「フンコロガシの1日 SSヘルマリオン外伝」
【アジト 訓練場】
オレの名はフンコロガシマリオン。ヘルマリオンの中ではエリート中のエリートさ。
汚物を転がすというほかのヤツにはできない任務をこなしているからな。それにマリオンヘイル様に一番、可愛がられてる。
まあ、下等動物のときもT大(文T)のエリート学生だったそうだが、今の方が遥かに充実している。重要任務だけに責任は重大で、
よく同僚から叱咤激励される。
「きゃはははは、待て待て待てぇ〜〜〜〜!」
今日もマリオンヘイル様は絶好調のようだ。さすがのオレもすぐに捕まっちまいそうだ。
まあ、オレが汚物を転がすからこそ、マリオンヘイル様の好調が維持されるんだけどな。
「すぐ捕まるんじゃないわよ!フンコロガシ!捕まったら、ムチ打ち50発よ!」
「ヒィ〜、ムチ嫌いですぅ・・・・・」
ふっ・・・嫌がったフリをしているが、実はセンチピードマリオンからのお仕置きが最高に気持いい。50発か・・・・・
いつか骸教授様に言って、ヘラクレスマリオンや「クワガタ野郎」(コイツ、すげームカツクんだよな・・・・なぜか)みたいに巻貝に似た
エネルギー補充装置を股間につけてもらって、いつものお礼に、このセンチピードマリオンにぶち込んでやるのがオレの夢だ。
この前、「クワガタ野郎」と楽しげに合体してるのを見て、嫉妬してしまったよ・・・・
「キャハハハハ、つかまえたー!」
・・・・しまった・・・・捕まった・・・・さすがマリオンヘイル様・・・・益々、能力が上がっていらっしゃる・・・・
「ほんとうに、あなたって役立たずね・・・・・」
ビシッ! ビシッ! ビシッ!
彼女のムチが飛ぶ・・・・オォォォォォ・・・・・・
ドカッ!
どさくさ紛れに蹴りが・・・・・・・あぁ・・何か気持いい・・・・・
ギュッ・・・ギュギュッ・・・・
ハイヒール状の彼女の踵でねじ伏せられる・・・・・グリグリ気持いい・・・・・・ハゥ・・・
「おや?気持良さそうね・・・・お仕置きの意味がなくなっちゃうじゃない!」
ドカッ!
四つんばいになってるオレのお腹にまともにキックが入り・・・3メートルは飛んだ・・・・・
「ふん!クズが!」
彼女はお仕置きを終えると、マリオンヘイル様に付き従って出て行った。
・・・・なんだろう・・・・この快感は・・・・・オレは訓練場の土の上で仰向けの状態でしばらくこの余韻を楽しんでいた・・・・
【アジト マリオンラーヴァ】
「いやぁ〜〜〜〜!」
悲鳴を上げて、全裸にされた下等動物が、マリオンラーヴァへと飲み込まれていった。
オレが休憩時間にやって来たら素体の改造の最中だったらしい。
センチピードマリオンが楽しそうに下等動物を言葉でいたぶっている。
「あ、フンコロガシ。ねえ、あいつら見てよ。私が女子高で捕獲してきたの。8匹捕まえたうちの2匹目が今、改造されるところよ。
1匹目は、ついさっきシロヒトリマリオンっていう蛾の能力を持ったソルジャードールになったわ。」
「8匹とは少ない気がしますですよ。ローズマリオン」
ボフッ!
うぅ・・・・・肘鉄とは・・・・・でも気持いい・・・・・
「うるさいわね。ビーマリオンに邪魔されたせいよ。20匹ぐらい逃がしちゃったわ」
「な、なるほどぉ・・・・こしゃくなビーマリオンめ・・・・」
「でしょ?未完成体のクセにね・・・今度こそ殺してやるわ」
・・・・・おお恐い恐い。下等動物のときは上品なお嬢様と聞いていたが・・・
マリオンラーヴァの中では「水沢清花」という名の女子高生が無数の触手に吸い付かれていた。
その姿はまるで楽しい夢でも見てるかのようである。
首から下の体全体が赤く変わり、背中には透明な4枚の羽が生え、側頭部にはわりと大き目の複眼が現れた。
体には黄色やら黒の模様が現れている。
その姿はもはや人間と呼べるものではなかった。
「あ、2匹目、完成したみたいよ。可愛い赤トンボね。フフフ」
「そうみたいですね。ワハハハハ」
・・・・俺の好みかもな。訓練場で会うのが楽しみだぜ
「今日から貴様はアキアカネマリオンと名乗るがよかろう!ホッホッホ」
最近、骸教授様のネーミングは日本語が多いよな・・・・・
「おい、フンコロガシよ。こいつを連れてアジトを案内してやってくれい。」
「はい、かしこまりました!骸教授様」
「彼なんかでよろしいのですか?骸教授様」
文句あるのか?クワガタ野郎・・・・・・・う〜ん・・・コイツにいつも感じる屈辱感は一体何なんだ・・・?
