かつてあった戦いにおいてジェリドは心に深い傷をおい無気力に日々を生きていた。
ジェリドの恋人のマウアーは働きもしない、ジェリドを養うためにソープで体を張って稼いでいた。
ある日ジェリドは昔の仲間であるカクリコンに出会う。
カクリコンは儲け話があると告げ、仕事の紹介に支度金がいると教える。
その言葉を信じ、ジェリドはマウアーが貯めた金を全てカクリコンに渡してしまう。
だがそれはカクリコンの罠であった。
その頃マウアーはあまりの疲労と心労のために病気となり倒れてしまう。
手術をすれば治る、だが多額の手術代がかかる、そう医者に告げられたジェリドは
カクリコンに渡した支度金を返してもらうべく、カクリコンの元に向かうが
お金も返して貰えず、カクリコン達によってボロボロにぶちのめされる。
ジェリドはボロボロになった体を引きずり、マウアーの待つ病院に向かう。
だがシロッコの手により助けられたマウアーは、すでに病院におらず木星に向かった後だった。
その事を聞き、全てを失った事を悟ったジェリドは一人夜の闇の中に消えていった。
数ヵ月後、カツとガロードは一人の薄汚い男に出会う。
そうその男こそ全てを失い、乞食同然にまで身を落としていたジェリドであった。
何故か親近感の沸いた二人は、ジェリドの話しを聞き全てを知る。
マウアーは木星でジェリドを待っているに違いない、そう二人はジェリドを説得する。
そんな二人の説得により、ジェリドはマウアーを迎えに木星に行く決心をする。
木星において、マウアーはジェリドが迎えに来るのをひたすら待っていた。
だがそんなマウアーにカクリコンとヤザンの魔の手が迫り、マウアーは何処かに
連れ去られてしまう。
同じ頃、ディアナと暮らしていたロランは家に帰るとディアナの姿が消えていることに気づく。
唯一残されていたのは、1通の手紙であった。
その手紙はグエンからの物であり、ディアナをある目的のために
木星まで連れ去ったとあった。
ジェリド達は木星に向かうためにマザーバンガードを貸してもらうべく
キンケドゥの元に向かう。
初めは断っていたキンケドゥだが3人の説得により、木星まで連れて行くことを請け負う。
その言葉に狂喜する三人だが、キンケドゥの「それと、言っておくが木星とは
正面から戦う事になるぞ」 の言葉を聞く。
木星帝国により、地球から大勢の女の子が行方不明になっている話を聞きだした三人の元に、同じく
木星に行くべくロランが合流する。
木星帝国にさらわれた女の子達を救出すべく、マザーバンガードは木星に向かい地球を離れる。
木星帝国の刺客と戦いつつ仲間を増やし、マザーバンガードは木星はへ向かう。
しかし、木星へ向かっているのはマザーバンガードだけではなかった。
幾多に及ぶ激戦を戦い抜いた最高の英雄、ブライト=ノア、彼もまた今まで自分が指揮してきた伝説のNT達を引き連れ木星へと向かっていたのであった……。
同人ネタsage
微妙sage
キンケドゥ=ナウことシーブック=アノー撃墜!
そのニュースは木星帝国を揺るがすほどの大ニュースとして取り扱わられた。
シーブック=アノー。木星帝国が最も脅威とするニュータイプエースパイロットであり、散々、苦汁を舐めさせられた相手である。
だが、そんなシーブック=アノーは同じく木星帝国打倒に乗り出した
ロンド・ベルのブライト=ノアとは反目関係の間柄にあった。
共に木星帝国の打倒を志したとしても根底は
正規軍ロンド・ベルと海賊クロスボーンとに別れ
意志の疎通は困難な物であった
特にブライトからすれば、地球圏最大の艦隊である自分達以上に華々しく活躍するクロスボーン軍は気にいらず。
そしてその活躍の最大原動力であるシーブックの存在は、まったくもって無視出来ない存在であった。
隙あらば打ち落としてやる!
ブライトがその結論に達した時、まさに思いも寄らぬ者がシーブックのヒットに名乗りあげる事になった。
そう、最強のニュータイプ能力を誇る少年、ジュドー=アーシタ。
なんと彼がシーブック=アノーを撃墜したのであった。
意図不明sage
ジュドー=アーシタ、クロスボーンのエースパイロット
シーブック=アノーを撃墜!
そのニュースの続報に再び木星帝国は揺れる事になった。
最強の精鋭達がそろうロンド・ベル軍にあって彼がブライトと合体するのは誰が予知したであろうか?
ジュドー=アーシタ
歴代のニュータイプの中でも最も変わったニュータイプ。
アムロやカミーユが内向的でヒッキーだったのに比べ
ジュドーは逆に活発的でジュニアハイスクールまでボーイスカウトをたしなみ
友達と一緒に万引きをしたり、ケンカをしたり、珍走団を結成したりと
アムロやカミーユとは正反対にはじけた青春を送っていた。
そんなジュドーは最もブライトに逆らったニュータイプだと言ってもいい。
唯一、ブライトから修正らしい修正を受けなかったのもジュドーだけであるばかりか
唯一、ブライトをまともにぶん殴ったのジュドーだけである。
いったい、ジュドーとブライトが手を組むとはいったい誰が予想したのであろうか!
いったい、ジュドーの身に何が起こったのであろうか!
