ウルトラマンA19

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586名無しより愛をこめて
おじさんが声を上げると、雲が集まって出来た怪獣が
両腕を振り上げて口を大きく開けた。
シンイチは、それが雲だと分かっているのに、その怪獣の口から炎が出るのではないかと
反射的に身構えてしまった。

「次は何!? 何を次は見せてくれるの!? 」

ミキが目をきらきらと輝かせて声を張り上げた。
おじさんは、少し疲れた顔で息を荒げさせていたが
少し深呼吸をすると、汗を拭って笑顔で振り向いた。

「おじさんの手品はタネを仕込まなきゃいけないからなぁ。
今度会うときは、もっと面白い手品を見せてあげるから、また今度おいで」

「ここにいるの?」

シンイチも気になっていたことをミキが尋ねると、おじさんはうんと頷いた。

だからその日は解散になった。
結局ケイのチームとのサッカーは、途中でうやむやになってしまったが
帰り道では誰一人として、そのことを口にすることはなかった。
皆の胸の中は、次はどんな手品を見せてもらえるのだろうと、その期待でいっぱいだった。
その日、シンイチはベッドの中に入っても、紫の光や雲の怪獣が忘れられなかった。
それがシンイチ達と手品のおじさんの出会いだった。