おにゃのこが改造されるシーン素体11人目

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4ダイレン
エピソード6:「砕かれた思い」


しっかりと受け止められた光の刃と氷の爪。灰色を基調として配色は何か虚無感すら漂わす。
だが、その顔は明らかに自分達のクラスメート・神原 健一。優しかった面影は残っていない。ただただ冷たい視線で見つめるだけだった。
「健一……………君?」
「女……その名で私を呼ぶな」
パッと武器を放すと、手に雷を溜めた。両者にそれを当て、一気に地上まで吹き飛ばした。
「う……雷?」
「そうだ。神が持つに相応しい、天の象徴たる力……」
自信に満ちた満足そうな声。ヘイルも誰かは知らない感じで、健一と思われる少年は高らかに口を開く。
「私は偉大なる大首領様の第3後継者、マリオンザインである!。かの者は降伏し、跪け!!」
何かの冗談だろうか?。後継者など、そんなものを聞くような場ではないはず。
「何言ってんだよ……洗脳されてるからわからないだろうが、お前は………」
「洗脳などしておらん」
空中に高齢の男性が現れる。それはユミや5年3組だけではない、ソルジャードールを生み出した科学者・骸。
色素が薄いため、立体映像ということがすぐに理解できた。
「その方は最初から神原 健一などではない………いや、そもそも人間であって人間ではない!」
ユミ達は驚愕する。人間ではない?。そんなことがあるはずがない。なぜなら、今まで自分達は一緒に時を過ごしてきたからだ。
その間に何も起こらなかった。それを否定されようと事実であるはずがない。
「この方は現在の現在まで、自身を封じられていた………。だが、マリオンザイン様はこう目覚められたのだ」
「………ざけんなジジイ………健一を元に戻せ……」
如意棒をついてやっと立てるダメージのナギサでも、友達を変にいじられていることを許せずに歩を進める。
5ダイレン:2008/05/28(水) 08:20:19 ID:Vn7QbLKcO
「女、私はマリオンザインと言っただろ?」
手から稲妻が走る。ジュンは氷の山をナギサの前方に作り出して、感電させるのを防いだ。
しかし、氷の山は溶けている。僅かな力だろうに、これだけの山を蒸発させるとは恐ろしい。
「健一……君……あたし、ユミだよ?忘れちゃったの?」
力無く飛行しているユミ。彼女は信じていた。今までもそうだったように、自分と何をしたかは覚えていると。
「知らないな。貴様のような下郎は目障りだ……去れ」
「…………!!?」
おかしい。ナギサや他の子はソルジャードールになっても人間として暮らしていた時代を覚えていたのに。
「言ったはずじゃ……その方は本来の姿がそれだと。神原 健一という人格こそが偽物なのじゃよ」
「え!?」
骸はその場にいる全員に話した。なぜマリオンザインと健一がイコールでないかを。
かつて健一の父親、神原 直樹は優秀な頭脳と腕を見込まれてヘルマリオンに誘われた。彼はもちろん断ったが、彼の妻を人質に捕られ、仕方なく参加する羽目になった。
彼は遺伝子操作・細胞変質による肉体強化・脳の記憶操作など、組織の注文を満足以上に完成させていった。
その報酬として、当時の大首領直々に既に妊娠していた妻の胎児を後継者候補にするということ。
彼は断固として反対した。しかし、彼の意向を無視して大首領のDNAを胎児に移植操作した。そのDNAには邪悪な意思が秘められていた。
生まれながらにして、すべきことがプログラムされているのである。人類をどう扱うか、ソルジャードールをどう操るか。その全てが細胞に定められているのだ。
生まれた子供を殺せはしない。だが、健一と人類のどちらも犠牲にしたくなかった。だから彼はあることを決意した。
6ダイレン:2008/05/28(水) 08:22:07 ID:Vn7QbLKcO
「定まった記憶に、人間の赤子としての記憶を上書きした………」
言うなればパソコンの初期化。あれは正確にはデータを消すのではなく、゙これは白紙に戻っだと上書きするからだ。
そうして妻と共に逃がし、直樹は処刑されることになった。
だが、偶然とはいえ健一はヘルマリオンの下へ戻ってしまった。そして、マリオンラーヴァに触れた瞬間に自身を取り戻したのだ。


