「フッフッフッ。実に素晴らしい!」
改造手術台の上に横たえられた一人の若く美しい女性を眺めほくそ笑む男。ショッカーの
大幹部にして改造人間研究の第一人者、そして日本支部を統括する死神博士だ。日本支部
への赴任後、数々の作戦を遂行したものの、仮面ライダー・一文字隼人とFBI特別捜査官・
滝和也達の妨害により、自慢の改造人間達もあえなく死に追いやられて来ていた。
「この娘を使えば儂の計画もライダー達に邪魔されることなく進められる」
彼女の名は結城純玲(ゆうき・すみれ)。22歳。城北大学の理学部四年生。幼い頃、理科の
授業で習った食虫植物に魅せられて以来、青春の全てを食虫植物に捧げて来た、ちょっと
変わった女の子。そんな彼女が発表したのが食虫植物同士の融合に関する論文。彼女は
自信満々だったが、その常識では計り知れない内容から、学内外で「荒唐無稽なトンデモ
理論」として嘲笑されていた。だが、この男、改造人間研究の第一人者・死神博士にとって、
結城純玲の論文は驚くべき内容だったのである。
「何と、この儂に匹敵する理論を考え出すとは。この娘、使えそうじゃな」
ショッカーの手となり足となり働く人間を拉致し、その頭脳をショッカーのために捧げさせ、
世界征服の悪しき計画に従事させる。協力を拒む者には死の罰を与える。特に新たに
【S計画】を進めていた死神博士にとって、論文を書き上げた結城純玲は改造人間研究チーム
のアシスタントに相応しい最高の人材と映った。
「三禍西(みかにし)生物学研究所と申します。突然のお話で恐縮ですが、ぜひ、結城様に
私達の研究所にご入所をいただきたくお電話を差し上げました。私達の研究所であれば、
結城様の理論を現実のものと出来ます」
架かってきた突然の電話。あまり聞いたことのない研究所ではあるが、論文の発表以来、
学内外からの批判と中傷に傷付き就職すら諦め、帰京しようと考えていた結城純玲にとって、
専門の研究所からの誘いは夢のような話であった。
「私の論文をご覧いただいたって…。ホントですか?」
「ええ、もちろんです。あなたの書かれた食虫植物融合理論。研究所長が『天才』だと気に
入り、ぜひお招きしたいと」
「あの。馬鹿にしているのでは…ないのですよね……」
「まさか。お話をお聞きし、私達も心を痛めています。私達はプロです。冷やかしや野次馬
とは違います。ご安心ください」
「でも…」
「急な話ですから、信じていただけないのは当然だと思います。一度結城様に私達の施設を
ご覧いただくというのはいかがでしょう。きっと納得していただけます」
「えっ、で、でも…」
「結城様の理論を現実のものとしたくはございませんか。例えば第2章4節の食虫植物から
分泌される粘液について、私達はこう考えています−−」
論文の内容について語り始める電話口の男。その言葉を聞き、疑心暗鬼だった彼女の表情も
徐々に明るくなっていった。
「あの…本当に私の論文を読んでいただいて…」
「信じていただけましたか。ぜひお願いします」
「そこまで仰っていただけるのなら、一度、見に。研究所に」
「おいでいただけますか! 早速お迎えにあがります」
冷やかしとも違う。本当に自分の論文を読んでもらった上に、その内容について真剣に検討
さえしてくれる…ようやく見えた光に、ドキドキしながら電話を切る。
「嬉しい…ホントなのね」
研究所からの迎えを気もそぞろで待つ結城純玲。しばらくして、彼女の住むアパートの前に
黒塗りのリムジンが到着した。中から降り立ったどこか怪しげな白衣の男達。
「三禍西研究所の者です。結城様、お迎えにあがりました」
アパートの部屋から出て来た女性の姿を見て、一瞬「こんな娘を?」というような表情を浮か
べるものの、すぐに笑顔で彼女をリムジンに招き入れる男達。豪華ではあるが、リムジン
というさすがに場違いな車種での迎えを怪訝に思う結城純玲であったが、同乗した研究所員
との会話と流れる時間が忘れさせてくれた。
郊外へ郊外へと向かっていくリムジン。鬱蒼と茂る森の奥へ奥へと進んで行く。暫く走った
だろうか。視界が急に開けたかと思うと、目の前にゴシックホラーに出て来るかのような異様
な雰囲気の古びた洋館風の建物が現れた。リムジンから降り立ち感激の声を上げる結城純玲。
「わぁっ! 素敵…」
「結城様、どうぞ中へお入りください」
男達に促され、館の中に入って行く。建物内の各部屋を案内される度に感嘆の声を上げる。
「わぁっ、すごい…こんなの見たことないです」
「ええ、当研究所では最新鋭の機材を導入していますから」
充実した設備に驚きはしゃぐ結城純玲。彼女の一挙手一投足をモニターで食い入るように
見つめ、感嘆したかのような声を漏らす男がいた。そう、死神博士だ。三禍西研究所とは
世を偽る仮の姿。ここは幾多の改造人間を生み出してきた、彼の研究活動拠点である。
