415 :
392:2008/10/23(木) 03:45:44 ID:yfdMsPrV0
日暮れた樹海の中は真っ暗だったが、佐藤は暗闇でも道が見えるかのように
踏み分け路を昼間と同じように進んでいく。幸子は何も見えないので佐藤の
背中につかまって遮二無二についていくしかない。死ぬつもりだったのが、
今はこの闇に置いてきぼりを食うのが怖くて幸子は必死だった。と、佐藤が
急に立ち止まったので幸子は彼の広い背中に激しくぶつかってしまった。
佐藤は振り向いて「あそこが人目につきません」と山の裾にぽっかり空いた
洞窟を指差したが、むろん幸子には何も見えなかった。佐藤についていくのに
必死だったせいで自殺のことをすっかり忘れていた幸子は、自分が死ぬために
来たことを改めて思い出し、今度は足がガクガク震えだした。佐藤はそんな
幸子の様子が暗闇の中でも外さないサングラス越しに見えているのか、じっと
幸子を見ていたが、やがて幸子の手を取り、ひきずるように洞窟へ向かって
いく。幸子は佐藤に何か人間離れした異様なものを感じるが、抵抗もできず
歯をガチガチさせながら引きづられていく。
416 :
392:2008/10/23(木) 03:48:18 ID:yfdMsPrV0
洞窟の中は照明など無いにもかかわらず、ほのかに明かりが感じられた。
発光するコケ?暴力的にズンズン奥へと進む佐藤に引きずられながら、幸子
は少しずつ落ち着き、周りを見る余裕がでてきた。薄明かりとはいえ、
やはり照明があるのと無いのでは気分が全然違った。
突き当たりになって佐藤が歩をとめた。今度は幸子も前が少し見えていた
ので佐藤の背中にぶつからなかった。正面の壁には鷲のような紋章が描かれて
おり、その中心がゆっくりと赤く点滅していた。そして、目の前には人の
背丈とおなじぐらいの長さの白いカプセル?が数個並んでいた。蓋が開いて
いたのは一番手前の一つだけで、佐藤は幸子にそれを指差し、「この中に
体を横たえなさい。苦しまずに逝けますよ」と。急に恐怖に襲われた幸子は
大声で悲鳴を上げて逃げ出そうとした。が、佐藤は幸子の腕を捕らえると、
最初の紳士然とした態度はかなぐり捨て、荒々しく幸子を棺の方に引きづって
いく。死に物狂いの幸子の唯一の楽しみ、自分で丁寧に手入れしてきた
鋭い爪が佐藤の顔をひっかく。が、血は感じられず、皮がペロリと爪に
まとわりつく。思わぬ感触にさらに恐怖におののく幸子。指の感触に何なの、
と思い、佐藤の顔を見ると、顔の肌色の皮が剥け、その下には青い地肌が。
ば、化け物?恐怖が頂点に達した幸子は失神してしまう。佐藤は舌打ちを
するが、グッタリとした幸子を軽々と抱えると、蓋の開いていたカプセルに
横たえ、蓋を閉じる。これで今日の狩は終了だな。後は身元が判るものは
全部処分するだけだ。出来が良い事をいのるぜ、と言い、ジョークなのか、
1000の風を口笛で吹きながら暗闇に姿を消す。と、ほどなくして洞窟の
入り口も枝葉に覆われ、外からはその存在が判らなくなってしまう。むろん
カモフラージュだけでなく、高圧電流によって侵入した者は黒焦げにされて
しまうが、、今は特に敵になるような相手もおらず、念のための設備だった。
続く