
とはいえ、MSは半永久機関ともいえる核融合炉をつかってるから、(出力はともかく)稼働時間の短さはスラスターの燃料に由来するんじゃないかな。(いろんなところで誤解されてる気がするけど)
もっと詳しい人いたらツッコミヨロシク。
ZZが20分そこそこだったってのは、
なんかの本に書いてあったな。
960 :
通常の名無しさんの3倍:02/05/29 18:38
バイアランはどうなったですか?(泣
ケンプファー開発記 悪魔に逆らったエンジニア 第六話
「三年待たなくては現れないはずのMSを現在に送り出す。いいじゃないですか」
共同作業がスタートした。I氏はケンプファーが無茶な機体であることを承知の上で、
H氏のサポートに徹した。方向性に口を挟むようなことは一切しなかった。飽くまでも
サポート。これが彼の姿勢だった。
I氏はオリジナルの機体設計よりも、改良にその手腕を発揮する技術者だった。
改良の鬼。そんな徒名を持っていた。彼はベテラン技術者の視線でケンプファーの
設計をどこまでも丁寧に見直し、さらにイフリートの改良で培った新技術を持ち込んだ。
EXAMの要求に応えるためにイフリートの性能を極限まで引き出し、オーバー
ヒートと戦いながらその性能を僅かでも持続させようとしたI氏。限られた時間の中
にケンプファーの性能を凝縮しようとしたH氏。両者の思考が噛み合った時、道は
開けていた。
さらに良い知らせがあった。低消費型のビームサーベルが完成した。計算上、
ケンプファーにも装備が可能という結果が出た。二人の顔に笑みが溢れた。
「これならいける」
この時すでにケンプファーのエンジンには余力さえ生まれていたのだった。
今やケンプファーはH氏のイメージを上回る高性能機として完成しようとしていた。
完成が間近に迫ったある日、I氏に上層部からの通達が届いた。
地球でクルスト・モーゼス博士の行方を追っていた特務部隊が連邦のEXAM研究施設
を突き止めた。彼等はクルスト博士の抹殺と同時に連邦製のEXAM搭載MSの奪取を
計画している。彼等が帰還次第、その解析作業に入る。フラナガン機関に戻り、それに
備えよ。
I氏は、ケンプファーの完成を見ることなくグラナダを去ることになった。
「本当にお世話になりました。貴方のおかげです」
「私は手伝っただけですよ」
頭を下げるH氏に、I氏はこう応えた。彼は、ケンプファーの完成に立ち会えないこと
を心残りにする様子はなかった。
I氏はケンプファーを自分の作品とは考えていなかった。自分はその完成に向けて力を
貸しただけである。そう考えていた。改良の鬼。彼の技術が生きるMSは数多く存在
したが、自分の作品と呼べるMSは持たない男。彼はそんな技術者だった。
「ひとつ聞いておきたいことがあります」
彼はH氏に尋ねた。
「ケンプファーは、特攻機なのですか?」
彼はケンプファーという機体の本質を見抜いていた。H氏は一瞬言葉につまったが、
誠実に答えた。
「開発を要請した上層部はおそらくそれを望んでいます。ですが私はケンプファーを
特攻機にするつもりはなかった。だからこそ高性能を目指したのです」
続けて言った。
「私は悪魔に魂を売るつもりはありません」
I氏の顔に一瞬意外そうな表情が浮かんだ。そして微笑んだ。
「しかし上層部がそう望んだならば、ケンプファーはそういう使い方をされるでしょう。
おそらくケンプファーに乗ることになるのはロクな操縦技術を持たない学徒兵。
彼等にこれを乗りこなせますか?」
実戦テストの結果が良ければ、他の使い方がされるはずだ。H氏はそう考えたが、
言い訳めいたことを口に出したくなかった。
「ケンプファーを特攻機にさせないためには、他の選択肢もあるのですよ」
諭すように言い残し、I氏は去っていった。H氏は、その背中に頭を下げていた。
第六話でした。478KB。限界はすぐそこに。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
( ̄∀ ̄)イイ!
続きに大期待。
って、478kb!?
スレの容量が限界に近いですな
次スレもある事ですし、このスレでの作品発表は控えた方がよろしいかと
そうします。
さげさげ〜
970 :
名無しさん:02/06/05 21:08 ID:doLSu1S7
昨日、近所の吉野家に行った。
人がたくさんいて座れなかった。
よく見たら垂れ幕が下がってい、150円引き、と書いてあった。
アホかと。馬鹿かと思った。
150円引き如きで普段来てない吉野家に来るんじゃない。
胸の中は怒りに満ちあふれていた。
150円。
親子連れの姿が見える。一家4人で吉野家か。
父親は「よーしパパ特盛頼んじゃうぞー」などと言っている。
楽しそうだ。
もう見ていられない。
150円払って席を譲って欲しかった。
吉野家は、もっと殺伐としているべきだった。
Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんだ。
男は、そう思った。
しかし、負けなかった。
971 :
MS-05N 旧名無しザク:02/06/05 22:15 ID:YZpfyymI
1000取った奴話し書けと言ってみるテスト
972 :
通常の名無しさんの3倍:02/06/09 10:33 ID:SQYgQVkd
そいつはいい・・・と言ってみる本番。
age
age
エヘヘは良スレも上げるのか?
この(^^)エヘヘは
qが全角のqで
なんか偽物っぽいな
エヘヘに偽物もクソもないが
スレが限界を超えると何が起こりますか?
ヤマハのやつね
それはVブースト、と一応突っ込んでみますた
漏れの国内版はついてない、と一応うけてたってみました。
・・・しかしこれではただのMAXだとおもわんか?
光の翼よこせゴルァ
982 :
980:02/06/13 18:40 ID:???
説明せねばなるまい。Vブーストとは、V型エンジンの二つのシリンダー間に
位置する二つのキャブレターを繋ぐことによって、燃焼室への気化燃料の供給
を増大させるシステムだッ!高回転時にこのシステムが発動することによって、
凄まじいまでの加速が得られるのだッ!その凄まじさゆえに、国内仕様のVMAX
には装備されていないのだッ!
そして漏れは中免しか持っていないことを書いておかねばなるまい。スマヌ981
age
985 :
MS-05N 旧名無しザク:02/06/14 20:49 ID:j8SysAn3
990からみんなコテハンで、
1000とった奴は999のリクエストに答えて話し書け
一片言ってみたかったんだ、これ
986 :
通常の名無しさんの3倍:02/06/14 20:51 ID:RzfZikNz
もみあげろ
>982
しかし、惜しいかなシャフトドライブ・・・。
そしてダミータンク・・・。
ところで >を一個だけにするの流行ってるんですか?
>>988 「>レス番号」でリンク表示される2ちゃんブラウザ使ってるのではないでしょうか?
>>988 去年の8月の転送量問題へのちょっとした対策として、
リンクが張られてしまう">>"を使わないようにしよう!
とかそんな活動があった。
その名残じゃない?
991 :
988:02/06/15 14:07 ID:???
上のお二人、御丁寧にありがとう。
1000ももう目前というのにずいぶん静かだな
993
994.
995..
996...
997....
998.....
999......
1000
ご愛読ありがとうございました。
2ch...
1001 :
1001:
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。