おにゃのこが改造されるシーン素体14人目

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504maledict ◆sOlCVh8kZw
完全に書きかけのSSをアップするのは初めてなのですが、
現段階では年内アップという約束が守れそうにないので、
「前編」としてアップすることにします。

拙作「私説・ショッカー蜂女」
ttp://book.geocities.jp/maledictarum/sakuhin/shockerbeewoman.html
の番外編で、以前蜂女スレやここで話題になった、
下記仮面ライダーカードの没怪人を元ネタにしました。
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~battaya/battaenn%20%5B2%5D-2.htm
505初代仮面ライダー2号・外伝1(前編1/5?):2011/12/31(土) 13:45:33.71 ID:K8ZDLl400
「まさか、自分の大学の中で迷子になるなんてね……」
 蒼井蜜子は、自分自身が置かれた状況に半ば呆れながら、
独り言を言った。
 いつも出入りするのとは反対側の、農学部寄りの門から出て
みよう、などと思い立ったのが間違いのもとだった。迷路のような
構内を抜けて出た先は行き止まりの中庭。引き返して渡り廊下を抜け、
反対側の建物に入ったものの、休日のためか、あちこちにある通用口は
すべて施錠中。そろそろ門の近くらしいのだが、どうやって外に
出ればいいのか見当がつかない。やはり休日だからか、教室も研究室も
しんと静まりかえっていて、道を聞く相手も見つからない。
 迷子といっても、たいして深刻な状況でないのは蜜子自身が
よくわかっていた。観念して、来た道を引き返し、いつもの門から
外に出ればいい。あるいは、その辺の施錠された通用口を開けて
外に出れば、門のところにはすぐに行き着けるだろう。
 引き返すのは、正直に言ってしゃくだった。だが、だからといって、
その辺の通用口を勝手に開けて出ていくのは、明らかに防犯上問題が
ある。そして蜜子は、この自分がそんなことをしてしまうのは、
自分たちの名を汚すことだと自分に言い聞かせていた。
「仮面ライダー」――それが、今の蜜子と、蜜子の憧れの人物であり、
また今では最良のパートナーであるはずの人物、あの本郷猛が自分たちに
冠した、称号だった。
 「ショッカー」と名乗る、「悪」と呼ぶ以外にない秘密結社の罠に
落ちた蜜子は、強制的に異様な「手術」を施され、蜂と人間が融合
したような異形の怪人へと、その肉体を作り変えられてしまった。
だが、同じショッカーの犠牲者であり、かつ、ショッカーによる
脳改造を免れた希有な存在である本郷によって救出された蜜子は、
彼に続き「仮面ライダー2号」を名乗り、ショッカーと戦う戦士と
なった。
 その正義の戦士が、大学を犯罪の危険にさらすような行為に及ぶ
わけにはいかないのだ。蜜子はそんな思いを抱えながら、ひと気の
ない構内をうろうろと歩き回っていた。
506初代仮面ライダー2号・外伝1(前編2/5?):2011/12/31(土) 13:46:10.39 ID:K8ZDLl400
 蜜子が引き返す覚悟を固め、廊下を引き返し始めてすぐ、蜜子の
目に、明かりのついた窓が飛び込んできた。先ほど通り過ぎたときは
真っ暗だったので、恐らく蜜子の通過後に誰かが入室したのだと思われた。
 期待と好奇心に促され、蜜子は実験室らしき部屋の扉をノックした。
「はい、どちらさま?」
 ノックに応え、姿を現したのは、大学院生か助手だろうと思われる
若い女性だった。くすんだ色のセーターとジーンズの上に白衣を羽織る
という、ごく地味な服装で、セミロングの髪をぎりぎりにひっつめて
後ろで縛り、ノーメイクの顔に黒縁の眼鏡をかけている。だが、
よく見れば白衣の下には均整のとれたボディラインと豊満な胸が伺われ、
眼鏡の下の顔立ちもかなりの美形と言えた。
(もったいない……)
 それが蜜子の第一印象だった。
 「助手・田薄毬子」と読める名札を付けたその女性に、蜜子が声を
かけようとしたとき、部屋の中から甲高い叫び声のようなものが響いた。
ぎょっとした蜜子がよく見ると、部屋の奥の方に大きなケージが
あり、中には鮮やかな色彩に彩られた大きな鳥がいた。
「あ、クジャク!」
 思わず声を上げた蜜子の前で、ケージの中のクジャクは尾羽を開き、
極彩色の目玉模様を誇示した。気のせいか、普段動物園などでみかける
クジャクよりも柄が鮮明で、尾羽の数も多いようだった。
 思わず見とれている蜜子に、目の前の女性、毬子は気さくに声を
かけてきた。
「どう? すごいでしょう。普通のクジャクに比べ、装飾の大きさや
数が一・五倍は多いのよ! このお嬢さんは」
 説明を聞いた蜜子は、毬子の言葉が雑学的に得た自分の知識と
反することに気付き、思わず問い返した。
「『お嬢さん』? たしか、派手な羽をもっているのは雄だけ
なんじゃなかったんじゃ?」
507初代仮面ライダー2号・外伝1(前編3/5?):2011/12/31(土) 13:46:36.88 ID:K8ZDLl400
 毬子は待ちかまえていたようにうなずき、蜜子に答えた。
「そう。普通はね。でも、この子はちょっと違うの。尾羽は雄みたい
だけど、生物学的には雌なの。ただし、雌といっても受胎能力は
ない。そういう意味では『中性』と言うべきなんでしょうけど、
ただ生殖器の形状なんかはやっぱり雌そのものなの。
だから『お嬢さん』って、わたしは呼んでる。
 実を言うと、このお嬢さんは、不幸な事故で、ある種の化学薬品を
浴びてしまった母親から産まれた、可哀想な身の上の子なの。
ホルモンに似た作用をもつその物質は、いわゆる第二次性徴を強烈に
発現させる一方、繁殖能力は退化させてしまう。だからこのお嬢さんは
人一倍美しい尾羽をもっているのに、自分の子を残すことはできない。
 わたしはね、この子の生理を調べて、その化学物質の働き方を
詳しく調べている。この子のような悲劇を未然に防ぐためにね」
 話し相手に飢えていたように、毬子は一息に語り終えた。それから
ようやく思い出したように、最初に問いかけるべき疑問を発した。
「それで、あなたは誰?」
 毬子の話に、すっかり興味をもって聞き入っていた蜜子は、
少々あわてながら答えた。
「あ、実はわたし、構内で迷子になって、道を聞きたいと思ってここに
伺ったんです。あ、一応は部外者ではありませんよ。農学部じゃないけど、
ここの学生です!」
 毬子はそれを聞くとふふふと笑いながら答えた。
「おおかた、いつも使っていない農学部寄りの門から出ようとして
うろうろしていたんでしょ。休みの日は、かなり目立たない出口
以外、どこも施錠されているから。出口まではけっこうあるし、
いいわ、そこの通用口を開けてあげる。そこから出れば、門はすぐよ」
 ややこしい事情説明をすべて不用にしてくれた上、理想的な解決策を
提示してくれた毬子が、蜜子にはまるで天使のように見えた。
そうして、手厚い感謝の言葉を伝え、いそいそと農学部側の門に向かった。
ようやく帰宅ができ、従って、想い人である本郷にようやく会える、
という喜びが、蜜子の胸によぎった不安感を、少なくともその瞬間は
覆い隠してしまったのであった。
508初代仮面ライダー2号・外伝1(前編4/5?):2011/12/31(土) 13:47:09.81 ID:K8ZDLl400
 不幸なことに、蜜子の感じた不安の影は、あまりにも早く実現して
しまった。完全な偶然だったのだが、それは蜜子が城南大学を去って
ほんの数時間しか経っていない頃に起こった。
 蜜子の不安は、毬子の研究にあった。毬子が取り組んでいる研究は、
一歩間違えれば重大な社会的影響を招きかねない。そして、そのような
研究が「ショッカー」の目に触れたら、必ずや何か恐ろしい計画を
立案し実行するに違いない。蜜子はそんな不安を、その日の夜には
明確に意識し始めた。だが、それはもう遅かったのである。

 夜も更けた時刻、ショッカーの工作員が城南大に忍び込んだ。
この大学の人が最も少ない時間帯を狙い、全般的な情報収集をするのが
目的だった。だが、この工作員が、手近な通用口が開け放されている
ことに気付いたとき、毬子の運命は決してしまった。
 1970年代、「環境ホルモン」などという言葉自体がいまだ存在して
いない時期。そんな時代に、高等動物の第二次性徴の発現にこれほど
大きな変化を与える物質とその生理学的影響を詳細に研究している若き
女科学者。ショッカーはそんな毬子に、公のアカデミズムでの彼女の
地位よりもはるかに高い評価を与えていた。
 しかしながら、あの通用口があれほど無防備に解放されていなければ、
この工作員はもっと間接的な情報収集のみを済ませ、この場を立ち去る
予定であった。だから、あの開放された扉こそが、毬子の運命を変えて
しまったのである。
 その責任は誰にあるのか。通用口を使用した蜜子なのか。それとも、
通用口の施錠を怠った毬子自身なのか。多分、その両方だと言うしかあるまい。
509初代仮面ライダー2号・外伝1(前編5/5):2011/12/31(土) 13:47:58.66 ID:K8ZDLl400
 開放された通用口に気付いた工作員は、小型トランシーバーで、
近隣のアジトに連絡し、拉致専門部隊を手配した。程なくして、
普通の大学生や教職員に変装した工作員たちが数箇所の入り口から侵入し、
音もなく毬子のいる研究室の前に集結した。タイミングを合わせ、
一糸乱れぬ連携で研究室に侵入した工作員たちは、何が起きたのかすら
把握していない毬子に麻酔薬を噴霧し、見たところ極めてコンパクトな
スーツケースに彼女を押し込んだ。同じく麻酔を打たれたクジャクと、
手早く整理された各種研究資料もカバンに詰められた。
 意識を喪失した自覚すら与えない特殊な薬剤を吹き付けられ、
忘失状態となった守衛の横を抜けた工作員たちは、手配されていた
ワゴンカーに毬子とクジャクを積み込み、彼らの組織の研究施設への
毬子の搬送を開始した。
 研究施設の所員たちの対応は素早かった。毬子の研究の応用価値を
熟知していた科学者たちは、毬子の体質をチェックし、到着した
クジャクのサンプルが与えてくれる新技術を、毬子自身の肉体に
適用することで意見が一致した。
 すなわち、毬子を、彼女自身が発見した薬剤を合成する能力、
及びその薬剤によって変異したクジャクの特性を組み込まれた、
改造人間の素体へと選抜する、という計画である。これらの薬物の
生理学的影響を十分に知り尽くした彼女を怪人に改造し、作戦の指揮を
委ねるのは、この作戦をもっとも効果的に進める選択であった。 (続く)
510maledict ◆sOlCVh8kZw :2011/12/31(土) 13:50:05.66 ID:K8ZDLl400
以上です。肝心のシーンの前で終わってしまってすみません。

>>501の件も、もし本日会場に行かれる方がいましたら、是非お立ち寄り下さい。
511名無しより愛をこめて:2012/01/03(火) 20:11:22.57 ID:292uo1l50
GIGAの「女隊員VS卑猥宇宙人」ってのに、おにゃのこが異星人に改造
されるシーンがあるらしい。
512名無しより愛をこめて:2012/01/04(水) 14:51:21.02 ID:p6MqVxit0
>>511
「異星人に改造」は、「異星人によって(サイボーグか何かへ)改造」ということなのか、
「異星人の姿へ(異星人によってか、地球の科学者の手によって)改造」ということなのか、
どっちでしょう? 両方なのかな、と思いましたが、念のため。
513名無しより愛をこめて:2012/01/04(水) 21:54:01.16 ID:8e3fdPRi0
>>512
スチール写真から判断すると「異星人の手によって、異星人のメスに改造
される」シチュエーションのようですが・・・

このネタ「アダルト版」の方が良かったかも知れませんね。
514名無しより愛をこめて:2012/01/13(金) 09:08:46.35 ID:adW2v93c0
前から思ってたけど、何でSSを投下するの?
話題が切れるし、違和感ありありなんだけど
↑の意見に同感
SSはエロパロ
515maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/13(金) 12:38:34.72 ID:GtR4Uiq50
>>514
一応自分もスレは情報交換が主で、SS は場繋ぎみたいなものだと位置付けているつもりだったのですが、
書き込めるときにしか書き込めないので、話題を切ってしまっていたかもしれず、すみません。

もともと、1スレ目で、話題が一通り出揃って幾分ネタ切れ気味の頃、
たあとPRIME様や325様がSS 投下を始め、
そのあとにBeef様が長編をガンガン投下しはじめて、それにひかれてSS職人の方が続出し、
SS がスレのひとつの目玉のようになっていった、というような流れだったかと認識しています
途中からエロパロ板に姉妹スレがたったわけですが、それはSSと情報交換を分けようという趣旨ではなく、
東京ドーム様や九条蘭子様の過激な作品をこころおきなく発表できる場としてだったようです
(その時期あまり2ちゃんを見なくなっていた時期で、これは過去ログを読んでの判断です)

それで、投下しかけの話は最後まであげたいとは思っていますが、来週以降になるかと思います
516名無しより愛をこめて:2012/01/13(金) 12:46:29.25 ID:6DbGYfRp0
1にもあるとおり当初からSS受け入れ可だったんじゃないの?
別に気にならんけど。
大体それほど情報なんて出てこないだろ。
517名無しより愛をこめて:2012/01/15(日) 18:25:58.22 ID:A3PDOov10
戦いの最中、新たに現れた追加ヒーローによって完膚なきまでに敗れた悪の組織の幹部・女王蜂女。
彼女は組織の科学者に、ヒーロー達を倒すために最改造手術を進言する。
が、女王蜂女の目論見は、悪の組織内でのライバルである鳥魔将軍セイレーヌの
鳥「このビッチは改造手術が気持ちいいから再改造されたいだけですよぉw(大意)」
との異議により却下されてしまう。

しかし女王蟻女、そこで得意の悪知恵を働かせる。
蟻「ぐぬぬ。こうなったら正義の科学者に改造させればいいじゃん。あいつらなにげに科学力すごいしぃ?
  寝返ったふりして、ついでにあいつらも倒してしちゃお(`・ω・´)シャキーン」
……かくして正義の側に身をゆだねることとなった女王蟻女。
だが、彼女はそこで大きな誤算をしていた。
再改造手術により、彼女の中で眠っていた正義の心が目覚めてしまったのだ……。

これは善悪の彼岸にたつ一己の乙女の物語である。
新ジャンル「正義堕ち」。
「なに… この気持ち!? あったかい… あったかいよぉ///」
518名無しより愛をこめて:2012/01/15(日) 18:47:08.65 ID:ASfkmsY10
>>517
スイートプリキュアのセイレーンがそれに近かったですね。
悪堕ち話ばっかり読んでいた目であれを見たら、
あまりの素直キャラへの変貌ぶりに、倒錯した興奮を覚えました。

ただ、その後。、悪の歌姫に返り咲く展開が一度はあるだろうと期待したのは
(多分)誤算でした。
519名無しより愛をこめて:2012/01/18(水) 18:54:03.77 ID:xkIprcRg0
>>518
プリキュアで何かあったんですか?
詳しく知りたいです

520maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/18(水) 23:41:02.88 ID:gF7cPkgh0
>>519
夏くらいの話ですが、自由奔放に生きていた悪の女幹部の猫が、
人間へと強制TFさせられた上で(変身能力は以前からあったが、猫に戻る能力を失ってしまった)、
おどおどビクビクした善良キャラへと堕ちて(「昇って」?)、
第3のプリキュアになる、という展開がありました
521maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/20(金) 18:30:05.88 ID:juMoOsvt0
>>505-509の続きを書いていたら、話の成り行きで、
>>504に掲載されている「ヒドラーゲン」が、女怪人として登場することになったのですが、
改造素体の身の上について、「こんなのはどうか」という案を出してくださる方はいらっしゃるでしょうか。

一応、毬子嬢より若めの二十歳手前くらいをイメージしていますが、
これはどうしてもというわけではありません。
毬子嬢は改造前の彼女を、面識はないものの、知ってはいて、
脳改造によるギャップに、恐れおののく
…というような展開を予定しています。

あと、このヒドラーゲンは没怪人だと思ってネタにしたんですが、そうですよね?
522名無しより愛をこめて:2012/01/20(金) 20:28:49.91 ID:De85va2z0
>>521
>改造素体の身の上について

ショッカーがしっかりとした事前調査の上で選んだ人物なら設定自体はあまりキニシナイかも?
怪人に改造されるってのは、人並み以上に優れた部分があるでしょうし。
戦闘員や人体実験材料ならともかく、
偶然や成りゆきでエリートである怪人素体に選ばれる展開は個人的には微妙と思ってますので。

個人的には、野心から自ら志願する系も結構好きだったりw
523maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/20(金) 21:42:13.82 ID:juMoOsvt0
>>522
早速のご提案ありがとうございます!

