おにゃのこが改造されるシーン素体12人目

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891名無しより愛をこめて
唐突ですが、小学校か中学校の時代に読んで後さんざんおかずにした
瀬川昌男著『チタンの幽霊人』(金の星社・少年少女21世紀のSF・1968年)の、
少年がサイボーグに改造される(正確にはされた直後)のシーンがどうしても
また読みたくなり、隣の市の図書館までいって借りてきました。

で、作者の瀬川氏には非常に申し訳ないことながら、
少年を少女に変えたバージョンを読んでみたくなり、
勝手に書き換えてしまいました。以下、投下します。
「少しかわいそうな気もするなあ。」
「なにが?」
「なにがって、まだ十四だぜ、この娘は。それに、いまとなっては、
たったひとりで…」
「よせ!この仕事に感傷は禁物だぞ。さあ、こっちの準備はOKだ。
ATCHを放出してみてくれ。」
「ATCH放出!」
「OKOK!反応良好。内分泌コントロールも異常なしだ…」
 金属やガラスのふれ合う音の中で、男たちが話している。
(一体、ここはどこ?)
 タツコは、ぼんやりと考えていた。
(病院らしいわ。交通事故にでもあったのかしら?)
 だが、どうもそうではないような気がする。
(あっ、そうよ!)
 突然、ひらめくように、記憶がよみがえってきた。
(事故なんかじゃない。わたしは、両親といっしょに、ある手術を受けにここへ来たんだわ。)
 だが、その手術とはいったい何なのか?なんのためにその手術を受けたのか?
 それについては、タツコ自身も、ごく一部しか知らない。とにかく、ある
おそるべき計画が進行中なのだ。
 その計画の内容はどんなものなのか?よい計画なのか?それとも悪い計画
なのか?それもタツコにはわからない。
 とにかく、宇宙工学者であるタツコの父、三田村博士は、その計画に、
ぬきさしならないほど深く、足をつっこんでしまっている。
 タツコも、タツコの母も、その父に、ついて行くよりしかたがないのだ。
 いや、三田村博士自身にしても、こうするよりしかたがないことだったのかもしれない。
「杉さん。あなたとは、小学校時代からの親友だった。そうでしょ?」
「そうよ。それがどうしたの?」
 杉マコトは、いぶかしげに、三田村タツコをふりかえった。
 だが、タツコは答えない。しかも、その顔色はひどくあおざめている。
「ねえ、三田村さん!なにか心配なことでもあるなら、話してよ。」
 タツコは、うなずくと、遠くをぼんやりと見つめた。
(中略)
 古ぼけた団地のアパート群。その向こうを流れる高速自動車道路。
飛び去る砂煙のかたまりは、1980年代の道路交通の花形、エアカーだ。
「やっぱり、話すわ」
 やっと決心したように、タツコは言った。
(中略)
「…ただ…あなた、約束してくれる?これから、わたしが話すことを、
絶対に誰にも言わないって。」
「もちろんよ。しゃべるなというなら、だれにも言わない。約束するわ。
でも、一体どんな話なの?」
「あなた、信じてくれる?」
 タツコは、マコトの顔をじっと見つめた。
「じつはね…わたしはまもなく、死ぬはずなの。」
 マコトは、一瞬ぽかんとしたが、すぐ、ばかばかしくなって笑い出した。
「じょうだん言わないで。そんなに丈夫なあなたが、急に死ぬはずないでしょ?
だいいちいまは白血病だって、ガンだって、注射一本でなおっちゃうのよ!」
「そう。だから信じられないでしょうね。でもほんとうなのよ。」
 タツコの目は真剣である。マコトも笑うのをやめた。
「だって、まさか…」
「その、まさかなのよ。」
 タツコはうなずいた。
「ただし、もっと正確にいえば、わたしは死んだことになる、と言わなければ
ならないわ。実際には、わたし自身は、これから後も生きつづけるでしょう。
でも、あなたたちの前には二度と姿を見せることはない。あなたたちに
とっては、わたしも、わたしの両親も、死んだことになるのよ。」
(中略)
「…でも、そのとき、あなただけは、信じていてもらいたいの。わたしが、
ほんとうは死んだんじゃない、っていうことを。わたしは、どこか
わからないけど、あるところで、ある姿で生きている。…そう思っていて
ちょうだい。おねがい!」
「わかったわ。そう思えばいいのね?そうするわ。」
 マコトは答えてしまった。何がなんだか、さっぱりわからなかったが、
そのときのタツコの態度や表情には、そう答えざるをえない何物かがあったからだ。
(中略)
 それから二、三日は何事もなく過ぎた。タツコも平常通り登校していたし、
死ぬとか死なないとかいう話題も、二度と出なかった。マコトがたずねようと
しても、タツコは、その話題をさけたがるのだ。
 そして四日目、朝起きて、新聞を手にしたマコトは、社会面をひらいてみて、
思わずハッと息をのんだ。