もちろん彼女を案内しているのは彼の部下、ショッカー改造人間研究チームの研究者達だ。
超小型通信機を通じて伝わる死神博士の不思議な声を訝がり、一人の部下が連絡を取った。
「死神博士様、いかがなさいましたか」
「まさかこの娘…これ程とは。予想外だったの」
「はい、仰る通りです。こんなにすぐに引っ掛かるとは思いもしませんでした」
「そういうことではない。お前達の目は節穴か。予定変更だ。この娘を改造する。こんなに
素晴らしい素体をただのアシスタントで済ませるなど、一生の不覚となるであろう。眠らせて
改造室に連れてくるのだ、良いな」
「えっ? は、ハっ。承知いたしました」
「結城様、ぜひお越しいただきたい部屋がございます。こちらにどうぞ」
死神博士の突然の指令に戸惑いながらも、白衣の男達は直ぐに行動を開始、彼女を地下に
招いた。
「地下にも施設があるんですね」
「ええ、そうです。とても特別な」
「楽しみです」
「こちらです。お入りください」
どう見ても一人しか入れない狭い部屋。中には研究設備はおろか、什器すらない。
「えっ、あの、ここ!?」
「はい、ちょっと狭いですが、ここでゆっくりとお休みになってください」
「えっ!? なに?」
「シュタっ! プシューーーーッ」
「きゃっ…」
そこはガス室であった。勢いよくドアが閉まり、結城純玲の体はあっと言う間に前後左右から
吹き出すガスに飲まれていった。
「棚ぼたではあったが、まさかこんな素晴らしい素体が手に入るとは。この娘は無頓着だった
ようだが、この美貌。この肢体。そしてあの理論を生み出す頭脳」
研究に熱中するあまり、食虫植物のこと以外には無知無関心。分厚い眼鏡を掛け、ファッション
や化粧などにも全く無頓着。髪はゴムで束ねる程度、中国製の安売り服にジーンズという出で
立ち。それが結城純玲の日常だった。つい先程、研究所に連れて来られた時も近寄りがたい
雰囲気を漂わせていたが、死神博士はモニタ越しに、その隠された素材の良さを一目で見抜い
たのだった。
清楚さと妖艶さが同居した整った美麗な顔立ち。バスト89cmFカップ・ウェスト56cm・ヒップ
85cmという、その可憐な容貌とは裏腹な、美しい流線型を描く豊満な肉体はセックスアピール
満点。腰まで伸びた長く柔らかで艶やかな黒髪、輝く張りのある白い肌。その優れた点の枚挙
に暇がないほどだ。一糸まとわぬ姿で改造手術台に横たえられた彼女の美しさに思わず見と
れる死神博士を遮るかのように、一人の医師が声を掛ける。
「死神博士様、この娘の身辺はいかがいたしますか」
「…んっ、いつものように工作しておくのだ」
「ハッ、了解いたしました」
周囲から怪しまれないよう、改造人間の素体となった人間の身辺を工作する。この時を境に、
結城純玲と関係のあったすべての人間に、偽りの記憶−中には彼女自身が存在しないことに
された者も−が焼き付けられて行くことになった。
「死神博士様。そろそろご準備を」
「うむ。さぁ目を覚ますのだ、結城純玲よ」
死神博士の言葉に反応し、まどろみから覚める結城純玲。
「ん…んっ…」
「お目覚めかな、結城純玲よ。改造手術台の居心地はどうかな」
「えっ!? キャッ。えっえっ!。あ、あの。こ、これ!?」
起きあがろうとしたものの、改造手術台に全裸で横たえられ手足を拘束されている自らの姿に
驚き戸惑う結城純玲。突然の予想だにしなかった出来事にパニックに陥りじたばたするが、
身動きが取れる訳がない。
「あの。えっ。何で。あの、あの? ここは??」
「騒ぐでない。ここは三禍西生物学研究所の秘密手術室だ」
「えっ!? しゅ…じゅつ? 私、研究を。あの、あのっ…」
「ああ、思う存分研究させてやろう。お前の改造人間化の手術が終わった後にな」
「か、かか、かいぞう。な、何? あの。帰してっ…」
「人間と動植物の融合じゃ。動植物の力を持った新しき人間。素晴らしいであろう。食虫植物
融合を考え出したお前なら解るであろう。フッフッフッ」
「えっ? ゆ、ゆ、融合って…そんな…!?」
「『そん事が出来る訳がない』とでも言いたいようだが、我々ショッカー、いや、この儂の
技術を持ってすればたやすいこと。これまでも幾多の改造人間を生み出して来たのだよ」
「うそっ。そんなの。お願い。解いて。帰して! 研究に…」
「お前をどんな動植物と融合するのが良いか。フッフッフッ。迷うことは無かったぞ。そう、
お前の愛する食虫植物だ」
「えっえっ!? わ、わわ、私を…ゆ う ごう…」
「お前の名前にふさわしい食虫植物があるのは知っているであろう」
改造室のコンピュータを操作し、スクリーンに一つの植物を映し出す死神博士。
「……む、ムシトリ…スミレ…」
「ハハハハ。左様、ムシトリスミレだ。可憐な姿で愛好家も多いと聞く。流石はこの儂が
見込んだ娘。大好きな食虫植物との融合。イヤではなかろう。結城純玲よ」
「わ、私、そそ、そんなの。いやっ、そんなの…いや」
