318 :
ダイレン:
エピソード9:「地獄の胎動」
壊滅状態にある警察庁。猛は多くの同胞を失い、その中でも長田の死が大きかった。
彼の資料にはヘルマリオンの中枢に関するものがあったらしいが、それも襲ったと思われる者に処分されていた。
「藤宮さん……これじゃみんな浮かばれません……」
「……………」
まだまだ死体の山を片づけるには時間がかかるようだ。猛は警察庁を抜け、六本木ヒルズへと向かう。
自衛隊から回されてきだあれ゙を使ってヘルマリオンを…………。猛の心は憎悪で満ち溢れていた。
アヤの告白はユミに衝撃を与えていた。親友が好意を持っていたのは自分の想い人である健一なのだから。
それがアヤを苦しめて、彼女を改造させて自分と戦わせている。
「………あたしは改造される時に思ったわ………これできっと彼はあたしを選んでくれるって」
連れ出された綾はマリオンラーヴァの前に立ち、思った。もしこれで改造されたら自分では何も思えないのかと。
もう、誰かを想ってもそれは空虚なことだと。綾はただそれを受け入れるつもりだった。
「なんじゃ?お前は騒がないのう」
骸が声をかけてきた。みんな、こいつに改造されたんだ。そういえば由美は脱走して戦ってるとか。
自分の気持ちで戦ってる。強い。自分の気持ちなんかよりもずっと強い。彼女はそれを選んだのだから。
「これが改造手術か」
「これはマリオンザイン様……」
そこへ来たのは紛れもない健一だった。そういえば、画面から見た感じでは健一は改造とはまた違った形でソルジャードールになった。
なぜ彼が゙様゙を付けて呼ばれてるかは知らない。だが、今ならば由美ではなくて自分を選んでくれるかも……。
「お願いです………あたしの自我は取り除かないで……その代わり、ヘルマリオンのために尽力いたしますから!」
319 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:05:18 ID:zR4BPIxnO
確かにソルジャードールの中にも自我を保つ者がいる。自ら望んで改造された政治家や実業家も少なくない。
骸はそれを承知し、洗脳機能のみを停止させてマリオンラーヴァを起動させる。
開封されたマリオンラーヴァからは機械触手が飛び出してくる。綾はそれに呑み込まれ、内部へと入り込む。
中は薄暗く、ウネウネと動く触手は綾の体に絡みつき、振動を開始した。
(何………?。この感じ……………痛い……)
皮膚に食い込むように激しく揺れ動く。脚に絡まった触手の先が太ももをギリギリと締めつける。
「あっぐ…痛………えぼ………えい………」
純の一件から改良されたのか、口の中にまで入ってくる。苦い金属の味がして気持ち悪い。
そこから遺伝子調整のために分泌された液体を流し込まれる。綾は体に感じているただならぬ熱さに驚いていた。
(熱い………何だか体の中からとろけてるみたい………)
体をほぐされ、口の中に精液を入れられるような擬似性交にあった。思春期の彼女にとってはあまりに早すぎる性感の刺激。
「あぶ………いよぉ…………えぐっ…………」
キリキリと蝕んでいく触手はついには綾の股にまで忍び寄った。それが不慮の出来事なのかはわからないが、綾ば知ってしまっだ。
「べあ………ばい゛………う゛う゛う゛あ゛あ゛あ゛!!!」
それが゙大人゙の叫びと知ってしまった。生理の時とはまた違う感覚と出血。
自分が奪われたもの。取り戻せない純潔。綾は涙を流さずにはいられない。願うことならば健一にもらってほしいと………。
いや、健一でなければいけないと。粘り気のある液と血が混ざり合った変な臭いがする辺りで体に変化が生じてきた。
蛇のような鱗。そんな感じがする。自分が嫌いな蛇になるくらいなら洗脳されておけば良かった…………。
320 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:06:21 ID:zR4BPIxnO
マリオンラーヴァから出てきたアヤは倒れ込んだ。息を切らしながらも、本能で堪能している性感もぬけ切れてない淫の交じった呼吸をしている。
