おにゃのこが改造されるシーン素体10人目

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339ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU
「う・・・うう・・・」
一人の男が顔を青ざめさせて足元を見つめている。
その足元にはじわじわと青緑色の苔(コケ)のようなものが迫って来つつあった。
「た、助けてくれー!」
男は声を限りに叫ぶが、背後にある外へ通じるドアは固く閉じられていてまったくこじ開けることができない。
この部屋に放り込まれて十五分ほどしか経っていない。
最初は部屋の中央部のテーブルの上においてあったシャーレの一部にだけ広がっていた青緑色の物体は、このたった十五分の間にまるで男の存在を感知したかのように広がり始め、男の足元にまで広がってきていたのだ。
「だ、出してくれー! 助けてくれー!」
振り返ってドアをがんがんと叩く。
死に物狂いの形相は、その物体に対する極端な恐れを表していた。

やがて男の足にも青緑色の物体が広がっていく。
「ギャー!!」
ぐじゅぐじゅと足元が溶かされるような激痛に、男は思わず悲鳴を上げてしりもちをついてしまう。
だが、思わず床に手を着いたその手やお尻にも青緑の物体は付着して、たちまち男の体を溶かし始めた。
「ヒィー!」
青緑に染まった両手を見、全身を覆う激痛に気も狂わんばかりに悲鳴を上げ続ける。
両脚はみるみるうちに骨が覗き始め、両手も指先から肉が解け落ちるかのように骨だけになっていく。
やがて男は悲鳴も上げなくなり、その場に静かに倒れこむ。
あとには青緑色の物体が広がり、男の衣服だけが残っていた。

「クックックックック・・・」
黒いマントを羽織った初老の男がそのやせこけた顔に不気味な笑顔を張り付かせて笑う。
「殺人カビの実験は成功だ」
まるで西洋の吸血鬼とでもいえそうな容貌のこの男こそ、ショッカー日本支部の誇る天才科学者イワン・タワノビッチ、通称死神博士であった。
モニターで男の死に様を眺めていた死神博士は、新たにアオカビをベースに開発した人間を栄養分として繁殖する殺人カビの実験の成功に大いに満足していたのだ。
340ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:40:23 ID:v5lXsla50
『死神博士よ』
ホールの正面上部にある巨大な地球を掴み取るワシのレリーフ。
その腹部の緑のランプが輝き、重厚な声がホールに響く。
声だけでありながら圧倒的存在感を持ち、世界征服をたくらむ悪の秘密結社ショッカーのすべての構成員が畏怖と忠誠を捧げる存在である首領。
その首領の声が響いたのだ。
死神博士もそのそばに控えていた幾人かの戦闘員たちも一斉にレリーフを見上げ、一言一句を聞き逃すまいと集中する。
『直ちにこの殺人カビを使い、日本征服を進めるのだ』
「お任せくださいませ首領。この殺人カビをばら撒けば日本は大混乱に陥ります。そのときこそわがショッカーが日本を征服するとき」
死神博士が不気味な笑みを浮かべる。
『うむ、吉報を待っているぞ』
「ハハッ」
恭しく首領に一礼する死神博士。
ショッカーの日本征服のための悪魔の作戦が始めるのだった。

「「じゃんけんぽん」」
「「あいこでしょ」」
お寺の境内に子供たちの声が響く。
子供たちにとっては広いお寺の境内は格好の遊び場となっており、住職もそれを理解して墓場以外は自由に遊んでいいと伝えてあったのだ。
子供たちは今回この境内でかくれんぼをして遊ぶつもりだった。
「ケンちゃんの鬼だ」
「わーい」
子供たちが散っていく。
「ちぇっ」
一人の少年が舌打ちをしながらも、太い木に正面からもたれかかって数を数え始めた。
341ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:42:34 ID:v5lXsla50
「こっちよ、摩子(まこ)」
「うん」
双子なのか、白い洋服を着た瓜二つの顔の二人の少女が境内を抜けて墓場のほうに向かう。
墓場ならば隠れる場所には事欠かない。
最後まで隠れてケンちゃんを困らせてやるのだ。
「純子ちゃん、摩子ちゃん、お墓のほうに行ってはいけないのよ」
「そっち行っちゃだめだよ」
友人たちの声も二人の耳には入らない。
どこに隠れようかともうそればかり考えているのだ。
二人の少女はそのまま墓場の中に入っていった。