「嫌か。だがそう言われて止めると思うか? 改造班、準備は良いか?」
改造手術台を取り囲むように整列し、結城純玲を見つめ構える改造班の医師達。一糸まとわぬ
姿の彼女を間近で見、誰もがその美しさに見とれていた。
「……」
「改造班!」
「……ハッ、いつでも取り掛かれます、死神博士様。それにしてもこの素体、実に素晴らしい
です」
「そうであろう。この娘ならば儂のS計画も難なく遂行出来るというもの」
「まさに仰る通りにございます」
「新型ナノマシンの準備は?」
「ハッ。完璧です。遺伝子融合度・侵蝕度ともに目標以上の数値を叩き出しています」
「フッフッフッ。儂の計算通りだな。まずはこの娘で試してみるとしよう」
「承知いたしました。脳改造はいかがいたしましょうか」
「無論行う。だがこの娘の知能は生かさねばならぬ。肝に銘じておけ。取りかかるぞ」
「ハッ!」
まだ頭のどこかで「何かの冗談、改造手術なんて嘘」と思っていた結城純玲を打ち砕く言葉の
数々。死神博士の指示に従い、それぞれの持ち場に戻り改造の準備に取りかかる医師達。彼女
の視界にメスは勿論のこと、見たこともない怪しい機器が並べられる。システムが稼働し、
緊張感が高まる。
「えっえっ……。う、嘘…。うそっよ。いやっ…」
「嘘ではないぞ。結城純玲よ。これからお前を栄えあるショッカーの改造人間に改造する。
このインジェクションから放出される新型ナノマシンには新種のムシトリスミレの遺伝子が
組み込まれておる」
「いやっいやっ…いやっ! イヤッ。そそ、そん…なの」
「インジェクションより注入されたナノマシンはお前の体内を侵蝕し、遺伝子と融合し、お前
の体を作り替えていく。お前はムシトリスミレと一体化した新しき生命体となり、我らが
ショッカーの忠実なしもべとして世界征服のために働くのだ」
「うっう、、嘘ょ。いゃっ、いやよ、イヤ。融合なんて…改造なんて…イャアっ!!」
「安心せい。痛みはないぞ。いや、むしろ快感すら覚えるはずじゃ。それも今まで味わった
ことのない至高の、な」
恐怖に震え、体をよじり喚き叫ぶ結城純玲。だが死神博士は邪悪な笑みを浮かべ冷徹に話を
続ける。
「改造班、オペレーションを開始しろ!」
「ハッ」
「いやっいやっ…いやーっ 助けて、いやっ…」
「ふっふっふっ。お前の運命はこの儂の手の中にある。そしてお前はその定めから逃れられ
ないのだ」
「いやっいゃーーーっ。いやっ! 助けてっ! 誰かっ おねがい。た助けて」
「フハハハハ。いくら叫び喚いても無駄だ。結城純玲よ。お前が次に目覚める時、お前は我が
ショッカーの改造人間に生まれ変わっているだろう。フハハハハっ!」
その時からどの位経っただろうか。深い眠りに就いていた結城純玲の頭の中に男の声が響いて
来た。
「ゆ……みれ…。……よ。ゆうき 、よ。き…みれよ」
声の主は勿論、死神博士。その声に改造手術台の上で眠る彼女の体が徐々に反応していく。
「……ンッ…」
「目覚めよ、結城純玲よ。さあ、目覚めるのだ!」
ひときわ大きい声に反応し、彼女はその目をゆっくりと開け、ぼんやりとした口調で答える。
「…はい、シニガミハカセ様」
「フフフッ、目覚めたようだな。さぁ、生まれ変わった新しき姿をとくと眺めるが良い」
死神博士に促され、ゆっくりとその上体を起こす結城純玲。彼の合図と共に改造室の壁面が
一斉に鏡面へと変わる。そこに写し出された姿、それは悪魔のような美しさを持った改造人間
だった。
可憐で妖艶、そして瞳に邪悪さを湛えた美しい容貌。長く美しい黒髪の随所に顔を覗かせる
−頭部に自生している可愛らしい紫の花。首には巨大なスミレ色の花弁が襟巻きのように
生え揃い、花弁の中から美女の頭部が生えているかのよう。
艶めかしい流線型を描くボディ。重力に逆らうかのようにたわわに実った乳房がぷるるんっと
揺れる。細くしなやかな長い腕の指先は根の如く白く繊細。そしてその緑の皮膚には植物質
の繊毛が生え並び、粘液を分泌している。
くびれ切ったウェストラインの下、ちょうど腰の辺りには粘液を蓄えた多数の腺毛を有する
巨大な葉が生え並び、あたかもミニスカートのように、小振りの引き締まったヒップと女性
の秘所を覆い隠す。スラリと伸びた美脚は、それ自身が緑色のスパッツに変化したかのようだ。
一瞬驚愕するものの、忽ちの内に自らの姿にうっとりとし、その肉体をまさぐる、かつて結城
純玲だった改造人間。頭部に生える花から紫色の甘く芳しい香りがまき散らされる。その行為
から生み出される快感がショッカーのしもべとしての自我形成を急ピッチで促進させる。
口元を邪悪に歪め、満足感に満ち溢れた表情を浮かべる彼女。瞳が紫色に発光する。
「綺麗だわ…。この私。このカラダ。んっん…はぁん…」
「気に入ったであろう、結城純玲よ。これがショッカーの力だ。お前は我がショッカーの改造