数々の疑問が放り投げられた今、その疑問をとくべく
ジュドーとは親交が長い、イーノ=アッバーブがブリーフィーリングルームで
ジュドーに直撃インタビューする事となった。
ロンド・ベルのクルーが見守る中、ブリーフフィーリングルームの中央ではジュドーとイーノが向かい合った。
久々の再会となる二人であるが、まったく変わっていないイーノはともかく
ジュドーの方は木星に行き、背も肩幅も一回り大きく、とても逞しくなり
明るく爽やかだった瞳は、木星での日々の重労働の証か、とても胆力を感じさせるマッチョな瞳に変貌していた。
イーノ「どうしたんだよ、ジュドー。どうしてブライト艦長の命令でシーブックさんを……」
ジュドー「シーブック?」
イーノ「そうだよ、あの人は木星帝国打倒の為にはなくてはならない人じゃないか!」ジュドー「イーノ、おめぇもか?」
イーノ「えっ!?」
ジュドー「シーブック! シーブック! シーブック! テメェもシーブックかって聞いてんだよ! イーノ!!!」
イーノ「ジュッ、ジュドー!」
ジュドー「俺がシーブックの野郎をやったのが、そんなにショックか?。
たいしたモンじゃねぇだろ、あんな野郎。
シーブック、キンケドゥ、ブック様、女どもからキャーキャー騒がれて
いい気になっているだけのエセニュータイプじゃねぇか、真のニュータイプである
この俺に勝てるとでも思ったのか?、俺は誰だ、言ってみろや、イーノ?」
イーノ「ジュッ、ジュドー?」
ジュドー「目を向けて言え」
イーノ「ジュドー=アーシタ……」
ジュドー「ニュータイプの救世主ジュドー=アーシタ様だ!!!」
イーノ「……………………………」
ジュドー「どうした、イーノ、何も言えなくなったのか、what?」
イーノ「ジュッ、ジュドー、関係ない事かもしれないけど、いいかな?」
ジュドー「言えや」
イーノ「僕は君と同じシャングリラで生まれた。君がガンダムを盗もうとした時、僕は君を手伝ったよね。覚えているかい?」
ジュドー「あっ、ああ……」
イーノ「戦争が終わり君が木星に行く時、僕は君を見送りに行った。そうだよね、ジュドー?」
ジュドー「ああ、そうだな……」
イーノ「そして何よりも僕は君と一緒にアクシズと戦った」
ジュドー「分かってる!」
イーノ「あの頃の君は今とは違っていたじゃないか!
『金の為に人を殺せるか、ガキだからって舐めるな、ブライト』と言ってブライト艦長を追い駆けまわしていた、あの頃。
せっかくブライト艦長が買ったばかりの新車をモンスタートラックで轢き潰していた、あの頃。
リィナが死んだと思われた時、鬼のような追いこみをかけていた、あの頃。
そして、戦争が終わって「悔しかったら俺を殴れ」と言ったブライト艦長を
一発だじゃなく、何十発も殴りみんなの前でブライト艦長を失禁させていたあの頃の……君とは……」
ジュドー「何が言いてぇんだ、イーノ?」
イーノ「僕は正直言って、シーブックさんよりも君のほうが心配なんだ。どうしてブライト艦長と手を組んだのさ?」
ジュドー「…………………」
イーノ「ジュドー、答えてくれ」
ジュドー「うるせぇ! イーノ、言いてぇ、事はそれだけか?」
イーノ「ジュッ、ジュドー!」
ジュドー「最初に言ったはずだ。俺はシーブックが気にいらねから奴をぶちのめした。最強のニュータイプは俺様だって、脳みその足りないここに居る者達に示してやっただけよ。それで分かっただろう、イーノ?」
イーノ「ジュッ、ジュドー……」
ジュドー「分かったかって聞いてんだろう、返事はどうした、イーノ?」
イーノ「……………………」
ジュドー「返事は?」
イーノ「……………………」
ジュドー「何、黙っているつもりだ。『最強のニュータイプはジュドー様だ』って言えないのか、イーノ?」
イーノ「……………………」
ジュドー「無言の抵抗って言うやつか、イーノ?」
イーノ「……………………」
ジュドー「だったら、俺様が言わせてやるぜ、イーノ!!!」
ブリーフィーリングルームでイーノの悲鳴が響き渡った。
ジュドーの様変わりを解明すべくジュドーにインタビューを望んだイーノは
今、うつ伏せになり背中に雨、霰のごとくジュドーからストンピングを受けていた。
そのあまりに凄惨な一方的な暴行現場を見せられるロンド・ベルのクルー達は思わず目を背けつつもジュドーに「もうやめろ!」と心の中で叫ぶ
だが、ジュドーの瞳はまさしく狂気が宿り、誰も止められないと思ったその時!
「やめろ! やめろ! やめろ!」
ブリーフィーリングルームに激しい声が響き渡り、皆、その声の主に注目した。
そして誰も止められない、暴走するジュドーもイーノへの制裁の手を止めた。
なんとその声の主はブライト=ノアであった。
「誰が、私の許可なくイーノに修正をしていいと言ったのだ、ジュドー?」
そう紳士的に聞くブライトにクルー達の注目は更に高まるとともに希望がよぎった。
時の流れとは残酷なもの、かつては地球連邦の正義と理想を信じ
十九歳でホワイト・ベースの艦長を務め、一年戦争を戦い
グリプス戦役、ネオ・ジオン戦争、シャアの反乱を戦い抜いてきたブライトも
今回の木星帝国討伐時には初老が見え始める年頃である。
歳を重ねたブライトは今ではすっかりと地球連邦の腐廃体質に呑み込まれ
すっかり権力欲に満ちた、立派な黒い政府高官へと変貌していた。
しかし、こうしてジュドーを制止するブライトに誰もが思った。かつてのブライトの面影を……。
ブライトとジュドーが遠く距離を置きながら相手を見つめあった。
そして、先に口を開いたのはブライトのほうだった。
「いいかね、我が艦隊、ロンド・ベルの諸君。君達は艦隊が普通の艦隊と違う事をまず思い出すんだ。
伝統の第十三独立艦隊、ニュータイプのエースパイロット達
そして、一年戦争の英雄、エゥーゴの真の後継者、グリプス戦役の覇者、アクシズを割った男、シャアを倒した男、つまりこのブライト=ノアが全権を掌握する艦隊なのだ!!!」
ブライトの高らかに言った俺節にクルーは思わず落胆の吐息を漏らさずにいられなかったが、ブライトは続けた。
「ジュドーは確かに私に対して最も反抗的で、最も手を焼いたニュータイプだ。しかし、私とジュドーの関係は一つだけハッキリしている。最も分かりやすい言葉で言うと、それはファミリーだ!」
ブライトは力を込めてそう力説するのであるが、それを聞く誰もが納得できなかった。
しかし、ブライトはなおも続ける。
「どんなに反発しあうが、心の奥底では私とジュドーは強く、深く、つなっがっている。一緒に戦った時はまだ、私も色々と強情であった。しかし、年月はそんな私に経験と成長を与え、今ならはっきりと言えるだろう。ジュドー、私はお前の事を息子のように思っているぞ」
そう両手を広げ尊大に語るブライトにクルー達にも我慢の限界が訪れたのか「もう辞めろ!」と言う声がチラホラと響いた。
しかし、とどめとばかりにブライトは続けた。
「ジュドー、お前は私の事をどう思っている?」
皆の視線が一気にジュドーへと集まり緊張感が最大に満ちた。
ジュドーに注目する者達は皆、最後の一線を感じている。
ブライトの問いかけに「それだけは、言わないでくれ、ジュドー、言わないでくれ、頼む!」まさしく誰もがそう思った。
しかし、そんなクルー達の祈りを嘲笑うかのようにニヤリと笑みを浮かべると、クルー達の最悪の想像を現実の物とした。
「ブライトは俺のダディのようなもんだぜ」
今度ばかりはブリーフィーリングルーム内を落胆の声が堰を切ったように溢れた。
ブライトはその落胆の声をしばらく、心地よさそうに聞いていたが
突然、険しい顔つきに変貌させ倒れてイーノを指差した。
「やれ! ジュドー! そこで惨めにお前にぶちのめされている男をやってしまえ!完膚なきまでにぶちのめせ!
