おにゃのこが改造されるシーン素体13人目

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174ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
笛の音と同時にストップウォッチのスイッチが押される。
競泳タイプの紺のワンピースの水着を着た女性が勢いよくプールに飛び込む。
「よし、いいスタートよ。行って行って」
ストップウォッチに刻まれるタイムに目を落としながら、女性コーチは泳いでいく選手に声をかけた。

「うーん・・・最後で失速しちゃったわねぇ・・・」
「すみません、なんだか急に力が抜けたみたいで・・・」
特訓を終え更衣室へ向かうコーチと選手。
オリンピックへ向けての強化特訓も、ちょうど半ばを過ぎる頃だった。

「また明日がんばりましょう。世界記録も手の届く位置まで来ているんだから」
「はい、コーチ」
そう言いながら更衣室のドアを開ける二人。
だかその表情が一変する。
ドアを開けたそこには、全身を黒尽くめにした怪しい男たちが待っていたのだった。

                     ******

「もう、美雪ったら・・・そんなんじゃいつまで経っても泳げるようにならないわよ」
暖かい日差しの降りそそぐ海岸の岩場。
赤いワンピースの水着を着た若い女性が、紺のスクール水着を着た少女の手を引いている。
「だ、だってぇ・・・こ、このあたり深いよぉ」
スクール水着の少女は、恐る恐るといった足取りで進んでいく。
「大丈夫よ。お姉ちゃんがついているから安心して。それに足が付くところだと、美雪はすぐに立っちゃうでしょ」
にこやかながらも有無を言わせぬ口調で少女の手を引く若い女性。
どうやら歳の離れた姉と妹らしい。
まだ泳げない妹を泳げるようにするために、この海岸の岩場にやってきたのだろう。
「あうー・・・お姉ちゃん、溺れそうになったら助けてよ」
「大丈夫大丈夫。任せなさいって。お姉ちゃんはこれでも大学の水泳の選手なんだからね」
そういいながら手を引く姉を、妹は多少不安げな表情で見上げているのだった。
175ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:39:10 ID:D4bIpO0g0
「仲いい姉妹だな。けど、大丈夫かな」
そんな二人の様子を、沖に出て行くボートの上で眺めている男女一組。
精悍な顔つきのたくましい青年が、ちょっと心配そうにつぶやいた。
「大丈夫だと思うわ。このあたりはあの娘にとっては深いかもしれないけど、大人にはそう深くないから」
ウェットスーツに身を包んだ女性が手にした地図に目を落とす。
きりっとした表情をしているが、長い黒髪と相まってとても美しい。
「そうだな。それで、音波の発信源はどのあたりなんだい、エリナ?」
「本部の情報によればこのあたりよ。奴ら、一体何をたくらんでいるのかしら・・・」
エリナと呼ばれた女性が地図を指し示す。
「わからんな・・・だがろくでもないことは間違いないだろう。ショッカーめ!」
「油断しないでね、滝」
「当たり前だ」
滝と呼ばれた男は、ボートを地図に示された場所に向けるのだった。

「それじゃお姉ちゃんがお手本を見せるから、よく見てるのよ」
そう言って岩場から海へと姉は飛び込む。
水しぶきが上がり、水面に顔を出した姉はとても気持ちよさそうだ。
ゆったりとクロールや背泳ぎをして見せ、ちょっと離れたところに浮かび上がる。
「さあ、思い切っていらっしゃい、美雪」
両手を差し出して妹を呼ぶ姉。
その様子に、妹も恐る恐る前に出た。
176ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:40:06 ID:D4bIpO0g0
「えっ? キャッ!」
突然姉の悲鳴が上がる。
「えっ?」
妹が足元から姉のほうへ視線を向ける。
すると、姉の浮いている周りから白い泡が沸き立ち、姉が溺れかけているのだ。
「うぁ・・・ごぼっ」
海中に引き込まれそうになっている姉。
助けに行きたいけど、泳げないことにはどうしようもない。
「だ、誰か〜! お姉ちゃんが、お姉ちゃんがー!!」
必死で岩場から手を伸ばすものの、そんなもので届くはずもない。
よく見ると、白い泡の中には別の人影が混じっている。
黒髪の女の人のようだ。
それが二人がかりで姉を海中に引きずり込もうとしている。
「お、お姉ちゃん! 誰か、誰か〜!!」
声を限りに叫んでも、近くには誰もいない。
「た、たす・・・た・け・・・」
妹の見ている前で、姉は海中に飲み込まれていく。
「お姉ちゃーーん!!」
白い泡が消え、後にはただ穏やかな波が漂っているだけだった。