人間『ピンギキュラン』に生まれ変わったのだ」
「ピンギキュラン…素晴らしい名前」
「ピンギキュランよ、お前はショッカーの忠実なしもべとして儂の命に従い、世界征服のため
に働くのだ」
「ハイ、死神博士様。このピンギキュランに何なりとご命令クダサイ」
改造手術台から下り、死神博士に跪き、彼の手に口づけをして忠誠の礼を取るピンギキュラン。
脳改造を施したとはいえ、彼女の受容力が殊更に高かったのか、僅かな時間でショッカーの
忠実なしもべへと変貌を遂げている。その振る舞いに一瞬戸惑う死神博士。
「!! (ま、まさか誓いの口づけとは…。これほどまでに完璧に改造を受容した素体はこの儂
でも初めてじゃ)」
「イカガなさいましたか、死神博士様」
「ん、おおっ、よかろう。ピンギキュランよ、早速お前に使命を与えよう。この映像を見よ」
コンピュータを操作する死神博士。彼の操作に従ってモニターに映し出されていく男達。それは
著名な博士や科学者達であった。
「この男達ハ…?」
「儂がS計画遂行のためにリストアップした科学者達じゃ。こ奴等は生意気にもこの儂の誘い
を断り、ショッカー入りを拒んでおる」
「死神博士様の誘いを断り、私達ショッカーに逆らうナンテ…死に値しますワ」
「本来なら処刑すべきところじゃが、奴等の頭脳と技術は儂のS計画のために必要。よって
やむなく生かしておる」
S計画−それは死神博士の考え出した新しい理論に基づくNEO改造人間軍団を作り上げ、
ショッカーに敵対する者達を一気に殲滅するというもの。"S"は"Special"あるいは"Super"、
さまざまな意味を含んでいる。その第一フェーズを進めていた死神博士だったが、彼の理論を
理解し、手足となり働く能力を持った博士・科学者集めが難航していたのだ。仮面ライダー
達の妨害もあったことは言うまでもないだろう。
「そこでじゃ、ピンギキュランよ。お前はこの者達に近づき、お前の能力で奴等を我らが
ショッカーの忠実な下僕に変えるのだ」
「かしこまりました、死神博士様。私の力とは…?」
「改造人間は通常の人間の十数倍のパワーを持っている。そしてもう一つの特徴が融合した
動植物の力。そう、お前にはムシトリスミレの力を−その体から分泌する粘液に特別な力を
与えた。一つは相手の体そして脳を侵蝕し忠実な下僕と変える洗脳能力。もう一つは相手の
肉体を溶かし死の罰を与える溶解能力だ。何れを用いるかはお前の意思で変えられる。奴等を
その体に捕らえ、洗脳液を喰らわせるが良い」
「あンっ、しかしながら…」
「『どのようにして奴等を捕らえるか』であろう。案ずるでない。お前には人間体への変身
能力を授けてある。生まれ変わった真の結城純玲だ」
「真の結城純玲?」
「左様。男に劣情を惹起させ、瞬く間に虜にする絶世の美女。衣裳もお前の花弁と葉を変化
させることで自由自在に生み出せる。可愛らしく美しい花で虫を誘い喰らうムシトリスミレ
のように、その美貌と肢体で男達を誘い捕らえるのだ」
「男達を美貌と肢体で誘惑して捕らえる…。ンフフフッ、何て素敵な力」
「さらにその武器を最大限に発揮出来るよう、お前の肉体には特別なチューニングを施した。
それはこの儂がたっぷりと教えてやろう。後で儂の部屋に来るのだ。能力を開花させてやろう」
「ハイ、仰せの通りに…」
「その後、まず手始めにこの竹中博士を仕留めて見せよ。こ奴は昨日発表した論文で世間の
注目を集めておる。今なら雑誌記者を騙り、取材を申し込むのがよかろう。あの頭脳と研究
成果は是非とも手に入れたい」
「ハイ、死神博士様。この男を私達の忠実な下僕に変えてみせますワ…」
その日、竹中博士の研究所は電話応対に追われていた。何れもマスコミからの取材申し込み。
新テクノロジーの取り込みに熱心で、発表したばかりのバイオテクノロジーを用いたガンの
治療法に関する論文は医学界は勿論、マスコミからも大きな注目を浴びていた。
「ですからそういった意味ではありません。取材はお断りしておりますので。失礼」
憤慨しつつ電話を切る博士。
「まったく、マスコミの連中には呆れたもんだ。デタラメな上に、謝りもしないとは」
再び電話の電子音が鳴る。
「また取材の申し込みだろう。水島君、暫く代わりに出てくれないか。マスコミは断ってくれ。
私は部屋に戻る」
助手に対応を指示して事務室を後にする竹中博士。相次ぐ電話にしばらく事務室に待機して
いたが、ろくな内容のものは一つもなかった。が、程なく水島がどことなく嬉しそうな表情
で研究室のドアから顔を覗かせた。
「博士、電話の件ですが。『ミカニシ・タイム』という雑誌の方から取材の申し込みです」
「取材はお断りと言ったはずだぞ。聞いたことのない雑誌だし、断っておいてくれ」
「それが、今までのマスコミとは違い、かなり詳しいんです。それも若い女性で。ビックリ
しました」
「専門誌か何かか」