「………つまり、例えマリオンザイン様にRHR能力を使用したとしても意味はない」
そう。例えマリオンザインとしての力を奪おうとも、記憶そのものはマリオンザインのままなのだ。
植え付けれた記憶こそが偽物であるならば、本当の記憶をいじれるわけではないからである。
「そんな…………健一君……」
無理とわかっても尚、ユミは健一の名を叫ぶ。心の中で想ってしまう彼を、優しい言葉で自分を勇気づけた彼を知っているから。
「…………消えろと言ったはずだ」
「!!?」
微弱な電撃をユミに当てる。ユミはそのまま落下し、視線の先にはジュンがいた。
ジュンはユミを受け止めると、厳しい眼光をザインへと向ける。親友としてではない。恋敵として許せない。
ザインはヘイルを抱き抱えると、姿が薄らいでいく。
「今日はマリオンヘイルを連れ戻しに来ただけだ。手を下す必要もない……」
やがてザインは姿を消した。空には雷が走る。まるでそれが彼らの決定的離別を合図するかのように。
「………健一君……」
ユミは何とも言えない気持ちになった。彼を救うことが叶わない……そう思わされてしまう内容だったからだ。
ジュンもナギサもそれは同様だった。健一とは親友と言える間柄だったのはユミだけではないからだ。
7ダイレン:2008/05/28(水) 08:24:00 ID:Vn7QbLKcO
゙ドンンッッ!゙


突如コンクリートの壁が砕け散る。さらに、棘が生えている触手が、いや、腕が伸びてきた。
ユミを抱えたままジュンはジャンプして避けた。この攻撃方法を彼は知っている。
「木下先生?」
煙の中から現れたのはセンチピードマリオンだった。伸びた腕を縮小させ、こちらに向かって走ってくる。
「く……こんな時に……」
自分の後ろにユミを置き、ウルフクローを出してジュンもセンチピードマリオンを迎え撃った。
振動し続けてるセンチピードマリオンの腕はウルフクローを受け付けず、勝負は平行線が続く。
「あなた達のおかげで私は降格だわ………もう、あなた達を倒すしか……」
もう木下先生はいない。そうジュンは思った。ユミならば元に戻せるだろうが、自分にはその力がない。
弾き飛ばされると同時に、ウルフクローの上から冷気を浴びせる。すると、上乗せする形でさらに爪を作り出した。
「゙フローズンネイル゙。先生…………俺は…………」
加速したジュンはセンチピードマリオンを追い越していた。すると、振動していたはずの腕が止まる。
「え……?腕が……動かない………」
神経が伝わらない。それもそのはずだ。既に彼女の腕は切り裂かれて落ちていたのだ。
「私の………私の腕があああああああああああああ!!」
こうしておけばユミが回復するまで時間稼ぎになる。ジュンなりの精一杯の方法だった。
「ユミ、出来るか?」
「痛いけど…………先生を助けるためなら……」
翼を広げて力を解放し始める。体力・気力の関係からか微弱で小さい光だ。時間がかかりそうだが、ユミは力を少しでも多くだそうと意識を集中する。
健一のこともあるが、今は木下を助けなくてはならない。
8ダイレン:2008/05/28(水) 08:25:12 ID:Vn7QbLKcO
「ふふふ……ふふふ……かあぁぁァァッッッ!!」
奇声を上げるセンチピードマリオン。腕の切り口がそれに呼応するように震え出す。
すると、グニュグニュと切り口が膨張し始めた。やがてそれは肉を形成し、新たな腕となった。
「バカな……再生した?……うわっ!」
驚いた隙を突かれてジュンは腕で殴られた。勢いよくジュンは飛ばされ、センチピードマリオンはユミに向けて走り出した。
「あんたさえ倒せばあああああぁぁぁァァァァァ!!」
狂気に染まったその顔にユミは恐怖した。センチピードマリオンはその腕を振り回しながら勢いを止めることなく突撃をしてくる。
「いや………来ないで…………」
足を動かそうとするが、身体的ダメージも影響してかカタカタと震えている。翼も全く飛行するに値する動きができてない。
ジュンはすぐに立ち上がって追いつこうとするが、既にユミの目の先にいるのを確認してしまい、両腕をクロスしてセンチピードマリオンを狙う。
「゙コキューストブラスター゙」
クロスした腕をサイドに開く。フリーズモーメントの密度を濃くし、−200℃以下に下げた超低温砲を口から発射した。
センチピードマリオンは背後から迫るコキューストブラスターを間一髪で避ける。冷気が命中した壁は瞬時に凍りつき、砕けてしまった。
「しまった………ユミ!!」
勢いを止めることなくセンチピードマリオンは腕を振り上げた。今のユミならば殺される確率は少なくない。
「死ねえええぇぇぇぇぇ!!」
「いやあぁぁぁァァァッッッ!!」