今の流れからすると、強制の要素ははずせないなと思ってはいます。
「能力を見込まれた」的な要素は、むしろ是非とも入れられれば、と思うのですが、
しかしまた、本人としてはその能力を平和的で善良な目的に活用したいと思っていて、
それを世界征服の手段として悪用しようとするショッカーに、必死で抵抗する、
…という感じの、しかも、まあ、これはできればでいいのですが、
ヒドロ虫の属性を上手く活かせるような、そういう設定があればいいなと。
524名無しより愛をこめて:2012/01/20(金) 22:09:14.09 ID:De85va2z0
>>523
期待しております。
非強制系はまたの機会にでもw
525名無しより愛をこめて:2012/01/20(金) 22:25:31.85 ID:2h86HaR30
>>523
サボテンを研究してた博士がサボテンバットに改造されたみたいなむりやりな展開はどう?
たとえば高齢化社会を前にして若返りのための細胞再生の実験を、ヒドロ虫を使って
行っていた医学部の研究室がショッカーに狙われて教授と学生たちがまとめて拉致されて
その中の美人女子大生がたまたま目をつけられてヒドラーゲンに改造されてしまうとかさ
あるいは女子大生がその教授の娘か何かだったとか

あとヒドラーゲンはたしか分裂増殖できる怪人だったはずなので
最初からシードラゴンみたいに素体の違う同一怪人が3体くらいいるってのはどう?
3人の女子大生が同じ姿に改造されてて、自由に合体したり分裂したりできるとかさ
526maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/21(土) 11:08:20.24 ID:DmpGtWWV0
>>525
おお、それはそれで独立の話にできそうなくらいですね。

研究対象のクジャクの能力を移植されるのは今回のヒロインと被ってしまうので、ちょっと考えてみます

あと、週末書き込めないので、再開は早くとも月曜以降です。すみません。
527maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/26(木) 20:56:45.49 ID:xf94FuFR0
>>505-509の続きですが、長くなりそうなのと、
また間が空きそうなのとで、引き続き分載ということにします。
この次の投下で完結させますのですみません。

>>504に書いたとおり、拙作「私説・ショッカー蜂女」
ttp://book.geocities.jp/maledictarum/sakuhin/shockerbeewoman.html
の番外編・以前蜂女スレやここで話題になった、
下記仮面ライダーカードの没怪人が元ネタです。
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~battaya/battaenn%20%5B2%5D-2.htm

なお、wikipediaによると「マラク・ターウース」というクジャクの神様(天使)が
インドにいるそうで、ヒロインの名はそこからとりました。
528初代仮面ライダー2号・外伝1(中編1/8?)(通算6):2012/01/26(木) 20:57:31.74 ID:xf94FuFR0
 見知らぬ教員と学生たちが、にこやかな笑みを浮かべ、ごく自然な
様子で研究室に入ってきたとき、毬子は、彼らが部屋を間違えたの
だろうと考えた。
「あの、もしやお部屋を……」
毬子が口を開いたとき、ふいに差し出されたスプレー缶が甘いガスを
放射し、そのまま毬子の意識は暗転した。
 やがて目覚めた毬子は、全身が麻痺したような状態のまま、真っ暗な
箱の中に閉じこめられているのに気付いた。ああ、うう、という
くぐもった声しか出せないまま、窮屈な姿勢で身動き一つとれない
こんな状態を、毬子は悪夢に違いないと考えた。薬物で混濁しかけた
状態にあった毬子は、早くこの悪夢が覚めないものかと願った。
 そうして、悪夢なのか現実なのか分からない状態が続いた。やがて
自動車のエンジン音らしきものが停止し、しばらく、がらがらがら
という音が続いた後、毬子の目に、不意に光が差し込んだ。自分が、
悪夢でも何でもなく、現実にスーツケースの中に押し込まれていた
ことを、毬子は確認させられた。
 スーツケースが開かれるとほぼ同時に、麻痺がまだ残り、未だ
ぐったりしている毬子の両腕を、何者かが両側から抱え上げた。
「ひいっ!」
 傍らに立つ人影に目を向けた毬子は、思わず悲鳴をあげた。そこに
いた二人の女性の顔が、全面、けばけばしい赤と青で彩られていた
からである。しかも、間近で見る肌の質感は、その色彩が塗料に
よるものではなく、素肌の色そのものなのではないか、と感じさせる
生々しさを帯びていた。
 真っ黒なレオタード、網タイツ、赤いサッシュという奇妙な衣装に
身を包んだ女たちは、人間の力とは思えない腕力で毬子の両腕を
抱えていた。同じ姿の女はもう数人いて、その内の一人が毬子の前に
かがみ込むと、毬子のジーンズのボタンを外し、ジッパーを下ろし、
ジーンズを脱がせ始めた。
529初代仮面ライダー2号・外伝1(中編2/8; 通算7):2012/01/26(木) 20:58:31.62 ID:xf94FuFR0
 毬子は抵抗を試みたが、麻痺が抜けきっていない上に、背後に
回った別の一人が、白衣をまくり上げ、腰をホールドしてしまった
ために、身動きがとれなかった。そうしてなすすべもないまま、
毬子はジーンズを脱がされ、さらには、その下に履いていた白い
パンティも下ろされてしまった。
 背後から、あらわになった臀部にしっかりとしがみついている女性は
異様なほど冷たく、人間的な温もりがまったく感じられない。
まるで機械みたいだ。と毬子は感じた。自分の下半身を抱えて放さない、
鉄骨のようなその腕もまた、毬子のそんな印象を強めた。
 下半身が固定されると、両側に立った二人は上半身の衣類を脱がせ
始めた。白衣、セーター、ブラウス、ブラジャーと、手際よく衣類が
はぎ取られていくにつれ、その下に隠されていた、均整のとれた
豊満な肉体があらわになっていく。それまで無表情だった女たちは、
それを目にすると、ほんの少し目を大きくし、かすかな溜息を漏らした。
 すべての脱衣が終わり、もはや白い靴下以外何も身につけていない
毬子に向かい、脱がせた衣類を取りまとめていた女が話しかけた。
「手術の間に、洋服はクリーニングしておく。ただ、この安物の古い
白衣は捨ててしまいましょう。代わりに、我がショッカー特製の、
特殊繊維で織られた白衣を支給するわ。あなたはこれから、怪人
としてだけでなく、科学班の一員としても働くことになるのだから」
 「手術」という言葉は、この強制的な脱衣の理由を説明していた。
だが、その説明は、毬子を納得させるというよりは、むしろその
不安を増大させた――自分はつい最近定期検診を受けたばかりだが、
手術の必要な疾病や傷害などは、なかった。そもそも、この異様な
場所は病院の類であるようには思えない。ということは、自分は
治療とは異なる目的の「手術」をこれから受けることになるのか……。
 「ショッカー」や「カイジン」といった意味の分からない単語が、
毬子の不安をさらに倍加させた。何か恐ろしい、取り返しのつかない
運命が自分を待ち受けているのではないか、と、毬子はぼんやりと
した予感を抱いた――その予感はまさに的中するのだ。
530初代仮面ライダー2号・外伝1(中編3/8; 通算8):2012/01/26(木) 20:59:03.90 ID:xf94FuFR0
 ほぼ全裸となった毬子は、異相の女たちに両腕を抱えられ、部屋の
奥へと引っぱられた。なけなしの力をふりしぼり、抵抗を試みた
毬子は、女たちの腕が万力のようにびくともしないことを、改めて
思い知らされた。たとえ麻痺が完全に抜けたとしても、この腕を
振り払うことは不可能に違いなかった。
 もがきながら、毬子は部屋の中央に置かれた、大きな丸い台の
ようなものに向かって引きずられていた。コンクリートに囲まれた、
窓のない薄暗い部屋は、用途の分らない複雑な機械や薬品類があちこち
に置かれている。唯一、インテリアらしきものとして、壁に巨大な
レリーフが掲げられている。猛禽類が地球に爪を立てている図案で、
何かまがまがしい意志を感じさせる。
 丸い台の上には、大きな、白い繭のようなものが置かれていた。
周囲に立っていた、やはり異様な隈取りを施し、白衣に身を包んだ
男たちの一人が、猛禽のレリーフに向かい片手を高く掲げ、確認する
ように言った。
「イーッ。これより、改造人間ヒドラーゲンの、無菌カバーを
除去します」
 その言葉と共に、別の白衣の男がはさみを手にし、繭のような
カバーを切り裂き始めた。毬子は知るよしもないが、そのカバーは、
脳改造後の感染症を予防するための、ショッカー科学陣の考案物
だった。強化細胞が十分に活性化した後でならば、感染症のリスクは
ほとんど無くなる。しかし、それはまた、本郷や蜜子のような危険な
未完成品の脱走を生じさせるリスクがある。それゆえ、脳改造は、
肉体改造後迅速に行われるべきである。そんな要請が、このような
処置を考案させたのである。
 「カイゾウ人間」という耳慣れない言葉と共に切り裂かれていく
「繭」の中から現れたものを見て、毬子は息をのんだ。
 取り除かれた「繭」の中にあったのは、横たわる、人間のような
形をした「何か」だった。
531初代仮面ライダー2号・外伝1(中編4/8; 通算9):2012/01/26(木) 20:59:29.77 ID:xf94FuFR0
 首から下のラインは、それが女性であるらしいことを示している。
その輪郭は、まだ二十代になるかならないかの、張りのある、毬子よ
り未成熟だが、それでも十分に均整のとれたボディラインを描いて
いる。だがその体表は、人間というよりは、水産の無脊椎動物の
ようなぬめぬめした質感で、全身を、水色の体表をベースにした、
黒い網目模様が覆っている。腰には、壁に掲げられているのと同じ
エンブレムを刻んだ金属製のプレートが、ベルトのようなものに
よって固定され、足はブーツ状になっているが、しかし、それ以外は
まるで全裸のように見える。それはまた、その青と黒の網目模様の
体表が、衣服や彩色ではなく、この生き物の皮膚のようにしか見え
ない、ということでもある。
 肉体以上に異様なのがその頭部である。首からあご、そして口元
までは、やはり青地に黒の網目模様で覆われているとはいえ、
若い女性を思わせるラインを形成している。だが、本来鼻がある
部分からは、白く平たい触手のようなものが長く伸び、その白い、
やはり無脊椎動物のようなぬめぬめした組織は、顔の上半分に、
ちょうどアイマスクのように、上弦の三日月模様を描き、その中央部
には人間に似た目が閉じられている。頭の上半分は毒々しい原色の
黄色に彩られた組織で、そこから、顔の周りに放射状に並んだ十本
ほどの黄色い触手が生えている。頭部には髪の毛の類はなく、
緑色のグニャグニャした組織がそれを覆っている。
 ――そこに横たわっていたのは、ちょうど、ヒドロ虫と人間を
合成したらこのような姿になるのではないか、と思われるような
異形の生物であった。
532初代仮面ライダー2号・外伝1(中編4/8; 通算9):2012/01/26(木) 20:59:56.67 ID:xf94FuFR0
「イーッ。ヒドラーゲンは改造手術後、特殊な移植細胞の安定化に
時間を要したため、起動電源が未投入です。これより、起動電源投入の
準備をします」
 白衣の男の一人が、先ほどと同じ調子で壁のレリーフに報告した。
 それに続いて始まった処置を目にした毬子は顔を赤らめ、やがて、
目をそむけた。
 男たちは、明らかに女性の姿をしたその生き物の両足を大きく
開くと、メスを取り出し、局部の皮膚を縦に切り裂いた。切られた、
ごく薄い皮膚の下からは、人間の女性器と変わらないように見える
ピンク色の粘膜が現れた。
 科学者の一人が、その粘膜を左右に押し開いた。別の科学者が
レバーを引くと、台の、ちょうどその下の部分が開き、中から細長い
こけし人形のようなものがせり上がってきて、開かれたスリットの
中に押し入った。
「起動電源、投入」
 科学者がその言葉と共に別のレバーを引くと、計器が明滅し、
異形の女性の肉体がびくびくっと痙攣した。
「ああ、ああ、いやぁぁぁぁぁぁ」 
 怪物じみたその姿からは想像できなかった、曇りのない目が開き、
その口からは、透き通った、上品な声が漏れた。
 生き物は、何かに怯えているように震えながら叫んだ。
「だめ! ああ、そんな、恐ろしいこと!」
 まるで、目に見えない何かから必死で逃れようとしているようだ。  
「いや! いやよ! …………え? ………え?」
 生き物の声は、何か恐ろしい事実に気がついたように、狂乱の
色彩を帯び始めた。毬子は、いったんそむけかけていた目を、再び
その生物に注いでいた。いったい何が、この生き物、いや、
「彼女」に生じているのか?
533初代仮面ライダー2号・外伝1(中編6/8; 通算11):2012/01/26(木) 21:01:20.46 ID:xf94FuFR0
「………いやだ! こんなわたしは、いや! いやだ! ……
い゙……や゙……だ…………」
 「彼女」は、他でもない自分の「内側」に恐怖の対象を見つけ
出したようだった。同時に、その声は当初の清らかさを失い、急激に
濁った、禍々しく、どす黒い色彩を帯びたものへと移行していった。
同時に、その目には狂気と、とげとげしい情念の炎が宿り始めた。
「……あ゙……あ゙……あ゙……あ゙……い゙……や゙……だ……い゙
……や゙……だ…………あ゙…………あ゙あ゙あ゙あ゙っっ」
 生き物は全身を弓なりにのけぞらせ、びくん、びくんと痙攣した。
その叫びは、恐怖というよりは歓喜と悦楽の響きを思わせた。
 痙攣が収まった「彼女」は、しばらくの間びくりともせずに
横たわっていたが、やがて口元を歪め、小さな声を発した。
「……うふ。うふ。うふ。うふふふふふふふふ……」
 笑い声は声量を増していった。見開かれた目はぞっとするような、
冷たく濁った狂気と憎悪をたたえていた。
 そのとき、壁に彫られた猛禽の目が光り、地の底から響くような、
低く太い恐ろしげな声が響いた。
「改造人間ヒドラーゲンよ。立つのだ」
 その声を耳にした彼女……いや「生き物」は、跳ねるように上体を
起こして台を下り、あの科学者と同じ、右手を上げる姿勢でレリーフ
に向かって、声を発した。
「ヒャヒャヒャーッ! 大首領閣下! あなたに永遠の忠誠を誓います!」
 「鳴き声」としか形容できない異様な叫びと共に、理解しがたい
「宣誓」が発せられた。今しがた、清らかな声をあげ、恐怖におののき、
救いを乞い求めていた「彼女」と、目の前の生物が同じ存在であるとは、
毬子にはどうしても納得できなかった。
534初代仮面ライダー2号・外伝1(中編7/8; 通算12):2012/01/26(木) 21:01:45.63 ID:xf94FuFR0
「ヒドラーゲンよ。お前を改造した目的は、お前自身が産生する
猛毒の人体実験と、それをもとにした大量毒殺計画の指揮を執らせる
ことにある。
 だがその前に、やはりお前自身にしかできない務めがある。お前は、
こうして脳改造を受け、我が偉大なるショッカーの一員となる前に、
お前の双子の妹の居場所を、我が組織から隠した。お前の最初の任務は、
その妹を、我が組織へ拉致してくることだ。
 ヒドラーゲンは二体一組でその真の力を発揮する。お前と同じ
特異な体質をもつ妹の改造は、今回の計画に必要な一部分である」
「ヒャヒャヒャーッ! 愚かなふるまいをお許し下さい! 必ずや
妹を拉致し、同時に、周囲の者どもを処分してご覧に入れます」
 そう言うと奇怪な生物「ヒドラーゲン」は、異相の女に導かれ、
その場を立ち去った。

