ものがたり『ぼくとおじさん』・1
手品のおじさんのところへいこう。
シンイチは学校から帰る途中、鮮やかな色合いのコンビニの脇を通りながら決意した。
手品のおじさんとは、シンイチが3年生になった今年の春から
近くを流れる大きな川沿いに現れるようになった、子どもたちに人気のおじさんだった。
最初にそのおじさんに気づいたのは、入学のときからの友達のショウゾウだった。
川原でサッカーをしていて、そのおじさんの存在に気づいたのだ。
「おじさん、ほーむれすっていう人?」
ショウゾウがそう尋ねると、おじさんは困ったように笑ってみせた。
確かに川原に座ってぼんやり空を眺めているおじさんには
自分のパパにある、どこかいつもいそがしそうにしている雰囲気がないなと、シンイチは思った。
しかし、シンイチは以前ママに連れられて、大きな駅で本物のホームレスを見たことがあった。
そういう人達ともちがう、シンイチは直感でそう思った。
「どこからきたの」
「ここでなにをしているの」
サッカーをやっていた仲間は皆集まってきて、口々に質問をおじさんに浴びせた。
「分かった分かった」