 ロケット工学者
  三田村教授一家、事故死
   昨夜エアカーの衝突で

(中略)
 タツコが言っていたのは、このことだったのか?でも、なぜタツコは、
こんな事故が起こることを予想していたのだろう?それとも、あれはただの
偶然だったのだろうか?
「いや、ちがうわ!」
 マコトは思わず声に出した。
「これは、事故じゃない。事故のようにみえるけれど、この裏には、
きっと何か、からくりがあるのよ!」

(おとうさんは、悪い連中にだまされて、利用されているんじゃないかしら?)
 タツコの心は、疑いの黒い雲にとざされていた。
 むかしは、快活で、何事にも楽天的だった父。その父の顔に、この数ヶ月、
笑いのうかぶのを見たことがあるだろうか?いつも何かにおびえ、追われて
いるようなようす。
 それは、少なくとも、仕事に生きがいを感じ、元気いっぱい働いている
ときの父の姿とは、あまりにもかけはなれたものだった。
(でも、もう手おくれだ。わたしたちは、手術を受けてしまった。
これから、一体どうなるんだろう?…)
「よけいなことを考えるんじゃない!」
 突然、耳元で声がしたので、タツコはハッとした。顔を向けようとしたが
動かない。何も見えず、ただ、暗やみが、押しつぶすようにのしかかってくる
ばかりである。
(目は、どうしたんだろう?)
「安心したまえ。視力はまもなく回復する。」
 答えがあった。
(なぜ?わたしは何もきかないのに?)
「声に出さなくともわかる。きみの心は見とおしだよ。それはそうと、
きみの両親だがね、残念ながら、手術が失敗した。…つまり、ふたりとも
なくなったよ。これは、世間に対してのことじゃない。正真正銘、死んだのさ。」
(なんですって!?)
 タツコは、頭をかなづちでなぐられたように感じた。
(じゃ、おとうさんも、おかあさんも…)
 するとそのとき、奇妙なことが起こった。
 からだの中を、なにかあたたかいものが流れるような気がしたかと思うと、
たったいま受けた大きなショックが、突然、ぬぐうように消えてしまったのだ。
 両親の死という、これ以上はない悲しみを前にして、タツコの心は、氷の
ように静かだった。
「うむ…、情緒コントロールもOKだ。」
 男の声が満足そうにつぶやく。
「手術は大成功。きみは、りっぱに、われわれの計画の一員になった。
体力が回復したらただちに出発だ!」
 一体、どこへ出発するというのか?
 そこには何が待っているのか?
 計画とは、どんな計画なのか?
 だが、タツコは、それについても、もう、くよくよ考えようとはしなかった。
 なぜかは知らないが、おどろきや悲しみの感情が、タツコの心から飛び去って
しまったのだ。そのとき、同時に、不安とか恐怖とかいった感情も逃げていった
らしい。
 何も恐れず、何も思わず、タツコはただひたすら、ロボットのように、
忠実に命令にしたがう気持ちになっていたのだ。
<サイボーグの描写>
 髪の毛一本ない頭、腰の部分以外ははだかで、頭や顔をふくめた全身を、
てかてか光る皮膚がおおっている。腰には、なにかしかけのありそうな
黒い太いベルトをしていた。
 みひらいたきり、まばたきをしない目。ぬいつけたように閉じられた口。