 全裸に剥かれて以降の狂気じみた展開を、毬子はただ茫然と眺めて
いたわけではない。毬子の中には、自分の身に大きな、とてつもない
危険が迫っているという予感が大きく膨らんでいた。それゆえに
毬子は、自分を捕縛している女たちが何か隙を見せないものか、もし
隙を見せたら逃げ出せないか、と、その機会を絶えず探ってはいたのだ。
 だが、女たちはあのヒドラーゲンと呼ばれた生物の前で毬子を
拘束したまま、まるで電源を落とした機械のように身じろぎ一つ
しなかった。その腕はまるで石像のようで、毬子がどれほど力を
込めても、ぴくりとも動かなかった。その事実を再度確認した毬子の
心の中で、不安と恐怖がより具体的な形を取り始めた。
535初代仮面ライダー2号・外伝1(中編8/8; 通算13):2012/01/26(木) 21:02:16.02 ID:xf94FuFR0
 聡明な毬子の知性は、この後に毬子を待ち受ける、逃れようのない、
それゆえに、知らずに済ませた方がましであるに違いない運命を、
冷静に分析せずにはいなかった。
 ――「ショッカー」というのがこの組織の名なのだろう。その
組織は人間の拉致、人体実験、毒殺といった恐ろしい行いを平然と
行う組織であるらしい。
 ――わたしが拉致された一つの理由は、多分あのクジャクの研究に
目を付けられたからだ。考えてみればあれは、悪用に転ずれば
恐ろしい災厄を招きかねない研究ではなかっただろうか。
 ――だが、それだけではないだろう。「カイゾウ人間」とは、
恐らく「改造人間」と書くのだろう。この生物は、もともとは普通の
人間であったらしい。それが、この姿に「改造」されたのだ。肉体
ばかりか、その精神まで、別の生き物に作り替えられてしまったのだ。
 ――どのようにしてか? 「手術」! つまり彼らの言う
「改造手術」によってだ! 手術!! 目の前のこの奇妙な台は
「手術台」に違いない! そして、先ほど、あの女性は何と言って
いた? わたしはなぜ全裸に剥かれてしまった? それは……それは…
… 毬子の知性が冷徹に結論をはじき出そうとしていたそのとき、
壁のレリーフの目が光り、耳を覆いたくなるあの声が再び響いた。
「それでは、田薄毬子の改造手術の準備をせよ!」
 毬子はその宣告の意味を完全に理解した。たちまち、毬子の心から
理性の灯が消え、変わりに恐怖と恐慌がそこを満たした。
「いやあぁぁぁぁぁぁっ! 改造手術なんて、いやよぉっ! 
放して! 放して! いやだぁぁぁぁぁっっ!!」
 毬子は絶叫した。かすかに残った理性が、その絶叫が無意味である
ことを告げ、その認識が毬子の絶望と恐怖をさらに倍増させた。(続く)
536maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/26(木) 21:03:33.28 ID:xf94FuFR0
以上スレ汚し恐縮致します。完結編は来週以降になってしまいますが、
あまり遅くならないうちに投下します。
537名無しより愛をこめて:2012/01/27(金) 00:00:34.12 ID:HLUzzHDp0
素晴らしい!
538maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/27(金) 02:34:37.67 ID:5unuw/v00
>>537
SSへのレスでしょうか?だったらありがとうございます!
もし違っていたらすみません…。
539名無しより愛をこめて:2012/01/27(金) 10:42:11.00 ID:RWdTlagH0
>>536
>>538
このクオリティは流石ですな。
時に、作品をpixivにうpとかはされませんのん?
閲覧数がダントツに多い小説機能もあるので、かなりお勧めだと思うのですが。
540名無しより愛をこめて:2012/01/27(金) 12:20:44.56 ID:OKJ4aMt80
>>538
もちろんそうです!
いや、ほんとに素晴らしい。
541名無しより愛をこめて:2012/01/28(土) 22:43:40.16 ID:ufnTnHdp0
maledict様
素晴らしかったです
これほど改造後のイラストが見てみたくなる作品はなかったです。
誰か書いてくれないかな?
542名無しより愛をこめて:2012/01/29(日) 19:10:15.81 ID:qzndoYzI0
以前アマゾニアを描いてくれた職人さんが見ててくれたらいいなぁ

こんな素敵なイラストも描いてるみたいだし
ttp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=20572389
543名無しより愛をこめて:2012/01/29(日) 20:00:16.35 ID:17S1se110
>>541
pixivだとSSを読んでイラストを寄贈してくれたりとか結構あるね
544maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/30(月) 16:36:02.63 ID:HlmGELOO0
>>539様、>>540様、>>541様、ありがとうございます!
後編でトーンダウンさせないように心します。
>>514様の意見も正論だと思うので、投下のタイミングもなるべく気を付けます。

>>542様, >>543
すばらしいイラストですね!もし氏のイラストで再現して頂けたら、
自分としては感涙ものですが、作品のコメントを見る限り、お忙しそうですね。
>>541
一応>>527のリンク先に「ヒドラーゲン」および「くじゃくおんな」のイラストは
あるわけですが、当然ながら(特に前者は)あまり色っぽくはないです

>>539
情報ありがとうございます。
pixivの小説機能、よく分かっていませんでしたが、つまり、
イラストを公開するのと同じノリで小説も公開できる機能でしょうか。
2ちゃん投下作品は作品の著作権がアヤシイ気もするので、
そうでない、自サイトに上げたジャミラのやつとかを、
時間があったら試しにアップしてみようかと思います。
545maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/30(月) 21:52:22.64 ID:HlmGELOO0
「くじゃくおんな」の鳴き声(というか、なんて言うのか、怪人の定型の叫び)、
どんなのがいいでしょう。素体の女性が理知的な分、白痴的な叫びの方が
ギャップがあっていいような気はするんですが、
「ぴーっこっくっ!」とかだとさすがにやりすぎかな…
546名無しより愛をこめて:2012/01/30(月) 23:26:18.42 ID:laQUE04d0
>>545
星座の孔雀座はPAVOだから「ぱぁーーーっ、ぼっ!」というのがアホっぽいぞ
547maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/31(火) 01:35:57.30 ID:8kXntpSN0
>>546
それ、いいですね!
548名無しより愛をこめて:2012/01/31(火) 02:17:21.35 ID:rjz4x3ta0
>>544
>イラストを公開するのと同じノリで小説も公開できる機能でしょうか。

左様です。参考までに。
http://www.pixiv.net/member.php?id=301172
http://www.pixiv.net/member.php?id=2806241

あと2chへの投稿は著作権が2chに自動的に帰属する気もするので、
二次利用を考えるならpixivでする方が無難かと思います。
549maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/01/31(火) 02:40:14.03 ID:8kXntpSN0
>>548

>あと2chへの投稿は著作権が2chに自動的に帰属する気もするので、
>二次利用を考えるならpixivでする方が無難かと思います。

自分もそうかなと思うので、2chやエロパロ板投下作品をあげるのは避けます。
(逆に、誰が引用してもいいものだと思うので、自サイトには上げてますが。)
>>544でも書いたとおり、上げるなら、ジャミラの話など、
非2ちゃん(or ピンクちゃんねる)公開作品だけにしようと思います。
アカウントはとったので、時間があったら試してみます。ありがとうございます。
550maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/02/01(水) 19:57:56.85 ID:RyLp+Nr80
調子に乗ってちまちま書いていたら、脳改造前でかなりの分量になってしまい、
今週中に完結編投下というのが難しそうになってきました。
(女性一人を拉致して改造するだけでこんなに引っ張るとは…)
今回こういう形式なので、すみませんがまた分載ということにします。
>>505-509(前編)、>>528->>535(中編)の続き、

>>504に書いたとおり、拙作「私説・ショッカー蜂女」の番外編で、
ttp://book.geocities.jp/maledictarum/sakuhin/shockerbeewoman.html
以前蜂女スレやここで話題になった、
下記仮面ライダーカードの没怪人が元ネタです。
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~battaya/battaenn%20%5B2%5D-2.htm
551初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 1/16)(14):2012/02/01(水) 19:58:59.05 ID:RyLp+Nr80
 異相の女たち、すなわち女戦闘員たちは、強化された腕で毬子の腕を
がっしりと拘束したまま、毬子を改造手術台へと運び始めた。
「いやよぉぉっ! いやぁぁっ!」
毬子は半狂乱となり、その腕を必死でふりほどこうと、じたばたと
もがいた。だが、そんな抵抗も空しく、その美しい裸身はじりじりと
手術台へと引きずられていった。
 手術台の手前で待機していたもう一人の女戦闘員が毬子の両足を持ち
上げ、二人の女戦闘員が両脇から毬子の肩を抱え上げた。両脇の二人は
そのまま手術台の両側に移動した。こうして三人の女戦闘員が毬子の
肉体を持ち上げ、手術台の上に寝かせた。
 ひんやりとした台に、毬子が両手と両足を大きく開いた大の字の姿勢
で押しつけられると、両手両足の部位のシャッターが開き、せり上がって
きた拘束具が毬子の手足の自由を奪った。
 努めを終え、女戦闘員が立ち去るのと入れ替わりに、ショッカー科学陣
が手術台を取り囲んだ。突き刺さるような「男」の視線を感じた毬子の
中に、恐怖だけでなく、強い羞恥心が生じた。幼い頃、父親が見たで
あろう以外、他のどんな男性にも見せたことのない裸身が、両足を大きく
広げて横たわるという、常識では考えられない姿勢で、男たちの目に
さらされているのである。
 やがて、まず男の一人が、毬子の顔に顔を近づけ、毬子の眼鏡を外した。
眼鏡を外された毬子を顔を見下ろした男たちは、一斉に「ほう」と
目を丸くした。
 毬子は以前、仮性近視になった折にこの眼鏡を作り、その後視力が
回復した後も、合わない眼鏡をかけ続けていた。その理由は、一つには、
自分にとっては厭わしい存在である彼女の美貌を、人目から遠ざける
ためであり、もう一つは、視界を幾分ピンぼけにしておくことで、
他人の視線を気にせずに済ませるためであった。
552初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 2/16)(15):2012/02/01(水) 19:59:26.90 ID:RyLp+Nr80
 つまり本来毬子は、眼鏡を外した方が視力が上がるのである。そして、
今や毬子の裸眼は、残忍な科学者たちの顔や、その視線のに晒されて
いる自分の裸身を、はっきりと映し出しているのだった。
「やだっ! やだ! やだ!」
 毬子はそう言いながら幼児のように首を振った。足を閉じ、胸や局部を
手で隠したい、という強烈な衝動が、拘束具に固定された毬子の、肩や
腰をぐねぐねと動かした。無論、拘束具はゆるむ気配も見せず、毬子の
その動きは、かえってその裸身のなまめかしさを高めた。
 科学陣の一人が、脱衣の効率上、なおも残されていた毬子のソックスに
手をかけた。ソックスを下ろし、白磁のような、形のよいつま先を露出
させるその手つきが、毬子にはひどく猥褻なものに感じられて、毬子は
思わず叫んだ。
「やめて! 触らないで!」
 そう口にした毬子は、自分のその言葉がまったく無駄な要求である
ことを、改めて自覚せざるを得なかった。この男だけではない。自分を
取り囲んでいる男たちすべてが、これから自分の肉体に触れるのだ。
いや、ただ触れるだけなどではない。彼らは、その手にした残忍な器具
で、何をするのであったか?

 ――手術! 改造手術!!――

 毬子は、羞恥心によって一時的に意識から逃れていた、その恐るべき
運命を再び意識に甦らせた。
 ――これから、わたしは残酷な「手術」を受けさせられてしまう。
そして、さっきのあの生物のような、人間ならざるものへ、身も、心も、
「改造」されてしまうのだ!!――
553初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 3/16)(16):2012/02/01(水) 19:59:51.20 ID:RyLp+Nr80
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
 その、ひときわ大きな絶望と恐怖の叫びに呼応するように、無影灯が
ともされ、まばゆい光が毬子の裸身を照らした。恐怖による冷たい汗で
じっとりと濡れたその皮膚はてらてらと輝き、毬子がもがくたびに揺れる
豊満な乳房や、くねくねと曲げられる腰の曲線の変化が、感情抑制処置を
施されているはずの科学陣の劣情を、それでもなお、やみがたく刺激した。

 やがて麻痺剤が注射され、毬子からは手足を動かす自由も、声を出す
自由も奪われた。だが、その薬剤は毬子の痛覚を完全には遮断せず、
さらに、毬子の意識を完全に奪うこともしなかった。ぼんやりとした
感覚が毬子の意識を覆いはしたものの、完全な睡眠状態には至らなかった
のだ。目をつぶる筋力すら麻痺してしまった毬子は、身じろぎ一つでき
ない状態で、無影灯の鏡面部分に映る、自らのかよわい裸身を直視する
以外になかった。
 そうして、いつ果てるともない、何日にも渡る、長い、長い、肉体的、
精神的な拷問の時間が始まった。
 薬物の作用は毬子に深い眠りを許さなかった。毬子は、恐怖と苦痛で
意識が遠のき、短い悪夢にうなされた後、再びうっすらとした意識を
取り戻し、悪夢以上に悪夢的な現実に戻る。という繰り返しを経験した。
そしてそのサイクルが進むたび、鏡面に映る己の姿は、着実に惨めで
おぞましい変貌を遂げていった。
554初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 4/16)(17):2012/02/01(水) 20:00:17.42 ID:RyLp+Nr80
 毬子の研ぎ澄まされた知性は、そのような状況の中でも、己が置かれた
状況の分析をやめようとはしなかった。
 「改造手術」は様々な悪夢じみた肉体加工の複合技術のようだった。
 その一つは、毬子の肉体のサイボーグ化である。円形の手術台を複数の
スタッフが囲み、毬子の、シミ一つない美しい肉体のあちこちに無造作に
メスが当てられ、鈍痛を毬子に与えながら、骨格や臓器の、人工部品に
よる置換や補強が行われていった。全身がむごたらしく切り刻まれ、
あちこちに生命維持用のチューブやパイプが据え付けられた惨めな状態の
まま、毬子の人間としての肉体が次々と人工の器官に置き換えられていった。
 サイボーグ手術が一段落したと思われる頃、毬子の耳に、己のさらなる
運命を告げ知らせる声が響いた。
「変異型メスクジャクの各体組織の、ハイブリッド化、および培養が
完了しました」
 その言葉と共に、いくつかの培養カプセルを積んだワゴンが手術室に
運び込まれた。カプセルの中には、毬子の実験室にあったあのクジャク
をベースに培養されたらしき体組織が身体の各部位ごとに封入されていた。
 ――ああ、これはわたしのクジャクだ。なんていう姿に……――。
 愛着のあった研究対象の変わり果てた姿に、毬子の心は揺れた。
だが毬子の知性は、あの「お嬢さん」の運命がここで終わりではないと
いう確固たる予想を毬子に突きつけた。
 ――そうだ。この人たちはこれをわたしに移植するつもりなのだ。
わたしと、この「お嬢さん」はこれから、クジャクでも、人間でもない
奇怪な融合生物へと「改造」されてしまうのだ……。
 毬子の目から涙がこぼれた。心優しい毬子は、己の肉体の変貌を嘆く
のと同じだけの哀惜を、「怪物」へと作り変えられていくクジャクに
対しても注いだのである。
555初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 5/16)(18):2012/02/01(水) 20:00:52.87 ID:RyLp+Nr80
 間もなく、毬子の予測通り、移植手術が開始された。手足の機械化
された骨格を強化筋肉が覆い、既にいくつかの機械の臓器を埋め込まれ
ていた腹腔内に、さらに有機的人工臓器が埋め込まれた。科学者の説明は、
それらの臓器の大半が、生物としての毬子の生存とは関わりのない、
恐ろしい殺戮や、犯罪的な目的に供される器官であることを告げていた。
「ショッカー」は毬子を、意志を持つ生物兵器として作り変えようと
しているのである。
 移植手術の開始と共に、太い注射針が突き刺され、薬物の大量投与が
始まった。感染症や拒絶反応の抑止、強化細胞の安定維持などを行う
ための、強力な薬剤カクテルである。血中の化学バランスは乱れ、血管や
神経系に強烈なストレスがかかった。強い動悸が始まり、猛烈な吐き気と
頭痛が毬子を襲った。
 それは、毬子の肉体がただの人間から「改造人間」へと生まれ変わる
ための最後の関門といってもよかった。猛烈な苦しみの中、毬子の意識は、
とうとう深い昏睡に落ちていった。