「はい、新興の専門誌のようです。彼女、博士の論文に目を通して…と言いますか、全部読ん
でいるんです」
「論文を読破? 本当かね」
「はい、私の質問にも各章のポイントをスラスラと。それに…」
「ん、何だね?」
「声がもの凄く可愛いんです。聞いているだけで何だかうっとりして…」
「コラコラ、水島君」
「…あっ、す、スミマセン」
「しかし、論文を読破したとは面白いな、会ってみようじゃないか」
「分かりました。いつにしましょうか」
「うーん、直近だと今晩しかないな。急な話だが今晩20時で良ければ、と伝えてくれ」
「はい、了解」
慌てて電話口に戻る水島。少し間を置いた後、再びドアから顔を覗かせる。
「大丈夫でした。20時にいらっしゃいます。彼女は『結城すみれ』さんです」
「結城さんか。分かった。ご苦労さん」
「いえいえ。それにしても彼女、可愛らしかったなぁ。あの声からすると、間違いなく美人
ですよ。それも博士好みの。記念に写真を撮っておいてくださいよ」
「コッ…コラっ、水島君、冗談も程々にな。このところ徹夜続きだったから、今日は早めに
上がって良いぞ。明日は朝から買い物に行く予定だろ」
「博士もゆっくり休んでください。じゃあ、僕はお先に失礼します」
「ああ」
研究室から出て行く水島の背を見つめ、ため息をつく竹中博士。論文発表前の追い込みのため
の徹夜の日々。そして発表後の今日はマスコミからの電話攻勢。疲れはピークに達していた。
「う〜ん、もう16時かぁ。今日は電話応対で一日潰れたか。考えてみれば一週間も家に帰って
ないな。まぁ独り者だから寝られさえすれば良いんだが、たまにはゆっくり休みたいもんだ。
ふぁぁ」
「コンッ コンッ。あ、あの。博士」
静かな研究室に響くノック音。時計の針は20時少し過ぎを指していた。その音に目を覚ます
竹中博士。電話が鳴り止んだのは17時。溜まった疲労から研究室内のソファに横になったまま、
ついうたた寝をしてしまったのだ。
「ん、ああ。いかん、寝てしまったのか…。はい、何か?」
「博士、あの、あの、お客様が」
「お客さん……? あ、ああ。20時過ぎか。取材の人だね」
時計の針を見て気付く竹中博士。ゆっくりと起き上がり、ドアの向こうの男に返事をする。
一連の喧噪も一段落したため、他の所員達も早めに帰宅。残っているのは夜間受付当番の彼と
数名の警備員のみだった。
「は、はい。その、応接室で。す、。。あの…」
「ん、今行く。少し待ってくれないか」
「あの、僕は…もうがまん出来…な何でも、ないです。か、帰ります。ので。」
「あ、ああ。気を付けてな」
理由はさっぱり分からないが、当番員の挙動不審な様子に怪訝な表情で答える博士。
「ん、彼はどうしたんだ? まぁこの頃、徹夜続きだった上にあの電話の嵐だからな。疲れが
出たのだろうな。ふぁーーっ」
一つ大きな欠伸をした後、顔を拭き、身支度を少し整え、ゆっくりとした足取りで階段を下りて
いく竹中博士。彼の研究所は二階建て。応接室は一階にあるが、元々夜間の来客は少ない上に、
今日は所員達が皆帰宅したため、所内は静寂に包まれていた。
「若い女性記者とは珍しいな。名前は結城…まさみ? いや違うな。すみれ、だったかな」
寝ぼけ眼をこすり、独り言を呟きながら応接室の前に到着。「カチャ」っとドアを開け中に
入って行く。
「お待たせしたね。夜分にす…… ま な 」
応接室の座高の低い椅子からしなやかに立ち上がる彼女を目にした瞬間、竹中博士の時間が
ピタリと止まった。
−−頭上に散りばめられた可愛らしい紫の花。腰まであろうかという長く豊かで柔らかな黒髪
が緩やかにたなびき、白くほのかに赤く染まる頬をサラっと撫でる。甘く潤んだ瞳。スッと
通った鼻筋。艶々とした薄桃色の唇。可憐でありながら、妖艶さをも感じさせるその整った
美しい容貌。
スミレらしき花柄をふんだんにあしらった薄紫桃色のフワっとしたワンピース。首から襟元に
かけてが大きくU字に開き、白く美しいデコルテが大胆に露わに。小さなリボンで結ばれた
胸元に覗く深い谷間。ワンピースを大きく盛り上げ浮かび上がるその美しくたわわに実った
乳房の造形。ヒラヒラっとした七分袖の先から伸びる腕をしとやかに前で揃える。
薄手の生地越しにぼんやりと透け浮かぶ、くびれた悩ましいボディライン。どこからともなく
吹き込む微風に、超ミニ丈のティアードスカートの裾がふわりと翻り、同時に甘い花の香りが
あたりに漂う。その一瞬、秘部を覆う布ががチラっと顔を覗かせたかもしれない。ニョッキリ
と露わな生太腿がむちムチっと悩ましく張り、その美しい生脚がスラっとしたラインを描き、
可愛らしいハイヒールのサンダルに収まる−−。
竹中博士の顔を甘く見つめ、艶やかな微笑みを浮かべる結城純玲。その絶世の可憐な美しさと、
全身から醸し出されるアンバランスな色香に息を飲み立ち尽くす博士。
(んなっ、なな、なんて綺麗な子なんだ。そ、それ に…)