                     ******

「手がかりなし・・・か」
収穫なくボートを港に向ける滝。
鍛え上げられた肉体が陽光に照らされている。
彼は世界各国に捜査網を広げているFBIの日本支部の捜査官である。
世界の犯罪を捜査するFBIも、秘密結社ショッカーの動きはおぼろげながらに掴んでおり、ショッカーと戦う仮面ライダーという強力な味方を得て全貌解明と封じ込めを計っている最中だった。
今回滝は、この海岸でショッカーと思われる謎の音波をキャッチしたことが本部から知らされ、本部から派遣されてきたエリナ杉崎という女性捜査官とともに、その音波の発信源を探りに来ていたのである。
177ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:41:55 ID:D4bIpO0g0
「まだ取り掛かったばかりですもの仕方ないわ。また明日、調査をいたしましょう」
にこやかな笑みを見せるエリナ。
長い黒髪といい日本人の血が色濃く出ているのだろう。
だが、白い肌とのコントラストが、彼女をとても美しく見せていた。
「そうだな。まあ、何もないほうが、立花のオヤジさんたちは楽しめるんだろうけどな」
滝の脳裏に立花レーシングクラブの面々の姿が浮かぶ。
滝がこの海岸へ調査に行くと言うと、わざわざバックアップのためとかなんとか言ってレーシングクラブの全員で海岸のホテルに来てしまったのだ。
どうせ遊びがメインに違いない。
「うふふ・・・いい人たちですね。滝はあの人たちに好かれているようですわ」
「だといいんだがね」
苦笑する滝。
だが、立花レーシングクラブの面々と過ごす時間は、FBIの過酷な任務をしばし忘れさせてくれるものでもあったのだ。

「滝、あれを」
エリナが海岸を指差す。
「ん?」
ショッカーかと一瞬身を硬くした滝だったが、エリナが指差した岩場には、スクール水着の少女が泣いているだけだった。
「あれは行くときに見た姉妹の妹か? 何かあったのかな?」
「様子が変よ。行ってみない?」
心配そうなエリナ。
少女が泣いているのに姉がそばにいないということに、何かあったと感じたのだろう。
「よしきた」
ボートの進路を変える滝。
高速のモーターボートは、ぐうんと舳先を岩場に向けた。

                      ******
178ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:43:20 ID:D4bIpO0g0
「こ、ここはどこですか? 私をどうするつもりなんですか?」
円形の台に載せられ、手足を拘束された若い女性が不安そうに周囲を見渡す。
彼女は先ほど海中に引きずり込まれた姉だった。
彼女の周りには異様な人たちが立っている。
白衣を着て顔に異様な赤や緑のペイントをした男たちに、全身を黒いぴったりしたタイツのような衣装に身を包み、すっぽりとマスクをかぶって目鼻口だけを出している男たち。
そして、その背後に無表情で立っていたのは、黒いウェットスーツに身を包んだ女性たちだった。

姉はその女性たちの中に見知った顔を見つける。
「珠美、珠美じゃないの? なぜあなたがこんなところに?」
それは先日行方不明になったという水泳のオリンピック強化選手がいたのだ。
彼女とは以前から顔見知りであり、珠美はオリンピックを目指したが、彼女はそれまでの力がなかったため、進路が分かれてしまったのだった。
179ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:44:19 ID:D4bIpO0g0
「おとなしくしろ。あの女は我がショッカーの改造手術を受け海底作業用の作業員となったのだ」
白衣の男がそばに来る。
「海底作業用の?」
「そうだ。そしてこれよりお前も改造手術を受け、同じく海底作業要員となるのだ」
彼女は背筋がぞっとした。
「い、いやぁっ! そんなのはいやぁっ!!」
必死に身をよじって何とか抜け出そうとする。
だが、固定された手足は抜け出すことを許しはしなかった。

『改造を始めるのだ』
壁にある鷲のマークのレリーフが輝き、重厚な声が響き渡る。
男たちはいっせいにレリーフに向き直り、右手を上げて奇声を発した。
そして白衣の男たちは彼女に向き直ると、麻酔をかがせ、手術を始めるのだった。