 やがて毬子は目覚めた。依然として頭痛と吐き気は続いていたが、
昏睡直前の、猛烈な痛みや嘔吐感は薄らいでいた。
 反射的に開けてしまった目に、視線の正面にある、鏡面に映った己の
顔が映った。それが、依然として田薄毬子としての自分の顔のままで
あることを知った毬子の心に、ほんの一瞬だけ安堵の思いが生じた。
だが、次の瞬間には、毬子の心を恐怖と絶望が満たした。鏡面に映る
自分の首から下が、すっかり異形の生物に作り変えられてしまっている
ことが、はっきりと分かったからである。
556初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 6/16)(19):2012/02/01(水) 20:01:20.53 ID:RyLp+Nr80
「……いや……こんな体、いや……」
 麻痺が再び解け始めた毬子は、改めて肉眼で自分の肉体を直視し、
ぽろぽろと涙を流しながら、嗚咽混じりにそう漏らした。
 毬子の体表は、変異型クジャクと強化細胞とのハイブリッド細胞で
形成された、人工皮膚で置き換えられていた。人工皮膚は、雄クジャクの
首や胸の色を思わせる鮮やかな青で、独特の金属光沢を放っている。
背中や臀部に触れる手術台の感触は、血の気のまったく通わない、無機的な
その青い組織が、今や自分の皮膚そのものなのだという残酷な事実を、
毬子に突きつけていた。
 手首、足首から指先までは、まさに鳥そのものの、鱗だらけのゴツゴツ
した皮膚となっており、指先からは鋭いかぎ爪が伸びていた。肩から
胸にかけてと、下半身の部分には、雄クジャクの尾羽の先につくあの
目玉模様が、無数に描かれていた。そんな模様に覆われた乳房の、中央部
に位置する乳首だけが、口紅でも塗ったように鮮やかな赤で彩られており、
まるで下品なボディ・ペインティングでも施されてしまったようだった。
それがやはりボディ・ペイントなどではなく、今の毬子の皮膚の色そのもの
であることを、毬子は絶望と共に受けいれねばならなかった。
 毬子の全身のシルエットは、改造前の、あの見事な、そして扇情的な
輪郭を完全に維持していると言ってよかった。それは、毬子が、異性
からも、同性からも努めて隠そうとし続けていたものだった。胸や腰に
刻みこまれた目玉模様は、そんな、毬子の女性としてのボディラインを、
この上なく猥褻な仕方で強調するもののように思われて、毬子に強い
羞恥心を与えた。
557初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 7/16)(20):2012/02/01(水) 20:02:25.86 ID:RyLp+Nr80
 背中に、クジャクの尾羽そのもののように見える細長い器官が、無数に
植え付けられているのがわかった。同じ器官はまた、足のすねの部分からも
数本伸びている。毬子は、人間には決して生えていないはずのそれらを、
自分が自在に動かせてしまえそうな感覚をはっきりと感じた。その気に
なれば、雄クジャクや、あの「お嬢さん」のように、この背中の尾羽を
扇状に開くことが、簡単にできそう感じがするのだ。しかも、それを
開くことは、何かとても解放感のある、心が高揚する行為であるという
予感があった。
 毬子は自分の中に潜むそんな衝動に戦慄した。
 ――わたし、心まで人間じゃなくなりかけている!――
 毬子は息を吐き、尾羽を開いてみたいという衝動をこらえた。
 腰にはすでに、例の猛禽マークのエンブレムが黒いベルトによって
装着されており、それは、毬子が否応なく「ショッカー」の一員として
組み込まれてしまうことを暗示していた。そしてその認識は、毬子の
恐るべき運命はここで終わりではない、ということを毬子に想起させ、
毬子を戦慄させた。
 毬子が、その呪わしいエンブレムから目をそむけようとしたとき、
壁に刻まれた同じエンブレムの目が光り、あの禍々しい声が響いた。
「田薄毬子。ようこそ我がショッカーへ。喜ぶがいい。君は我々が
求めている人間。選ばれた栄光の女性なのだ」
 低く冷たい声、あのヒドラーゲンが「大首領」と呼んでいた声の主が、
今や毬子に向かって話しかけているのだった。
 恐怖と無力感に圧倒された毬子は、戻っているはずの声を出すことが
できなくなっていた。そんな毬子に向け、冷酷な声はなおも宣告を続けた。
「聡明な君はすでに熟知している様子だが、この一週間の間に、ショッカー
の科学グループは君の肉体に改造手術を施した。君は今や改造人間なのだ。
改造人間が世界を動かし、その改造人間を支配するのが私だ。世界は
私の、意のままになる」
558初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 8/16)(21):2012/02/01(水) 20:02:53.00 ID:RyLp+Nr80
 「ショッカー」という組織の恐るべき野望が明らかになり、毬子の
背筋は凍り付いた。
 仮に、拉致される前の毬子がこのような言葉を耳にしたとしたら、
毬子はそれを、誇大妄想狂のたわごとだと一蹴していたことだろう。
だが、科学者である毬子は、「ショッカー」という組織の、常識では
考えられないハイテクノロジーをまざまざと見せつけられた。彼女自身
の肉体が、その技術によってむごたらしく変容させられる様子を、逐一
観察させられたのだ。その技術力はまた、それを支える潤沢な資金力や
人材の層の厚さを証拠立てていた。それはすなわち、この組織の計画は、
すでに相当程度進行している、ということだ。「ショッカー」は人知れず
この社会に根を下ろし、その勢力を広げつつあるに違いないのだ。
 科学者の一人が毬子に言った。
「君の肉体の改造手術はほぼ完了した。君に埋め込まれた強化細胞は、
電源投入と共に覚醒し、その本来の力を発揮する。逆に、電源を投入しない
状態が長く続けば、強化細胞は腐敗を始め、君は死に至る。だが心配は
要らない。残る作業はごくわずかだ。残り数箇所の肉体改造、そして
脳改造を済ませれば、電源投入の準備に入ることができる。そうなれば、
君は完璧なる、ショッカーの改造人間の一員になれる」
「……し……」
 死んでも、あなたがたの思い通りの怪物になど、なるものか! 
科学者の言葉を聞く内に、なけなしの勇気に火がついた毬子は、せめて
ものそんな抵抗の言葉を、非情な男たちに向けて投げつけようとした。
 だがそのとき、毬子の中に生まれた勇気が、彼女の優れた知性の回路を
開いた。そうして毬子は、この絶望的と思える状況の中、最悪の事態を
逃れるために、自分は何をすればよいのかを、猛烈な勢いで計算し始めた。
559初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 9/16)(22):2012/02/01(水) 20:03:25.84 ID:RyLp+Nr80
 一瞬目を閉じた毬子は、口元を努めて醜く歪めながら、ふてぶてしい
口調で言った。
「ショッカー! わたしが夢に描いていた組織が、実在したなんて! 
こんな素晴らしい肉体に『改造』してくれたことを、ショッカーの一員に
選んでくれたことを、感謝します! あなたのような優れた力をお持ちの
方のためなら、わたしは全身全霊を込めて忠誠を誓います! ……ああ
早く、新しい肉体を動かしてみたい! 埋め込んで下さった薬物で、
愚民どもに裁きの鉄槌を下してやりたい! ねえ! 脳改造なんて
しなくていいわ。早く電源を入れて! いれてぇん。早くぅん」
 そう言って毬子は悶えるように身をよじり、腰をくねらせた。
 
 毬子の予想外の反応に、科学者たちも、ショッカー大首領も、しばし
絶句したようだった。あきれたように毬子の顔を覗き込む科学者たちに
囲まれ、毬子はその顔に歪んだ笑みと慣れぬ媚態の表情を貼り付け、
彼らの顔を見返していた。どうやら未だ改造の影響を受けていないらしい
心臓が、早鐘のように鳴り響いていた。
 言うまでもなく、あの狂気じみた毬子の言葉は、毬子の知性が命じた、
ここを脱出するための、一世一代の演技だった――もしも脳改造が不要
だと判断されれば、自分はこの場ですぐに電源投入を受けるだろう。
そうして、この改造された肉体が始動すれば、自分はその呪わしい力を、
それを与えた連中に向けてふるい、この恐ろしい場所を脱走する。その先、
こんな異形の肉体のままで、どこでどう生きていけばいいのか、それは
分からない。しかし少なくとも、この非人道的な集団に一矢を報いる
ことはできるだろう――そんなかすかな希望の可能性を、毬子は掴もう
としたのだ。
560初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 10/16)(23):2012/02/01(水) 20:03:57.50 ID:RyLp+Nr80
「ふはははははははははは」
「わはははははははははは」
 わずかの沈黙の後に訪れたのは、科学者たちと、他ならぬショッカー
大首領の笑い声だった。作戦が功を奏したのかどうか、判別のつかな
かった毬子は、ひとまず彼らに同調しようとした。
「……お、おほほほほほほほ」
 毬子はそうやって「不敵な笑い」を、内心戦々恐々たる思いで、彼らの
笑い声が収まるまで演じ続けた。
 ひとしきり笑い終えたショッカー大首領は、依然として愉快そうな
調子で毬子に話しかけた。
「面白い! さすがは我がショッカーの厳正な選抜に適った人材だ。
状況を瞬時に整理する推理力、的確な行動を選択する判断力、そして、
それを行動に移す大胆な意志力。見事だ!」
 それを聞いた毬子の胸に希望が芽生えた。自分の演技は、この恐ろしい
男に気に入られたらしい。このまま押し通せば、脳改造という最悪の
運命だけは、かろうじて免れられるのではないだろうか。
 はやがねのような動悸を気付かれまいと、不敵な笑みを繕ったまま、
毬子は大首領の言葉を待ち受けた。ほんの一秒が、何十分もの長さに
感じられた。
 やがて、レリーフの目が再び光り、大首領の低く冷酷な声が室内に
響き渡った。
「聞くがよい田薄毬子。我がショッカーによる調査は、君の人格が
ショッカー怪人として、はなはだ不適格であることを明らかにしている。
そして我が科学陣の計器によるお前の心拍、発汗、脳波その他の測定は、
君の先ほどの言葉がまったくのうわべだけの、そらぞらしい虚言であった
ことを、はっきりと裏付けている。
561初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 11/16)(24):2012/02/01(水) 20:04:59.26 ID:RyLp+Nr80
 だが心配は無用だ。ショッカーの科学力は、君の優秀な能力を維持しつつ、
君の脳に、君が演じようとした人格……否、今の君が想像するよりも、
はるかに残虐で冷酷な人格と、我がショッカーへの決して揺るぐことの
ない忠誠心を、植え付けるだろう。そうして君はもうじき、田薄毬子など
という人間ではなく、怪人・孔雀女として完成するのだ!
 科学者たちよ。田薄毬子の脳改造、ならびに頭部への強化細胞の移植に
取りかかるのだ!」
 科学者たちはその命令と共にさっと部屋中に散り、各種の機材の準備を
開始した。
 絶望の淵にたたき落とされた毬子は、言葉を失いかけた。もう希望は
ないのか。何か、この男に言う言葉はないのか。無力感に打ちのめされ
そうになりながら、毬子は必死で言葉をふり絞った。
「……どうして……。どうしてこんなことをするんですか? ……これ
だけの科学力があれば、それを、もっと平和的に、誰もが幸福になれる
方法で行使する道はいくらでもあるはずです。……これは、ただの
きれい事なんかじゃない。必要以上の暴力や流血は、多くの敵意や憎しみ
を生み、結局はあなた方の目標を本来以上に困難にしてしまう。それ
なのに、なんで……」
 ショッカー大首領は、やはり愉快そうに答えた。
「それは、我々の目的が、『恐怖』と分かちがたく結び付いているからだ。
恐怖こそ人類の最も根源的な感情であり、すべての支配の源だ。それゆえ、
ショッカーの改造人間は、その肉体も、精神も、恐怖の化身でなければ
ならない。そのすべての能力を愚かな人間どもに恐怖を与えるために
行使する。それこそが君たち改造人間の使命だ!」
 理解を絶する思想に、毬子は息をのんだ――この男には……いや、人間
かどうかすら定かでない、この何者かには、人間の理性的な説得など、
はなから通用しないのだ!
562初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 12/16)(25):2012/02/01(水) 20:06:29.68 ID:RyLp+Nr80
 そして、その事実をはっきり認識した毬子の心は、さらなるおぞましい
事実に思い至った。
 ――ああ、わたし、これから、こんな恐ろしい、不可解な思想を無理やり
脳に植え付けられてしまうんだ。もう、体だけじゃない。心の中まで、
普通の人間とは異質の存在になってしまうんだ――。
 手術前に見させられたヒドラーゲンの変貌の様子が毬子の脳裏に
フラッシュバックした。いったい、どのような変化がどのように生じる
のか。全く想像のつかない未知の恐怖に、毬子の恐怖は頂点に達した。
「……うえっ、うえっ……」
 我知らず涙が頬をつたい、手術台を濡らし始めた。 
 若い科学者が、毬子の額に器具を取り付け、薬剤を塗布し、局所麻酔
をほどこしながら、毬子に話しかけた。
「『死んでもショッカーの思い通りの人間にはならない』。恐らく、
そんなことを君は考えている。ごく標準的な人間の反応だ。そして、
やがてはショッカーの一員であることに感謝するようになる。脳改造と
はそういうものだ。
 君は、大首領閣下が君を説得しようとしていた、とでも思ったのかも
しれない。だがそれは考え違いだ。我々が君の意識をいったん覚醒させ、
大首領閣下のお言葉を聞かせた目的はただ一つ。脳改造に先立ち、大首領閣下
のお声と、その偉大なる目的を、君の脳に言語的にインプットすること。
ただそれだけだ。君には最初から、他の選択肢などなかったのだよ」
 科学者は準備が済むと、手渡された電動のこぎりを手慣れた手つきで
毬子の額に当てた。鈍痛が生じ、毬子はああっと声を上げた。
 やがて、いとも簡単に毬子の額の頭蓋骨の一部が除去され、毬子の
前頭部の脳髄がむき出しになった。あまりの手際の良さに、毬子は、
鏡面に映った自分の頭部の状態が、にわかには信じられなかった。
563初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 13/16)(26):2012/02/01(水) 20:07:01.92 ID:RyLp+Nr80
 別の科学者が、除去された箇所にちょうど収まりそうな部品を運んで
きた。四角く平たい電子基板のようなものから、くねくねと複雑に曲げ
られた細い針が無数に飛び出ている。
 先の若い科学者がピンセットでそれを受け取ると、消毒液らしいもの
が入ったビンにそれを付けた。まるで手品のように、複雑に曲がり
くねった針金はすべてまっすぐになった。
 ――形状記憶合金だ!――
 毬子は息をのんだ。実用化はまだまだ先だと言われている新素材の一種
で、まっすぐに伸ばしても、一定の熱を与えると元の形状を再現する
性質がある。これを毬子の脳にそっと差し込めば、脳内で、恐らくは
脳神経と絡まり合いながら、本来の形状をとりもどすはずだ。
 科学者は手慣れた、しかし無造作な手つきで装置をピンセットでつまみ、
毬子の額に針金の群れを刺し込み始めた。痛みも、その他の感覚も何も
発生せず、針はゆるゆると脳の奥に侵入していった。毬子は脳内で複雑に
変形を始めているはずの針金の様子を思い描き、わなわなと震えた。
 ――ああ! こんなの、もう、取り外す事なんてできない!――
 深く食い込み、変形してしまった針金を抜き取ろうとすれば、毬子の
脳組織は豆腐のようにぐじゃぐじゃにかき回され、毬子は死に至るだろう。
体温がある限り針金は同じ形状を維持するだろうし、仮に針金がまっすぐ
になってしまったら、それもまた毬子の死を招く――つまり、毬子が
生きている限り、この呪わしい装置を外すことは決してできないのだ。
「イーッ。脳改造装置の埋め込み、完了しました。 抗生剤カクテルの
投与後、残余部分の肉体改造に移行し、改造が終了し次第、無菌カバーを
施します。この改造体も細胞の完全な定着に時間がかかるタイプです。
従って、起動処理は無菌カバー除去後とします」
 科学者は報告を終えると、抗生剤カクテルを毬子に注射した。頭痛は
さほどではなかったが、急激な眠気が毬子を襲った。
564初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 14/16)(27):2012/02/01(水) 20:07:25.44 ID:RyLp+Nr80
 迫り来る猛烈な眠気は、毬子の胸に激しい焦燥感を膨らませた。毬子は
時間と戦いながら、その知性を再びフルに回転させた。
 ――わたしは、脳改造装置を埋め込まれてしまった。もう取り外すこと
はできない。今のわたしがまだわたしでいられるのは、単に『電源投入』
が行われていないためだ。遅かれ早かれ、電源は投入されてしまう。
いや、電源は投入されざるをえないのだ。……だって、さっきの科学者
によれば、今のわたしは、もう、電力による細胞の賦活なしには、動く
ことも、生きることもできない体にされてしまったのだ! ああ、どう
したら。わたしは、どうしたら……――。
 人間として思考できる時間は、もうほんのわずかしか残されていない。
そんな激しい焦燥感にせき立てられ、圧倒的な睡魔に抗いながら、毬子は
思考をめぐらせた。だが、考えれば考えるほど、毬子の脳裏には絶望的な
結論がひときわ強く己を主張した。無力感と、愛する両親や姉妹への
申し訳ない思いが湧き上がり、再び大粒の涙をこぼしながら、毬子は
睡魔に屈した。