騙されるな、ジュドー! そいつは人の家庭を破壊しようとした最低の男だ、徹底的に修正が必要だ、やれ! やれ! やってしまえ! ジュドー=アーシタ!」
ブライトの檄口で再びジュドーのイーノに対する制裁が始まった。
再びジュドーとブライトの悪魔の合体を見せつけられた、クルーは再開されたあまりにも凄惨な光景に、もう祈る気力すらなかった。
脳裏に深く残るジュドーんぼイーノ制裁事件より翌日……
「おらっ、さっさと歩け!」
ロンド・ベルの艦内の廊下を二人の兄妹、ジュドーとリィナが歩いていた。
ジュドーは手ぶらなのに対して、リィナは重たい荷物を持たされ歩いている。
「ちょっと、待ってよ、お兄ちゃん」
ジュドーは荷物を持たせて歩くリィナのペースっをまったく考えず、自分のペースで歩きリィナは文句を口にするが、そんなジュドーの足は不意に止まり、前方から歩いてくる人影に目を細めた。
「カミーユ……」
前方から歩いてくる人影はカミーユ=ビダン。
ロンド・ベルの中にあっても、屈指のニュータイプとして知られる男である。
彼も今回の木星帝国打倒のさいにブライトの呼びかけに応じたニュータイプの一人であったが
ジュドーとの仲はとても最悪な物だった。
カミーユ=ビダン
あの最も激しかったティターンズ、アクシズ、エゥーゴの三巴えの戦争
グリプス戦役を戦い抜いた、ガンダムパイロットであるが、あまりの戦闘の激しさから
カミーユは酸素欠乏性に掛かってしまった。
一時は廃人同様の身に落ちながらも奇跡のカムバックを果たして今回のロンド・ベルに参加した。
しかし、酸素欠乏性の後遺症のせいか、カミーユは
「ニュータイプとは現代に蘇った貴族だ! そして俺様は王様だ、最高の男だ!」
と高らかに叫び、まったくイヤミな男に変わってしまった。
そんなカミーユとジュドーはこのロンド・ベル結成当初から激しい抗争を繰り広げ
今も遺恨の炎は炎上中であった。
「ジュドー……」
カミーユの方もジュドーを確認しては表情を引き締めた。
やがて二人の距離は間近に迫り、互いに相手を睨みあえる適度な位置についた時
カミーユの方から口を開いた。
「ご機嫌がよさそうだな、ジュドー」
「ああ、テメェも見ただろう。俺がシーブックをぶちのめす様を、どうやらみんな理解したらしいぜ、この艦隊で誰が最強の男かって?」
ジュドーはカミーユに対してふんだんに挑発を込めた口調で言った。
「あんまりノボせんじゃねぇぞ、ジュドー」
「ああん?」
「シャングリラのバッドボーイだか、なんだか知らないが、バッドボーイならバッドボーイらしく、ジュニアスクールか、宇宙で一番古くて臭い田舎のコロニーで吠えて居るんだな、それでも最強の男だと看板を上げたければ俺を倒してから言いな」
「なんだと、テメェ、俺とヤルのか?」
「吠えんな、ジュドー。貴様には俺とする前にヤラないけない男が他にいるだろ?」
「なに?」
「シーブックが、このラーカイラムに来ているらしいぜ、なんでも貴様にリベンジしたくてやって来たって話しだ」
「なんだと!!!」
ジュドーはカミーユの言葉に先ほどの威勢は消えうせ、激しい動揺と焦りを浮かべた。
「どっ、どう言う事だ……そっ、それは……、俺とアイツの決着はつっ、ついたはずだ、なんで今更……、ああ、女々しい野郎だぜ」
ジュドーは激しく動揺しながらも必死で強がりを言って見せ、カミーユはそんなジュドーを笑った。
「昨日の貴様がイーノにした事で、あれから俺様の部屋に色々な奴がやって来た。
生意気なジュドーをシメて欲しい。今日当たりみんなのリクエストに応えてやろうと思ったが
さっきシーブックの姿を見て気が変わったぜ、あいつは俺様のように単なる暇つぶしでも遊びでもねぇ、本気だ!」
「テッ、テメェ!……」
ジュドーはカミーユの言葉に反抗しつつもシーブックが現在、どのような状況を知らされ体を震わせていた。
「まぁ、今日と言う日をテメェが生き残れたら、遊んでやるぜ、じゃあな」
カミーユはそう言ってジュドーと別れた。
いつもなら一触即発の間柄、最後のカミーユの言葉にジュドーはカミーユに襲いかかってもおかしくないほどであった。
しかし、そんなジュドーには今、それだけの余裕は完全に無かった。
そして、ついに、ガンダムパイロット一痺れる男、シーブックことブック様が、このロンド・ベルに帰ってきたのだ!!!
