ア・バオア・クーが遂に陥落し、引き換えに俺は全ての部下を失った。
停戦合意に沸き返る艦内。
俺は酒保の顔なじみからしこたま酒を譲り受けて、一人自室で栓を開けた。
不味い。酒も煙草もひたすらまずいが、どちらも気が付けば口にしている。
ボトルが一本空き、灰皿が吸殻の山で覆われた頃、不意にドアがノックされた。
「あぁ?、開いてるぞ、勝手に入って来い」
頭がぐらぐらするのをかろうじて返事を返す。
「曹長殿、ただ今帰隊しましたっ!」
ギブスで固めた右腕の代わりに、左腕で力いっぱい敬礼している女兵士が一人。
顔のあちこちをガーゼで覆い、額にも包帯を巻きつけて。
時々痛そうに顔をしかめながら、直立不動で立っている。
瞳は家に帰り着いた迷い犬のような、純粋な喜びと、ねぎらいへの期待できらきらと輝き。
「誰だぁ、お前。お前みたいな奴、俺の小隊にいたか?」
それでも俺は誉めてやらない。
「あ、あの、本当にすみませんでした・・・」
みるみる項垂れる小さな身体。俺は机にむかったまま、顔も向けてやらない。
「あの、私、ザクに思いっきり蹴飛ばされて機位を失って・・・
電気系が全部ダウンして、無線もIFFもビーコンも役に立たなくて・・・」
聞きもしないのにだらだらと言い訳を始めやがる。
「で、漂流してたら、運良く回収艇が通りかかって、信号弾発射してやっと気づいて貰えて・・・」
俺の顔色を伺っている上目遣い。まだまだ。俺は黙っている。
「私、気が付いたら病院船に移送されてて、三日も気を失ってたらしくて、
動いちゃダメだって言われたんですけど、どうしても帰りたくて。
その、連絡来なかった、みたいですよね・・・あの・・ごめんなさい・・・」
俺はやおら立ち上がった。少々ふらつくのはご愛嬌だ。
「そ、曹長、酔ってますね?」
俺を支えようと駆け寄る所に俺は抱きついた。
「うーるせぇ、絶対誉めてやらねぇ。俺は一人で楽しんでたんだ。よくも、邪魔してくれたな」
髪をぐしゃぐしゃにして小さな頭をこねくり回す
「お前は帰隊が遅れた罰として、一生俺のペットだ。二度と俺の尻から離れるんじゃねぇぞ。わかったかぁ」
ふと、俺の背中に回った手に力が入って、耳元を小さな囁きがくすぐった。
「はい・・・了解です」
うあー、長文ごめんなさい。最後にしますんでお許しを・・