 毬子がうっすらと意識を取り戻したとき、毬子の周囲は灰色の壁に
覆われていた。朦朧とした毬子がそれを見つめている内、目の前に不意に
はさみの先端が現れ、灰色の空間を切り裂いていった。
 それを見た毬子ははっきりと目覚め、自分が置かれた状況を認識した。
自分に、あの繭のような「無菌カバー」がかぶせられていたのだった。
「ああっ」
 カバーの除去と共に視界が開け、無影灯を目にした毬子は、悲痛な声を
漏らした。とうとう頭部にも改造手術が施されてしまったことを知った
からである。
565初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 15/16)(28):2012/02/01(水) 20:07:58.05 ID:RyLp+Nr80
 あごから口元にかけては毬子の人間のラインを残している。だが、その
皮膚はあのメタリックな青をベースに、クジャクの羽を思わせる紫や
緑のラインが横に走り、真っ青な唇と相まって、まるでサイケデリックな
化粧を施したような外見になっている。
 そして、鼻から上は完全に人間のそれではなくなっている。頭部全体が、
体と同じメタリックな青で染め上げられ、髪はなく、頭頂部が幾分突出
した、固いヘルメットのような形状に加工されている。口のすぐ上の
部分は三角形に飛び出しているのは、クジャクの改造人間であることを
強調しているかのようだ。
 目は、鳥というよりは、スズメバチなどの昆虫を思わせる、複眼状の
器官として形成されている。顔の上半分を斜めに横切る、紡錘形の、
つり上がった真っ赤な目は、これから毬子に植え付けられようとしている
残忍で獰猛な性格を、すでに象徴しているかのようだ。
 手は、昏睡前に見た猛禽のような節くれ立った皮膚ではなく、体の
他の部分と同じ滑らかな青い皮膚となり、足もまた鳥のような形状では
なく、黒いブーツを履いたように整形されている。それらが手袋やブーツ
なのか、移植された人工皮膚なのかははっきりしない。実のところ、
改造人間の肉体にとって、その二つの境界はごくあいまいなのだ。
 失われてしまった人間としての面影を思い、毬子の胸が熱くなった。
だが、こみ上げた悲しみが、毬子の目を濡らすことはなかった。毬子は、
自分がもはや涙を流せない体にされてしまったことを知った。

 科学者たちの作業は迅速だった。無菌カバーを除去するとすぐ、彼らは
例のうやうやしい報告を交えながら、毬子の両足を開き、毬子の局部の
薄い皮膚をメスで切り裂いた。
「いやぁぁぁぁっ!」
566初代仮面ライダー2号外伝1(後編-1 16/16)(29):2012/02/01(水) 20:08:24.42 ID:RyLp+Nr80
 その所作に気付いた毬子は、ほとんどパニック状態に陥り、金切り声を
上げた。自分のもっとも見られたくない部分が、大勢の目にさらされて
いるのだ。無論、その肉体は、内部のすみずみまで彼らに見尽くされて
いるには違いない。だが、そんな理屈が羞恥心を取り除くことはない。
未だ男を知らない彼女の秘部を、大勢の男たちが押し広げ、その内部を
覗き込んでいるという状況を、毬子が平然と受けいれられるはずがない。
しかも、あの哀れなヒドラーゲンと同じならば、間もなくそこには
「電源プラグ」が差し込まれてしまうのだ。
 毬子が心の準備すらできないうちに、シュコン、という音がして、
手術台の下部から男根状の電源プラグがせり上がり、毬子の膣内に押し
入って、内部の端子に接続された。
「イーッ。プラグ接続完了。これより電源投入します」
 残酷な宣告と共に、レバーが下げられ、五万ボルトの電流が、
毬子の全身を駆けめぐった。
「ああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」
 猛烈な苦痛と、とうとう心の中まで作り替えられてしまう、という、
最大限の恐怖が、毬子を絶叫させた。(続く)
567maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/02/01(水) 20:11:20.94 ID:RyLp+Nr80
以上、長々とお粗末様でした。次回、あともう一回だけお付き合いお願いします。
完結編には、本来の主役である蒼井蜜子さんも登場します。

アン改様のように、SS投下以外の自作語り等は慎もうと思いつつ、
そっちもだらだらとすみませんでした。修行します。
568名無しより愛をこめて:2012/02/01(水) 23:40:41.83 ID:Aa46PgEA0
>>567
描写がルーチン化しないのは流石ですな。
他氏の作品だといつも描写が似偏りがちでやっぱり飽きちゃいますが、
maledict氏はそんなことは無しで安心&期待して読めますよ。
569maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/02/02(木) 01:17:01.46 ID:o7rr2zRy0
>>568
早速のコメントありがとうございます。
自分が興奮したいので工夫はするものの、
マンネリはマンネリだよなあ、と思っていたので、
そう言って頂けるとうれしいです。


ときに、脳改造後の毬子さんが着る、
「あんまり奇抜じゃないがエロい衣装」のいい案はないでしょうか。
70年代でも、もっと後の時代のでも、どっちでもいいんですが。
(後者だと、当時の常識を超越した超ミニスカとか、
本当にヘソを露出しているヘソ出しルックとか)
570名無しより愛をこめて:2012/02/02(木) 19:39:01.59 ID:mn7T9NAO0
>>569
この当時(70年代初頭)らしいエロい衣装と言えば、前開きの超ミニのワンピースで
前のチャックを股間近いところまでグイッと下ろす、というのがある
石ノ森章太郎がこの頃よく青年誌の表紙にそういう絵を描いてた
ttp://homepage3.nifty.com/hideo-azuma/apc731124.jpg
ttp://ec2.images-amazon.com/images/I/51phDhTVtXL._SL500_AA300_.jpg

まあ実際に女性がそういう衣装を着ているのは見たことはないが
峰不二子みたいな皮のツナギのチャックを股間まで下ろす、というのなら実際にあった
(スージー・クアトロとか「あの胸にもういちど」のマリアンヌ・フェイスフルとか)
ttp://userserve-ak.last.fm/serve/_/4510299/Suzi+Quatro++Glam.jpg
あまりエロくはないが

現実にありえそうなのなら、ペイズリー柄とかのサイケな全身タイツ
(ゴジラ対ヘドラで麻里圭子が着てたような感じの、裾がベルボトムになってる奴)
というのもアリだと思う
この当時なら夜の新宿にこういうのは普通にいたから、それほど奇抜でもない
ttp://img.blogs.yahoo.co.jp/ybi/1/6a/46/hirano282828/folder/701505/img_701505_42949995_0?1162223510

でもまあ、こういう当時の普通のファッションで、孔雀の羽根の目玉模様で覆われた
サイケなデザインでもいいと思うよ
ttp://hawaii808.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2009/10/15/la8630.jpg
571maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/02/02(木) 19:52:45.99 ID:M3dJWydo0
>>570
おおっ!ありがとうございます。
クジャクの目玉模様、よさげです。
画像そのものがごちそうさまです。
572初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 1/31)(30):2012/02/03(金) 05:43:34.09 ID:gzvS5Sfb0
 意識の変化は、最初は痛覚の変容として生じた。こらえようのない
電撃の苦痛に悶える毬子の脳裏に、あのエンブレムのイメージがちかちか
と明滅した。すると、その瞬間だけ、痛みが和らぐのだった。続いて、
あの大首領の声が、頭の中央部分に響き渡った。
「ショッカーへ、来るのだ。来るのだ……」
 その声は再び、毬子の苦痛を緩和させた。
 明敏な毬子は、苦悶の中、この操作が単純な条件付け学習であること
を見抜いた。実験室のネズミのように、痛覚という、最も原始的で強烈
な感覚のレベルで、ショッカーへの好ましい感覚を植え付けようと
いうのだろう。
 このような操作は原始的であるがゆえに、意識の最も深い部分を
鷲掴みにしてしまう。だが他方、自分に施されている処置がまやかし
である、という明確な自覚をもてば、それに抗することもできるに
違いない。
 毬子はショッカーのエンブレムや首領の声を、何の意味もない文字列
として捉えようと、自己暗示を試みた。並外れた毬子の集中力は、
「ショッカーへの誘い」から注意をそらしつつ、苦痛も大幅に緩和
させることに成功した。

 だが、装置による意識への介入はそれで終わりではなかった。複雑な
システム構築を必要とする、より本格的な介入が、幾分時間をおいて、
順次開始されたのだ。
 まず、毬子の脳裏に、毬子がこれまで見聞した血なまぐさい事件や
物語のイメージが浮かび始めた。イメージを振り払おうと思考を切りかえ
ようとしても、いつの間にか血塗られた連想へ行き着いてしまうのだ。
「いやあっ!」
573初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 2/31)(31):2012/02/03(金) 05:44:03.98 ID:gzvS5Sfb0
 毬子は悲鳴をあげた。目をそむけたくなるイメージ群から、目を
そむけることができない。なぜならそれらは、毬子の心の中に直接に
送り込まれてくるのだからだ。
 イメージは毬子の反応とフィードバックし、徐々に生々しさを増した。
やがて、ちょうど夢が深まるにつれて三人称の場面が一人称に切り
替わるように、毬子自身がその残虐な行為を行う当事者であるかの
ような感覚が伴い始めた。何か、そのような行為を今しがた終えた
ような、あるいは、まさになしつつあるような、そのような感覚が、
様々に形を変えて、連続的に送り込まれ始めた。
 残虐な行為のイメージが送られるたび、毬子は恐怖と忌避感、犠牲者
に対する心の痛み、良心の呵責といった感情に苛まれた。たとえそれが
擬似的な体験だと分かっていても、そのような反応はこらえようが
なかった。だが、しばらく経つ内、脳内の装置は、それ毬子のその
ような感情的反応に介入を始めた。恐怖は和らぎ、心の痛みや背徳感と
共に、「愉快さ」の感情や、得体の知れない衝動、そしてある種の
快楽が少しずつ混入し始めた。
 その衝動が性的衝動であり、その快楽は性的な快楽である、という
ことに、毬子はしばらく経ってから気付いた。そして悟った。この装置
はまたしても、条件付けによる刷り込みを目論んでいる。血なまぐさい
行為に性的快楽を結びつけ、そのような行為を衝動的に求めるような
心理構造、つまりはサディストや快楽殺人犯のような心理構造を、
毬子の内に人工的に植え付けようとしているのである。
「だめ! そんなのだめ!」
574初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 3/31)(32):2012/02/03(金) 05:44:28.49 ID:gzvS5Sfb0
 ショッカーの目論見に気付いた毬子は、思わず声を上げた。そして
それは事態を悪化させた。性的衝動というものは、禁じようとすれば
するだけ、その力を増す。禁断の快楽ほど、甘く妖しい輝きで人の
心を掴む。バーチャルな殺戮行為のイメージと共に毬子の快感曲線は
急上昇し、毬子はオーガズムに達した。
 快楽の余韻が引いて行くにつれ、殺戮の連想も収まってきた。しかし
それは、禁断の快楽の味を毬子に刻みつけることに成功したことを
意味していた。それを知ってしまった毬子はもう元には戻れないことを
自覚した。いずれ欲望が高まれば、今度は本当にそれをやってみたく
なるに違いない、という確かな予感を毬子は感じた。意志の力でそれを
押さえ込むことはできるかもしれない。しかしそれを求める衝動を
消すことは、もう二度とできないだろう。そんな恐ろしい自己認識を、
毬子は受けいれざるを得なかった。

 「ショッカーへの誘い」は依然として通奏低音のように鳴り響いて
いた。しかもそれは、徐々に単なるシンボルではなく、そのシンボルに
よって表される「意味」を帯び始めた。つまり、エンブレムの画像や、
大首領の声をただ思い浮かべても電撃の苦痛は消えないのだ。その声が
意味する「ショッカー」という組織や、その目的を思い浮かべることで
ようやく、その苦痛は和らぐのだ。
 もしもショッカーの一員になることを毬子が受けいれれば、ショッカー
は、この危険な衝動を満たす場を与えてくれるだろう。だが、毬子の
強い意志は、その誘惑を断ち切った。代わりに毬子が選んだのは、
電撃の苦痛をすべて受けいれる、という選択肢だった。あの科学者に
よれば、この電源投入は今の毬子の肉体を起動させるために必要な
処置だ。だからこの苦痛は生存に対する危険のシグナルではなく、
単なる誤認識に過ぎない。毬子はそう自分に言い聞かせ、苦痛をやり
過ごそうとした。
575初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 4/31)(33):2012/02/03(金) 05:44:48.27 ID:gzvS5Sfb0
 苦痛に苛まれる中、毬子の心には得体の知れない憎悪や敵意が湧き
上がり始めた。毬子は最初、自分のそんな感情が、こんな状況に置かれた
ことからくる、当然の反応なのだと思い、それらの感情に身を任せた。
だがしばらくして、それらの感情の矛先がまったくショッカーに向かわず、
どういうわけか自分の親、自分の指導教官、この国、あるいは現在の
国際的な政治秩序などにばかり向き始めたとき、明敏な毬子は気付いた。
これもまた、脳改造の一部なのだ。世界に対する敵意や不満、あるいは
猜疑心を人為的に高め、ショッカーのみをその例外に据えることで、
ショッカーの庇護を求めるような心理構造を植え付けようとしているのだ。
 恐ろしい企みに気付いた毬子は、ショッカーの与えるまやかしの感情
から己を引き離し、正気を保たねばならない、と決意した――人間は
感情のみで生きる生物ではなく、理性という揺るがない規範を与え
られた存在だ。快楽殺人鬼の衝動も、世界に対する敵意と猜疑心も、
わたしをショッカーの邪悪な目的に都合のいい存在に作り替えるため、
脳内の機械が植え付けたものだ。そしてその事実を自分は明確に理解
している。衝動が危険なものであることも、敵意や猜疑心が人為的に
植え付けられたまやかしであることも、はっきりと自覚しているのだ。
正しい自己認識に基づき、理性に基づいて行為すれば、たとえこんな風に
感情の構造をねじ曲げられたとしても、わたしは正しい人間でいられる
のではないか。脳改造の呪縛を逃れることができるのではないか――。