シーブックのラーカイラム入りを聞かされたジュドーはすぐさま、ブライトの艦長室に向かった。
そこではブライトは一人の女とにこやかに会話をしていた。
その女はロンド・ベルのスタッフではない。
今回の木星帝国討伐にさいしてのモビルスーツの配給を一手に引き受けた
アナハイム・エレクトロニクスの代表ニナ=パープルトン女史であった。
「ブライト艦長、この前のジュドーとのやりとり素敵でしたわ、私ってああいう、男の人の荒っぽいところって大好き。ウフフフ」
「フフ、荒っぽいところには私も自信があってね」
そうアホらしげな会話を交わす、二人の元にジュドーは乱暴に割って入った。
「おお、これはジュドー、私の可愛い息子よ、どうしたのかな?」
ブライトはジュドーにご機嫌な笑顔で迎えるが、ジュドーはそれどころではなく強烈にブライトを睨みつけた。
「おい、ブライト。シーブックの野郎がこの船に来ているって言うじゃねぇか、どういう事だ?」
「あっ!」
「それにあいつは、俺にリベンジをしたいとか言っていやがる。まさかテメェ、そんなクソふざけた事を許可したんじゃねぇだろうな?」
「おっ、おちつけ、おちつけ、ジュドー……、これには深い理由があってだな……つまり、その……」
「うるせぇ、テメェのゴタクなんか、聞きたくねぇ!!!」
ジュドーはブライトに強烈に吐き捨てると、ブライトは思わずのけぞり
そのジュドーとブライトの間にニナがしゃしゃり出て来た。
「待ちなさい。ジュドー。ファーザーに対してなんて口の聞き方をしているか分かってるの?」
「なんだと、このアバズレ、シーブックよりも先にテメェがブチ殺されてぇのか!!!」
ジュドーに狂犬の噛みつきのように言い返されたニナは思わず後ずさり腰を抜かしそうになった。
だが、そんなニナをブライトが支えた。
「何をそんなに動揺しているんだ。ジュドー?」
「なっ!」
ブライトはジュドーに対して再び口を開いた時、なんとか表情を取り繕い冷静な口調で言った。
「いいか、ジュドー、お前はこのロンド・ベルで最強のニュータイプパイロットだと言う事を忘れるな、一度負かせたシーブックなんか、どうと言う物ではあるまい」
ブライトの勤めてジュドーに冷静さを促す言葉。激昂していたジュドーであったが
その言葉はなんとかジュドーの心に届いた。
「シーブックの奴が、再びお前に再戦したいと言ったのは私の生涯最大の過ちである…………ミライの後ろ立てがあっての事なのだ……」
苦々しげにジュドーに告白するブライト。
そうシーブックのジュドーへのリベンジには、ミライ=ノア
息子のハサウェイ、娘のチェーミンが立派に成長したのと同時に軍隊に復帰し
夫の最後の戦いに連れ添い、ロンド・ベルの副艦長を努めるミライの意志があったのだ。
「なんだと!」
ジュドーはブライトの言葉に再び視線に殺意を宿らせようとしたが
それよりも先にブライトは言葉を続けた。
「私とて、この事を快く受け取ってはいない。しかし、考えようによっては絶好の機会かもしれぬぞ」
「絶好の機会?」
「ああ、二度と、シーブックとミライ。それに私に立てつこうなどという愚かな連中に分からしめてやる、絶好の機会だ」
ブライトはそこまで言った後、サッとジュドーの耳元に顔を寄せてささやいた。
「えっ!」
ジュドーの表情から感情が一瞬にして消え、ただ驚きだけが浮かんだ。
「そう言う事か、ブライト……」
「ああっ、私を誰だと思っているのかな、私は一年戦争の英雄、ブライト=ノア。かつて地球を救った男だぞ」
「へへっ、衰えちゃいねぇって事か」
ジュドーとブライトは二人とも納得した表情を見せては、ともに笑った。
ブライト艦長夫人、ミライ=ノアの働きかけでガンダムパイロット一、痺れる男シーブックはジュドーと実戦テストが決定した。
そんな、ラーカイラムの実戦テストに向けて集中力を高めるシーブックの控え室に、マザーバンガード艦長こと最もシーブックのことをよく知る女性、べラ・ロナことセシリーがシーブックの元を訪ねた。
「シーブック……」
セシリーは先日ジュドーに苦杯を味合わせられたシーブックに静かに声をかけた。
サングラスをかけていたシーブックは無言のままセシリーに振り向く。
「貴方の悔しさは分かるわ、けど、ここは落ちついて、今、私達が戦わなくてはいけないのは木星帝国でしょ、仲間同士で戦う事なんて……」
そう最も真面目な事を言い放つセシリーにシーブックは立ちあがった。
「セシリー」
「はっ、はい」
「君の言う事は分かる、だが、俺様はジュドーを絶対に許さない」
「シーブック」
「あいつは、ブライトに魂を売った。あの権力欲と名声に溺れたあの男に!……。俺は奴だけはゆるせねぇ」
「落ちついてシーブック!」
セシリーはヒートアップするシーブックに慌てて駆け寄ったその時、シーブックはサングラスを外して突然、セシリーを見つめ始めた。
「セシリー、君はどうしてそんなに優しいんだ?」
「えっ」
「君はそう、いつも俺が戦場に出向く時、いつも心の中でクリスチャン顔負けに祈っているだろう。
『シーブック、無事に帰ってきて!』『シーブック早く帰って私の貴方の顔を見せて!』
そして俺様が帰ってきた時、いつも感動で胸をいっぱいにしている。
どんな時であっても決して色褪せない、永遠の感動だ。
戦場から勝利を持って帰ってくる事など俺様にとっては当然の事だが、セシリー、君の感動はとても大切にしたい」
「シッ、シーブック……」
一気にまくしたてシーブックの『セシリーの感動』を聞き終えたセシリーはこの部屋に来た目的はどこへやら、すっかりシーブックに対してはにかんだ表情を見せた。
「今日、帰ってきたら俺様の好きなパイを一緒に食べないか。それとも甘いデザートなんかはいかがだい?」
シーブックはそういいつつ、セシリーに向かって自分の股間をさするジェスチャーをしてみせた。
「あっ!」
セシリーはそんなシーブックのジェスチャーに驚きつつも胸の鼓動は一気に早まった。
「おっと、ここからは大人の時間だ。少し時間をくれ」
シーブックはセシリーに背中を向けて、セシリーの恥ずかしげな様子を見ないようにした。
しかし、セシリーの表情は疼きが走ったかのごとく、頬を紅潮させて、それはどんなに自分に言い聞かせてもけせないほど赤い物だった。
(ようやくシーブックが……)
まるで夢にも見ているかのようなシーブックの熱いお誘い、恥ずかしさと感激が入り混じったセシリーは胸を高鳴らせ、出来るだけ、さりげない、恥ずかしくないシーブックへの返事を考えた。
「改めて、聞くけど、どうだい?、セシリー」
振り返ったシーブックにセシリーは真っ赤な顔を伏せて、恥じらいに体を震わせつつも、シーブックへの返事を紡ぎ出した。
「ぜっ………是非………」
セシリーは胸の激しい鼓動と体温を感じながらもなんとかシーブックに対して答えた瞬間、突然シーブックの表情は険しくなった。
「デザートのことなんか、知った事か!!!」
シーブックはセシリーの告白をあっさりと断っては
またまた堰を切ったように喋り始めた。
「何百万人のブック様のファンが言っている。かつて最もニュータイプとして明るさと逞しさを見せたジュドー。
強い子と称され、重力と大人から振りきり木星へと旅だったジュドー=アーシタ。
木星から戻ったらブライトのロンド・ベル参戦。最強の男の座を賭けてブック様への挑戦?