「このあたりに隠れましょ」
「うん」
二人の少女は墓石の影に身を隠す。
ふと見ると、近くのお墓に墓参りの男性が熱心にお祈りをしている。
邪魔してはいけない。
二人はそう思い、息を殺してケンちゃんが探しに来るのを待っていた。

「イーッ」
「イーッ」
突然どこから現れたのか、全身を黒いぴったりしたタイツ状の衣服に身を包み、すっぽりと目鼻口だけがでるマスクをかぶった男たちが現れる。
「キャッ」
思わず二人の少女は小さな悲鳴を上げるところだったが、必死に声を押し殺す。
ケンちゃんもそうだが、この人たちにも見つかってはいけない気がしたのだ。
「な、何だ君たちは」
墓参りに来た男性が黒尽くめの男たちに戸惑っている。
一体何をするつもりなのだろう。
二人は何もできずにただその様子を見ているしかできなかった。
342ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:44:53 ID:v5lXsla50
「そこの男。貴様にはショッカーの殺人カビの餌食になってもらう」
「な、何だって?」
黒尽くめの男に一人が缶に入っていた青緑色のものをぶちまける。
「うわぁーーー」
青緑色のものが男性に付着すると、男性は悲鳴を上げてみるみるうちに溶けて行く。
そしてあっという間に着ていた衣服だけが残された。

「キャー!」
二人はあまりのことに声を殺すことができなかった。
目の前で一人の男の人が溶けてしまったのだ。
恐ろしさにどうしようもなかったのだった。
「そこにいるのは誰だ!」
黒尽くめの男たちがすぐにやってくる。
二人の少女は必死に逃げ出そうとしたが、すぐに取り囲まれてしまい、逃げ出すことはできなくなった。
「お前たち、今のを見たな?」
「陽光の下での殺人カビの繁殖実験はショッカーの秘密」
「われわれショッカーの秘密を見たものは死ぬのだ」
「ああ・・・いやぁっ」
威圧するような黒尽くめの男たちに、二人の少女は恐ろしくてへたり込む。
343ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:51:34 ID:v5lXsla50
『待つのだ』
どこからとも鳴く声が響く。
「これは死神博士。一体どうして?」
黒尽くめの男たちの動きが止まる。
『その娘たちを連れてくるのだ。いい利用法を思いついた』
「ハハッ、直ちに」
その声にうなずく男たち。
「いやぁー」
「ママー」
たちまち二人の少女は黒尽くめの男たちに抱きかかえられてしまう。
そのまま彼らはいずこともなく姿を消したのだった。

                     ******

「えっ? 見つからない?」
郁子(いくこ)の目の前で悲しそうにうつむいている子供たち。
夕方になっても摩子と純子が帰ってこなかったので迎えに来たのだが、住職と子供たちが二人を探しているところに出会ったのだ。
「どうやらかくれんぼをしていて、二人はお墓のほうへ行ったようなんですが、いくら探しても見当たらんのです」
住職ほか寺の一同も探してくれたのだが、摩子と純子の姿は見当たらないと言うのだ。
「そんな・・・」
二人の母親である郁子にとって、二人は大事な双子の娘だ。
いなくなったなんて信じられない。
「摩子・・・純子・・・」
郁子は途方にくれてしまった。

                      ******
344ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:52:50 ID:v5lXsla50
「お願いです。私たちを帰して」
「何も言いません。お願いです」
二人の少女は半べそをかきながら必死にお願いする。
二人の前には黒いマントを羽織った初老の男がおり、見るからに不気味な笑みを浮かべていた。
『死神博士よ。この娘たちをどうするつもりなのだ』
男の背後の巨大なワシのレリーフが突然しゃべり始めたので、二人の少女は驚いた。
「首領、あの殺人カビを人目に付かずに撒き散らすには、戦闘員たちでは不都合。この娘たちを使えば、人間どもは油断して殺人カビを広めるにはうってつけなのです」
『なるほど。やってみるがいい』
「ハハッ」
ワシのレリーフに一礼し、再び二人の少女に向き直る死神博士。
「機械的洗脳を用いるまでもあるまい。わが得意の催眠術でこの娘たちの深層意識にショッカーへの忠誠心を植えつけてやろう」
死神博士はそういうと一本のロウソクを取り出し火をつける。