 毬子は、醜くねじ曲げられていく自分の心を目の当たりにしながらも、
そんな希望の道を見つけ出し、おぞましい装置の支配から逃れようと
した。乱れに乱れる感情の波を無理やりに鎮め、彼女の優れた知性を
働かせようとしたのだ。
576初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 5/31)(34):2012/02/03(金) 05:45:09.70 ID:gzvS5Sfb0
 だが、そうして冷静な思考を巡らせ始めた毬子は、間もなく恐ろしい
事実に気がついた。なぜショッカーが「悪」なのか、なぜ今の人間社会
の正義や道徳を守らねばならないのか、その明確な根拠が、今の自分
にはどうしても見いだせなくなっていたのだ。
 古くは哲学者デイヴィド・ヒューム、二十一世紀においては脳科学者
ダマシオが考察しているように、感情に導かれることのない、単なる
理性、単なる論理は、驚くほど無力である。とりわけ人間の行為に
関わる思考、倫理、道徳などは、適切な感情の裏付けがあって始めて
十全に機能する。
 例えば、なぜ人は人を殺してはならないか、という自明に思える問い
ですら、それに理屈だけで答えようとするのは驚くほど困難である。
通常、そのような問いが単なる哲学ゲーム以上の深刻な問いにならない
のは、その規範が単なる論理のみによってではなく、感情や習慣と
いった理性以外の要素によって強く支持されているからだ。
 だが、今の毬子からは、そのあたりまえの感情的な支えが奪い取られて
しまった。今の毬子にとって、その問いは浮世離れした哲学談義など
ではなく、深刻な人生の問題になってしまったのだ。

 たしかに、殺人はいけない、という社会規範に理屈で答えることは
ある程度は可能である。殺人をしたら警察に捕まるリスクを冒す。
それは大抵は引き合わない。これは一つの理由だろう。あるいは、
自分が殺されたくないならば、他人を殺すべきでもない。そんな理屈も
考えられる。そもそも、無秩序な殺人を放置したら社会は解体する。
そんな社会は長続きできまい。従って殺人の禁止は理に適っている。
こんな理屈も可能だ。
577初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 6/31)(35):2012/02/03(金) 05:45:29.94 ID:gzvS5Sfb0
 だが、ショッカーの組織力と科学力をもってすれば、全く証拠を
残さない殺人は十分に可能だろう。また、「殺されたくないから殺さ
ない」という理屈は、対等の人間同士のルールしか基礎づけることは
できない。超人的な知力を体力を備え、強大な組織の保護を受けて
いる改造人間は、そのルールの外側にいるのではないか。また、現状の
社会秩序の維持ではなく破壊こそ、ショッカーの目的だ。そして
ショッカーが最終的に築く理想社会は、改造人間による弱者の殺害を
悪とは認めない社会だろう。
 毬子はこれに類する自問自答を延々と行った。そうして、結局、
理性によってショッカーの理念を退けることを、ほとんど断念せざるを
えなくなった。
 苦闘の中、毬子が最後にすがったのは、理性的な答えではなく単純な
「信念」だった。かつての自分を含む人類の大部分は、ショッカーを
悪だと認定する。自分はもう、それを当たり前だと感じる感性を奪い
取られてしまった。だが、ここではなく、彼らの側にいたい。いなければ
ならない。そんな思いは自分の中に残っている。それを信じよう。
 それが毬子の最後の砦だった。だが、脳改造装置は容赦なく「彼ら」
への敵意、軽蔑、猜疑心を吹き込み続けた。そして毬子は、その感情の
描き出すイメージが完全なまやかしではなく、ある程度は現実に適って
いることを認めざるをえなかった。人間は「善意」だけで動く存在で
はない。むしろかなりの度合いで、打算や、軽蔑すべき短慮や、欺瞞的
な意図が人間を動かすのだ。
 普通ならば、それでも他人の善意を信じる、という態度には意味が
ある。他人を信じることができる人間は、他人から信じられる人間で
ある。そうやって人間たちは絆を結び、社会を維持している。
578初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 7/31)(36):2012/02/03(金) 05:45:48.84 ID:gzvS5Sfb0
 だが、彼らが、今の自分を受けいれてくれる事などあるだろうか。
凶悪な毒物や危険な武器を体内に満載し、殺人に性的快楽を覚える
やみがたい衝動を植え付けられ、ショッカーに属さない者の顔を見れば
反射的に敵意と憎悪と猜疑心に火がつくような、ねじ曲がった心の
持ち主。そんな存在を、彼らは自分たちの同胞として受けいれて
くれるのか。
 毬子は刻々と心を歪められていく自分に恐怖した。この現実のすべて
から逃れたいと思った。その思いが、毬子から叫びを引き出した。

「ああっ! 誰か! 誰か助けてっ!!」

 自分の言葉を自分で耳にしながら、毬子は「助け」など不可能で
あることを再認識した。たとえ奇跡が起き、毬子がこのアジトから
救出されたとしても、すでに起動を始めた脳改造装置が停止することは
もうない。それは毬子を完全なショッカーのしもべに作り変え、毬子の
命の続く限り、毬子をその状態に留め置くだろう。毬子をショッカー
から「救い出す」ことは、今となってはもう不可能だ。今の毬子は
もう、この社会が存続せねばならないならば、いてはならない危険な
存在にされてしまったのだ。
 ――そうか。わたしが、わたしの信念に忠実でいるためには、わたし
は生きていてはならないんだ。もうわたしは、そういう存在なんだ――。
 自己が選び取ろうとした「信念」の残酷な帰結に毬子は直面した。
自分の信念に従うならば、自分はいてはならない存在である。それは、
毬子が何をすべきかの道しるべであるように思われた。
579初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 8/31)(37):2012/02/03(金) 05:46:08.05 ID:gzvS5Sfb0
 だがそのとき、毬子の中の、抑えられない何かが叫んだ。

 ――死にたくない!!――

 万事につけ淡泊で、人生から距離をとって生きてきたような毬子は、
不意に湧き上がったそんな感情にうろたえた。実のところそれは毬子
自身の感情ではなく、毬子と一体化したあの雌クジャクの生存本能
だった。だが、毬子にそれを知る術はなかった。否、仮にそれを知った
としても、毬子の「彼女」へのやみがたい愛着は、「彼女」を生かす
ために同じ選択をとらせたかもしれない。
 そして、その生存衝動の発露が、いわば毬子の脳改造の「折り返し点」
だった。その突破点を越えた毬子は、坂道を滑るように、ショッカー怪人
としての自分を受けいれ始めたのだ。

 ――死ぬ必要なんて、ないんだ。わたしには、ただ一つだけど、
居場所がある。そこにいれば、わたしは生きていてもいい。それどころか
そこは、わたしを必要としている。わたしはそこで、わたしにしか
できないことをするのだ――。

 毬子はここに連れてこられるまでの自分の人生を想起した。
 毬子の美貌と豊満な肉体は、毬子の母から受け継いだものだ。毬子の
年の離れた姉もまた、それに劣らず美しい女性だ。そして毬子は母や
姉の人生から、過度の美貌が必ずしも女性を幸福にしないこと、否、
生き方次第ではかえって不幸を導くことを学んだ。母も、姉も、同性
からの嫉妬を受け、容姿にしか目を向けない男性につきまとわれ、
交際を断れば逆恨みされ、果ては性犯罪の標的になり、決して幸福とは
言えない人生を歩んでいる。美貌を使いこなし、人生を渡って行くには、
彼女たちはあまりに善良で傷つきやすい心の持ち主だったのだ。
580初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 9/31)(38):2012/02/03(金) 05:46:30.52 ID:gzvS5Sfb0
 だから毬子は、ある時期から、自分の中の「女」の部分を極力人目から
隠し、最高学府、城南大学に入学して、自分の知力で自分の人生を
切り開く道を選んだ。だが、隠しても隠しきれない彼女の美貌が、
毬子の研究者人生を不遇なものにしていた。「美貌と知性は反比例する」
とでもいわんばかりの根拠のない軽蔑を彼女はたびたび受け、彼女自身
が感知しない入り組んだ三角関係、四角関係が彼女の周囲に形成され、
彼女の研究を妨げた。
 毬子はしかし善良で、攻撃性や怨恨とは縁のない女性だった。貧しいが
愛情あふれる母や姉の愛を一身に受け、まっすぐに成長した彼女は、
自分を妨害する周囲の人間を憎むことはせず、意のままにならぬ感情に
動かれて流されて右往左往する彼らに、むしろ憐れみを感じていた。
そして自己の美貌に対する消極的な思いをさらに深め、クジャクだけを
友とする日々を送っていた。

 そんな毬子は今、ショッカーを受けいれる心の準備を始めていた。
 ――外の世界にはわたしの居場所はない。それは確かだ。わたしが
何かをできるとすれば、それはもうここ、ショッカーの中しかない。
そもそも、わたしはここに来る前から孤独だったのではないか。人類に
とって重要な帰結を招きかねない変異型クジャクの研究も、外の世界で
研究を続ける限り、誰からも相手にされず、埋没していたに違いない。
その研究と自分の真価を見抜いたのは、ただショッカーだけだったのだ。
ならばわたしは、ここに来る定めだったのではないか。こここそが
わたしが生まれたときからわたしを待ち受けていた、真の居場所だった
のではないか――。

「ショッカーへ、来るのだ。来るのだ」
581初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 10/31)(39):2012/02/03(金) 05:46:49.34 ID:gzvS5Sfb0
 鳴りやまない「ショッカーへの誘い」に毬子はとうとう心を開いた。
電撃の苦痛が停止し、同時に心がふっと軽くなった。そしてショッカー
への抵抗感が除去されたことで、毬子の認識枠組みは急激に改変され始めた。

 ――わたしにできることは何だろうか。わたしたちの使命は何だろうか。
「世界征服」だ。改造人間による、新しい社会秩序の建設だ。
 これまで人類が生み出してきた社会秩序は理性的な根拠に基づく
ものではなかった。それは人類が生物的、文化的に形成された感情的な
反応に基礎を起き、様々な政治的利害の調停の結果定着した、場当たり的
な決まり事の総体だ。既存の社会秩序への盲目の信仰を取り除いて
もらった自分には、それがよく分かる。
 ショッカーの建設する社会秩序についても、根本的にはそれは同じ
ことかもしれない。だが、ショッカーには未来の可能性がある。高度の
科学力を、偏見に囚われない仕方で適用することで、これまで人類が
達しなかった高みへと人類を引き上げる力が、ショッカーにはある。
大多数の人間には安定と、そして生物として失ってはならない恐怖への
感覚を授ける。そして能力のある人間には投資を惜しまず、その肉体と
精神を徹底的に強化する。能力あるものの力を集中させ、さらなる
高みを目指す力をそこから生み出すのだ――。

 毬子は興奮していた。生まれて初めて本当に生きる意味を見つけ
られた気がした。植え付けられた嗜虐心や世界への憎悪は、毬子の
高揚感をますます高めた。
582初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 11/31)(40):2012/02/03(金) 05:47:32.96 ID:gzvS5Sfb0
 脳改造装置が送り出すパルスは、被害妄想に似た敵意の錯覚と、
ショッカーの価値を中心にしたある種のパラノイアを生み出す。
他の価値をすべて相対化し、ショッカーの価値に従属させるような
認識枠組みを形成させるのだ。
 パラノイアの患者は、知性豊かであればあるほど、首尾一貫して
狂ってた妄想から容易には逃れられなくなる。どんなデータを与えよう
とも、そのデータは妄想を退けるのではなく、妄想を強める方向に働いて
しまうからだ。脳改造はその状態を人工的に作り出し、維持する。
回路が完成してしまえば、もう逃れることはできない。毬子の心は
今や、決してショッカーを疑うことができない仕方で作り変えられて
しまったのだ。

 毬子は再び自分を振り返った。
 毬子は、自分という人間が決して嫌いではなかった。母の愛情が
育て上げた、細やかな気遣いや穏和なものの考え方を、毬子は自分の
宝だと思っていた。
 それがかけがえのないものであったことを、毬子は否定する必要は
ない。毬子はそう考えた。他人を思いやり、絆を形成し、社会を築き
上げる。人類はそうして生きてきたのだし、その中で生きていく
限り、それは望ましい美点だ。
 ――だが、わたしはもうその中では生きていけないし、生きていく
必要もない。なぜならわたしは、改造人間なのだから。わたしは、
科学技術の粋を集め、肉体と精神を徹底的に調整された、人類を優越
する存在なのだ。そしてわたしはそれに選ばれるだけの能力を備えて
いた。だからわたしはその社会の中で生き続ける必要もない。
583初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 12/31)(41):2012/02/03(金) 05:47:50.99 ID:gzvS5Sfb0
 おごり高ぶるべきではない。ただの人類を軽蔑すべきでもない。
母や、かつての田薄毬子がそうであったような人間もまた、ショッカー
の理想社会の重要な一部だ。わたしと彼らはただ、役割が違うだけだ。
もって生まれたもの、身につけられたもの。
 そう。もうわたしは「田薄毬子」ではない。今のわたしは……――

「目覚めよ、孔雀女」

 心の遍歴が終わるのとちょうど呼応するように、あの荘厳な声が
響き渡り、今の彼女の真の名を告げた。
 すでに無影灯も落とされた薄暗い部屋の中、頭部の視覚増幅回路が
作動し、真っ赤な目が輝いた。
 「孔雀女」は天井の鏡面に映る自分の姿を見た。まるで目から鱗が
落ちたように、彼女は自分自身の肉体の美しさを認めた。そして、
ショッカーに見込まれた自分の頭脳や体力を心おきなく行使してよい
のと同様、自分は、この美しい肉体を存分に駆使し、そこから得た
利益をショッカーに捧げることができるのだ、ということに思い至った。
それは、自らの美貌から逃れ続けてきた田薄毬子が、美によって異性を
惑わす危険な改造人間、孔雀女として最終的に覚醒したことを意味していた。
 ゆっくりと起きあがった孔雀女は、手術台を降り、エンブレムの前で
片手を上げ、厳かに宣誓した。
「大首領閣下。あなたに永遠の忠誠を誓います」
 そうしてこみ上げる衝動に突き動かされるように、両手をさっと
交差させ、高らかな声を発した。
「パァ〜ッヴォ〜ッ」
584初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 13/31)(42):2012/02/03(金) 05:48:11.98 ID:gzvS5Sfb0
 奇声と共に孔雀女の背中の尾羽がさっと扇状に開いた。誇らしさと、
えもいわれぬエクスタシーに包まれた孔雀女は、レリーフを見上げ、
こらえきれぬように叫んだ。
「パァ〜ッヴォ〜ッ! ショッカーの一員に加えてくださり、感謝致します!」