おめでたい奴だぜ!
俺様に勝つためブライトとファミリー?、最高のバカオヤジとバカ息子だぜ!
今夜は実戦テストでもなんでもない。俺様のショーだ。
俺様はセコい小細工など使わん。今夜のロンド・ベルに最強のニュータイプの男ここにあり!
ドアに天井、床、そして世界でもっとも美しいプリンスもここに!
ブック様ここにありだ!
皆のエース、ヴェスパー、ブーツで貴様らのケツを叩き割ってくれるわ!
ジュドーにブライト。覚悟して味わうがよかろう!
If you smell what the BOOK is cookin !!」
シーブックはそこまで言った後、ヘルメットを取り、颯爽と控え室にセシリーを残して後にした。
実戦テスト
長い木星への道中、艦内の士気が落ちぬように自軍同士で実戦さながらに戦い
戦闘への緊張感、意欲を高めるために行われる訓練の一つであったが
個性的なニュータイプが集い揃う、このロンド・ベルであっては
訓練以上に、誰が一番強いのか?、と言う関心も自他ともに非常に強いものであった。
特に、その最強論の常連とも言える
アムロ、シーブック、ジュドー、カミーユ、ウッソ、ロラン
の上位六人の実戦テストは、さながら自らの最強を証明するために、とても激しいものであった。
前回、ジュドー・ΖΖガンダムとシーブック・クロスボーンガンダムことF97の実戦テスト、対決は
激しい死闘の末、ブライトの援護もあって、なんとかジュドーが勝ったのであるが
今回のリターンマッチ、シーブックの復讐にかける気概は並々ならぬものがあり
その緊張感と気迫は恐ろしいものであった。
しかし、カタパルトデッキに向かうシーブックを待ちうけていたのは、ジュドーではなかった。
ブライト=ノアがシーブックを待ちうけていた。
「どこへ行くつもりだ、シーブック?」
ブライトのその問いかけにシーブックは、ピクリと眉を動かした。
「実戦テストはもう始まっているのだぞ」
「なに?」
不可解な発言と笑みを浮かべるブライトに、シーブックが小さな驚きを表情に浮かべた時だった。
シーブックの背後にジュドーが鉄パイプイスを構えては、シーブックの背中を強烈に打ち据えた。
「なにも実戦がモビルスーツ戦だと限ったわけじゃないだろう!、ウワハハハハッーー!」
今回の実戦テストとは、モビルスーツ戦ではなく、白兵戦、素手と素手によるケンカであった。
ケンカなら任せろとばかりにジュドーは水を得た魚のように、活き活きとシーブックに襲いかかった。
シャングリラのバッドボーイと異名を取ったジュドー。
幼い頃から、そのケンカ好きは有名で、子供の頃から近所の子供相手はおろか
小学生でありながら地元の青年団に向かっていく並外れたケンカ好きは地元の町内会では問題の種にあがるほど
そんなジュドーに不意打ちを食らったシーブックは実戦テスト、あくまでも実戦テスト開始当初から劣勢に立たされた。
だが、シーブックあきらめておらず、序々にペースを取り戻すと勢いをつけ一気に攻勢へとうって出た。
たちまちひっくり返されてピンチに陥ったジュドー。
しかし、そこへ突然、ブライトが鉄パイプイスを凶器としてシーブックの背中を叩きつけた事から
またまた実戦テスト、あくまでも実戦テストの主導権は移り変わった。
ブライトはシーブックを襲った鉄パイプイスをジュドーに渡すと
ジュドーはシーブックの脳天に強烈なパイプイスの一撃を食らわせた。
シーブックは地面に倒れ、その後も、ジュドーの容赦ない責め
そしてブライトもジュドーのシーブック制裁に堂々と手を貸し始めた
ジュドーとシーブックの対決に集まって来たロンド・ベル、クルー達の脳裏に再び前回の悪夢が蘇る。
しかし、その瞬間、観客の一部分で歓声が起こった。
カミーユ=ビダンである!!!
カミーユ=ビダンが怒りを表情に浮かべブライト、シーブック、ジュドーの輪に向かっている!
あまりにも悪の限りを尽くす、ジュドーとブライトに
ついにニュータイプ、カミーユ=ビダンが立ちあがった!!!
カタパルトデッキの誰もがカミーユに注目した。ジュドーとシーブックの対決、いや
ジュドーとブライトのシーブックへのリンチ現場に駆けつけたカミーユはすぐさまジュドーと向かい合った。
二人は今までの遺恨を思い返すかのように強烈に睨み合い、かつてないほどの緊張感が漂った。
みな、誰もが、期待した。悪魔に魂を売ったジュドーが正義のニュータイプ
カミーユがジュドーを成敗する事を……だが!
