実家に電話して一言@明日はボールで初陣

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 お母さんへ
この前は電話で泣いちゃったから、これからは手紙を書きます。
ペンなんか久しぶりに握りました。でも、肉筆の方が喜んでくれると思って。
地球はもう冬ですね。体調崩したりしてない?
私は宇宙での生活にも大分慣れたのか、最近ご飯がおいしくて仕方ないです。
少し体重が増えたせいで機付きの整備員さんに怒られてしまいました。
育ち盛り、ということで大目に見てもらっています。
私の隊は家族みたいにみんな仲が良くて、先輩たちはとても良くしてくれます。
特に小隊長はね、すごく優秀でブリッジの人たちも一目置くぐらいの人なんだけど、
私みたいな新兵にも親切に色々教えてくれるの。
ちょっと口が悪くて喧嘩っ早くて、
他の隊の人からは万年曹長なんて呼ばれてるんだけどね。
私も実は初め怖くって、まともに目を見ることも出来なかったんだ。
でもね、初めての出撃のとき、びっくりしないでね。
指輪を貰っちゃった。
驚いた?
心配しないでね。ただのお守りとして貰っただけなんだから。
でもね、そんなの貰うの初めてだったから、私嬉しくって、まともにお礼も言えなかったんだ。
そう、奥さんが居るっていう話だから、変な意味は無いんだと思う。
ちょっと残念かなぁ、なんて言ってみたり。
ふふ、お母さんが青くなるのが目に浮かぶなぁ。
大丈夫。お父さんってこういう感じなのかなって思っただけだよ。
あなたの娘は今日も一生懸命まじめに生きています。
心配させた分は帰った時に肩でも揉んで償うから、もう少し我儘を許してね。
それじゃ、もうすぐ消灯時間だから、終わりにするね。
おやすみなさい。



「おい、誰だよ。どたばたうるさいの?」
「曹長殿の部屋だよ」
「カミさん寝取られた八つ当たりか?」
「ほら、未帰還の新兵。あいつの遺品整理して、帰ってきてからずっと荒れてる。
部屋中掻き回して、畜生、畜生って」
「辛い物見たんだろうな・・・あの新兵、結構可愛かったけど、なんて名前だっけ」
「俺も・・覚えてない・・・」
「・・・曹長なら俺の事、覚えててくれるかな」
「きっとな・・・」