                     ******

「お姉ちゃんは美里さんって言うのかい。よし、お姉ちゃんのことはこのわしらに任せなさい。きっと無事に助け出してあげるからね、美雪ちゃん」
泣きじゃくる少女を前にして、目線を合わせるようにしゃがみこんだ中年の男が優しく言う。
「うん」
泣きながらも、どこかほっとしたような顔をする少女。
それを見て滝もエリナも安堵するのを感じていた。
180ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:45:16 ID:D4bIpO0g0
あのあと岩場に着いた滝たちは、少女から姉が海中に引きずり込まれたことを聞いたのだった。
引きずり込んだのは女の人らしいというが、何者なのかも目的もわからない。
短絡的に結びつけるのは禁物だが、もしかしたらショッカーに関係があるかもしれない。
滝とエリナはそう考え、一時的に少女を保護するために、ホテルの立花藤兵衛に預けることにしたのだ。

「まったく・・・こんなときに隼人の奴はどこをうろついていやがるんだ」
少女の頭を撫でながら、藤兵衛はこの場にいない男のことをぼやく。
それを聞いた滝は苦笑を禁じえなかった。
確かに一文字隼人はどんなときでも頼りになる男だ。
なんと言っても彼は“仮面ライダー”であり、人類の自由な明日を目指して戦っているのだから。
だが、それを言うなら彼、滝和也だって戦っているのである。
FBI捜査官という肩書きばかりでなく、彼自身に燃え盛る正義を愛する心が、ショッカーを始めとした悪を赦すことができないのだ。
隼人ばかりではなく、もう少し自分も頼りにして欲しい。
そう藤兵衛に言いたくなる滝だった。

「とりあえず彼女のことをお願いします。俺たちはもう一度海岸の岩場を捜索してみます」
「あ、滝さん、それなら私たちも」
エリナをつれて出て行こうとした滝に、マリが声をかける。
せっかく海に来たのに、エリナと調査にかかりきりの滝にちょっとやきもきしていたのだ。
「君たちは美雪ちゃんといてくれ。もしかしたらショッカーが関わっているかもしれないからな」
「あ・・・もう・・・」
そう言って出て行ってしまう滝に、マリはほっぺたを膨らませるのだった。

                     ******
181ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:46:24 ID:D4bIpO0g0
手術台からゆっくりと起き上がる女性。
さらわれてきた美雪の姉美里だ。
その表情は失われ、目はうつろに見開かれている。
「改造は終了した。お前は我がショッカーの水中作業員となったのだ」
「イーッ! 私はショッカーの水中作業員。ショッカーに忠誠を誓います」
彼女は右手を上げて高らかに宣言する。
「よし、これを着てすぐに作業にかかるのだ」
黒尽くめの戦闘員が手渡すウェットスーツを受け取り、美里は無表情のまま手術室をあとにした。

                      ******

結局手がかりのないままに日が暮れる。
滝とエリナはやむを得ず調査を明日にしてホテルにもどった。

「そうか・・・美里さんの行方はわからんか・・・」
パイプから煙が立ち昇る。
藤兵衛愛用のパイプだ。
「美雪ちゃんは寝たようよ。寝言でお姉ちゃんって・・・」
美雪ちゃんを寝かしてきたマリが戻ってくる。
「明日、ご両親のところへ連れて行ってやってくれ。きっと心配しているだろうからな」
「はい」
藤兵衛にうなずくユリとマリ。
「どうなんだ、やっぱりこれもショッカーの仕業か?」
「決め付けるわけにはいきませんが、十中八九やつらの仕業かと。怪しい音波とも関係があるのかもしれません」
「明日はもう少し沖を調査してみましょう」
「そうだな」
エリナの言葉に滝はうなずいた。

                        ******
182ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 13:47:33 ID:D4bIpO0g0
翌朝早く、エリナと滝はアクアラングの準備をして海岸に向かう。
「二人とも気をつけるんだぞ。隼人がもうすぐ来るはずだ。無理をせんようにな」
その言葉にうなずいて手を振る二人を心配そうに見送る立花藤兵衛。
パイプから立ち昇る煙もどこか心細げだった。

「いいか、二十分後にはここへ戻るんだ」
「OK。気をつけてね」
「君こそ気をつけるんだぞ。危険なときは非常信号を忘れるな」
緊張感の中にも笑顔を見せ合う滝とエリナ。
お互いの装備を確認して海に潜る。
二人はそれぞれ別々の方角へ分かれ、海底の調査を開始するのだった。

