ディアナ・ソレルのよしなに日記 in2002

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780月からの転校生
1:HR【1/5】

「この度、このクラスに転入することになったディアナ・ソレルと申します。
初めての土地でまだ慣れませんが、よろしくご指導お願いします。よしなに」
朝日の眩しい教壇に立つ少女は、透き通るような色白の肌をほのかに朱色に染めると、
自分の緊張を笑顔にかえて穏やかな口調でそう挨拶した。腰にまで届くほどの長い金髪は
途中半分でカールしていて、両肩から胸にかかる二本の束はチョココルネを連想させた。
そして通常では膝の上まで隠れてしまうスカートをやや短めに着こなし、そこからすらりとのびる
白雪のような足を見せられては、男子はもとより女子生徒までも目を奪われてしまう。

この学校には相当につかないその少女の出で立ちに、男子女子のどちらからともなく
ざわめきが起こった。

「ディアナちゃ〜ん、かわいいねぇ〜」「俺とお付き合いしない〜?」
ざわめきに紛れるように下品な声でブルーノとヤコップが野次を飛ばす。
先ほどからのざわめきと、とどめにも思えるその野次でディアナの顔からは笑顔が
なくなり身の置き場に困ったその顔にはさきほどまでの明るさはなくなっていた。
そんなディアナを見かねて、担任のグエンが一括する。
「こらっ!ブルーノとヤコップ!始めてのクラスで緊張している転校生に
そんなことを言うんじゃない!」
781月からの転校生:02/04/02 07:46 ID:???
1:HR【2/5】

褐色の肌に高い身長、整った顔のグエン先生は一般で言う男前というやつである。
いつもはやさしい口調のその先生が時折このような声を出せば大きなギャップに威圧感を与えさせた。
その声は野次を飛ばした二人意外にも、落ち着かないクラスを静かにさせる効果があった。
「これからみんなと一緒に学校生活を送る仲間だ、よろしく頼むぞ。」
落ち着きを取り戻した生徒達にそう言うと、グエンは開いている席を確認した。
「よし、それじゃあディアナ君はローラの隣に座ってくれたまえ。」
そう言ったグエンの視線をディアナは自然と追い、自分が座る席と隣になる生徒を確認した。
そしてローラと呼ばれたその生徒を見てディアナはすこし意表を突かれてしまう。
グエン先生と同じような褐色の肌に少し長めの銀髪、そして頭には長い髪をおさえるカチューシャが
見えたが、どこか幼さを残すその顔はどうしても男性に見えてしまうからだ。
だが視線が合い、ローラと呼ばれた生徒にやさしく微笑まれるとディアナは先ほどの
違和感も気にならなくなり、緊張がほぐれていくのがわかった。

そうしてディアナは一通りの確認が済むとグエン先生に軽くうなずき自分の席に向かって歩き出した。
「それじゃあ授業を始めるから、教科書を開いて準備するように」
黒板に向かうグエンをいいことに、生徒達はやはり物珍しさからか、ディアナを目で追っていた。
782月からの転校生:02/04/02 07:46 ID:???
1:HR【3/5】

「あっ!」

ふいにディアナは小さく声を発してしまう。
自分に投げかけられる視線を気にしないようにと、前だけを見て歩いていたのが仇となり何かに
つまづいて床に倒れてしまったのだ。
「あら?ディアナさんは見かけによらずドジなのですね、ふふふっ」
勝ち誇った顔でディアナを見下ろすのは、このクラスの委員長であるリリだった。
だが、すべてを察しているかのような瞳でリリを見返すディアナ。
「わたくしってば本当にドジでどうもすみません。ぶつかってしまった脚にお怪我はありませんか?」
制服を手ではらいながら、にこっと微笑むディアナにあっけにとられてしまったリリは、
そんな自分に多少の焦りを覚え「ふんっ」とそっぽを向くように黒板のほうを見てしまった。
この勝負はディアナの勝ちだった。
783月からの転校生:02/04/02 07:47 ID:???
1:HR【4/5】

そんなこんなでようやくディアナは自分の席に着くことができた。
「ディアナ・ソレルです。どうぞ、よしなに。ローラさん」
「ああ、えーと・・・ロラン・セアックです。よろしく、ディアナさん」
自分が予想した自己紹介と違う部分があり、ふと「?」が浮かんだディアナに
すかさずフォローが入った。
「先生が言った名前と違うんで不思議におもったんでしょ?でもこっちが正しいの。
こいつはロラン・セアック、正真正銘の男よ」
ディアナの前に座る、はっきりとした口調でそう言う少女はソシエと名乗った。
おかっぱ頭が良く似合い、非常にかわいらしい。
「そうでしたか、これは失礼しました。では改めて、よろしくロランさん、そしてソシエさん。
どうぞ、よしなに」
予想外の展開ではあったがうまくやっていけそうなお隣さん達でディアナはひと安心だった。
「ソシエー、どうせなら私も紹介してよねー。まったく、ロランの事になると・・・」
ソシエの隣に座っている胸のひときわ目立つ少女がふてくされた声をあげた。
「ちょっとメシェー、今なんて言おうとしてたのよ」
「えー、別になにも。それより、私の名前はメシェー。よろしくね、ディアナさん」
そんなやりとりにディアナは二人が親しい友人同士であることがわかった。
784月からの転校生:02/04/02 07:48 ID:???
1:HR【5/5】

グエン先生が黒板に白い文字をすらすらと並べるのを見て、ふとディアナに一つの疑問が浮かんだ。
「それにしても、なぜ男性であるロランさんを先生は女性のような名前で呼ぶのでしょう?」
誰に向けられたでもないディアナの素朴な質問に、ロランとメシェーは困ったように顔を見合わせ、
言葉をつまらせた。
「うーんと・・・それは・・・」
「あのね、ディアナさん、それには訳があって・・・」
ディアナはそんな二人の態度に自分の質問が失言だったと後悔したが、
ソシエはなんの躊躇もなく答えた。
「あの先生、ド変態だからロランをローラって呼んで喜んでんのよ」
「ちょ、ちょっとソシエ、先生に聞こえたらどうすんのよ!
・・・って、委員長には聞こえちゃったみたいね・・・」
リリは鋭い視線をこちらに向けていたが、一度ソシエと目を合わせるとその視線を黒板に移した。
「あー、こわいこわい。どうしてあんな変態がいいのか、ほんっと不思議だわー」
その鋭い視線にまったく臆することなくソシエがそう言い放つと、
リリの肩が小刻みに震えていくのがわかった。
ディアナ、ロラン、メシェーの3人はこれから起こる事態を覚悟したが、
グエンによって助けられる形になった。
「お前たちっ!さっきから騒がしいぞ!授業中の私語は慎みたまえ!」
ソシエを中心として発せられたその怒声に、ディアナは転校していきなり怒られてしまったと落ち込んでいたが、ソシエとリリはそんな声にはおかまいなしにと熱い火花を散らしていた。