「さあ、二人とも。この火をよーく見るのだ」
つい促されるままに二人の少女は火を見つめてしまう。
それこそが死神博士の得意とする催眠術の手法だった。
「ほーら・・・ほーら・・・お前たちの心にはショッカーの偉大さが染み渡っていく。お前たちはショッカーの一員となったのだ」
とろんとした目で火を見つめる二人の少女。
死神博士の深層暗示が二人の心を捕らえていく。
「ショッカーの一員であることはとてもすばらしいことだ。ショッカーの命令に従うのだ」
「はい・・・私たちはショッカーの一員です・・・」
「ショッカーの命令に従います・・・」
うつろな眼で死神博士の言葉にうなずく二人の少女。
催眠術によって二人はショッカーの一員であると信じ込まされてしまったのだった。
345ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:54:06 ID:v5lXsla50
                     ******

「うっうっ・・・純子が・・・摩子が・・・」
夫の胸で泣き崩れる郁子。
夜になっても二人は帰ってこず、夫の信弘(のぶひろ)と一緒に再び墓場周辺を探してみたものの、二人の姿はまったく見えなかったのだ。
「大丈夫だよ。警察にも伝えたからね。きっとどこかで眠っちゃったんだ。明日になれば帰ってくるさ」
自分自身に半ば言い聞かせるようにそう言って妻を抱きしめる信弘。
若くして結ばれたために、双子の母となった今でも容色は衰えていない。
近所でも評判の美人の郁子だったが、憔悴した今は見る影もなかった。
それもそのはず、二人がいなくなった墓地ではここ数日の間に数人の人間が行方不明になっているほか、行方不明になった人の持ち物が奇妙なカビのようなものが生えた状態で発見されたりしているのだ。
二人に何かあったのかと気が気でない郁子にとって、憔悴させるには充分なものだった。

                     ******

「さあ、このカビをあの住宅街にばら撒いてくるのだ」
殺人カビのつまったケースを二人の少女に手渡す死神博士。
「「はい、死神博士」」
黒いレオタードを着せられた二人の少女はそれを受け取ると、戦闘員たちとともにアジトを出る。
やがて住宅街の一角で奇妙なカビによって住民たちが次々と死亡していった事がニュースで報じられた。
346ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:55:36 ID:v5lXsla50
「作戦は成功だ。この調子で日本中に殺人カビをばら撒くのだ」
帰還した二人の少女に目を細める死神博士。
少女たちは誰にも怪しまれずに殺人カビをばら撒くことに成功したのだ。
自分の予想通りの結果に死神博士は満足だった。
「しかし、死神博士。殺人カビの培養には限度があります。このままでは殺人カビが足りません」
白衣を着て白いマスクをかぶった科学班員が懸念を伝える。
確かに殺人カビは増殖は早いものの、アジト内での培養には限度がある。
それを何とかしなくてはならなかった。

ふと死神博士は少女たちを目に留める。
「そうだ・・・この娘たちは改造人間の適正がかなり高い。であれば両親のうちのどちらかがまさに改造人間にうってつけの人材だろう。殺人カビを体内で培養するカビの改造人間を作り出し、そいつに殺人カビをばら撒かせるのだ」
死神博士はそういうと二人の少女に命令する。
「お前たちの両親をこのアジトに連れてくるのだ」
「「はい、死神博士」」
二人のレオタード姿の少女たちは死神博士にうなずいた。

                      ******
347ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 02:58:08 ID:v5lXsla50
眠れぬ夜を過ごす郁子。
純子と摩子がいなくなってからもう二日が経っている。
先日は住宅街で原因不明の奇病で十数人が亡くなったというが、二人も何か病気にかかったりしているのではないだろうか・・・
とにかく二人のことが心配で眠ってなどいられないのだ。
となりのベッドでも夫が身じろぎするのがわかる。
彼も眠れないのだろう。
今までこんなことはなかったのに・・・
思わず涙がこみ上げてくる。
純子・・・摩子・・・
郁子の枕が涙に濡れた。