「ほぉ、蛇かのう。スネークマリオンじゃな」
何がスネークマリオンだ。自分をこんな気持ち悪い蛇にして………。そう思っていると、ザインがアヤを起こした。
「龍は蛇の姿を元に描かれたらしい……蛇は神の化身とも言われているしな」
「…………け………マリオンザイン様………?」
「美しいぞスネークマリオン。良き働きを期待している」
自分は最も健一に近いんだ。そう、誰よりも。彼は自分を美しいと言ってくれた。
ならば自分も蛇を好きになろう。それが例え禁断の果実を口にするということであっても。
「あたしは健一君が欲しい。あの人の体も、性も、心も………」
草薙からは闘気が溢れ出ている。洗脳されてないとはいえ、ソルジャードールになって戦闘本能が高揚しているのだろう。
それに加えてユミへの憎悪がさらに引き立たせる。アヤは草薙を地面に刺すと、ユミを睨んだ。
「でも、さっき見ててわかった。まだ健一君はユミちゃんを…………非道すぎるよ……あたしは処女まで失ったのに!何の苦労もしないで!!」
床から水蛇が6匹出てきた。アヤは草薙を抜き、ユミに向けて振り下ろした。
「六嬢絞絶(りくじょうこうぜつ)!!」
螺旋状に回転しつつ、水流がユミの面前で6方に広がる。そして再び1点に集まる。
それは間違いなくユミのいる場所であり、逃げ場は無いに等しかった。水蛇達はユミに食らいつき、そして弾け飛ぶ。
それはまるで鳳仙花のように広がった紅い血がアヤの頬にも付く。ユミは口からも血を吐き、スワンサーベルを突き立てて姿勢を保つ。
321 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:07:28 ID:zR4BPIxnO
アヤはユミに向かって歩き出した。その顔は僅かに笑っている。自分が憧れていたユミより、自分は上だと思える。
「これで健一君はあたしを誉めてくれる………あたしを好きになってくれる……ユミちゃんを斃せば……」
そもそもなんで自分がユミに憧れる必要があった。自分にはこんなに力があるじゃないか。
それが誰かに与えられたものだろうと構わない。ユミだって、与えられた力を使ってるだけにすぎないのだから。条件は一緒なのだ。
草薙をユミの首筋に置く。ここを斬れば、ユミは死ぬ。そうすれば、きっと健一は自分だけを見つめてくれる。そう、自分だけを愛してくれる。
「ユミちゃんの首を斬り落として、健一君に献上するわ………ああ……なんていいの……」
涎が垂れてしまう程に興奮しながら振り上げる。これで振り下ろせば、ユミを…………。
「……………それでいいの?」
「え……?」
力を込めて脚を進めてくる。ユミは顔を上げて真っ直ぐにアヤの顔を見た。振り下ろせばこの命を断てるはずのに、なぜか腕が動かない。
「……アヤちゃんが健一君を好きなんて気づかなくて………。でも、そうだよね……あたしはアヤちゃんみたいに1人を強く想えないかも……」
また1歩。また1歩。アヤに近づいてくる。ユミの背中に生えた翼が輝き始めていた。
「でも、アヤちゃんは………゙ザイン゙の言葉に嬉しい?。本当に嬉しいの?」
゙ザイン゙の言葉。そう、彼の言葉は健一のものじゃない。彼らは肉体こそ同じだが、精神はイコールではないのだ。
「……う、煩い!」
振り払うかのように草薙をユミに下ろす。それは届かなかった。ユミはスワンサーベルで草薙を受け止め、かつ押し返した。
さっきまで半死人だったユミにそこまでの力なんて………だが、アヤの目に映っているのは現実だ。
翼からの輝きが増すしていく。まるで後光を発する神のようだ。振り上げたスワンサーベルがアヤの左腰から右胸までの皮膚を斬った。
322 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:08:37 ID:zR4BPIxnO
既に大蛇というよりは龍に近い形状をした鮮血の蛇が姿を現す。それは巨大で、この六本木ヒルズの崩壊を手助けしてるようなものだった。
「毒蛇達よ……その偽善を装った天使を喰らえ!」
