ディアナ・ソレルのよしなに日記 in2002

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792月からの転校生
2:休憩時間【1/5】

「あぁ、いきなり先生に怒られてしまいました・・・」
1時間目が終わり、教室は生徒達による話し声で賑やかだったがディアナは一人落ち込んでいた。
「さっきはごめんなさい。僕のせいでディアナさんまで怒られちゃって・・・」
そんなことはまったくなく、ソシエが一番大きな原因だということは誰の目から見ても明らかだろう。
だが、ロランのそんな心遣いがディアナには嬉しかった。
「いえ、わたくしも緊張が解けてしまったせいで少しおしゃべりになったようでした。
ですからロランさんだけがそのように謝る事はないと思いますよ」
さっきの事は気にしていないようロランにそう言って笑顔をみせると、
自然とお互いの顔から笑みがこぼれた。
「おっ、なんだよロラン、いきなり転校生の彼女といい雰囲気じゃねーか」
「あらあらぁ、これは久しぶりにスクープの予感がするわ。『ついにロランにも運命の彼女が!』
なんてね」
ロランと親しげな男子と首からカメラをぶらさげた、ぱっちりとした目の印象的な女子が、
ディアナとロランの「いい雰囲気」に割って入ってきた。
793月からの転校生:02/04/02 23:13 ID:???
2:休憩時間【2/5】

「な、何言ってんだよ二人とも!ぼっ、僕のことはともかくディアナさんに失礼だろっ!」
ロランの肌は褐色だったが、顔が何色か判断するのは容易だった。
「な〜にムキになってんだ?おまえ・・・もしかしてマジか?」
「『僕のことはともかく』ということは、あんたはまんざらじゃないってことね」
「だ、だから、そうじゃなくて・・・」
その二人に遊ばれているロランを見ているうちに
ディアナはこみ上げてくる笑い声を抑えきれなくなっていた。
「・・・うふふっ、・・楽しい方達ですね。ロランさん、紹介していただけますか?」
教壇で挨拶している時、席に着く途中でのリリとのやりとりの時、そして今、
自分に対して笑みを向けているディアナにロランは目を奪われていた。
「おっと、それには及ばないよ。もともとディアナさんに挨拶するためにきたんであって、
ロランをからかいにきたわけじゃないしね」
「私も同じよ」
その二人の声に、はっと我に返るも自分のでる幕はなくなったと知った。
「ということで俺はキース、ロランとは一応マブダチってとこかな。よろしく、ディアナさん!」
「私はフラン、こうみえても新聞部の期待の星なの。
なんか良い情報があったらよろしくね、ディアナさん」
794月からの転校生:02/04/02 23:14 ID:???
2:休憩時間【3/5】

実際に、キースは古くからロランを知っていて誰よりもロランと仲が良いのは
クラスの誰もが認めているし、フランの学生生命を賭けたグエン先生の一大スクープは話題になった。
グエンのロランに対する小さなカミングアウトもそのせいかもしれない。
「はい。ロランさんのマブダチのキースさんに、新聞部の期待の星のフランさんですね。
こちらこそ、よろしくお願いします。どうぞ、よしなに」
そんなディアナのノリの良い挨拶が終わるやいなや、ソシエがどこからともなく現れた。
遠くで聞こえる、耳を覆いたくなるようなリリの声は完全に無視しているようだ。
「あら、みんなで楽しそうね。
と・く・に、ロラ〜ン、あんたさっきからディアナさんのことやらしい目で見てない?」
さっそくロランを問い詰めるソシエとあたふたするロランを尻目に
フランは慣れた笑いをくすっともらした。
「あ〜あ、ソシエはロランのことになるといっつもあーなんだから・・・」
「ソシエさんはロランさんのことが気になってしょうがないんですねぇ。ふふっ」
「あ、やっぱりディアナさんも気がついた?まぁ、普通はすぐに気がつくんだけどね・・・。
これでわかってないのはロランただ一人ってことか」
「え?ロランさんは気がついていない?」
「そ。あいつ昔っからそう言う事に関してはまるで鈍いから。まして、ロランとソシエは幼馴染、
こりゃへたすると一生気がつかないかもな」
ロランとマブダチのキースからそのような言葉が出れば、ディアナも信じないわけにはいかない。
「それで・・・当の本人であるロランさんのお気持ちはどうなのですか?」
795月からの転校生:02/04/02 23:14 ID:???
2:休憩時間【4/5】

話の流れからみれば、ふとフランに向けられたディアナの質問は自然に見える。
「う〜ん・・・、ロランは八方美人なところがあって、ちょくちょくからかってはいるんだけど、
反応はどれもみんな同じに見えるし・・・、ん〜〜〜・・・やっぱり、わからないわね」
「そうだな、こればっかりは当の本人に聞いてみないと・・・といっても、『そんなことない』
っていうおきまりの答えが返ってくるのは目に見えてるけどな」
「そうですか・・・」
そう言葉にすると、始めてロランと目が合った時のことや、自分を気遣い声をかけてきてくれた
ロランのことが頭をよぎった。
「あれ?もしかしてディアナさん、ロランのことが気になっちゃう、とか?」
そのキースの質問には軽さがあった。ディアナはそのキースの質問の意味を一息つくあいだに考え、
それからゆっくりと答えた。
「そうですね。わたくし転校してきたばかりですから、もっといろんなことを知って、
はやくみなさんとお友達になりたいと思っています。
ですので、お隣同士のロランさんやソシエさんのことはまず気になってしまいますね」
落ち着いた笑顔でそう言われると、キースとフランはお互いに目を合わせ降参を認めるしかなかった。
796月からの転校生:02/04/02 23:15 ID:???
2:休憩時間【5/5】

「これはディアナさんもロランと一緒で、一筋縄ではいきそうにもないわねぇ。
まぁ私としては追いかけるネタが増えてうれしいんだけど」
「でもはっきりしない同士、案外うまくいったりしてな」
それは二人の負け惜しみのような会話にも聞こえたが、何かを期待しているふうにもとれた。
ディアナは目の端にロランの姿を置いたままその会話を聞いていたが、
どうやら二人には気づかれていないようだった。