ジュドーは表情の緊張を解き、カミーユに対して笑った。
するとカミーユもジュドーにニヤリと笑い返した。
そして次の瞬間に起こった事は想像を越えた悪夢が起こった。
ジュドーはカミーユにシーブックを指差すと、カミーユはすでにボロボロのシーブックを無理矢理立たせて、ぶん殴った。
うつ伏せに倒れ果てた、シーブックの背中にジュドーがさらに追い打ちとして鉄パイプイスの一撃を食らわせ、後はジュドーとカミーユの二人でシーブックのリンチを再開したのである。
いったいなんと言う事なのであろうか!!!
あれほど憎み合っていたカミーユとジュドーの突然の結託!!!
そして最後は、もう立つ気力すらもないシーブックを
ジュドーとカミーユが無理矢理立たせて、指の関節を鳴らしていたブライトに向けた。
もう誰もこの悪魔の艦長を止められるのは誰もいないのであろうか!!!。
ジュドーのほかにカミーユまで加わってしまったロンド・ベル艦長ブライトの暴挙をいったい誰が止める者はいないのか!!!
悲鳴と怒号が飛び交う、カタパルトデッキ、そこへ一人の中年の女性が、ブライトの元へ向かっていた。
「あなた!」
「ミライ……」
姿を現したのはブライト=ノア夫人ことミライ=ノアであった。
「あなた! いったい何を考えているの?」
「ええい、うるさい!、そこをどけ、ミライ!」
「いいえ、どきません、私は!」
ロンド・ベル最後の希望、ミライが体を張ってブライトを止める様子に
このカタパルトデッキに居合せた、誰もがミライへ応援の声を送る。
「うるさいぞ、貴様ら!」
ブライトはミライから一度、顔を反らし、クルー達に檄を飛ばした。
「いいか、私に対してはアリの反抗すら許さん! 私はブライト=ノアだぞ!
お前達の功績を全部合わせても、私の今までの功績には足元にも及ばんのだぞ!
私は貴様らのような連中に尊敬されるべき人間だ。 私は……」
ブライトの恫喝にクルー達は聞く耳もたず、すぐさま「クソ野郎」コールを返した。
「黙って聞け! 私は貴様らに称賛されるべき人間なのだ! 見事な功績ですと讚えられるべき人間なのだ!
私の行う事はすべて正義なのだ!」
ブライトは顔を真っ赤にさせ、まさに神をも恐れぬ大断言を言ってのけ
そしてシーブックを庇うミライを強引にどかせては
あの、数々のニュータイプを自分の意のままに従わせてきた修正パンチを豪快にシーブックへと見舞った。
シーブックは吹っ飛び、クルーの割れんばかりの悲鳴が轟く。
「ハァハァ……」
ついにシーブックに修正の一発を見まわせたブライトは荒い息をついていた。
しかし、まだ悪夢は終わらない。
ブライトはシーブックの様態を見守る、ミライに目を向けた。
「ミライ!」
ブライトが強くミライを呼びつける。
ミライはその声に体を震わせながらも、懸命に無視して決して振り返らないでいた。
「このままでは帰さんぞ! まったく……お前がシーブックを支持して私の面目をツブすとは何事だ!
いい加減にしてくれ。これ以上、何が欲しい?
私は地球の正義のために私は人生を捧げてきた!家族も大事にしてきた!
お前への愛情だって示してきたじゃないか。もうやめてくれ」
「あっ、あなた!」
ミライはブライトの言葉に振り返った瞬間、ブライトはミライに向かって吠えた。
「黙れ!いい加減にしろ!もう我慢の限界だ! お前にはもう何もしてやらんぞ!
今夜この瞬間から……家族なんてどうだっていい! お前との関係も……お前との関係も……終りだ!
別れてやる!お前とは離婚だ!出て行くがいい! ここは私の戦艦、私の艦隊、私の軍隊だ!失せるがいい!
行け、出て行け! 消えろ! 止まるな! 2度と戻ってくるな!
お前なんぞ私には不釣り合いだったんだ! 私はブライトだ! ブライト=ノアだぞっ!」
ブライトは凄まじいまでに力を込めて、そう言いきった後、豪快な笑い声をあげ、ミライは目に涙を浮かべて退場していく。
クルーはシーブック撃墜の悪夢以上の光景が展開され、絶望感に打ちひしがれる。
そして唯一、この世の春を謳歌する、カミーユ、ブライト、ジュドーの3人は取り出したビールで乾杯しあった後、
互いの手を取り合って\(~o~)/\(~o~)/\(~o~)/をしていた。
いったい、ロンド・ベルはこの後、どうなってしまうのだろうか!!!
ブライトに立ち向かう真のニュータイプはいないのであろうか!!!
ロンド・ベルはこのまま悪魔の艦長のものになってしまうのであろうか!!!
あの悪夢のシーブック制裁事件、いや、ブライトの離婚宣言の後
ミライはショックのあまり深い心神喪失状態になり
何も喋らず、何も食べれない、思考が停止して植物人間と同じような状態に陥っている。
それにかこつけてブライトはまさにやりたい放題加減は拍車がかかっている。
誰もがブライトに立ち向かう、真の正義のニュータイプはいないのか?
祈るような気持ちの中で、ブリーフィーリングルームの壇上には
カミーユ、ブライト、ジュドー、ニナが陣取っていた。
そして反対側に陣取っているのは、チェーミンであった。
最初に口を開いたのは意外な事にチェーミンであった。
「パパ、お願い、考え直して。ママはパパのことを愛しているのよ!」
そう切に、目に涙を溜めて訴えかけるチェーミン。
しかし、愛娘の悲痛な訴えを前にしてもブライトは変わらない。変わるはずが無かった。
「チェーミン、お前は確か今、私たちを理想の夫婦だと言ったな?。大方、母親にそう吹き込まれたんだろう。 なら私が、お前の本当の母親のことを教えてやろう。
元々お前の母親はヤシマ家の令嬢であっても、あまり美人とは言えなかった。
はっきり言ってオタフク女だったわけだ。 私とは不釣り合いもイイところだった。
確かに彼女に惹かれた。それは認めよう。 だが、それにはワケがある。
お前の母親はなかなか評判がよくてね。 “楽しめる娘”だと評判だったと言えばわかるかな?