怒涛の勢いという言葉に相応しく、洪水が如く押し寄せてくる。威力もただの水蛇よりも格段に上昇している。
ユミは溢れ出る力を自ら使おうと思った。ここでアヤを止めるにはそれしかないからだ。
「゙ハイマット・シャインズ・フェノメナン゙!!」
光の翼が大きく広がり、ユミは赤蛇の群れへと飛び込んでいく。衝撃波が拡散し、部屋そのものを破壊し始める。幾つかの衝撃波を越え、八叉大蛇は光に飲み込まれていくよう………。
アヤが目を見開くと、そこには一面に光が存在していて、まるで自分を包み込んでいるようだった。
「これは………羽?」
零れ舞い散る無数の羽。これは間違いなくユミの………いや、天使の羽………
゙そうか……光の斬撃は邪を打ち払う…………まるで闇夜を切り裂く閃光のよう………そう、まさに光そのもの………゙
まるで天使の微笑みのようにこちらの全てを包み込む。そう気づいた時はアヤは草薙を手放していた。
光は徐々に発散して薄まっていく。アヤ自身にはダメージはなかった。それは寸前でユミが技を外したからである。
「どうして……あたしは……ユミちゃんを殺そうとしたのに………」
背中越しにアヤは口を開く。ユミは振り返り、一歩一歩歩いていく。その音にアヤは恐れを抱いた。
何を言われるのだろう。何と罵倒されるのだろう。アヤは刃を向けてしまったことを後悔して、震えながら目を瞑った。
「……………え………?」
前に回ったのだろう。目を開いた時にユミは自分を抱擁していた。それはまるで母親のように温かい。
323 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:10:20 ID:zR4BPIxnO
「あたしは知ってるよ………アヤちゃんがとっても優しい子だってこと……」
突然涙が零れ出す。すると、さらに光の翼への恐怖心が増す。………違う。それは恐怖心などではない。
自分の行為がどんなことであったかを自覚させられたからだ。
「花壇の花が枯れないように……水をかけてたのはアヤちゃんだよね?花も水が欲しいのは生きてるからだって……」
「そ……そんなの……」
「アヤちゃんには何かを壊すような水よりも、何かに命を吹き込むような綺麗な水のが似合うよ……」
ギュッと抱き締められる。痛い。でも、この痛みは決して嫌な感じではない。
「あたしがアヤちゃんを苦しめていたなら……ごめんなさい。でも……あたしはもっとアヤちゃんとも一緒にいたいんだ……」
「そんな……あたし………」
自分の愚かさを悔いる。何もかもが劣っているかのような気がしてしいた。自分はそれを認めたくなかっただけだった。
でもそうじゃない。本当に認めたくなかったのは、ユミへ劣等感を感じてる自分自身の弱さへの苛立ちだった。
それをぶつけて、あまつ殺そうとさえ思ったのに、ユミはこんな自分をまだ友達と………親友と思ってくれている。
アヤがユミに憧れたのは優しさがとても温いからだ。こんな゙力゙に頼らない、とても温かい心。
「う………う……ごめんなさい……ごめんなさい………ありがとう………ありがとう……」
既に彼女達に殺し合う意思はない。今はただお互いに無事で、温もりを感じられることで嬉しい。
2人の゙絆゙は確かに繋がっている。言いたいことがあるならいつでも言える、話すのはいつでも出来る。それが゙絆゙というものだから。
324 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:39:50 ID:zR4BPIxnO
壁を打ち砕きながらナギサとベアーマリオンは闘っていた。彼女達はこの状況でありながらも楽しんでいた。
この感覚、学校で競い合ってた頃と何ら変わらない。ベアーマリオンは何の特別な能力もない。肉体を攻撃特化させたシンプルな力だ。
「でも………あんたらしいね」
「うがああああッッ!!」
腕を半回転させてナギサの胸に食い込む。世に言うコークスクリューパンチというやつだ。
ギリギリと抉るような痛み。ナギサは堪えきれずに吹き飛ばされた。