<サイボーグの構造>〔*原作では話し手のサイボーグは男性です〕
「…水や二酸化炭素を、あなたがたふつうの人間は、からだの外に出して
しまっている。ところが、わたしたちは、それをもう一度、特別な装置で
分解して、酸素にもどすの。栄養素の方も、そのとき同時に合成する。
だから、わたしたちは、完全な自給自足人間なのよ」
「へえ!すいぶん器用なもんだな。それで…その黒いベルトがその装置
なのかい?」
(中略)
「まあ…これもその一部だけど、装置の大部分は、おなかの中よ。」
「おなかの中?」
「ええ、胃や腸を取りのぞいた後の空洞につめこんであるのよ。」
 サイボーグは答えた。たしかに、物を食べないのだから、胃や腸はいらない
わけだ。そうすると、多分肺もないのだろう。
(中略)
 …このサイボーグたちは…光合成装置をからだの中に持っているらしい。
だが、その装置を動かしている力は、いったい何だろう?
「もちろんそれは原子力よ。」
 サイボーグは答えた。
「装置をはたらかせているばかりじゃないわ。保温用の熱も、同じ超小型原子力
電源から得ているの。からだの組織から出る熱だけでは、いくらなんでも、この
チタンの〇下百八十度の寒さには耐えられないからね。わたしたちのからだを
包んでいるこの透明な膜は、それ自体がヒーターになっているのよ。」
898891:2009/03/02(月) 22:16:55 ID:aUo6i3ia0
作中には男性サイボーグの描写しかないですが、女性は識別しやすいように
人工毛髪を生やしている、という脳内設定を付け加えたい気がします
生殖器がどうなっているのかはジュブナイルなだけに明記されていません。
一応、サイボーグが、誘拐した子供たちについて、

「殺すつもりはありません。こんなわれわれでも、人の生命は大切だと思って
います。それに、われわれには、子どもができませんのでね… 人材は、
われわれの跡つぎとしても貴重ですよ。」

と語るシーンがあるので、なさそうな感じもしますが…

以下、あらすじも紹介しておきます。

<あらすじ>
冒頭の事件のあと、杉マコトは事件を新聞記者の父に話す。だが、
事件の核心に迫ったらしい父は謎の事故死を遂げ、次いで母親も死に
マコト本人はどこかへ姿を消す。

それから何十年か経った二十世紀初頭、土星の衛星チタン(タイタン)に
総勢500名の開拓隊が降り立つ。だが開拓隊を迎えるはずの中央基地は
謎の爆発を遂げており、20名の隊員も行方不明。その後建設ロボットや
資材の盗難など謎の事件が頻発。開拓隊の隊長下田理一郎の息子、
ヒロ(11歳)は「幽霊を見た」と言うが誰も信じない。だが、
ヒロはじめ子供たちが、メタンの雪原で防寒服を着て遊んでいる最中、
「幽霊」に誘拐される。幽霊の正体はサイボーグの集団で、
子供たちの記憶を消去してサイボーグに改造されたくなければ
ロケットを差し出せ、と要求してくる。
899891:2009/03/02(月) 22:17:29 ID:aUo6i3ia0
 ロケットはサイボーグの手に渡るが、ヒロと子供のサイボーグの間に
奇妙な友情が生まれ、ヒロたちは脱出、到着した大規模な救出隊が
サイボーグの大半を捕縛することに成功。だが、ヒロとその姉のリエが
サイボーグのボスにロケットの中に連れ去られ、ロケットは発射してしまう。
 基地では、サイボーグの話を聞いて気を失った下田隊長の無意識が機械で
調査され、サイボーグに関する重大な事実が明らかになっていた。
軍備全廃が実現する前の時代、ある大国が「質量爆弾」という最終破壊兵器を
製造する計画を立てた。広大な真空中で数年かかる製造のために、大国は
科学者を連行してサイボーグに改造し感情コントロールを施して労働に
従事させる予定だった。だが完全軍縮により計画は中止され、隠蔽工作を
はかった大国の関係者によりサイボーグたちはチタンに置き去りにされた。
サイボーグの首領には自我が残っており、狂気と復讐心に駆られたその男は
サイボーグを指揮して人類への復讐、質量爆弾の威嚇による人類の
総サイボーグ化をたくらんだ。
 下田隊長=杉マコトであり、上記の真相を知ったために記憶を消去されて
いたのだった。
 ロケットでは反逆した子供のサイボーグの機転によりサイボーグの首領が
自滅し、ヒロとリエは無事にチタンへ帰還した。
 子供のサイボーグ正体は三田村タツオ(タツコは小生の脳内変換です)
だった。タツオはヒロの顔にマコトの顔を重ねることで人間の心を
取り戻したのだった。
 数十年ぶりの再会を喜ぶマコトとタツオ。技術の進歩によりサイボーグの
人間への再生手術も可能になっており、タツオはチタンでの再会を約束し
他のサイボーグと共に地球に帰還した。(了)