「初めまして。ミカニシ・タイムの結城純玲です。今日はお忙しい所をありがとうございます」
甘く可愛らしく脳天を蕩かすような官能的なボイスで博士に挨拶をし、深々とお辞儀をする
純玲。ワンピースの胸元が大きく開き、こぼれ落ちんばかりの豊かで美しい二つの膨らみ
−生の−が彼の目に飛び込んで来る。
(あっ……。わ、わわっっ。。。)
一連の出来事にどうしたら良いか分からず、ドギマギと立ち尽くすだけの博士に礼儀正しく
可愛らしく声を掛ける純玲。
「あの、竹中博士様」
「……ん。あ、あ あ…」
「結城純玲です。あの、失礼ですが、お名刺を頂けますでしょうか」
「あ、ああ。す 済まなかった。ぼーっとしてしまって。研究所長の竹中です。よろしく」
「頂戴いたします。こちらこそよろしくお願いします」
「結城…すみれさん。お、お掛けください」
「ありがとうございます」
名刺交換を済ませた後、美脚をしなりと揃えて椅子に座り、脇に置いた鞄からノートや資料を
を取り出す純玲。
「そ、それで取材…の内容は」
「はい、博士の発表された論文を拝見しまして、とても感銘を受けました。私達ミカニシ・
タイムでは、読者の方に、この治療法を考え出された経緯と、各章のキーポイント、博士の
治療法が私達に何をもたらすのか等を分かりやすく伝えたいと考えています」
博士は彼女のしっかりとした受け答えに感心し、本題に入る。ホッとしながら。
「そ、それは私としても嬉しい話だ。一つずつお話していこうかね」
「お願いいたします。メモを取らせていただきます。では、まず経緯についてお聞かせ願え
ませんでしょうか」
「そうだね、前提となった私の論文はご存じかな」
「一昨年に発表されたものですね。拝見いたしました。第三章からの繋がりでしょうか」
「!! そ、その通りだよ。じゃあ説明していこうか」
「お願いいたします。楽しみです」
博士の顔を憧憬の表情で見つめながら、次々とレベルの高い質問をしていく純玲。その質問
に答えながら、彼女の聡明さと、膝の上に置いたノートにメモを取る凛々しく美しい姿に
釘付けになる博士。が、いつの間にか彼の視線は、彼女のメモを取る手の動き−いや、その
超ミニ丈のスカートからにょっきりと伸びるピチっムチな白い生太腿と、僅かな脚の動きで
一瞬チラりと顔を覗かせる股間奥の秘部−に移ってしまっている。
(いっいかん、私は何を。しかし、こんなに聡明で美しいお嬢さんがいるとは。それも…凄い
ナイスバディ…。私は夢を見ているのかもな)
脳内で自問自答し、自分の頬をちょっとつねってみる。
「っつ…痛っ。本物だよな…」
「はい? 大丈夫ですか?」
その声にノートを取っていた純玲の手の動きが止まり、怪訝な表情で博士の顔を見る。
「ハハハ、すまない。ちょっとね。何でもないよ。他に質問はあるかね?」
「いえ。一通りお伺いしましたので。でも、あの、もう一つだけ…」
「ん、何かな」
「不躾なお願いで大変恐縮なんですけれども、博士の研究室を拝見させていただけませんで
しょうか。論文を生んだ部屋を拝見ということで、コラムを…」
「う〜ん…」
「あ、ごめんなさい。無理なことをお願いしちゃって…」
「いや、本来ならお安いご用なんだけど、ここ一週間程片付けていなかったものでね。結城さん
のような素敵な美人にあんな部屋を見せるのは、ちょっと恥ずかしくてね」
「あ、あの。私がお片付けしましょうか」
「いやいや、そんな。汚いけどそのままで良ければ…」
「大丈夫です。ありがとうございます」
「研究室は二階だから私が案内するよ。行こうか」
そう言って席を立ち、純玲と共に応接室を退出する竹中博士。静寂に包まれた薄暗い所内の
廊下に響く二人の足音。彼女は博士の一歩後ろを付いていくように歩く。あたかも恋人のように。
「静かなんですね」
「いや、今日は皆早上がりしたからね。今、この研究所にいるのは私と結城さん」
「二人だけ…ですね。博士と…わたし」
「あ、ああ」
先程までの可愛い快活な感じとは違い、少し低目の艶っぽい声で返事をする純玲に思わずドキっ
とし、振り向いて彼女に目を遣る竹中博士。彼女の歩みに従って長い黒髪がフワリと左右に
揺れ、その美貌もどこか官能的な雰囲気を漂わせている。胸元の二つの豊かな膨らみが、ワン
ピースの生地の下でぷるるんと艶めかしく揺れている。博士の手が思わず純玲の胸元へ伸び
そうになる。
(んぐっ……。だ、駄目だ駄目だ。そんな破廉恥なことは…)
彼女から目をそらし、懸命に雑念を振り払いながら彼女を研究室へと案内していく。
「こ、こっちだよ。階段を上がって直ぐ右だ」
二階へと続く階段に差し掛かったとき、後ろを歩いていた純玲が急にはしゃいだ様子で博士の
前に飛び出して来た。
「博士、あの、昔こういうお遊びをしませんでしたか?」
「わっ、な、何だね急に。遊び?」
「ジャンケンをして、こうして。じゃんけんぽん!」