「綺麗・・・こんな海底でショッカーは何をたくらんでいるのかしら・・・」
アクアラングで海に潜っていると、その美しさに見惚れてしまう。
このあたりは暖かいので、魚も海草などもカラフルなのだ。
だが、今は任務に集中しなくては。
滝和也という優秀な捜査官と一緒とはいえ、ショッカーに対しては油断は禁物なのだ。
「あら・・・?」
エリナは海岸に向かって泳ぐ人影を目にする。
見たところ若い女性のようで、水中に髪をなびかせていた。
「こんなところで素潜りなんて危険だわ。教えてあげなくては・・・」
エリナはウェットスーツ姿の女性に近づいていく。
183ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:29:41 ID:D4bIpO0g0
「えっ?」
エリナは驚いた。
素潜りで息継ぎもしていないのに、相手はどんどん深みに向かっていく。
アクアラングをつけていなければとてもそんな行動は不可能なはずなのに。
「いったい彼女は・・・」
エリナがいぶかしんだそのとき、周囲にいつの間にかウェットスーツ姿の女性たちが泳いでいることに気がついた。
「えっ? 何?」
現れた女性たちは、みな素潜りでいながらまったく苦しそうではない。
まるで水中で息ができているかのようだ。
冷たく笑みを浮かべる女性たちに、エリナはぞっとするものを感じていた。

エリナに襲いかかってくる女性たち。
泳ぎに慣れているのか動きはすばやく、エリナはかわすのが精いっぱいだ。
「何なの、この人たちは?」
水中での戦いは不利だと悟り、いったん浮上しようとするエリナ。
太もものホルダーからナイフを抜き、女たちを牽制する。
だが、女たちは薄く笑みを浮かべ、交互にエリナを襲ってくる。
浮上しようとするものの、上に回りこまれたり脚を引っ張られたりと浮かび上がることができない。
やがて背中に回りこんだ一人が、エリナのアクアラングのボンベから伸びるチューブを断ち切った。
「しまった」
エリナは必死に息を止め、海面を目指そうとしたが、女たちに取り囲まれ逆に海底に引っ張られる。
苦しさに肺の中の息を吐き出してしまい、海水を飲み込んでしまうエリナ。
やがてその意識も暗闇の中に沈んでいった。

                      ******
184ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:31:04 ID:D4bIpO0g0
「う・・・」
意識がだんだん戻ってくる。
「こ、ここは・・・?」
ゆっくりと目を開けて左右を見渡すエリナ。
薄暗い室内には、人影がちらほらと見えていた。
「ハッ」
すぐさま起きて身構えようとしたものの、エリナの体は両手両脚が固定されていて、起き上がることができない。
「えっ?」
あわてて自分の体を見下ろすと、彼女の体は円形の台の上に裸で固定されていた。
「えっ、これは・・・」
愕然とするエリナ。
どうやら捕らわれてしまったらしい。
非常信号を発信しようにも、発信機すら奪われていてはどうしようもなかった。

『ようこそ、我がショッカーのアジトへ。FBIの女捜査官エリナ杉崎』
頭上から重々しい声が響く。
エリナが見上げると、巨大な鷲のレリーフが飾られていて、その中央にあるランプが光っている。
やはりショッカー・・・どうやら私の正体も知られてしまっているんだわ。
エリナは唇を噛んだ。
『ここは我がショッカーの海底アジト。君らが探していたものだ』
この重厚な声は何者なのか・・・
185ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:32:05 ID:D4bIpO0g0
周囲の黒尽くめの戦闘員たちが背筋を伸ばしているところから見ても、かなりの上級者に違いない。
もしかするとショッカーの首領かもしれない。
「やはりあの海音波はショッカーの仕業だったのね。一体何をたくらんでいるの?」
こうなればできるだけの情報を引き出してやろう。
エリナはそう考えた。
『われわれの目的はこの近海にある海底ウランだ』
「海底ウラン?」
驚いた。
まさかこうもあっさりと目的を話すとは。
おそらく自分を帰すつもりがないのでべらべらしゃべっているのだろうが、いずれ滝が来てくれるはず。
ショッカーめ、あとで思い知るがいいわ。
エリナはショッカーの目的を聞けたことで満足していた。