音が止まった。声も聞こえない。ナギサも、ジュンも、そしてユミも目を見開いている。
センチピードマリオンの胸をスワンサーベルが貫いている。ユミは叫びと共にスワンサーベルを突き出してしまったのだ。
9ダイレン:2008/05/28(水) 08:28:31 ID:Vn7QbLKcO
由美の家に向かう純の目には彼女の泣いている姿しかなかった。こういう時、健一でもこうしただろう。
由美の家に着くと純は急いで引き返した。少しだが聞こえたからである。由美はまだ帰ってないと。
純は行き先を絞った。゙あの場所゙以外には考えられない。たくさんの思い出があり、たくさんの思い出が生まれるであろう場所……。



「やっぱここか」
彼は5年3組の入り口を勢い良く開いた。そこには由美が電気をつけないまま立っていた。
そこは教卓の前。ぴちゃぴちゃと雫が由美の手から垂れている。大分塗れている、とわかる。純はゆっくりと歩いてきた。
「先生……いつも言ってたよね……。みんなをこの学校から送り出すまで結婚しないって………」
「………ああ」
純は歩みを止めて由美の背中を見たままである。今、彼女の前には立てなかった。
「いつも優しくて………あたし、先生大好きだったのに………」
「俺も……」
「なのに………あたし、先生を………」
振り向いた由美の顔には涙が溢れていた。純はそれを見た瞬間に彼女が背負ったものを感じ取る。
「お前がやらなくても……俺が殺ってたさ……」
せめて、せめてもの慰め。それくらいしか言える言葉がない。由美は健一の席を見て、より悲しそうな声で話しを再開する。
「………先生は消えてしまう最後まで………5年3組が揃うのを願ってたよね……。健一君もきっとそうだったはずなのに……」
叶わない。健一は最初から連れ戻すのが無理だと言われ、半ば自暴自棄になりそうだった。
そこにきた恩師の死。由美は気力の全てを持って行かれたようだった。
「もう………こんなの……いや……」
堪えたに違いない。戦うにはあまりにも心が幼すぎて、殺すにはあまりにも優しすぎる。
10ダイレン:2008/05/28(水) 08:31:15 ID:Vn7QbLKcO
「でも、まだ助けを待ってるやつがいるんだぞ………大輔や綾、他のみんなはまだヘルマリオンに………」
「もういやなの!放っといてよ!!」
「由美!!」
純は由美の頬を叩いた。泣き続ける由美の肩に純は手をかけた。
「お前じゃなきゃみんなを助けてやれないんだよ!!。お前にしか出来ない……だから先生もお前に……」
これから死ぬと感じたから誰かに伝えたかったのだ。自分が何を望み、どう望みを叶えるか。
彼女は最後の瞬間、きっと悔しかったはずだ。それをどうにか果たしたたい。それを出来るのは………
「あたし……う………許し……ひく…………許してもらえないよ………」
「俺が許す。由美、お前は悪くないから………。だから……」
自然と抱き寄せる。包んでくれる純に由美は身を任せた。大粒の涙が流れ、雨のように純の胸を濡らす。
由美には縋るものが必要だった。心の拠り所が欲しかったのである。自分を癒やして欲しかったのだ。
由美は純からの接吻を許す。今は何も考えれなかった。ただ、目の前にいる男に甘えたかった。
勢い余った純も由美を押し倒す。今なら抱ける。由美の心を掴むことが出来る。
だが甘えて、抱かれたところで自責の念を捨て去ることは出来ない。そうやって誤魔化せるほど、由美は器用な心ではない。やはり泣いてしまっている。
(こんな顔してるのに……抱けるわけないよな………)
純とて男だった。思春期の彼にとって想い続けていた由美を手に入れる絶好の機会。だが、本当の意味で由美の心を掴めるはずがないのだ。
「ごめん………。風邪引かない内に……帰ろう」
「うん……」
雨はまだ降り続ける。慟哭の雨は常に人の心を暗くする。その重い空間で、2人は歩き始めた。
11ダイレン:2008/05/28(水) 08:33:00 ID:Vn7QbLKcO
翌日はよく晴れた快晴と言える日になった。学校が終わった後も、由美は1人で考えている。
クラスメート達は悲しい表情をしていた。由美が木下を殺したことを責める者はいなかったが、失った命は返ってこないのだから。
純や渚の言葉にも、あまり良い反応を示すことは出来なかった。純は自分が彼女を癒し切れてないことに苛立ちを感じざるをえない。
2人は事の真相を確かめに健一の家に行くらしかったが、由美は行くような気分にはなれずに1人で帰っていた。
「……健一君…………先生………」
取り戻せない者達。頑張らなければいけないという気持ちが余計に由美を追い込んでいく。