「痛た………やっぱあんたは強いね……。でも、あたしは負けない!」
炎舞王の力を右腕に集中させる。ナギサは左腕から拡散さてた烈火掌を反対側に放つ。それはジェット機のようにナギサに勢いを与える。
そしてベアーマリオンの腹部へと拳を入れる。超熱球の熱量をそのまま打ち込んでいく。
「紅蓮零式・゙火神゙!!」
打ち込まれた熱と衝撃がベアーマリオンを襲い、その巨体が空を舞いながらジュンのいる部屋まで飛ばされた。
気絶したようであり、ジュンはシオン同様に脇へと移動させた。だが、中々重くて厄介である。
「ふぅ〜………お、ご苦労様」
「……ったく……手間かけさせるなよ」
既に捕らわれていたクラスメートや人々は氷の階段を作って地上へ昇らせた。
あとはユミがアヤを連れてかえればそれで終わりだ。
「そういや……サキさんは………」
棘の付いた鞭が細切れになっていく。ドーピングで肉体強化を謀ったサキはその戦闘力を以てローズマリオンを追いつめていた。
「綾香……もうそろそろ終わりにしましょう」
小夜子のように今ならばユミが戻してくれる。または協力して戦っていけるかもしれない。
「何よ……情けを………。でも、あなたも限界だからかしら?」
ローズマリオンの言う通りだ。ドーピングしたせいで戦闘力が増した分、既にダメージを受けていた肉体への負担は大きい。
とはいえ、今ここで倒れるわけにもいかない。気絶でもさせてユミの所へ連れて行けば………
325 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:41:29 ID:zR4BPIxnO
地上では猛を含めた警察官や要請を受けた機動隊は出てきた人々を保護していた。
試作型の対ヘルマリオン銃弾゙エクソサイズムQ-00゙を装備している。ある程度は戦いになるはずである。
「よし…………突入しよう………まだ中に残ってるはずだからな」
SATなどから優秀な人材を集めた対ヘルマリオン部隊。恐らく、犠牲者は出るだろうが今までよりは有効だろう。
ビルも倒壊寸前。急がなくてはならない。捕虜だった人々や付近の住民は避難させたし、チャンスは今しかない。
「突にゅ……………??」
指揮官はまさに突入しようとした瞬間に轟音に気づいた。六本木ヒルズの真上には輸送機が飛来していたのである。
双眼鏡で視てみると、それが国連マークが印されていたのには驚く以外には何もない。
「なぜ国連が………?」
輸送機から飛び降りる者達がいた。それらはどれも装甲をしていて、その姿は昔の特撮番組の宇宙刑事に若干似ている。
彼らは飛来したと同時に六本木ヒルズへと突入していく。国連がついに動き出したか……と、その場にいる全員が思った。
゙ジー…………ジジ……ジジ゙
通信が入る。どうやら警視庁にある本部からのようだった。指揮官はその通信を聴くと顔色を変えた。
そして、伝えられた命令をメンバーに伝える。すると、全員が指揮官と同じく顔色を変えて声を上げる。
「撤退………撤退ってどういうことですか………?」
その様子は内部にいるサキ達へも直にわかった。装甲兵達はプペロイドを次々と撃破していく。
「これは………国連軍のマーク……?。!!?」
信じられない事態が起こった。国連軍の装甲兵達はサキにまで銃口を向けてきた。
ソルジャードールに有効である事から、自分の血栓から培養された対抗兵器などで間違いはない。
「止せ!私は日本政府特………」
「黙れ!ソルジャードールは無条件で悪だ!」
326 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:42:45 ID:zR4BPIxnO
高性能な翻訳機が内蔵されているようだ。ならば言葉は通じるはず。
「馬鹿な……改造された人には強制的にソルジャードールになった者がいるのよ!」
「ソルジャードールになった時点で人間ではない!。人権などありはしない!!」
今のサキはそうは思えない。心の持ちようだと、ユミな教えられたから。
「そんな不条理な………」