突然の振る舞いに驚きながらも、彼女の掛け声に釣られパーを出す博士。純玲はチョキ。
「あ、私の勝ちね。えっと。チ・ョ・コ・レ・イ・ト」
そう喋りながら、博士の目の前で段差の高い階段を一段ずつ上って行く純玲。
「ネっ。博士もしましたよネ。こういうの…っ」
階段の上から博士の方に振り返り、笑顔で話しかける純玲。階段を見上げる博士の視線の
先には…彼女の悩ましい生太腿と、ヒラヒラと翻る超ミニ丈のティアード・スカートの裾。
そして、その中で脚の動きに合わせ上下動する小振りのぷりぷりヒップの媚肉。半透けな
薄緑のレースの下着…。
(ゴクっ……んっ。。。だ、ダメだ)
純玲の体から漂ってくる紫色の甘いくすぐるような芳香と相俟って、とうとう頭をもたげて
来てしまった自身の下半身の動きに慌てる博士。初見時から彼女の類い希な美しさとその
媚態にKOされながらも、何とか理性を保ち抑えて来ていた博士であったが…。若干前屈みに
なり歩みが止まってしまった彼の気配に振り向き、優しく話し掛ける純玲。
「博士? 大丈夫ですか?」
「あ、いや、なな、何でもない。ちょっとね。け、研究室はすぐ右だよ」
「はい、あ、あそこですね」
先行する純玲に場所を案内し、博士は床を凝視しながらゆっくりと階段を上っていく。部屋の
前で待つ彼女から目を逸らしつつ歩き、ドアの前に立つ。
「すまなかった。今開けるからね」
リーダーにIDカードを通し、研究室のドアを開けライトのスイッチを入れる博士。室内の様子が
照らし出される。彼の言う通り、徹夜続きで資料や本は勿論、あるいは食品のパッケージがあち
こちに散乱。まったく片付いていなかった。
「こんな状態で取材になるかな」
「あ、あの。私がお片付けを…」
「あ、あっ、いや、結城さん。私がやるよ」
「私、好きなんです…」
博士の耳元に囁くように声を掛け、部屋の中に入り、整理を始める純玲。散乱する本を一冊
ずつ丁寧に拾い上げ纏めていく。前屈みに本を拾い上げる度にふんわりヒラヒラとスカートが
捲れ上がり、その張りのあるヒップの肉と薄緑の面積の少ないレースのパンティが大胆に露わ
になり、時には誘うかのような悩ましい円を描く。
研究室を紫色の甘い花の芳香が満たしていく。ライトに照らされ、薄地の花柄ワンピースから
クッキリと透け浮かぶ彼女の官能的なボディライン。
その姿に竹中博士の大事な部位が再び、強く頭をもたげる。こんなに可愛く美人で聡明で、
色っぽくて超ナイスバディ。加えて片付け上手…。もはや彼の頭の中は彼女のことで一杯に
なっていた。
「ゆ、ゆう…すみれさん」
「はッ、はい」
壁際に散乱する資料を丁寧に片付ける彼女に近付き、おそるおそる彼女の肩を叩き、背中越し
に声を掛ける博士。純玲は一瞬ビックリするものの、嬉しそうな表情を浮かべながら振り向く。
「あの、すす、純玲さんのような素敵な女性に出会ったのは生まれて初めてで。その、つ、
つ、付き合って欲しいんだ。真剣に」
「えっ…!?」
「すす、すまない。私は何を言っているんだ。初対面の中年男性からこんな事を言われたら
驚くよな。ハハハ。わ、忘れてくれ…」
「いえ、あの。私……嬉しい」
高ぶる気持ちから思わず口にした博士の言葉に少し頬を赤らめ、うつむき加減で一段と甘い声で
返事をする純玲。ゆっくりと彼の手を取り、指を絡める。柔らかい感触が彼の脳に伝わる。
「っ…。すっ、純玲さん」
「私、博士に憧れていたの…。どうしても会いたくて、それで、雑誌の取材って嘘を付いて。
本当は只の女子大生。ごめんなさい…」
純玲は博士の手をぎゅっと握り締め、瞳を潤ませ甘えるように彼の顔を見つめる。
「そうか…そうだったんだね。記者にしてはその、大胆すぎると…。いや、良いんだ。話せて
楽しかったし、何よりその…こうして…出会えた」
「私、博士に気に入ってもらいたくて。博士の好きな服とか、お電話で水島さんに聞いて」
「み、水島君か…」
「あっ、あのっ。ごめんなさい。嫌いにならないで…」
博士の腕にすがり寄り添う純玲。長いふわりとした黒髪が彼の体をささっと撫でる。柔らかな
感触が彼の煩悩を刺激し、彼女の全身、特に紫色の花飾りから漂う濃厚な甘い芳香が彼の鼻を
くすぐり、興奮を高める。
「いや。そ、そんな。嫌いになんてなる訳が…。す、す好きに…」
「あの、今…?」
「その、す、純玲さ、純玲ちゃんが…その。だだ大好き…になって」
「わたしも…」
「す、すまない。こんな急に」
「わたしも…大好きっ」
甘い言葉と共に博士の胸に飛び込む純玲。彼女の豊かで柔らかな乳房の膨らみ−薄衣越しの
生の−が彼の上半身に押しつけられる。白いしなやかな手が彼の背を撫でる。嬌声が上げる。
「んっ…あんっ…んんっ」
「す、す純玲ちゃん… う…」
純玲の大胆な行動とその肢体の感触に、頭の中が真っ白になる竹中博士。顔はすでに真っ赤に