゙キイィィィン゙

ソルジャードールの気配を感じ、由美は走り出した。いくら気落ちしていても、目の前で苦しむ人達を放っておけない。
向かった先には幼稚園バスが止まっていた。だが、母親が子供達を迎えに来ている様子はない。
恐る恐る中を覗くと、異臭が漂ってきた。中に人の姿はないが、代わりにグチャグチャに潰れている゙何ががあった。
「何だろ…………?。服?…………!!?」
気づいてしまった。゙何がとは園児達の変わり果てた姿なのだ。肉団子には園児達の服が混ざっていて、その残虐性から由美の吐き気を誘う。
「こんなひどいこと……………あっちに気配が……」
由美は迷っていた。例えこれが友達の誰かだったら許せるか。その者のせいでないとはいえ、許せるだろうか?。
「………あたし……」


バスから少し離れた場所では後輩である辻沢ひかりが改造された姿であるワスプマリオンが1人の少女を連れ出していた。
友達を目の前で肉団子にされた少女に、恐怖に支配された心が涙を流させていた。
12ダイレン:2008/05/28(水) 08:34:02 ID:Vn7QbLKcO
「待ちなさい!」
飛来してきたサキ。駆けつけた時、彼女は驚いた。小夜子の後輩であるひかりまでもが改造されていることに。
しかも、幼稚園児達をあまりにも酷い殺し方で命を奪うとは………。サキはますますヘルマリオンへの憎しみを抱いた。
「来たわね……ということは、バスの中身を見たはずね」
「あ……ひぃぃッッ!!」
少女はガチガチと歯を摺り合わせる。怖いに決まっている。ワスプマリオンは少女の頭と腹に手を置く。
「ふふふ…………」
「何をする気?」
ワスプマリオンは一瞬口元をニヤっとすると。少女の頭と腹を引き裂いた。サキの目の前で、幼い命が奪われたのだ。
絶望しきった少女の顔が胴体と混ざり合わされ、さらにグチャグチャに潰されていく。出来たのはバスの中にある肉団子と一緒だった。
それをペロリと喰うと、ワスプマリオンは高笑いを始めた。何が面白くてそうさせてるのか。サキは怒りをそのまま行動に変える。
「辻沢………あなたはここで殺すわ!」
「やってみろよ!!」
2体の異なる蜂タイプのソルジャードールが飛翔した。サキはビースティンガーで牽制しながら、空中肉弾戦に持ち込もうと旋回しながら針を撃ち出す。
対してワスプマリオンは槍状に伸ばしたワスプニードルを回転させてビースティンガーを弾いていく。
「ミツバチ如きが適うと思うな!」
突き出した槍先がサキの腕を掠める。サキは飛行スピードを乗せたカウンターパンチを眉間に当て、続いて右足で回し蹴りをくらわす。
「ぐっ………」
「まだ終わりじゃないわよ」
経験によって培った戦闘能力はサキを迷い無き戦士へとさせる。パンチのラッシュでワスプマリオンを圧倒し、伸ばしたビースティンガーで一突きする。
「がうっ………こんな………」
「ここで果てなさい……せめてもの慈悲よ」
13ダイレン:2008/05/28(水) 08:35:12 ID:Vn7QbLKcO
トドメを刺そうと首を狙うと、サキの腕が止まった。目を向けると、白い糸が針と腕に絡まっている。
「ワスプマリオン……危なかったわね………」
「小夜子………うわっ!」
強い力に引かれ、サキはスパイダーマリオンへと引き寄せられる。わき腹へ蹴りが入り、サキは思わず唾を吐き出す。
気を確かに持ち直し、サキはスパイダーマリオンに拳を当てる。後方へ逃げるが、命を長らえたワスプマリオンがワスプニードルを撃ってきた。
針の嵐を何とか避けると、サキはビースラッシャーの高速振動数をさらに増させる。


少し離れた場所で、由美は戦いを見ていた。サキといえども、2体相手には厳しいだろうし、ソルジャードールに改造されてる人に死んでほしくない。
遠目だが何となく年齢はサキと同じくらいだと見える。改造された友達だろうか?。
だが、園児を楽しむように殺したワスプマリオンを許せる気も起きない。それでも、木下を殺してしまった時の感覚がそれを制止させる。
「あたしは………どうしたら………」
悩んでいる由美に奇妙な音が聞こえてきた。まるで空気そのものが震えているようだ。
それはサキのビースラッシャーの音だと気づく。さほど時間が経たない内に、サキの声が聞こえてくる。