「ホホホ、構わんよ。スタグビートルマリオン。なぜコヤツを嫌う?お前たち元は知り合いではないのか?」
骸教授がニヤリと笑った。
骸教授様のこの意味深な笑いは何だ?・・・・・ クワガタ野郎と知り合い?・・・・思い出せないぞ・・・・・でも、たしかにそんな気が・・・・
「でしたっけ?ハハハハ」
クワガタの野郎まで笑ってやがる・・・・・。畜生・・・・・いつかボコボコにしてやるからな・・・・
気を取り直して、アキアカネマリオンにいいとこ見せてやるとするか・・・・・
【アジト 通路】
「・・・ということは、フンコロガシマリオンさんは幹部候補なのですか?」
「自覚はないけど、おそらくね。毎日、重大な任務をこなしているし。その分、プレッシャーもきついけどね。」
「すごい方なんですね・・・・フンコロガシマリオンさんって」
「ハハハハ、そんなことはないよ。でも生まれながらの才能ってヤツがそうさせるのかな」
いいぞ、いいぞ・・・・その調子でオレを尊敬しろ。
2体は通路を雑談しながら歩いていた。
・・・・・・げ・・・嫌なやつが来た・・・
「新人さん?よろしくね。私はアゲハマリオン。」
「はい、よろしくお願いします。アキアカネマリオンです。」
「あら?誰かと思えば。そこで何してるの?フンコロガシ。あいかわらず落ちこぼれオーラがにじみ出てるわね。アハハハハハ」
「うるさい!アキアカネマリオンにアジトの中を案内してるんだ!とっとと失せろ!妹じゃなかったら殺してるぞ!」
「あんまり身内だってこと言って欲しくないんだけど・・・・身内に出来損ないがいるせいでいつも迷惑してるんだよね」
「このぉ・・・・」
「あら?なに、その目は?やる気なの?私に勝てるのかしらね?」
「くぅぅぅぅ・・・・・・アキアカネマリオンがいるから、勘弁してやる・・・・・」
「ふん、弱いくせに。バカじゃないの?」
アゲハマリオンはこれから任務らしく、配下のプペロイドを従えて去っていった。
「あのぅ・・・・妹さんなんですか?アゲハマリオンって・・・・」
「そうだ。兄の活躍を僻む無能なソルジャードールだ。まあ身内の恥だな。あんまり仲良くしない方がいい。」
「はい。わかりました。」
「うん。素直でよろしい。」
【アジト 訓練場】
・・・アキアカネマリオン、素直でいい子だったなぁ〜
「ギギ・・・にやにやシテ、ドウシタノダ?ふんころがし」
「なんだ・・・N-06005号か。なかなか性格のいい新人が誕生してね。」
「ホウ。ソレハソレハ楽シミダナ。是非、オ仕エシテミタイモノダ。」
「なんだ?オレじゃ、不満なのか?」
「ギギ・・・・アタリマエダ。綺麗ナそるじゃーどーるガヨイノニ決マッテルダロウガ!」
「腹立つなぁ〜 プペロイドの分際で!そういや、お前、タメ口だな?いつも・・・・・」
「固イコトイウナヨ、ふんころがし。威張ラナイノガ、オマエノイイトコロナンダカラヨ。ろーずまりおん様ノトコロナンテ、悲惨ナンダゼ?
酷使サレマクッテヨ。現場デ見殺シニサレタリトカナ。正直言ウト、オレハ骸教授様ニ感謝シテルンダ。オマエノ配下ニシテクレテヨ。」
「N-06005号・・・・・」
「ヨセヨ。照レルジャネーカヨ。コノ程度デ泣クナッテバヨ。ソロソロ訓練ノ時間ジャネーカ? 転ガシテコイヨ。」
「おう。でも誰の相手するんだっけ・・・・?」
「アー、アレ。エエトォ・・・・多分、ばんぱいあまりおん様ダ。珍シイヨナ。ココニ来ルノ。」
「フンコロガシ〜! いる?」
・・おっと、バンパイアマリオンが来たようだ。
「こいつらの調教、手伝ってよ」
「こいつら? ですか?」
・・・・・・ゲッ、牙あるぞ、こいつら・・・下等動物?・・・・いや、もしや新種の邪念獣か?
