「……リンダ、まだ寝ないの?早く寝ないと明日つらいよ……」
「うん、もうちょっと待って……もうすぐ書き終わるから」
リンダはドロシーの方も見ず、応えた。
「何かいているの?」
ドロシーは興味深げにのぞき込んだ。
それをはずかしそうに手で隠し、リンダは言った。
「見ないでよ、家族に送る手紙なんだから」
ドロシーはくすりと微笑んでみせると、リンダに背中を向け歩き出した。
「じゃ、邪魔すると悪いから私はすこし散歩してくる。10分ぐらいたったら戻ってくるからそれまでに書き終わってるように!コレは命令だぞ」
「わっかりましたたいちょー」
そう言ってリンダは冗談めかしに敬礼してみせる。
ドロシーも敬礼を返しテントの外にでた。
外はだいぶ冷えてきている。
冬も近いといったところか?
じっとドロシーは空を見上げ吐息をもらす。
満天に輝く星々。
そのどれかが彼女の故郷であるコロニーだ。
ただ、天体観測の知識に乏しいドロシーではどれが彼女の故郷サイド3かはわからない。
でも、こうして見上げているだけで、懐かしい故郷がすぐそばにあるように感じられるのだ。
ふとその時、目の端にかすかなきらめきが飛び込んだ。
……流れ星……?
そして、なにかが風を切り裂く不気味なあの咆哮……。
次の瞬間、ベーカリー隊の野営する陣地を、紅く炎が染め抜く。
「な……なに?ドロシーなにがあったの……」
狼狽したリンダの声。
そして……。
「……来る……?」
巨人が降り立った。
ドロシーのテントと……ドロシーの大事な友人を踏みにじり降り立った。
RGMー79ジム。
それが巨人に与えられた名前。
そして、ジムはその足下にいたかけがえのない命があったことを気にもとめず。
いや、知りもせずその右腕を水平にかざす。
その猛悪な破壊の意志を示すために。