『そうだ。そのためにわれわれは水圧に適応するしなやかな肉体を持つ女性を使い、海底作業に当たらせている』
「何ですって? すると彼女たちは・・・」
エリナの脳裏に自分を襲った女性たちの姿が映る。
『その通り。あの女たちは我がショッカーの改造手術によって、海底作業員に作り変えた女たちだ』
「なんてことを・・・」
エリナは首を振る。
女性たちを改造して作業員に使うなんて・・・
同性としてエリナはそのことが許せなかった。
186ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:36:09 ID:D4bIpO0g0
『そしてエリナ杉崎。お前もこれより我がショッカーの改造手術を受けるのだ』
「何ですって?」
エリナは耳を疑った。
自分もショッカーの海底作業員にされるというのか?
「冗談じゃないわ。海底作業員なんてまっぴらよ!」
なんとか手足の枷をはずそうとするエリナ。
だが、がっちりと固定された枷ははずれそうにない。
『海底作業員ではない。お前にはその作業の監督にあたる水中用の改造人間となってもらう』
「ええっ?」
『FBI捜査官としてお前の身体は極めて改造人間の素体にふさわしい。我がショッカーの507計画をお前の手で進めるのだ』
「じょ、冗談じゃないわ! やめてっ! やめてよっ!」
ガチャガチャと手足の枷をはずそうともがくが、やはりまったくはずれる気配はない。
エリナの額に汗がにじんだ。

『この女の改造を始めろ。アマゾン河の河口に棲む海水でも生きられるピラニア、アマゾニアの改造人間にするのだ』
「「イーッ!!」」
黒尽くめの戦闘員たちが、白衣の科学者に指示を出す。
すぐに科学者たちがエリナの周りに集まり、エリナに麻酔をかがせるのだった。
187ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:38:00 ID:D4bIpO0g0
ショッカーの改造手術は基本的には遺伝子変化による動植物との融合と各種薬剤による組織や骨格の強化、それに付随しての機械埋め込みというものである。
つまり、あくまでも生命体としての融合強化が主であり、機械埋め込みはあくまでも補助強化に過ぎない。
手術台の脇に用意された透明なカプセルに、融合される元となるピラニアの一種アマゾニアが入れられる。
そして緑色の液体がそれをドロドロに溶かしたかと思うと、チューブを通じてエリナの腕に流し込まれていく。
さらに遺伝子の変容を促す光線が、赤や緑の色彩となってエリナの体を照らしていく。

するとじょじょにエリナの体は、流し込まれた液体に溶け込んだアマゾニアの遺伝子を取り込み始め、人間の細胞から変容し始めるのだ。
エリナの体は健康的な肌色から変色し始め、鮮やかな紫色に変わっていく。
そして表面には黒っぽいうろこが広がり始め、エリナの体を覆っていく。
体の脇にはオレンジ色のえらが蛇腹状に広がり、形よい胸はつんと上向いたままうろこに覆われる。
つま先からは指が消えて先が広がり、かかとがやや伸びてハイヒール状の足ヒレとなる。
滑らかな指もうろこが覆い、指先からは赤い毒々しい爪が伸びてくる。
最後にエリナの頭部も変化を始め、目が落ち窪んで大きな眼窩が広がる。
髪の毛は抜け落ちて硬い外皮が覆ってトゲの付いたヒレが頭頂部に現れる。
唯一口元だけは人間とそう変わらず、赤い唇がなまめかしかった。
188ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:38:58 ID:D4bIpO0g0
次に行なわれるのが補助機関の埋め込みと脳改造である。
強化された肉体をさらに強化する補助機関を、科学者たちはエリナの体に埋め込んでいく。
機械心肺や補助脳などが埋め込まれ、完全なるショッカーの改造人間へと生まれ変わるのだ。
そして手術台の周囲からせり出すパルス発信機がエリナの頭部にパルスを浴びせる。
人間のときに培われた社会的規範や忌避感を排除し、快楽的破壊衝動やショッカーへの盲目的信頼感などを植えつけていくのだ。
無論FBI捜査官としての正義感なども消去する。
それは同時にエリナの中にある滝への淡い思いをも消し去っていく。
エリナの脳はまさにショッカーの一員として邪悪な意思に包まれるのだった。

『目覚めるのだ。怪魚人アマゾニアよ』
鷲のレリーフが呼びかける。
両手両脚の枷がはずされ、異形の姿となった女がゆっくりと立ち上がった。
紫色の皮膚に黒光りするうろこが広がる姿ではあるものの、その流れるような柔らかいラインはまさしく美しい女性のものであり、異様な美しさをかもし出していた。
「うふふ・・・」
真っ赤な唇が笑みを浮かべ、笑い声が小さく漏れる。
「私はショッカーの改造人間アマゾニア。なんてすばらしいのかしら。最高だわ」
誇らしげに胸を張るアマゾニア。
そこにはFBI捜査官のエリナ杉崎の面影はどこにもなかった。