 実験室で田薄毬子と出会った日の翌日、蒼井蜜子は、彼女の研究の
ことが気にかかり、研究室を再訪した。世の中には恐ろしい人たちが
いる。彼らはあなたの研究に目を付け、それを悪用するためにあなたを
誘拐するかもしれない。くれぐれも戸締まりや夜歩きには注意し、
少しでも不安なことがあったら、すぐに「アミーゴ」という喫茶店に
連絡して欲しい――そんな伝言を彼女に伝えるつもりだった。
 だが実験室に、毬子はいなかった。中にいた毬子の指導教員は、
毬子がクジャクを死なせてしまい、失意のあまり実家に帰ってしまった、
と告げた。激しい不安と後悔に襲われた蜜子は、毬子の学生を装い、
毬子の下宿と実家の住所と電話番号を聞き出した。
 毬子の安否を確かめようと大学を出ようとしたとき、オートバイに
乗った本郷が蜜子を呼び止めた。改造人間サメ男のアジトがようやく
突き止められたから、それを潰しに行くというのだ。蜜子はオートバイ
に乗り、本郷のあとを追った。毬子の件は後回しにせざるを得なかった。
こうしている間にも、サメ男の恐るべき作戦が、大勢の人命を奪い
かねないのだ。
 サメ男を倒しその計画を防いだ翌日には、蜜子たちの前にワニ男が
現れた。ワニ男の計画を阻止し、ワニ男を葬り去るために、蜜子たちは
一週間以上かかり切りになった。
585初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 14/31)(43):2012/02/03(金) 05:48:29.98 ID:gzvS5Sfb0
 その間に、田薄毬子の改造手術は着々と進行していたのである。
そして、もしも蜜子が毬子の失踪の事実を確認し、本格的にその捜索を
行っていたら、毬子を、少なくとも脳改造が行われてしまう前に救出
する可能性は十分にあったのだ。毬子の改造が行われていたアジトは
比較的近郊の、本郷たちがすでに目星を付けていた地域にあったのだから。
 だが、蜜子にはその時間を割く余裕はなかった。その間、ワニ男事件
だけでなく、美しい双子の姉妹の相次ぐ失踪や、有毒な菊の花による
連続死亡事件など、ショッカーの影をにおわせる事件は後を絶たな
かった。ショッカーは神出鬼没で、驚くほど広範囲で活動を展開しており、
ただ二人だけでそのすべての活動を封じることは、現実的には不可能
だった。本郷や蜜子が戦ってきた改造人間たちの活動は、ほんの氷山の
一角でしかないのだ。

 しばらく後、蜜子は「アミーゴ」に来ていた女性ジャーナリストから、
奇妙な噂を聞いた。彼女の友人である検屍官が奇妙な死体を解剖した
というのだ。ある若い女と三人の男が交通事故で即死したのだが、
解剖してみた所、女性の子宮も、男性の睾丸も、完全に退縮し、
その機能を喪失していたことが分かったという。
 これだけでも奇妙な事件なのだが、奇妙な点は他にもあった。
586初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 15/31)(44):2012/02/03(金) 05:48:49.74 ID:gzvS5Sfb0
 第一に、その四人の男女の関係と、事件が起きる少し前からの、
彼らの変調である。それによると、男性の内の一人は女性の古くからの
恋人だったが、他の二人はつい最近知り合った仲である。その女性は
内気で、化粧もせず、洋服も地味目のものを選ぶ方だったのだが、
ある時期を境に、化粧や服が派手になったのだという。さらに、
まるで整形手術でもしたように、急激にその容貌そのものが美しく、
また肉体のラインも官能的に変貌していった。そしていつの間にか
複数の男と、肉体関係をにおわせる付き合いをするようになった。
しかしもともとの恋人もそれを拒むでもなく、それらの男たちと共に
ホテル街などに出入りするようになったのだという。
 第二に、このような奇妙な事件であるにもかかわらず、事件が世に
出ることがなかったということだ。というのも、その検屍官の解剖結果
がいずこかに紛失してしまったというのだ。
「……で、何か裏が裏がありそうだと思って、いろいろと調べているの。
蜜子ちゃんの周りに、何かこう、急に色っぽくなった人はいない? 
男女は問わないわ。何でも、さっきの事件、恋人の男や他の男たちも、
女性が色っぽくなるのにつれて、セックスアピールがぐんぐん増して
いったんだって」
 店番をしていた蜜子は、事件の裏にショッカーの影を敏感に察知した。
同時に、このジャーナリストのあまりの無防備さに危惧の念を感じ、
こう忠告した。
587初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 16/31)(45):2012/02/03(金) 05:49:11.62 ID:gzvS5Sfb0
「その事件、かなりヤバい組織が関わっているような気がするんです。
真相を突き止めるのも大事だけど、無茶はしないで欲しい。もし、
核心に迫りそうな取材に行くときはわたしに一声かけて。わたし、
こう見えても空手の有段者なの。ボディーガードを引き受けるわ」
 気さくそうなジャーナリストは、にっこりと微笑むと、言った。
「ありがとう。頼もしいわ。じゃあ、そのときはお願いするわね。
でも、あんまり心配しなくても大丈夫。こう見えて、ヤバいことと
そうでないことの区別はついているつもり。あんまり深入りはしない
ことにする」
 そう言ってジャーナリストはアミーゴを出ていった。

 翌日、やはり蜜子が一人で店番をしていると、昨日のジャーナリスト
が深刻な顔で店を訪れて、蜜子に言った。
「蜜子ちゃん、空手の有段者って本当? ボディーガード、
引き受けてくれる?」
 断られてはいけない、と思った蜜子は、店の奥にあったビールビンの
空き瓶を持ち出し、その先端を手刀で切り落として見せた。目を丸く
するジャーナリストに、蜜子は愛用のフェンシング用の剣を持ち出し
て見せた。
「武器もあるわ。試合用じゃなくて、殺傷能力のある本物の剣よ。
詳しくは言えないけど、実戦経験もあります」
 唖然とした顔でジャーナリストは言った。
「……あなた、何者? ……でも、いいわ。多分、滅多なことにはならない。
あくまで保険みたいなものだから。一応、警察にも相談済みだしね。じゃあ。
ボディーガード、お願いする」
588初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 17/31)(46):2012/02/03(金) 05:49:32.31 ID:gzvS5Sfb0
 恐らく、その「滅多なこと」が起きるのだ。蜜子はそう思いながら
剣をケースに入れて持ち、なくもがなの変装として眼鏡と帽子をかぶると、
ジャーナリストの乗ってきた軽自動車に同乗した。

 運転をしながら、ジャーナリストは蜜子に説明した。
「実を言うとおおかたの調べはついていたんだけど、例の男女はある
アングラな製薬会社から媚薬みたいな、あるいは精力増強剤みたいな
ものを購入していたの。その薬品は、女性雑誌やエロ雑誌の広告と、
あとは口コミを通じ、一部の若者の間であっという間にブームに
なり、広まった。これがその広告」
 蜜子が手にしたこともない猥褻な雑誌をジャーナリストは手渡した。
開いてあったページに、仰々しいあおり文句を刻んだ薬の宣伝がある。
広告主は「パヴォ製薬」とあり、クジャクを図案化ーしたような奇妙な
マークが添えられている。
「『パヴォ製薬』、ですか?」
 首を傾げる蜜子にジャーナリストは答えた。
「パヴォはクジャクのこと。そのマークは『マラク・ターウース』
という、やっぱりクジャクの神様。まあ、それが分かっても、たいした
手がかりにはならなくて、その事務所を突き止めるまでが大変だったんだけど」
 「クジャク」と聞いた蜜子の心にざわざわと不安が湧き上がった。
だがその不安をこの女性に分かるように説明するには長い時間がかかる
だろう。蜜子はその代わり、質問を発した。
「それで、どうしようと?」
589初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 18/31)(47):2012/02/03(金) 05:49:48.92 ID:gzvS5Sfb0
 ジャーナリストは言った。
「先方には、通信販売ではなく直接に薬を購入したい、という話を
してある。向こうの責任者に会えたら、商品についての質問をするふり
をして、いろいろと聞き出す。しっぽを掴んでも、そしらぬ顔をして
その場は去る。そうして、薬のサンプルやら、聞き出した話を記事に
まとめて、犯罪的なことがあったら警察にも通報する。そんな計画」
 常識的に考えて、かなりいい加減で危ない話だが、蜜子は何も言わ
なかった。これから向かう先がショッカーの末端組織だったとしても、
こちらには仮面ライダー2号である自分がいるのである。よほどのこと
がない限り、なんとかなるはずだ。蜜子はそう思った。

「お電話いたしましたシラマツです。友人と二人で、お薬を購入しに
参りました」
 郊外の高級マンションの一室の前に立ったジャーナリストは、ノック
をすると、偽名を名乗って来訪を告げた。
 扉が開き、秘書らしい美しい女性が二人を中へ通した。二人が入ると、
秘書が後ろ手でかちゃりとドアのロックを閉めたのを、蜜子は見逃さなかった。
 ソファーに座っている二人の前で、扉が開き、パヴォ製薬の取締役
だと称する人物が姿を現した。
 人物を目にした蜜子の心にひりひりとした良心の呵責が生じ、
蜜子は思わず声を上げた。
「……やっぱり、田薄……毬子さん?」   
 そのとき、横に座っていたジャーナリストが蜜子の腕をひねり上げた。
傍らにいた秘書も蜜子の反対側の腕をとり、用意していた手錠を蜜子の
手にはめた。
590初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 19/31)(48):2012/02/03(金) 05:50:11.21 ID:gzvS5Sfb0
 青い顔の蜜子の前に歩み寄った取締役、毬子は、念を押すように
ジャーナリストに問いかけた。
「取材結果を話したのはこのお嬢さんだけね? まったく、そちらの
検屍官さんが守秘義務を守らないから、やっかいなことになるところ
だったわ」
 蜜子が秘書だと思っていた女性は、ジャーナリストの話に出てきた
検屍官であったらしい。検屍官は消え入りそうな様子で毬子に詫びた。
「申し訳ありません」
 その様子を見てくすりと笑った毬子は、検屍官に言った。
「ごめんなさい。冗談よ。結局、こうして後始末が済むことになるん
だから、気にしなくていいの」
 それから毬子は蜜子の方に向き直って言った。 
「さて。あなた、かつてのわたしの知り合いだったかしら? ああ! 
そうだ、あのときの学生さんね。道に迷って、わたしの研究室に入って
きた。ふふふ。あなたには、いつかちゃんとお礼を言わないと、
と思っていたのよ」
 蜜子は田薄毬子であるはずの女性をまじまじと見据えた。顔や体つき
は間違いなく同じ人物だ。だが、様子も雰囲気もまったくの別人と
いってよかった。
591初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 20/31)(49):2012/02/03(金) 05:50:32.12 ID:gzvS5Sfb0
 あのときの毬子は、髪型も、服装も、あるいはビン底のような眼鏡も、
その全てが、自分の「女」としての美を覆い隠そうとしているとしか
思えない装いだった。だが今の毬子は全くその逆だった。ふわりと
ウェーブのかかった豊かな髪。眼鏡はかけておらず、濃すぎない巧みな
化粧が、その美貌を一層際だたせている。身にまとうのは、ノースリーブ
の薄地のワンピースで、胸元にV字の大きな切れ込みが入り、胸の球体の
かなりの部分が露出している。ブラジャーを着けていないにもかかわらず、
その乳房はまるで垂れる様子がなく、布越しに浮き上がった乳首はぴんと
上を向いている。歩くたびに足にまとわりつき、へその位置までくっきりと
浮かび上がる、オブラートのように薄い布地と、腰の上まで切れ上がった
スリットは、彼女が下半身にも何の下着も身につけていないことを
はっきり示している。そしてドレスの上には、クジャクの尾羽の目玉模様
が一面に散りばめられていて、サイケデリックな印象を与えている。
その全ては、かつてとは全く逆に、毬子の美貌を最大限引き出そうと
いう意図をはっきりと表していた。
 しばらくその妖艶な姿に見入っていた蜜子は、大事なことを思い出した
様子で、口を開いた。
「毬子さん。あの薬品はあなたが作ったんですね? あの薬品は、
あのクジャクの『お嬢さん』に起こったのと同じことを、人間の体に
引き起こす。セックスアピールを増強させる一方で、生殖能力そのもの
は奪ってしまう。教えてください。あなたは、薬の効果をちゃんと
分かっているのか。薬の流通がどういう結果をもたらすのか、理解して
いるのか。そして、もし理解しているなら、なぜそんなことに手を
貸したのか。それを聞かせてください」
592初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 21/31)(50):2012/02/03(金) 05:50:53.08 ID:gzvS5Sfb0
 これはどうしても聞いておかねばならないことだった。本郷には
装備されているOシグナルは、蜜子には備わっていない。だから蜜子は
それを会話の中で明らかにして行かなくてはならない。
 毬子は、何も知らずに騙されて研究成果を利用されているだけなのか。
それとも、催眠暗示のような手段で操られているのか。それとも……
もう、二度と取り返しのつかない処置を、その脳髄に施されてしまって
いるのか。それをはっきりさせなければならない。騙されていたり、
暗示で誘導されているだけなら、蜜子は毬子を救うことができる。
しかし、もしも……
 蜜子は息をのんで毬子の答えを待った。やがて毬子はくすりと笑って
から答え始めた。
「いいわ。教えてあげる。あなたの言うとおり、この薬品は人間の
性的魅力を増幅させ、性欲を昂進させ、性感と、性行為の持続力を
飛躍的に高める。男も、女も、この薬の効果を知った者は我も我も
とそれを求めた。求められれば、販売するわ。それが市場経済という
ものでしょ」
 蜜子は言った。
「答えになっていない。あなたはそれに恐ろしい副作用があることを
知っていたんでしょ? この薬の作用で、男性も、女性も、二度と
子孫の残せない体になっていまう。その副作用を取り除く努力もせずに、
それを販売した。それがなぜかを、わたしは聞いているの」
593初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 22/31)(51):2012/02/03(金) 05:51:09.31 ID:gzvS5Sfb0
 毬子はくっくっくと、笑いながら言った。
「ああ、そのこと? 下劣な遺伝子をこの世界から取り除くためよ。
上辺の美貌を求め、衝動に流され、刹那的な快楽を求める人間がこの薬
を買う。そして、そういう人間の遺伝子は、この薬の作用で子孫を
残さずに消滅することになる」
 蜜子は苦いものがこみ上げてくるのをこらえながら、目の前の女性に
さらに問いかけた。
「日本の人口が激減することになりかねないわ。どうするつもり?」
 毬子は教師が学生の質問に答えるように、うれしそうに答えた。
「この国の、いえ、この世界の人口はちょっと多すぎる。荒療治でも、
減らす工夫は必要よ。それに、分娩による出生はいずれ、もっと合理的な
手段で置き換えられる。一握りの、遺伝的に優れた人間と、数多くの
従順な労働力を、計画的に受精させ、試験管の中で培養する。そうして、
社会にとってもっとも適正な人口比を、人工的に維持していく。そんな
時代がもうじき訪れる。この計画はそのための地ならしみたいなもの」
 絶望がこみ上げてくるのを感じつつ、蜜子は再度問いかけた。
「もっと大事な問題がある。この薬を使った人間は、子供を作り、
育てるというかけがえのない喜びを、一生閉ざされてしまう。
それをあなたは何とも思わないの?」
 毬子は謎めいた微笑を浮かべ、言った。
「面白いことを教えてあげる。わたしたちは一つの対照実験を行った。
一部の地域で、薬の副作用をはっきり明示して、薬の販売を行ったの。
結果、対照群と大差ない比率で、薬は売れた。つまり、この薬に飛び
つくような人種は、妊娠の危険のない、快楽だけのセックスを求めている。
子を産み育てる煩わしさから逃れることしか考えていない。これが現実。
だからわたしたちはやっぱり、それを求める者に、ふさわしいものを
与えているだけなの。
594初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 23/31)(52):2012/02/03(金) 05:51:26.32 ID:gzvS5Sfb0
 もちろん、そうでない人、子供を求めようとする人々が一定数いる
ことは認める。その人々の喜びを奪っていることは否定しない。だけど、
わたしが思うに、こんな薬に手を出す連中が、ちゃんとした子育てを
やり遂げられるとは思わない。子供を育てるというのはとても困難なこと。
一部の限られた、それを許された者にしか、やってはならないこと。
わたしはそう思う」
 毬子はそう言うと、ほんの少し遠い目をした。脳改造によっても
消えることのなかった、母への尊敬と思慕が脳裏をかすめたのだ。
蜜子は無論その意味を完全に理解したわけではなかったが、それでも、
毬子が特定の誰かへの思いにふけっていることだけは理解できた。