突然寝室のドアが開く。
「えっ?」
驚いて飛び起きる郁子と信弘。
二人の視線の先には無事の帰りを願ってやまなかった二人の少女の姿があった。
「純子、摩子!」
ベッドから飛び降りて娘たちに駆け寄る郁子。
二人の無事な姿にもう何も考えられない。
「純子、摩子、よかった・・・」
しゃがみこんで二人の体を抱きしめる郁子。
信弘も思わず二人に駆け寄ってくる。
「純子、摩子・・・」
だが、肝心の純子と摩子の表情は変わらない。
それどころか何かひどく冷酷ささえ感じさせるものだった。
348ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:00:13 ID:v5lXsla50
「純子、摩子、どうしたの?」
郁子も思わず二人の顔を見る。
そういえば、お気に入りの白い服を着て出かけたはずの二人なのに、今着ているのは黒い服。
しかもレオタードではないか。
さらにはブーツまで履いたままだ。
「二人ともいったい・・・その格好はどうしたの?」
「純子、摩子、いったい何があったんだい?」
郁子も信弘も顔を見合わせる。
二人にいったい何があったというのだろう。

「パパ、ママ、迎えに来たわ」
「さあ、私たちと一緒にショッカーのアジトに来るのよ」
無表情のまま二人は口を開く。
それは何か不気味でさえあった。
「純子、摩子、いったいどうしたの?」
「純子、摩子、ショッカーってのは何なんだい?」
娘たちの変化に戸惑いを隠せない郁子と信弘。
「ショッカーは世界を支配する組織」
「私たちはショッカーの一員なの」
「ショッカーの一員?」
「どういうこと?」
顔を見合わせた郁子と信弘の前にさらに数人の人影が現れる。
349ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:01:25 ID:v5lXsla50
「イーッ!」
「イーッ!」
「な、何者だ、お前たちは!」
全身黒尽くめの男たちの出現に、思わず信弘は妻と娘をかばおうとする。
だが、一般の人間がショッカーの戦闘員に敵うはずはない。
信弘は腹部に一撃を食らい、気を失う。
「あ、あなた! うっ・・・」
郁子も戦闘員に首筋を一撃されて意識が遠くなる。
「よし、連れて行け」
赤戦闘員の指示の下、郁子と信弘を担ぎ出す戦闘員たち。
その後ろには二人の少女が付き従っていた。

                       ******

「うう・・・こ、ここは?」
目を覚ます信弘。
となりには妻の郁子が寝かされていた。
「郁子、郁子!」
「う、うう・・・ん」
信弘が揺さぶると、郁子も意識が戻る。
二人はお互いの無事を確認しあうと、周囲を確かめた。
どうやらどこかの地下か何かのようで、二人の周囲は鉄格子に囲まれている。
とりあえず信弘は鉄格子を揺すってみたが、どうにかなるようなものではなさそうだった。
「あなた・・・」
「くそっ、奴ら何者なんだ。俺たちをどうするつもりなんだ?」
郁子の肩を抱いて寄り添う信弘。
たった数日だと言うのに、自分たちに何がおきたというのだろうか。
350ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:03:20 ID:v5lXsla50
「目が覚めたようだな」
広くなった奥のほう、円形のテーブルの向こうから一人の男が近づいてくる。
すらっとした長身に黒いマントを羽織り、やせこけた顔には不気味な笑みを浮かべていた。
「な、何だお前は」
「私たちをどうするつもりですか? 純子と摩子はどこへやったんですか?」
二人は鉄格子を握り締め、目の前の男をにらみつける。
「私はショッカーの死神博士。子供たちならここにいる」
死神博士がマントのすそを広げると、黒いレオタード姿の二人の少女が姿を現した。
「純子、摩子」
「貴様、娘に何をした!」
「クックックックック・・・」
「何が可笑しい!」
信弘は鉄格子をがしゃがしゃと揺らして、何とか脱出しようと試みる。
「この娘たちにはわが催眠術でショッカーの思考を受け付けた。今のこの娘たちはショッカーの忠実なしもべなのだ。そうだな?」
「何だって?」
「純子、摩子」
郁子が鉄格子の間から手を伸ばす。
「はい。私たちはショッカーの忠実なしもべです」
「ショッカーの命令を聞きます」
無表情で立ち尽くす二人の少女。
郁子が手を伸ばしてもまったく反応がない。
「ひどい・・・二人を元に戻して」
郁子はキッと死神博士をにらみつけた。
351ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:04:38 ID:v5lXsla50
「ククククク・・・気を失っている間にお前たちの躰を調べさせてもらった。男のほうは戦闘員にもなれぬくずだが、女、お前は改造人間の適正が充分にある」
郁美に杖を向ける死神博士。
「改造人間? 何だそれは!」
「くずだなんてひどい。信弘さんはくずなんかじゃないわ!」
「黙るのだ。これよりお前はわがショッカーの改造手術を受け、カビの改造人間となってカビ作戦を指揮するのだ」
「カビ? 妻には手を出すな! 俺が許さん!」
信弘が郁子をかばうように背に隠す。
「その女を引きずり出せ」
「イーッ!」
「イーッ!」
いつの間にか現れた戦闘員たちが鉄格子をあけて入り込む。
「くそっ」
必死に郁子を守ろうとする信弘だったが、やはり戦闘員には敵わない。
両腕をねじり上げられ、信弘はあっという間に押さえつけられる。
「いやぁっ」
「郁子ぉっ」
信弘が取り押さえられている間に郁子は連れ出されてしまうのだった。