「ビースラッシャー…………゙ソニックストーム!!゙」
徐々に回転を増しながらワスプニードルを弾き、勢いを止めては細切れにしていく。
「バカな………厚さ80cmの鉄を容易に貫く針が……」
回転が最高点に達したら、サキはそれを外部へと解放する。竜巻のように回転する風の刃がワスプマリオンへと向かっていく。
「せ…………先輩……たす……」
言葉はそこで途切れた。羽も、足も、腕も、首も、胴もバラバラになって、肉片が落下していく。
「ワスプマリオン………ビーマリオン!お前はああぁぁッッ!!」
14ダイレン:2008/05/28(水) 08:36:13 ID:Vn7QbLKcO
ビルの屋上から飛び降りて、スパイダーマリオンはサキの真上に跳んだ。
糸を網目にして吐き出し、それでサキを包み込んだ。そのまま乗っかり、地上へと落ちていく。
「貴様を、押しつぶしてやる!!」
「考えたわね………でもね!。私は戦闘タイプの試作型だから、あんたみたいな文科系とは違うんだよ!!」
ビースラッシャーで網目を切り裂き、地上寸前で蹴り上げる。そこへビースラッシャーを向け、殺すために毒を添付させる。
「さよなら小夜子………ポーションズ・ジャベリン」
紫色に染まった槍がスパイダーマリオンに向かっていく。友達の死を予感したサキは寂しげに言葉を吐いた。

゙ビシュン!!゙

「何!?」
毒針が消滅した。光の刃が消滅させたのだ。サキの視線の先にはユミが翼を展開させている。
「あの子………」
ユミはスパイダーマリオンに刃を向け、一振りでビルまで斬り飛ばす。多少の流血とダメージはあるが、致命傷ではない。
スパイダーマリオンは立とうとするが、ユミはその前に立ちはだかる。そして、翼から小さい羽を解き放ってスパイダーマリオンを包み込む。
「あう………わた……私は……」
やがてスパイダーマリオンは西村小夜子に戻った。すぐに意識を失ったが、命に別状はないだろう。
ユミは地上に降り立ち、サキの目の前にいた。両者はじっと相手を見る。
「あたし………決めました」
「…………何を?」
「やっぱり……こんなことはあっちゃいけない………。こんなに酷いこと……許しちゃいけない」
「だから?」
「あたし……友達を助けます。人を守りたい、ヘルマリオンを………倒したい!!」
「…………君は……全てを得ようとしているの?失おうとはせずに………?。だとしたら……」
槍が刀とぶつかり合った。衝撃が広がり、両者は合間を取った。
「私の今までは………何だったのよーーー!!」

つづく
15ダイレン:2008/05/28(水) 08:41:32 ID:Vn7QbLKcO
>>8>>9の間です

ポタポタと垂れる血。センチピードマリオンはユミの手を静かに握る。
「………由美……ちゃん………」
「先……生?」
何が起こったか理解できなかった。まさか、自分が突き出した刃が貫く形となるとは思いもしなかった。
「あなたは悪く………ないわ……。由美ちゃん、あの時は……ごめんなさい………。………みんなに……も、伝えて……」
「…………先生……いや、いやだよ………」
「……ごめんね……私、卒業まで……あなた達のこと、見たか………………」
言葉が途切れた。それは彼女が命の灯火を消えた証拠だった。力無く佇む木下は純白の刃から、降ってきた雨に流されたかのように消えていた。
「う……あ…………う……先生…………」


どしゃ降りと言えるくらいに雨は酷くなっていた。渚は家に帰った後、純に電話をする。
「純?………うん、あたし」
「怪我は?」
「まだ痛むけど大丈夫。由美のおかげで、外傷と少しのダメージはなくなったから」
RHR能力を応用した治癒術である程度回復した。しかし、彼女達には癒せない傷が残っている。
「あたし達……明日、みんなに何て言えば良いんだろ?」
「事実を話すしかない。……゙俺ば覚悟してたから……」
それは自分だけだ。由美や友達を守るためなら、ソルジャードールを殺す覚悟をしていた。
だから木下を殺すつもりだった。だが、やはり心は痛む。純でさえそうなのだ。
木下を敬い、人一倍優しい由美にはあまりにも辛すぎる結果だ。やっぱり、彼女は戦いには向いてない。
「純………あんた……由美を慰めてやれよな……。あの子……今……ボロボロだから……」
「ああ」
渚も泣いているのがわかる。木下を失ったのが辛いのは同じだ。電話を切った後、純は傘を差す。