「貴様も日本には可愛がってもらったようだが、世界は許さんぞ。我らが゙バビロンアーミー゙はな!」
マシンガンから放たれる銃弾がサキへ向かってくる。崩れかけた不安定な地形だが、彼らは足の裏に設置されてる車輪を停止させて歩行している。
どんな場所でも戦えるようになっているのだろう。サキは銃弾を避けながら接近し、槍状に伸ばしたビースティンガーでマシンガンを刺す。
バビロンアーミーは収納されていた伸縮性ソードを取り出した。高速振動しているらしく、チェーンソーのような音がする。
「くたばれ!」
ビースティンガーと鍔迫り合い、2者はその場に止まった。その間にも他のバビロンアーミーは傷つき、倒れているパピマリオン達へ向かっていく。
「このままじゃ………」
通常は指からだが、胸の部分からもビースティンガーを射出してバビロンアーミーをどけさせる。
急いで彼女達の前に立ち、サキはビースラッシャーでマシンガンを切り裂く。
「蜂女が………邪魔をするな!」
彼らも高速振動する゙ムービングカッター゙を取り出し、サキへ斬りかかる。
防いだところにさっきのバビロンアーミーが胸にエネルギーを溜めて放づカタストロフィ・カノン゙を放ってきた。
「……しまっ………きゃああ!!」
サキは壁まで吹き飛ばされる。そして、そこへ2体のバビロンアーミーがムービングカッターの切っ先を向けてきた。
327 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:45:47 ID:zR4BPIxnO
「覚悟!」
ズブリと鈍い音が聞こえる。そして、赤い鮮血が飛び散っていく。
「綾香………」
目の前にはローズマリオンが立ち、体でサキへの侵攻を防いでいた。まだ洗脳は解けてないはずなのに………
「あなたを斃すことが私への命令………だから勝手に死なせない……」
彼女の目は綾香の眼へと戻っていた。ローズマリオンはスパイクウィッブでバビロンアーミーを捕らえ、サキの持っているビースティンガーで突く。
だが、貫くことは出来ず至近距離手でカタストロフィ・カノンをその身に受けてしまう。
「くぶ………」
「綾香!!」
「忘れないで………私が……いたこと………」
次第に彼女は溶けていった。サキの伸ばした手に触れることなく。お嬢のクセに行動派でトラブルメーカーだった綾香。
小夜子を救えたことで希望を見いだしていた。みんなを助けれるんじゃないかと。それはしかし、人間の手によって破られた。自分の戻ろうとしてた人間の手で。
「違う………お前らは人間なんかじゃない……悪鬼だ……」
ギロリと睨みつけるサキ。しかし、彼らの姿勢は一向に変わらない。
「一匹排除できた。まあ、貴様もすぐに駆逐してやる………」
ムービングカッターをしまい、強化ハンドガンで太ももを撃つ。
「ぐ……ああああああ!ぐ………あ……」
「ククク……いいじゃないか……蜂女の叫びっていうのも………」
こいつは喘ぎ声を聞いてるつもりなのかと思えてしまう。サキは痛みを堪えて、口を開く。
「お前みたい変態は……その男根ごと潰してやる!」
「ははははは!やってみ……」
高笑いをしようとした瞬間、下半身が凍り始める。バビロンアーミー達が振り向くと、5人の幼い戦士が他のバビロンアーミーと戦っていた。
「馬鹿な……あんなのはデータに乗ってない……」
「余所見しないほうがいいんじゃない?」
ジュンがそう言うと、サキはビースティンガーで氷の部分を突く。するとバビロンアーミーの下半身が砕け散り、ボトッと上半身が落ちる。
328 :
ダイレン:2008/06/13(金) 17:48:35 ID:zR4BPIxnO
「びぎゃああああ!!俺のチン………」
そこで言葉が止まった。装甲が剥がれた男をサキはビースラッシャーでミンチにすると、それを踏みつける。
こんな豚野郎に綾香が殺されたと思うと腹が煮えくり返る。
「ありがとう……でも、殺す手助けをしてしまったわね」
「俺はユミやみんなを護るためにならって覚悟してますから」
「でも、汚れ役は私1人でいいわ………みんなは早く地上へ………」