お前の母親がどんな人間か、ここで暴いてやろう。
初めてのデートの時、そう、あの時は本当にヨカったよ。イイ思いをさせてもらった。
ホワイトベースのブリッジでな! 最高だったぞ!
ミライが私を愛しているって? いや、私を愛してなどいない。ミライが愛しているのは私の名声だ!
ミライは私のあふれ出る名声、地球を救った英雄の妻としての地位、私が英雄の地位として買い与えた豪邸や高級車、豪華なヨットや自家用機、宝石類を愛してるんだ。
今は愛という感情なんて持ち合わせていない。
今夜、こうして私の前に立つお前を見て、あらためて気がついたよ。
お前は母親そっくりの黒い目をしてるんだな。
そしてその髪、その減らず口もそうだ。脳みそよりも先に動きだしおって。
それにだ、この臭い、このスエた臭いまで母親そっくりだ!
かつてはお前がかわいくてしかたなかったが、今はそんな感情など微塵も持ってない。
そっくりだ。お前ら母娘は甘やかされた下品でチンケなアバズレだ!
お前にも母親と同じことを言ってやる! サッサと私の前から消え失せろ! 」
「パッ、パパ……」
チェーミンはブライトの言葉に耐えきれず、表情を泣き崩しては
たまらずブリーフィーリングルームを後にしようとしたが
そこでも追い討ちをかけるかのごとくブライトは口を開いた。
「待ちなさい! もう一つ、言っておく。お前の母親に伝えておけ。離婚が成立次第、私は新しい妻を迎える。 ああ、そうだ。魅惑的なノア夫人が誕生する。
新夫人は私の性欲を満たしてくれる! それから新マクマホン夫人だが、年はお前とそう変わらんよ」
ブライトは楽しく満足げに言い放つと、ニナが笑みを浮かべ、ブライトの傍に寄り添う。
「私はもう“可愛い娘”じゃないって? 」
チェーミンは顔を涙で濡らしながら、ブライトに振り返った。表情には強い怒りが宿っている。
「私、ママ似でよかったわ。パパのこと言ってあげましょうか?。アンタなんか、卑劣なクソジジイよ! 」
「ああ、そうか、では私も話を続けよう。ホワイト・ベースのブリッジで起きたことだ。
結婚なんか、する気はなかった! あんなアバズレとはな! だがもし結婚しなければ、
お前の兄、ハサウェイは今ごろ父親知らずだ!」
チェーミンの怒りの表情はそこで二度目の崩壊を起した。
そして退場するチェーミンの後姿を、ブリーフィーリングルームに集まった誰もが悲哀な表情で見送っていたが
その視線を立ち切るようにブライトが口を開き注目を集めた。
「私は諸君の大部分が思うような、皆が手本とすべき人間ではない。
違うぞ。この告白に若者たちはため息をつき、我が子を私のようにと願う親は失望するだろう。
私は完璧な人間ではない。私は決して完璧ではないが、何をしても許されるのだ!
なぜなら、私はブライト=ノアだからな。
旧世紀の大統領の演説を私流に引用しようか。
今の私を築いたのは、人民ではなく私自身だ! 」
そうしてブライトの高笑いが響く中、ロンド・ベルのクルーは誰もが何度も何度も思った事
ブライトに立ち向かう、真の正義のニュータイプはいないのか?
と再び強く激しく思う中、一人の少年が立ちあがった。
立ちあがった少年は今までどこに隠れていたのか、今、この場で誰もが無視出来ない人物
ブライト=ノアの実の息子、ハサウェイ=ノアである。
「ハッ、ハサウェイ!」
ブライトは一瞬、驚きを浮かべた。だが、あくまで一瞬だけの驚きでありクルー達の嘆息が漂う。
ハサウェイ=ノア。
言わずと知れたブライトの息子でありつつもニュータイプ能力を秘めている事で知られる。
しかし、ニュータイプながら、その性格はブライトの息子である事から
並外れたボンボンバカ息子であり、ロンド・ベル内であっては
最も嫌われ者のニュータイプ、ウッソ=エヴィンと一緒ぐらいに嫌われている少年であった。
「おやおや、ハサウェイ、どうしたのかな。チェーミンが、パパに向かって酷い事を言ったのに腹でも立てたのか、分かるよ、ハサウェイ。お前だけは私のれっきとした可愛い息子だ。チェーミンに対して言いたい事があるのなら、言いなさい。私が許可する」
ブライトはそうチェーミンの時とは打って変わって鷹揚に
ハサウェイにこの場の発言権を渡すと、ハサウェイは静かに席を立った。
その時、ハサウェイの様子は少し変わっていた。
いつものアホ面が妙に神妙な表情であり大人びていた。
そんなハサウェイはクルー達に振り向く事無く、ただ真っ直ぐにブライトに向かった。
「ハサウェイ?」
さすがのブライトもハサウェイの様子がおかしい事に気がつき、声を掛けた、その時だった。
ハサウェイは軽く跳ねあがり、ブライトに飛びかかった。
ブリーフィーリングルームに驚き、嬌声、そして、そして、大歓声が沸き起こった!!!。
なんと、ついに、ついに、待ち望んだ正義の為に立ち上がったニュータイプ!
いったい、誰が考えたであろうか、最も正義のニュータイプとはほど遠かったニュータイプ!
自らの母親を愚弄させられ、妹まで泣かせた、ブライト=ノアの息子、ハサウェイ=ノアであった!!!
ロンド・ベルには、まだ正義は存在したのだ!!!
ブライトをマウント・ポジションでボコるハサウェイの一挙手一投足にクルー達からの歓声が沸きあがる。
しかし!
「テメェ、調子に乗ってんじゃねぇ!」
すぐさまジュドーとカミーユがハサウェイをブライトから引き剥がし、早速、二人でボコりはじめた。
クルー達の希望はあっという間に消え去ってしまった……。
「ハッ、ハサウェイィィィィ、貴様まで!………」
ブライトはニナの手を取りなんとか立ちあがると制服を脱ぎ捨てた。
白のオヤジタンクトップ姿から覗けるブライトの腕から、クルー達は再び、あのシーブックに見舞った恐怖の修正パンチが蘇る。
「カミーユ、ジュドー!」
ブライトはそう名前を呼ぶだけで、カミーユとジュドーはフラフラのハサウェイを無理矢理立たせた。
そして、ブライトは「ハァァァ」と大きく深呼吸をして、その腕を振り上げた瞬間だった!!!