 蜜子の中に複雑な思いが湧き上がった。この女性が、もう、取り返しの
つかない処理を施されてしまっていることははっきりしていた。ならば、
自分のなすべきこともまた、ただ一つだ。だが、「それ」を施されながら、
この女性は最大限の理性と正常な判断力を維持している。ここまでの
人間はそうはいない。たいがいは、快楽殺人鬼の衝動を植え付けられた
だけで、もう人間であることを嬉々としてやめてしまう。それを意志の
力で押さえ込めた者も、結局は人間への憎悪と猜疑心に心を満たされて
しまう。だが、この女性は恐らく、それらの関門を乗り越え、強い
自意識を保ったまま今に至っているのだ。それは並大抵の人間にできる
ことではない。
 だが、だからこそ、この女性はとびきり危険な存在なのだ。高度の
知性と判断力を維持しつつも、この女性の脳内には「彼ら」の理想が
完全に組み込まれ、それと不可分ににそれと一体化している。そういう
人物こそ、この社会の、人類の、もっとも恐るべき敵対者であるはずなのだ。
595初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 24/31)(53):2012/02/03(金) 05:51:43.10 ID:gzvS5Sfb0
 蜜子は確認するように最後の質問を発した。
「答えて。あなたは、自分のそういう考え方がこの社会の秩序を破壊し、
良識を解体する、間違ったものだと思わないの?」
 毬子は深くうなずき、蜜子に答えた。
「その通り。わたしたちが目指す目標は、今の社会の秩序を覆し、
この社会に生きる者を恐怖に突き落とすことにある。でも、それの
どこがいけないのか、今のわたしにはもうわからない。わからない
ように、されてしまったの。だってわたしはもう……」
 蜜子の目の生体組織から、涙がぽろぽろとこぼれた。
 ――ごめんなさい。わたしのせいなんだ。あのとき、わたしがもう
少し警戒していたら。せめて、あの失踪事件の直後に、捜索を開始
できていたら――。
 後悔と慚愧の念が蜜子の胸を満たした。こみ上げる嗚咽をこらえながら、
蜜子は毬子の言葉のあとを受けて、言った。
「……あなたは、脳改造手術を受けてしまった。そうなのね?」

 その言葉と共に蜜子は手錠を引きちぎり、足を大きく開いて天井に
ジャンプし、パンティの中に指を差し込んで膣内のスイッチをまさぐり
ながら叫んだ。
「変身!」
 急変した事態を受け、ジャーナリストと検屍官が擬態を解き、
女戦闘員の正体を現した。二人とも、つい昨日までは何も知らない善良な
人間だった。毬子の手下たちが秘密の流出に気付き、彼女たちを拉致し
戦闘員へと改造した。そして秘密を知った「アミーゴ」の店員を
欺き、女戦闘員に改造するためにここへ連行してきたのだった。
596初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 25/31)(54):2012/02/03(金) 05:52:01.92 ID:gzvS5Sfb0
 蜜子は宙空で、セーブモードである擬態を解除し、改造人間・
仮面ライダー2号としての本来の姿に戻っていた。紫の髪の毛。緑の
複眼。太い触角。ストライプ模様に彩られた口元。青い皮膚。同心円
模様の乳房。サッシュのような腰の皮膚。本来ならば「蜂女」とでも
呼ばれる怪人へと改造されてしまった彼女は、脳改造手術の直前、
本郷猛に救出され、正義の戦士として戦う定めを自ら背負ったのだ。
「ライダーパンチ!」
 天井を蹴った蜜子は、その反動で増強された拳で、二人の女戦闘員の
頭部を直撃した。頭部が砕け、二人は一瞬で絶命した。

「ぬ……そうか。蒼井蜜子! まさかあなたが!」
 瞬殺された二人を見た毬子は、自分の不覚を悔いながらつぶやいた。
 毬子は脳改造後、危険な未完成品である二人の脱走者の情報をたしかに
受けた。だが、他人の視線を避ける習性が身に付いた毬子は、他人を
顔で識別する習慣を失っていた。蜜子に会ったとき、その語調や雰囲気
から「研究室に迷い込んだあの学生」であることを認識したものの、
それがあの忌まわしい未完成品であることには気づけなかったのだ。
 毬子はドレスの裾をまくり上げ、股間に指を伸ばすと、先ほどの
蜜子同様、内部のスイッチをまさぐった。戦闘員を片づけた蜜子が
目を向けたとき、そこにいたのはもう、擬態を解除した怪人・孔雀女
だった。とがった頭部。つり上がった真っ赤な目。毬子の肉感的な
肢体を裸体以上に扇情的に際だたせる、メタリックブルーの皮膚と、
胸と腰を飾るサイケデリックな目玉模様。そして、かかとと背中から
伸びるきらびやかな羽根飾り。そこにいたのは、美の化身と言うしか
ない美しい改造人間だった。
597初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 26/31)(55):2012/02/03(金) 05:52:18.66 ID:gzvS5Sfb0
「パ〜ヴォ〜ッ!」
 本来の姿に戻った毬子は、尾羽を扇状に広げ、叫んだ。
 蜜子は、その美しさに一瞬胸を打たれた。それでもその体は半ば
本能的に武器である剣を引き寄せ、構えの姿勢をとらせた。
 毬子もまた、かかとから生える尾羽を抜き、蜜子に向けた。狭い
室内の中、二体の改造人間はにらみ合い、互いの出方を待った。床に
倒れた女戦闘員たちの以外が、ごぼごぼと泡を立てて溶け始めた。

 長いにらみ合いが続いたのち、勝負は一瞬で決した。
 分析力に優れていたのは毬子であったと言うべきである。毬子の
一撃は、蜜子の急所を着実に衝くはずだったのだ。だが、実戦経験で
一日の長のある蜜子は、それをかろうじてかわし、必殺の一撃を毬子に
加えた。剣は毬子の人工心臓を正確に射抜き、毬子はぴくりとも
動かなくなった。
 横たわる毬子を見た蜜子の中に、不意に猛烈な吐き気が生じた。
最近はいつもそうなるのだった。罪悪感、嫌悪感、無力感。そうした
感情が一度に押し寄せ、この現実から逃れたい、という思いが嘔吐を
もたらすのだ。
 ――ごめんなさい。あなたは悪くない。でも、あなたは危険な存在
だから。この社会にとって、いてはならない存在だから。だからこう
するしかなかった。わたしのせいなのに。わたしが気を付ければ、
あなたは改造なんてされなかったかもしれないのに。ごめんなさい。
ごめんなさい――。
598初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 27/31)(56):2012/02/03(金) 05:52:36.68 ID:gzvS5Sfb0
 蜜子は剣を抜き、口を押さえ、部屋を飛び出した。本来ならば、
毬子の完全な絶命を確認し、彼女が泡となって消えていく様子を見届け
ねばならない。それを怠るのは、正義の味方として失格である。
 だが、蜜子の精神の限界が、それを許さなかった。もしも今、毬子の
遺骸が溶け崩れる様子を目の当たりにしたら、蜜子は嘔吐し、そのまま
正気を失ってしまうかもしれない。それほどの切羽詰まった精神の危機を、
蜜子は感じていた。
 蜜子はマンションを後にし、最大の脚力で来た道を戻り、「アミーゴ」
へ帰った。

 「アミーゴ」の二階には本郷が帰宅していた。部屋に押し入った蜜子は、
本郷に向かって言った。
「怪人を一人殺してきた! 今すぐ、エネルギーを補給して。早く。
でないと、死んじゃう」
 エネルギーは半分以上残っていたのだが、それでも、蜜子には本郷が
必要だった。

 本郷はベルトの風車からエネルギーを補給できる。だが、蜜子は自力で
エネルギーの産生ができない。ショッカーに戻るのでなければ、本郷が
生み出したエネルギーを、注入してもらうしかないのだ。そしてそれは
本郷の陰茎を蜜子の膣に挿入すること、つまりはセックスによってしか
なしえない。二人はその目的を果たすため、定期的に交わらねばなら
ない定めにあった。
 本郷は無言で布団を敷き、事務的に衣服を脱ぎ始めた。蜜子も全裸に
なり、布団にあおむけになった。本郷が覆い被さり、固くなった陰茎を
蜜子にあてがった。
599初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 28/31)(57):2012/02/03(金) 05:52:57.09 ID:gzvS5Sfb0
「待って。ごめん。今日は……ちょっとだけ長く準備して。……ここを
なめたり、あそこをいじったり、そういうのをやって。お願い」
 異性としての本郷に心底惚れている蜜子は、普段ならばこの段階で
すでに本郷を受けいれる準備が整っているのだ。だが、今日は違った。
蜜子の胸に苦々しい罪悪感と後悔がこびりつき、性欲のかけらも湧き
上がってこなかったのだ。エネルギー補給も無論必要だったが、それ
以上に蜜子は、本郷の抱擁や愛撫で、現実から逃れたかったのである。

 長くぎこちない愛撫の果て、ようやくうっすらと湿ってきた蜜子の
中に、本郷は「電源プラグ」を挿入した。放電のために腰を前後させる
本郷に、蜜子は問いかけた。
「ねえ猛。もしもわたしが『蜂女』にされてしまったら、ショッカーに
捕まって、脳改造を受けてしまったら、猛はどうする?」
 腰の動きを止めた本郷は。眉間にしわを寄せ、しばらく時間を
おいてから答えた。
「……わかりきったことを、聞かないでくれ」
 そうして本郷は行為を再開し、いつにも増して事務的に最後を迎えた。

 服を着始めた本郷を目で追いながら、布団の上で横たわったままの
蜜子は、悲しげな表情で物思いにふけった。
 ――「わかりきったこと」、か。そう。わかりきったことだ。
この人はずっとそれをやってきた。これからもそれをやっていくだろう。
 わたしはどうだろう? もしも猛が脳改造を受けて、ショッカーの
しもべにされてしまったら、わたしは猛と戦えるのか?
 ……いや。わたしの命は猛なしにはありえない。だから、わたしも
ショッカーの脳改造を受けるしかないのではないか……――。
 考えても仕方がない思いを何度も巡らせている内に、蜜子は眠りに
落ちた。
600初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 29/31)(58):2012/02/03(金) 08:39:57.53 ID:gzvS5Sfb0
 目覚めたとき、蜜子がいたのは本郷の部屋ではなかった。そこは、
見まがいようのないあの忌まわしい施設、改造手術室だった。
 昔の夢を見ていたのだ、と蜜子は気がついた。蜜子は今日、戦闘員に
改造されてしまった親友・皆子に欺かれ、改造人間用の麻酔薬を注射
されてしまった。そのまま眠りにつき、気がついたらここにいたのだ。
 蜜子の肉体は、「仮面ライダー2号」の姿から、急激にパワーセーブ状態、
つまり、人間だった頃の蒼井蜜子の姿を模した擬態形態に移行しつつ
あった。股間に挿入された電源プラグが、蜜子の体内に充電された
電源を放電し、蜜子の活動能力を奪っているのだ。
 「変身」後の状態ならば、麻痺さえ切れれば、脱出も容易だろう。
だが、ここまでエネルギーを抜かれてしまっては、もうそれは不可能だった。
 ――馬鹿みたいだ。わたしは、改造手術台の上で、怪人の姿から、
人間の姿に改造されている。そして、そんな自分に、たまらない心細さ
を覚えている。あの姿こそわたしの本当の姿だって、認めているみたい
じゃないか――。
 蜜子はそう自分を責めた。だが実際、それは今の蜜子の真実なのだった。
「放電終了。これより蒼井蜜子の改造手術を再開する」
 ――……再開? そう。「再開」なんだ――。
 蜜子はあの日、騙されてアジトに誘い出され、無理やりに衣服を
脱がされ、手術台に固定されて、改造手術を受けさせられた。
 それは、世界中のアジトで、何度も何度も繰り返された、当たり前の
光景だ。誰もが最初は抵抗する。しかしどんなに抵抗しても、改造手術
は行われてしまう。脳改造が終了すれば、その人間はもう抵抗しない。
抵抗するどころか、ショッカーの一員であることに感謝するようになる。
601初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 30/31)(59):2012/02/03(金) 08:40:28.32 ID:gzvS5Sfb0
 そんなプロセスが、世界のどこかでずっと繰り返されている。
ショッカーに一度目を付けられ、改造素体に選ばれてしまえば、もう
その運命は逃れられない――ごく、ごく、まれな、幸運な例外を除けば。
 ――わたしはそのまれな例外だった。ショッカーにとっての変則事項
だった。でも、「正義の見方」を名乗って、世界の平和のためだと
思って、そうやって戦っても、それはただの変則事項。終了するはずの
プロセスが、事故で中断してしまっただけ。不調が収まれば、プロセス
は続行される。改造素体は抵抗をやめ、ショッカーに忠誠を誓う。
その脳が元に戻ることは二度とない。「変則事項」は変則事項である
ことを永久にやめる。ただそれだけのことだ。わたしも、多分猛も、
結局はこうなるしかなかったのだ。
 わたしたちの目を逃れたショッカーの作戦、わたしたちが倒して
いない怪人、わたしたちが救えなかった改造素体が世界中にどれほど
多くいることか。わたしたちはあてもなく、たまたま露見したショッカー
のほころびをつき、大海の中の一滴を取り除いて捨てているだけでは
ないのか――。

 そんな絶望と無力感にうちひしがれながらも、蜜子の心の一部には、
奇跡を信じる気持ちが消えてはいなかった。
602初代仮面ライダー2号外伝1(後編-2 31/31)(60):2012/02/03(金) 08:40:55.74 ID:gzvS5Sfb0
 ――でも、わたしだけは別かもしれない。だって、わたしには猛がいる。
仮面ライダーがいる。彼なら、どんなに困難な障害が立ちはだかろうとも、
きっとここにたどり着き、あの時みたいにわたしを助け出してくれる。
そうして、わたしたちはまた一緒に悪と、ショッカーと戦うのだ。
 妄想かもしれない。でも、信じてみるしかないじゃないか。だって、
だって、こんなの悲しすぎる。信じてみよう、信じて、信じて、
かなわなかったらそのとき後悔すればいいんだ。信じよう。仮面ライダー
を信じよう……――。

 蜜子のそんな願いは、結局は果たされずに終わる。たしかに本郷は
蜜子の間近にまでたどり着いた。だが、本郷がなすすべもないまま、
蜜子は脳改造を受け、仮面ライダー2号の名を永久に失う。その代わり、
残忍で冷酷な改造人間・蜂女の名を、誇りと狂気をもって名乗るように、
その脳髄を改造されてしまう。
 だが、今の蜜子にその運命を告げるのは、あまりにも残酷にすぎよう。
わずかの間でも、夢をみさせてあげよう。
 
 ところで、脳改造後、蜜子は一命を取り留めた毬子と再会する。
選ばれた改造人間として完成されたことを互いに祝福した二人は、
蜜子が本郷の手で絶命するまでの短い間、友情と言ってもよいものを、
互いの間に結ぶ。だがそれはまた別の物語である。(了)
603maledict ◆sOlCVh8kZw :2012/02/03(金) 08:42:35.72 ID:gzvS5Sfb0
以上お粗末でした。
もともと最後の3レス分が書きたくて構想したネタだったのですが、
その前がすごく長くなってしまいました。すみません。