「オイ、コイツラ下等動物デナイカイ?ふんころがし」
「でも、下等動物と微妙にちがうぞ?連中」
・・・・わけわからねえの連れて来るなよな〜 まったく
「コソコソ、何を話してるの!早く吸血人間どもの相手をしろ!」
「はいぃ〜〜〜」
・・・気が強そうだなぁ、センチピードマリオン並みだな・・・・
「デハ、仲間ヲ連レテ参リマス!」
「早くしろ!出来損ないのプペロイド」
・・・・N-06005号が舌打ちらしき音声を発したのをオレは聞き逃さなかった。
「ギギ・・・・・」「ギギ・・」「ギギ・・・・・」
ぞろぞろとオレの配下のプペロイドが集まる。
「20体ホド集メテキマシタガ、ヨロシイデショウカ? ばんぱいあまりおん様」
「そうね・・・・こんなもんかな?」
・・・バンパイアマリオンめ、オレの精鋭部隊の実力を見せてやるぜ!
「へぇ〜、でも何で、あんた程度に20体も配下がいるの?人手に余裕あるね〜 ヘルマリオンもさぁ〜
私にも付けてくれていいものを・・・・・『お前は自己調達できるから要らないじゃろ』はないよねぇ〜」
「自己調達・・・・ですか?」
「そう。わたしねぇ〜 血を吸った下等動物を手下にできるの。フフフ。とりあえず、この前、ビジネス街襲って頭数揃えといたわ」
なるほど・・・・だからこいつら、スーツやらOLみたいな制服を着てるのか・・・・・
「オレのプペロイドが負けるわけないですよ〜 下等動物なんかに」
「フフ。どうかな?こいつら、下等動物の少なくとも5倍の戦闘力はあるわ。」
オレは配下のプペロイドたちのほうを見た。
・・・・お、N-06005号のヤツ、やる気満々じゃないか・・・・期待できるぞ・・・・・
オレはN-06005号の意気込みに賭けてみることにした。
「ガルゥゥゥ〜〜〜〜」
・・・・・・・・・・・・・おいおい、なんてこった
10分後、吸血人間どもの雄叫びが訓練場にこだましていた。彼らの足元にはオレの『精鋭部隊』20体が転がっていた。
「ス、スマナイ・・・ふんころがし・・・・オレハ気温摂氏25℃以上ノ環境ダト能力ガ発揮デキナイラシイ・・・・・」
・・・・うそつけ、バカ野郎!
「アノ素早サハ有リ得ネェゾ・・・・・アトハヨロシク・・・」
・・・・・ええ〜マジでオレ1人で、この吸血鬼共の相手かよ・・・・
「アハハハ、だらしないわね〜 ペットは飼い主に似るとはよく言ったものね。さあ、お前達、ビーマリオンと思って、そいつを倒すのよ!」
「ガルゥゥゥ〜〜〜〜」「キシャ〜!」「キキキキキィ〜」
・・・・・マジかよ・・・・真っ赤な目ぇしやがって!尋常じゃねーぞ、この下等動物ども・・・
「かかれ!」
・・うわ〜、ちょっと一斉に来るなってば・・・・
オレは汚物を転がし、逃げ出した。しかし、3時間後には捕まっていた・・・・・・その後、フルボッコにされたのは言うまでも無い。
「ヨォ・・・生キテルカ? ふんころがし・・・・」
オレはN-06005号に起こされ、目が覚めた。どうやら、吸血人間どもに襲われて、訓練場の真ん中でのびてたらしい・・・・・
N-06005号の話によると、後から、クワガタ野郎もやってきて、吸血人間の能力を評価していたみたいだった。
バンパイアマリオンは奴らの統一ユニフォームの稟議を出していたらしく、それが通りそうだと大喜びで帰ったそうだ。
ところで、オレの出している、エネルギー補充装置の稟議はいつ下りるのだろうか・・・・・
【アジト 骸教授研究室】
「お呼びでしょか?骸教授様」
オレは骸教授様に呼び出された。きっと特命を受けるにちがいない。エリートは辛いぜ。
「昨日、マリオンヘイルのヤツがD-6エリアの壁に穴をあけてしまってのぉ・・・・」
「お元気でよろしいことじゃございませぬか。」
「うむ。それはそうなのじゃが。悪いけど、直しといてくれ。孫の不始末ゆえ、公になるとワシも気まずいのじゃ。お前を見込んで、
直接、頼もうと思ってのぉ〜」
「私にお任せください!骸教授様!ヘルマリオン万歳!」
オレは特命を受け、思わずスキップしながら訓練場に戻った。
【アジト 訓練場】
「ヨォ、骸教授ナンテ言ッテタノ?」
「N-06005号、喜んでくれ!骸教授様直々に特命を受けたぞ!」
「マジカ?ヤッタジャン。オメデトウ、ふんころがし」
「ありがとう!N-06005号」
「デ?ドンナ命令ダヨ?」
「マリオンヘイル様が壊した壁の修繕さ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした?N-06005号」
「サッキノ吸血鬼ノ攻撃デ、損傷箇所ガアッタヨウダ・・・・・イタタタ、ウーン、イタイヨ〜」
「仕方ないな、N-06005号、メディカル・ルームにでも行って来いよ。残りの戦力でやっておくからさ」
「悪イナ・・・大事ナ時ニ・・・・・」
「いいってことよ。N-06005号。お前は大事な部下なんだから」
「スマナイ・・・・・・」
【アジト D-6エリア】
・・・なんでオレだけなんだ?1人で作業しているオレって、一体。
みんな仲良く揃って故障しやがって・・・・・まさか・・・・いや、部下を疑っては上司失格だな・・・
「ごくろうさま。大変ですね。壁の修繕。犯人は、さてはマリオンヘイル様かしら?フフフ」
あっ・・・愛しのスパイダーマリオンさんだ!
