歴代ライダー主人公が兄弟だったら24

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593君が願うことなら 1/6

今より少し前の頃の話。
橘さんは2号家です。

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雨もあがった昼下がりの街を、一真と映司が歩いていると、少し先に知り合いの姿を見つけた。

一真「あ、橘さんと睦月!何かあったんですか?」
橘「いや、睦月との特訓の帰りだ。それと映司君に用があってな」
映司「え、俺に?」
橘「ああ、会報を届けに来たんだ。
 ほら、クワガタの会、紫ヒーローの会、鳥ライダーの会、銃ライダーの会・・・。
 いま忙しくて、なかなか会合に来れないだろうからな」
映司「わざわざありがとうございます!」
睦月「はい、こっちは緑ヒーローの会の分です!
   こないだの映司さんの歓迎会の様子と、次期会長選について載ってましたよ!」
映司「あはは、ありがと!」
一真「映司、かけもち大変だな〜」

睦月「でも、いま映司さん、すごく忙しい時期ですよね・・・大丈夫ですか?」
映司「・・・うん。
   少しずつ色んな事が分かってきて、戦いも激しくなってくるし。
   これからどうなるのかって、不安もあるけど・・・」
一真「毎年の事だけどな・・・ホント怪我だけは気をつけてくれよ。
   ・・・そういえば、アンクとはちょっとは歩み寄れたのか?」
映司「・・・どうかな。あいつもいろいろあるし・・・。
   利用・・・してるのはお互い様、なんだけどね。
   ・・・グリードを倒す、そのことについてだけは、あいつを信じられる・・・けど」

考え込む様子を見せる映司に、静かな声がかかる。

橘「少しでも信じられるなら、それでいい」
一真「・・・橘さん?」
橘「何もかもを疑い、迷い続けることは、きっと自分を歪めてしまうんだ・・・俺もそうだった。
 所長を疑い、1人で暴走して、剣崎や広瀬達にも迷惑をかけた。
 あげくに怪しいもずくに漬けられ、自分の弱さから逃げ続けて・・・取り返しのつかない過ちをおかしたこともある」
594君が願うことなら 2/6:2011/07/11(月) 23:27:23.63 ID:Iki6G5sy0
誰かを想うかのような、遠い眼差しで遠くを見る。

橘「彼女は、ずっと・・・最後まで。俺を信じて、手を伸ばしてくれていたのに。
  誰よりも大事だと・・・そう気付いたときには、遅すぎた。俺は、間に合わなかった・・・」

深い悲しみと、後悔が滲む表情と声に、かける言葉に迷っていると。

橘「・・・映司君もライダーとして戦うからには、辛い選択を強いられるときが来るかもしれない。
  もしも自分を信じられなくなったら・・・自分の名を心から呼んでくれる人の声を、聞き逃さないことだ」

強く、静かな。決意に満ちた言葉が響く。


一真「・・・橘さんは、大丈夫ですよ。
   ギラファアンデッドの金居が始を倒そうとしたとき、ジョーカーの危険性を分かったうえで、始を守ってくれたじゃないですか」
橘「・・・剣崎」
一真「な、映司!橘さんはちょっと人より騙されやすいかもだけど、すごい人なんだぞ!」
橘「買いかぶりだ・・・始を信じたいと思えたのは、剣崎。お前があいつを信じていたからだ」

睦月「・・・俺も橘さんに、何度も助けてもらいました。
   戦いかたも、強くなる方法も教えてくれたし、それに・・・。
   それに橘さんがあの人の・・・城さんの言葉を信じて、アブゾーバーを託してくれたから。
   俺はレンゲルに・・・本当のライダーになることができたんです」
橘「・・・睦月」
睦月「アンデッドの邪悪な意思に飲み込まれて・・・。
   剣崎さんや始さんにもひどいことをした俺を見捨てずに、信じて力を貸してくれた。
   本当に、感謝しています」
一真「へへ、やっぱり橘さんは一流だよな!」

−激しい戦いを経て、育まれた仲間の絆。
お互いに傷つけあい、支えあってきたからこその、今。
家族の温かく優しいそれとはまた違う、熱く強い繋がり。
笑い合う3人を目にし、不思議と湧き上がってくる熱を感じて、てのひらを見つめる。

・・・自分にも、いつか見つかるだろうか。

橘「そうだ、お前たちにも教えておこうと思ったんだが」
一真「何ですか?
橘「各家庭に、消火器の設置が義務づけられたそうだ。
  俺は先日購入したが、お前たちの家は大丈夫か?」
一同「・・・」
595君が願うことなら 3/6:2011/07/11(月) 23:29:05.86 ID:Iki6G5sy0