『アマゾニアよ。泳ぎの得意な女性をまだまだ誘拐し作業員にするのだ。海底ウランを手に入れる507計画を遂行せよ』
「お任せくださいませ首領。507計画は私の手で必ずや遂行いたします。まずは邪魔者のFBI捜査官滝和也を・・・うふふふ」
アマゾニアの不気味な笑い声がアジトに響いた。

                       ******
189ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:43:14 ID:D4bIpO0g0
「滝、エリナさんはまだ戻らんのか?」
不安そうな面持ちで海を見つめている滝の元に、心配そうな表情の藤兵衛がやってくる。
「ええ、もうボンベの空気はとっくに切れているんですが・・・」
優秀な捜査官の彼女のことだからとは思うものの、不安はぬぐいきれない。
何せ相手はショッカーなのだ。
「非常信号は出ておらんのだろ? 大丈夫だよ。きっと別の海岸に上がってこっちに向かっているさ」
半ば自分に言い聞かせるように藤兵衛は言い、パイプの煙を吐き出した。
「俺もそう思います」
だが、それなら通信ぐらい入れてくるはずだとは滝は言えなかった。

「滝さーーん」
岩場のほうから声が聞こえた。
見ると、ウェットスーツ姿のエリナが岩場に上がってきて手を振っている。
その後ろにはまだ少女っぽさを残す女性がひとり。
エリナに付き従うように立っていた。

「エリナ!」
思わず駆け出す滝。
藤兵衛も後を追う。
心配していた相手が戻ってきたのだ。
警戒心など浮かぶはずがなかった。
190ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:44:52 ID:D4bIpO0g0
「ごめんなさい。岩にぶつけて通信機が故障してしまって」
申し訳なさそうに上目遣いで左腕の腕時計型通信機を見せるエリナ。
それは見事につぶれていた。
「ばかやろう、心配したんだぞ」
滝はホッとする。
通信機が壊れていたのなら連絡がなくても不思議ではない。
「ごめんなさい。でも美里さんを見つけたわ」
エリナが背後の女性を呼び寄せる。
その若い女性は確かに美雪ちゃんに似ていた。
「おお、君が美里さんかい。怪我とかはないかい? 妹さんがずっと待っているよ。まだホテルにいるんだ。すぐに行こう」
思わず顔をほころばせる藤兵衛。
心なしかパイプの煙も美味い。
「美雪がいるのですか? わかりました。すぐに行きます」
「滝さん。私たちも行きましょう。実は手がかりを見つけたの。話を聞いて欲しいわ」
「なんだって? 本当かいエリナ? わかった、すぐに聞かせてくれ」
エリナの言葉に滝が奮い立つ。
ショッカーの手がかりを見つけたからには、奴らの思い通りにはさせない。
勇んでホテルに向かう滝の後を歩きながら、エリナの口元には笑みが浮かんでいた。

                      ******
191ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2009/05/17(日) 14:45:46 ID:D4bIpO0g0
「うう・・・エ、エリナ・・・」
ホテルの一室で胸を押さえながら倒れこむ滝。
気がつくと、目の前にいたエリナが変身し、鋭い爪で滝の胸を貫いたのだ。
「うふふふ・・・残念ね。私はもうFBI捜査官のエリナ杉崎ではないの。私はショッカーの改造人間アマゾニア」
口元に笑みを浮かべながら、黒々と広がる眼窩の奥の目で滝を見下ろしている。
「バカな・・・改造・・・されているなんて・・・」
床には血だまりが広がり、急速に目の前が暗くなっていく。
「我がショッカーに歯向かう愚か者。私の爪で死ねることを喜ぶがいいわ」
「す・・すまん・・・はや・・・と・・・」
がくっと力が抜け、動かなくなる滝。
その死体をけり転がし、アマゾニアは満足そうに笑う。

やがて、部屋の扉が開くと、小脇に妹を抱えたウェットスーツ姿の美里が現れた。
「うふふ・・・立花藤兵衛たちも始末したようね。その娘がお前の妹なの?」
「イーッ! ご命令どおり立花藤兵衛たちを始末いたしました。はい、この娘が私の妹です」
軽々と左手で妹を抱え、右手を上げて敬礼する美里。
目元にはシャドウが引かれ、妖艶な顔つきになっている。
「よくやったわ。その娘は連れてきなさい。一文字隼人は子供に弱いと聞いたわ。改造して罠に使うのよ」
「イーッ! かしこまりました、アマゾニア様」
アマゾニアは美里を従えると、滝の死体が転がるホテルの部屋を後にした。