「い、いいえ、多分どこかのバカがやったのでありましょう。お、おそらく妹かも・・・・」
「手伝いましょうか?」
「よ、よ、よ、よ、よろぴーのですけ?」
・・しまった、緊張の余り、ヘタこいてしまった・・・・
「アハハハ。相変わらず愉快な人ですね。遠慮しないで。それ貸してください」
「はい!あ、あ、ありがとう・・・・ごぜーます!」
「アハハハ。おかしい〜、傷口が開いちゃうかも。アハハ。」
・・・受けてるよぉ・・・オレ、なんて幸せなんだろう・・・・・
「そ、そういえば、もうお体は大丈夫なのでありますか?」
「はい。おかげさまで。今日の午後から復帰しました。」
「よ、よかったでごんすなぁ〜」
「アハハハ、やめてくださいよ。もぉ〜 アハハハ」
オレは2人だけの甘いひと時を楽しんでいた・・・・
「復帰したのか?よかったじゃないか!スパイダーマリオン」
げげ・・・・クワガタ野郎!くそ〜 いい雰囲気を壊しやがって!
「あ、スタグビートルマリオン・・・・ありがとう・・・」
・・・ムムム、なんだ?この湧き上がる不快感は・・
「そうだ、骸教授様のところ行くんだろ?復帰報告に。オレも今、用事があって行くから、どうだい?いっしょに?」
「はい・・・」
・・・・マジかよ? ええ〜〜〜〜〜!そりゃないぜ・・・・・
「ごめんね。フンコロガシマリオン。また、笑わせてね。」
「は、はい・・・どうも・・ごきげんよう・・・・」
「おい、フンコロガシ!そんなもん、プペロイドにでもやらせろよ。マネジメント能力無いんだな、お前」
・・・・・ヌォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 腹が立つぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜
怒りを懸命にこらえるオレを尻目に2人は去っていった・・・・
【アジト 訓練場】
オレは怒りをこらえつつ、特命を果たして戻ってきた。
・・・・!!オレは目の前の光景に目が点になった・・・・
「ないすぴー!シマッテイコウゼ!N-07302号!」
「1発頼ムゾ!N-06201号!」
「おい、ちょっといいか?N-06005号・・・・」
「ナンダヨ、今ちゃんすナンダカラ、後ニシロ、ふんころがし・・・・!!エッ、ふん・・・・・こ・・・ろ・・・・・・・・・・・・」
「お前ら・・・・故障したんじゃなかったか?・・・・・・」
「イ、イヤ・・・スグ治ッタンダ・・・・へるまりおんノ科学力ハ宇宙一ダヨナ・・・」
「ほほう・・・・じゃあ、何してるのかな?みんなで・・・・・」
「ヤ、野球トカイウ、下等動物ノすぽーつノ1種カナ・・・・・奴等ノ生態ヲ学ブニハ、チョウドイイカナァッテ・・・・」
「そうか・・・・・・・・勉強熱心なんだな・・・・・お前らって・・・・・・・」
「ヤベエ・・・ふんころがしノヤツ、本気ダ!逃ゲロ!」
ブチ切れたオレは部下を追いまわし、1体残らず、満遍なくスクラップ寸前にしてやった・・・・・・・
こんな調子で、エリートのオレは出世街道まっしぐらに歩いている・・・・・多分
<完>