ブリーフィーリング内でまるで飛行機の音さながらの豪快なバイクの排気音が響き渡った。
誰もが、その音に驚きを覚える中、いち早く気がついた者がいた。
「アッ、アムロだ。あのアムロだ。あの白い悪魔といわれたアムロ=レイだ!!!!!」
一際長く、バイクの排気音が響いた後、ブリーフィーリングルームのドアが豪快にブチ破られる音が響き渡った。
ドデカイ、ド迫力の大型モンスターバイクに乗りながら、アムロ=レイがとうとうその姿を現した。
アムロは連邦の制服を着ておらず、頭にバンダナを被り、サングラスをかけ
黒のタンクトップに黒のレザーズボンのいでたちであった。
そしてタンクトップ姿からの剥き出しの両腕には肩から手首にまでびっしりとタトゥーが入っている。
タトゥーは両腕だけではない。首にも『BELL』と嫁さんのベルトーチカの名前の刺青を入れていた。
アムロ=レイ
あの数々の戦争の中、最も死傷者を出した一年戦争の後、アムロはそのニュータイプの力を連邦軍、軍上層部から危険視され、アメリカ、シャイアンで軟禁生活に入る。
その頃、アムロは金と暇にあかせて、たまたまバイクを買って転がしていたある日
アメリカ、本場の気さくなヒッピー達と知り合った。
すっかりヒッピー達と意気投合したアムロはヒッピー達から、酒とドラッグとタトゥーを教わり
ローティーンのヒッキーな生活から、ハイティーンはすっかりヒッピーな生活へと様変わりしては、ロックンロールな青春を送るのであった。
そしてそんなアムロの青春は所帯持ちとなった今でも続いていて、立派な不良中年オヤジ
アメリカン・バッドアス、アムロ=レイとしてロンド・ベル内で知られている。
35 :
木星帝国の野望 ◆pq/5xeEE :01/11/04 17:40
さすがにあのアムロ・レイの登場とあっては、ジュドーとカミーユはハサウェイへの手を休め、アムロの様子を警戒した。
アムロは一通り、ブリーフィーリングルーム内で所狭しとバイクを走らせた後
ゆっくりとバイクを降り、サングラスをとってはブライト達と向き合った。
「なっ、何しに来やがった、アムロ?」
ジュドーが張り詰める緊張の中、なんとか自分を保ち、アムロに対して威勢を放った。
アムロは無言のまま、ジュドーに向かってニヤリと笑った。
「テッ、テメェ……」
ジュドーはアムロに対して敵意を見せるも、その動揺は隠せない。
そうした中、不意にアムロが口を開いた。
「ずいぶん、ご機嫌な様子だな、ジュドー、カミーユ、それにブライト。あんまり楽しそうだから来てやったぜ」
「アッ、アムロ……」
「ブライト、お前と俺は一緒に何年戦ってきた? 十年は数えられるよな?
それも地球連邦軍、最強の軍隊、第十三独立艦隊でだ。
俺はその間「白い悪魔」と呼ばれ、破壊の限りを尽くした。
俺はその十年間を破壊の十年と呼んでいる。
まぁ、話しは反れちまったが、いいか、ここは地球連邦軍第十三独立艦隊
ロンド・ベル。言ってみれば俺の庭のような物さ
しかし、最近、俺の庭にクソガキが紛れこんだ様子だな」
アムロはそう言い放ってはジュドーとカミーユに視線を飛ばした。
ジュドーとカミーユの二人は共に揃って動揺の色を表情に走らせた。
「俺の庭で遊ぶのがどう言う事か分かるか?」
アムロはそう言った後、ブリーフィーリングルームに集まったクルー達を睥睨した。
アムロの醸し出す緊張は静寂を生み、誰もがその緊張感を受け取っていた。
アムロの言葉は、ブライト達が吐き出す妄想発言とは違い
まさに最強のニュータイプだけが生み出す迫力を秘めた言葉であった。
36 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/10 09:01
氏ね
37 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/10 14:39
続きまだ?
38 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/10 14:46
たとえば、あの悪名高き自治スレの連中は、
なぜなりきりよりも先に、コレを叩かなかったのだろうか?
そりゃ放置するのが一番いいからじゃない?
つまんね。ガイシャか?ここの1。
41 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/10 15:05
サムイネ、ココ・・・
42 :
木星帝国の野望 ◆pq/5xeEE :01/11/10 21:28
さすがのジュドーとカミーユもそんなアムロの言葉を受けとめつつ顔を伏せるしかなかったが
不意にアムロが二人に対して背中を向けた瞬間だった!
二人は同時に顔を上げアムロに襲いかかった。
しかし、アムロは人の思考を読めるニュータイプ能力を駆使したのか
振り返り、ジュドーとカミーユのパンチを受けとめると
即座にお返しとして二人をパンチでぶっ飛ばした。
カミーユとジュドーがアムロによってぶっ飛ばされた。
その瞬間、ブリーフィーリングルーム内で割れんばかり歓声
さきほどのハサウェイ時と同じ歓声が響き渡った。
「ケツを俺様に蹴り飛ばされたくなければ消えな、クソガキども」
完全にアムロ一人に飲みこまれた、ブライト達。
ブライト達はすでにブリーフィーリングルーム内をアムロに独占されていた。
ジュドーとカミーユはアムロに対して苦々しげな視線を送るもすでに二人の腰は抜けていた。
ついに、ついに悪魔の艦長ブライトに対してアムロが立ちあがったのであた!!!!!!!!!。
43 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/10 23:21
荒らしすらこないのか?
44 :
通常の名無しさんの3倍:01/11/16 16:04
良スレ定期あげ
あげてみる
昔、とあるスレでこういう話の展開になったの。
それはすごい名スレだったんだけど、
今更その続きができると思ってる1はドキュソ。
48 :
◆J7i5RfMs :01/12/01 00:08
テスト
超糞スレサルベージキャンペーン
あれとは違うけど俺は面白いんだけど…ダメ?
sageとくね