GJ!デンライナーから花火見物っていいな!
流れをRSFして、ちょっと真面目な話。
最近映司が周りの心配を他所に頑張りすぎてるので、その手の先輩に物申してもらった。
* * * * *
(食べなきゃ。美味しくなくても、力をつけなきゃ)
日が暮れた河原で、映司はひとりきりで夕食を取っていた。
自分で獲って焼いた魚を頬張りながら、ふと数日前の晩餐を思い出す。
新たな弟が家に来ると決まり、それを祝しての宴会だった。
翔一と総司が普段以上に腕によりをかけ、真司が得意顔で餃子を作り、
渡は音也直伝だというオムライスを振る舞っていた。
(美味しかったなぁ、あの日のご飯……)
思えばそれが、兄弟達と食べた最後の夕食だった。
手にした魚をじっと見つめてから、もう一度かぶりつく。
やっぱり味の抜けたガムのようだと思いながらも、無理矢理食べる。
腹が減っては戦はできぬ、そう念じながら口を動かし続ける。
食べながら、映司の目から滴が零れ落ちた。
自分と三つ子のもう二人は、魔法の手を持っている。
戦うこと以外に、誰かを守り笑顔にする術を知っている。
だがこのまま行けば、自分は彼らの魔法からすり抜けてしまう。
彼らの悲しむ姿を想う度、映司は心が締め付けられていた。
「映司」
不意に背後から声をかけられ、驚いて見上げた先にはひとつ年上の兄の姿があった。
「一真兄さん。どうしてここが」
「お前とちょっと話したくてさ」
不思議な笑顔を浮かべた一真は、映司の隣に腰掛ける。
焚き火を眺めながら、兄は弟にゆっくりと話しかけた。
「帰って来いよ、映司」
「それはできない。俺は帰れない、帰らないって決めたんだ」
「お前に何が起きてるかは知ってる。後藤さんから聞いた」
「だったらどうして」
「だからだよ」
映司に向き直った一真は、いつもは見せない厳しい表情を浮かべている。
思わず背筋を伸ばした映司の顔をじっと見つめて、一真は口を開いた。
「今のお前、さ。あの時の俺に少し似てるんだよ。
大事な物を全部守るために必要なら、自分はどうなっても構わないって、そう思ってるだろ」
「そんなすごいこと考えてないよ。ただ目の前の物を守りたいって思ってるだけで」
「同じだろ。それが世界の全部と思えるほどの物ならさ」
「そうなのかな……そうかも」
「だから俺はお前を止めない。誰が止めても俺はお前を否定しない。
この先何があっても、お前が後悔しない道を進むならそれでいい。けどさ」
「けど?」
「お前のこと守りたい、助けたいって必死で思ってくれてる人達がいるってことは忘れないでくれ。
比奈ちゃん、信吾さん、後藤さん、伊達さん、それから……きっとアンクも。
そんな人達のこと、心配させないであげて欲しいんだ」
もちろん俺達も、だけど。
意外な話の展開に言葉を失った映司に向けて、一真はふっと笑顔を見せた。
「まあ俺は……そんな皆の気持ち全部振り切って、やりたいようにやっちゃったし。
そんな俺が言えるようなことじゃないのは分かってるつもりけど。
ともかくさ、我を通す気ならちゃんと覚悟しとけよ?
比奈ちゃんに泣かれて、後藤さんに叱られて、アンクにぶん殴られることぐらいはな!」
一真の笑顔が苦く見えるのは、きっと自分がしでかした時のことを思い出しているからだろう。
「分かった、心の準備はしておくよ」
「おいおい、頑張っちゃうの前提かよ!」
笑う一真に髪をかき混ぜられた映司は、ふと自分の頬が緩んでいることに気がついた。
一人になってから、知らず知らずのうちに気を張り詰めていたのだろう。
何がなくとも、俺達がついてるから。
そう言って、一真はぽんっと映司の背を叩いた。
かつて友のためにと覚悟を決めて、人ならざるモノへとその身を変えた兄。
彼を目の前にして、映司は自分にそこまでのモノが背負えるのかと自問する。
そんな映司の心境に気づいているのかいないのか。
一真は焚き火の周りで焼いていた魚の串を指さし、おどけたようにまた笑った。
「なあ映司。コレ食っても良いかな」
「え!?……いいけど、それ違う人の得意技じゃ」
「ふふん、一回言ってみたかったんだー!いただきまーっす!」
全然似ていない一真の物真似に、映司は思わず吹き出した。
すっかり冷めてしまった手元の魚をもう一度頬張ると、さっきとは違う優しい味がした。
* * * * *
途中で入りきらないことに気がついて番号増えました。すみませんorz
最近の映司見てると、なんだか剣終盤の一真がかぶって仕方ないのは自分だけ?
同じ決意はして欲しくないけど、どうなるんだろう。