一真「・・・クーリングオフー!!」
橘「しかし、もう家族全員分買ってしまったんだが」
一真「ウェ・・・!このままじゃ2号家でライダー大戦・・・!」
橘「どうした睦月。顔が強張っているが、具合でも悪いのか?」
睦月「いえ・・・ちょっとカテゴリーエースの邪悪な意思が、また・・・ううっ!」
橘「何?!大丈夫か?!」
睦月「はい、たぶん消火器を解約してくれたら大丈夫だと思います!」
橘「分かった、すぐに手続きをしよう。しかし、万が一火事になったらどうすればいいかな」
睦月「その時は俺がブリザードで消してあげますから、すぐに呼んでくださいね」
橘「頼もしいな、睦月。じゃあそうしよう」
一真「・・・とりあえず、業者を照井さんか氷川さんか加賀美くんに伝えとくよ・・・」
映司「きっと騙したほう、タダじゃすまないな・・・」

一真とコソコソ話していると、後ろからくすくす、と優しげな笑い声が聞こえた。
映司が振り返ると、長い髪を揺らした女性が佇んでいた。

小夜子「こんにちは、橘くん、剣崎くん、睦月くん。
   そちらは剣崎くんの新しい弟さんかしら?」
映司「あ、はいそうです!火野映司っていいます」
小夜子「初めまして、深沢小夜子です。橘くんの同級生なの、よろしくね」
一真「こんにちは小夜子さん!こないだはうちの末っ子がお世話になりました!」
小夜子「ああ、フィリップくんね?
   検索もほどほどにしないと、また低血糖で倒れちゃうから、気をつけてあげてね」
一真「はい!ありがとうございます」
橘「やあ小夜子。今日はどうしたんだ?」
小夜子「美味しいパスタのお店見つけたから、一緒にどうかなと思って。
   病院も今日はお休みだから」
橘「そうか、それはいいな。どうだ、剣崎たちも一緒に」
一真「イエイエイエイエ、俺たち用事あるんで!な、映司!?」
映司「え?あったっけ?」
睦月「そうだ、俺も望美と約束があったんだ!」
橘「そうか、それは残念だな」
一真「じゃあまた!」
596君が願うことなら 4/6:2011/07/11(月) 23:30:20.02 ID:Iki6G5sy0

慌ただしく挨拶をすると、ハテナ顔の映司を引きずるようにその場を離れる3人。
二人から距離をとると、ようやく足を止めた。

一真「はぁ橘さん、あれじゃゴールはいつのことやら・・・」
映司「え!じゃあ、あの小夜子さんが、橘さんの?」
一真「・・・映司・・・」
睦月「映司さん・・・鈍いにも程が・・・」
映司「・・・!!Σ( ̄□ ̄;)(伊達さーん助けてー・・・)」


小夜子「・・・今度、剣崎くんたちにお礼しないとね」
橘「何の事だ?」
小夜子「んーん、何でも。さ、行きましょ?」

ゆっくりと歩きだす二人。

橘「・・・小夜子、あの時の傷は・・・もう痛まないのか」
小夜子「ふふ、まだ心配してくれてるの?
   あの時駆け付けてくれた、ステキな仮面ライダーさんの処置が良かったおかげで、
   もうなんともありません!傷もほとんど残ってないのよ?」

朗らかに笑う姿からは、かつての死の気配は感じられない。

橘「だが・・・」
小夜子「助けてくれて、ありがとう・・・仮面ライダーさん」
橘「・・・違う。いつも・・・あの時も。君が、俺を助けてくれたんだ」
小夜子「私の声・・・ちゃんと、届いてた?」
橘「・・・ああ」
小夜子「・・・よかった」

そう言って微笑む表情は、野に咲く花の強さと儚さを感じさせた。
あの時も、今も。
大切、という言葉の意味を、教えてくれる姿だと思った。
597君が願うことなら 5/6:2011/07/11(月) 23:32:03.45 ID:Iki6G5sy0

おまけ

一真「あれ、刃野さん?そんなに急いでどうしたんですか?まさかドーパントの事件が?!」
刃野「いや、実はさっき人面犬が目撃されたそうなんだ!君たち見てないか?」
一真「・・・また騙されてる・・・」
翔太郎「刃さんは騙され上手だからな」
映司「いたの!?」


:::

かっこいい橘さんが書きたくなって書いた
しかしOOOの展開が急すぎて・・・どうなる映司ーアンクー
あと6もいらなかった・・・5で終了です、すまん




後日談・・・現在の映司

映司「・・・仲間でも、相棒でも、家族でもないけど。
   あいつ、ようやく俺に手を・・・伸ばしてくれたから。だから、今度は俺が手を伸ばさないと」
総司「・・・行くんだな」
翔一「・・・ここで。この家で、みんなと待ってるよ。いってらっしゃい!」
映司「・・・いってきます!!」



−ただいま、を言うために。
ふたりで、必ず。