「いやぁ、いやぁっ」
テーブルと思われていた台に載せられる郁子。
着ている服はすべて剥ぎ取られ、下着すら取り去られてしまっている。
「郁子ぉ! 畜生、お前ら、郁子に手を出すなぁ!!」
牢獄に取り残された信弘が必死に叫ぶ。
「うるさい。そこでお前の妻が生まれ変わる様をたっぷりと見るがいい」
両手両足を拘束された郁子の白い肌を死神博士の杖がなぞる。
「いやぁっ! 助けてぇっ! いやよぉっ!」
手足をばたつかせて逃れようとする郁子だったが、拘束された手足はまったく自由にならなかった。
「怖がることはないわ、ママ」
「ママはこれから改造手術を受けるのよ」
二人の少女が笑みを浮かべる。
352ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:06:14 ID:v5lXsla50
ショッカーの思考を刷り込まれてしまった少女たちは、自分たちの母親が改造されることを喜んでしまうのだ。
「ああ・・・純子、摩子、お願い見ないでぇ」
娘たちに自分が裸を見せてしまっていることに言いようのない恥ずかしさを感じる一方、二人の娘たちのあまりの変わりように絶望感も募ってくる。
「郁子、郁子ぉ」
「あなたぁ」
お互いに絆を確かめ合うかのように手を伸ばしあう二人。
だが、そんなことにはお構い無しに死神博士が命じる。
「改造手術を始める」
「イーッ」
白マスクと白衣の科学班員たちが機器類をセットする。
「いやぁっ!」
郁子に対する改造手術が始まった。

ショッカーの改造手術は基本的には遺伝子変化による動植物との融合と各種薬剤による組織や骨格の強化、それに付随しての機械埋め込みというものである。
つまり、あくまでも生命体としての融合強化が主であり、機械埋め込みはあくまでも補助強化に過ぎないのだ。
郁子の体にはさまざまな色の光が当てられ、体内の遺伝子を変化しやすくさせて行く。
毒々しい色の液体が注射器から流し込まれ、構造の変化を受け入れるべく体内の準備をする。
麻酔をかけられて意識を失った郁子の体に殺人カビの遺伝子を取り込んだ緑色の液体が流し込まれ、彼女の赤い血が排出されていく。
「い、郁子ぉー!」
信弘の目の前で郁子は徐々に人間ではない存在に変化していくのだった。
353ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:08:54 ID:v5lXsla50
抜けるような郁子の白い肌。
それは信弘にとっても郁子にとっても自慢の肌だったが、血液の交換によって青緑色に染まっていく。
それどころか青緑を越えてどす黒く変化していくのだ。
体表に生えていた毛はすべて抜け落ち、黒く染まった皮膚はやがてなめし皮のように強靭な皮膚へと変わっていく。
両手の指先は爪が伸びて鋭くなり、両脚のつま先は指が癒合して無くなると同時に固く鋭いつま先へと変化する。
かかとも細く伸びてまるでハイヒールのブーツでも履いているかのような変化を見せ、人間の素足とは思えないものとなる。
郁美の全身はどす黒い皮膚に覆われ、黒く染まった頭部からは頭髪もすべて抜け落ちていたが、やがて彼女の上半身の皮膚がぼこぼこと膨らんでくる。
それは見る間に青緑色のカビへと変化していき、形のよい胸や首、肩、そして頭部全体が青緑色のカビで覆い尽くされた。