全員がサキの周りに立つ。すると、ユミが先頭にいるではないか。あれ程人を殺したくなかったユミが。
「あたし達は仲間です。汚れ役を押しつけたりはしません。それに………あたしは殺さずになんとかしてみせます」
太ももや損傷箇所に光の羽が触れ、治癒されていく。なる程、それでこの子達は戦えているわけだ。
「ごめんね、みんな……。本当は人間に戻してあげたいけど……」
「気にすんなよ。状況が状況だ。それに、俺はヒーローになりてえんだ」
ダイスケは相も変わらず調子の良いことを言っている。
「あたしも問題無し。さっさと片づけて、早く帰ろ」
シオンも9枚のフォックスメッサーを重ねて広げる。それはまるで扇子のようになり、孔雀のように美しい。
「ユミちゃんにはお詫びしないと……」
アヤも草薙を手にとって構える。
「あたしも良いよ」
「俺もだ」
「うん……じゃあ、征こう!」
全員が広がり、バビロンアーミーと戦う。それぞれが技を放ち、次々と斃していく。
その内に六本木ヒルズは倒壊を始め、下から上へと崩れていった。傷ついたソルジャードール達を連れ、ユミ達は地上へと出る。
離れた場所にいる猛はその様子を見ていた。格差社会の象徴である六本木ヒルズが崩壊したのだ、驚かない方がおかしい。
だが、その上には白い翼をしたソルジャードールがいたのだ。あれはまるで天使のよう。
「あれは………」
後日、中からは数十人のバビロンアーミーの死体が出てきた。そもそも、ソルジャードールは死ねば溶けてしまうのだから当たり前。
そして国連本会議からヘルマリオンのことを公表し、史上最悪のテロリストとしたというニュースが流れた。
つづく
329 :
ダイレン:2008/06/13(金) 18:09:00 ID:zR4BPIxnO
修正し忘れました。最後のは「史上最悪のテロリストと認定、国連決議でこの危機の全面的排除を決定」です
羽生さんことエゾヨツメマリオンは生きてますのでご心配無く……
改造シーンは今まで無かった分、エロ仕様にしました。あまりご満足はいただけないかもしれませんが……
330 :
ダイレン:2008/06/13(金) 19:07:54 ID:zR4BPIxnO
331 :
ダイレン:2008/06/13(金) 19:09:35 ID:zR4BPIxnO
どういうことだ?ユミは今までならば自分を止めようとするだけだったはずだ。だが、今のは攻撃的だった。
傷も深くもないが浅くはない。ダラッと血が出てきて、アヤはくらっとふらつく。ユミは自分を攻撃できないまま倒れていくとばかり思っていたのに………。
「………何よ……ユミちゃんにそんなこと……言う資格なんてないくせに!」
草薙を振り下ろそうとすると、横一閃に白鳥が翔んだ。それにはユミ自身も驚いていた。
(こ………これって………)
体が勝手に動き出す。アヤが繰り出してきた水蛇達に斬撃を放った後、アヤ本人に向かっていく。
そして刀を閃かせる。2つの光が見えたと思えば、6回は斬っている。そんな事態が起きていた。明らかに通常のユミとは逸脱した戦闘力である。
(やっぱり………これはヘイルの時の………)
まるで血を求めるかのように刀を振るう。アヤは既に何回も斬られていて、そのダメージはユミが受けたダメージ総量を既に超えていた。
攻勢に出ようとアヤも草薙を動かすが、ユミはそれよりも素早く、深く、連続で斬り刻む。
草薙も砕けていた。戦意をより集中させたユミはここまで強いのかと、アヤを再び驕りから嫉妬心へと移行させる。
「これ以上傷つけたくない………終わりにしよう……」
自分の血を見てアヤは恐怖に襲われる。負ければ健一はユミを見続ける。自分を見ることなんて………。
「く………イヤだ………イヤだイヤだイヤだイヤだ……………あああああああああああっっっっッッッ!!」
アヤは自分の傷の血を草薙に変える。鮮血を媒介に戦闘するということは、命を削ることに近い。
彼女が操る水と混ざってるとはいえ、その量は半端ではない。
「アヤちゃん……それ以上は……」
「煩い!同情なんていらない………゙八叉大蛇゙!!」