なり、額に汗が噴き出している。勿論、彼の下半身は充血し、ズボンはパンパンに膨らんで
しまっている。彼女を押し倒してしまいたい…劣情を何とか我慢すべく腰を引き中空を見つめ
ていた博士の頬に彼女の手が触れ、無言で彼の顔を優しく撫でる。博士がその行為に視線を
落とすと、そこには彼女の類い希なる麗しい顔が。目を閉じ、薄桃色に艶めく唇が彼の目の
前にそっと近付いて来た。
「だ、ダメだ…よ。。そんな、きき急に」
「私、博士の女(ひと)になりたい…今すぐ…」
「す、純玲ちゃん」
彼女の言葉に博士の頭の中で何かが弾けた。純玲の肩を強く抱き寄せ、唇を重ねる博士。ぎこ
ちなくキスを続ける彼の口の中に、彼女の舌が入って来る。大胆に絡み合う二人の舌。互いの
体が密着する。女体の悩ましい感触が彼の脳に伝わる。
「んっ…アぁん…もっと」
「す、すす純玲ちゃんっ」
興奮に身を任せ、純玲の首筋からうなじへとその唇を進め、彼女の白い肌にむしゃぶりつく
ようにキスをし舐める博士。だが、興奮の中、博士は奇妙な感触に気付いた。見ると、彼の
スボンは勿論、そのシャツなどの衣類がすべてヌルっとした液体で濡れているのだ。
汗でもない。かなり粘り気が高い透明の液体、粘液。
「っ!?」
思いもよらぬ出来事に慌て、彼女から体を離し、体に付いた粘液を指ですくい眺める博士。
ほのかに甘い香りがする。純玲はそんな博士にゾクっとするほど艶めかしい笑みを浮かべ、
甘く囁きかける。
「ねぇっ。博士。見て…私を」
「ぇっ…!?」
どこからともなく、否、まさに純玲の体そのものから湧き出す粘液が、彼女のワンピースを
ビチョビチョに濡らしている。薄手の生地が彼女の肌にネチョりと張り付く。濡れ透けた生地
に浮かび上がる純玲の美しい肌。豊かで美しい乳房の山がクッキリとその形を現し、ぷる〜ん
と妖しく揺れる。ヌラヌラと妖しい煌めきを放ちながら、彼女の完璧な肢体を流れゆく液体。
もちろん、彼女の秘部も例外ではない。いや、その部分こそが、その粘液を生み出している
かのようだ。緑色のレースの下着は粘液にまみれ透け切り、妖気を発している。純玲はその
ボディを自ら愛おしく撫で、博士を淫らな表情で見つめる。
「あ、あぁ…き、きみは」
「来て…触って…」
純玲は呆然とする博士の手を優しく握り、その胸へと導く。スケスケになったワンピースの
上から二つの巨峰をまさぐらせ、とろけるような喘ぎ声を上げる。
「いゃぁあっん…あァぁん…ふはぁ〜ん。ネッ、ココも…」
次いで彼の手をゆっくりと股間へと導き、一段と淫らな嬌声を上げる。禁断の部位のヌチョ
ヌチョとした感触があり得ない快感を博士に与える。彼の「なぜこんな液体が?」という
疑問は一瞬にして吹き飛び、もはやこの快感から逃れることは出来なくなっていた。
「うっウをっ。純玲ちゃん。うぐっをあっ…」
「あぁっん。はぁあんっ…。私がして…あげ…る」
純玲は博士を壁に押しやるように密着し、その手を博士の暴発寸前の股間に伸ばす。ジッパーが
下ろされる。彼のモノを掴み、いやらしい手つきで弄り始める。彼女から湧き出る粘液が彼の
モノを包み、その手の動きと相俟って、激しくいきり立たせる。
「うぐぉヲぉっ。。す。みれ…ちゃん あぇをををっ!!」
あまりの快感に声にならない声を上げ身悶える博士。純玲は彼と一つになるかのように肢体を
合わせる。甘い嬌声を上げ顔や体にキスをしながら、彼のモノを激しく愛撫する。彼女の体
からドクドクと溢れ出す粘液が、彼の体をどんどんと包んでいく。それだけではない。それは
皮膚や粘膜を通じ、彼の体内へと侵蝕していく−−。
博士は夢にまで見た、いや、想像を遙かに超越した性の快楽に、何も考えられなくなっていた。
もはや決壊寸前、あとは放出するしか術はない。
「んっあ。ひゃあっ…すみれちやん。うぉをあっ」
「あぁアっん。博士…私のヒトになって…んっっ…はあぁぅん…」
「ひゃあい。すみれちゅあん…の人に…うをぁっ……」
「そう…私のモノに、ショッカーの下僕に…さぁっ!」
「うぉををあ……ィ…イク…っ…うををっ………を…っ!!」
絶頂に達し、言葉にならないうめき声を上げる博士。その体からすべての力が抜け、壁を背に
ズルズルと床に崩れ落ちてしまった。その顔からは生気が失せ、目は虚ろになっている。
純玲はそんな彼の様子を平然と眺め、悪戯っぽく邪悪な笑みを浮かべ呟く。
「あんっ、こんなに早くイッちゃうなんて。気持ちよかったのネ、私のカラダ。ウフフフッ。
それに、死神博士様の仰る通りだわ。男が私に欲情すればする程、洗脳液の侵蝕率が高まる…」
彼女の言う通りに、竹中博士の体を包んでいた粘液が、どんどん彼の体に吸い込まれて行く。
それに連れ、博士の全身が蠢き、顔にも顔にも生気が戻って来た。が、それはひどく邪悪な
生気。やがて開かれた彼の瞳に映ったのは、彼の主の姿だった。
「ピンギキュラン様。この竹中に何なりとご命令ください」