遺伝子の変化による肉体の変化が終わると、死神博士はおもむろにメスを持つ。
ここから先は彼の一番充実した楽しい時間となるのだ。
白衣の科学班員が用意した補助器官を変化した郁子に埋め込んで行く。
その手さばきはまさに神業。
メスが光り異形の肉体が切り開かれたかと思うと、次の瞬間にはもう補助器官が埋め込まれ、表皮が接着されているのだ。
わずかな時間で郁子の体にはいくつもの補助器官が埋め込まれ、新たな体を強化する。
「これでよい。後は脳改造を行うのみだ」
額の汗をぬぐう死神博士。
その表情は晴れやかだった。
354ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:10:12 ID:v5lXsla50
「ああ・・・郁子・・・郁子ぉ・・・」
目の前で異形の存在になってしまった自分の妻に愕然とする信弘。
あの自慢の美しかった妻が、今は上半身にカビを生やした化け物になってしまったのだ。
深い絶望と悲しみが信弘を襲っていた。

「う・・・う・・・ん・・・」
ゆっくりと目を開ける郁子。
頭部全体を青緑色のカビに覆われてしまった郁子だが、それでも整った目鼻立ちはフォルムとしては残っており、奇妙な美しささえ感じさせる。
「目が覚めたようだな、カビビンガよ」
死神博士の声がうっすらと目を覚ました郁子の意識を覚醒させる。
「えっ? ええっ?」
両手両足の拘束はいまだはずされておらず、郁子は首を曲げてあたりを確認するしかない。
なに・・・これ?
目に入ってきたのは円形の台に載せられた自分の体・・・のはずだったが、そこには青緑色の奇妙なカビに覆われた二つの胸のふくらみがあるだけだった。
「クククク・・・生まれ変わったお前の姿を見るがいい」
死神博士の顔にサディスティックな笑みが浮かぶ。
わざわざ天井の無影灯の脇に用意した鏡を使い、カビビンガと化した郁子の体を見せ付ける。
この瞬間の絶望と、脳改造後の誇りに満ちた表情とのギャップこそ、彼が人間を改造する最大の楽しみの一つなのだ。
355ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:11:56 ID:v5lXsla50
郁子は最初何がなんだかわからなかった。
天井に自分と同じように台に拘束された化け物がぶら下がっている。
そう思えたのだ。
だが、自分が首を動かしたりすると、まったく同じように首を動かしたりするその姿に、郁子はあれが鏡なんだと気が付かされる。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
あまりのことに悲鳴を上げる郁子。
その化け物は黒いなめし皮のような皮膚の下半身と、青緑色のカビを全体に生やした上半身を持つまさにカビの化け物であり、その姿こそが現在の自分の姿であると思い知らされたのだ。
「郁子・・・郁子ぉ・・・」
その声にふと郁子はそちらを見る。
そこには牢獄にとらわれた夫が、愕然とした表情で彼女を見ていたのだ。
「いやぁっ、見ないで、見ないでぇっ!!」
思わず顔をそらす郁子。
「ママ、おめでとう」
「えっ?」
夫と逆のほうを向いた郁子の前には二人の少女が笑みを浮かべて立っていた。
「これでママはショッカーの改造人間よ。とても素敵だわ」
「これからはママじゃなくカビビンガ様ね」
「ああ・・・あああ・・・いや・・・いやぁっ!!」
いっそのこと気が狂いたかった。
狂えればどんなに楽なことか・・・
郁子は泣きたかった。
だが、涙は流れてはくれなかった。
356ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:13:09 ID:v5lXsla50
「嘆き悲しむことはない。これよりお前の脳を改造し、ショッカーの改造人間にふさわしい思考をするように変えてやる。そうなればお前は改造されたことを喜び、誇りに思うようになるだろう」
死神博士の手にメスが光る。
「ああ・・・いや、いやです。もう私の体をいじらないで。お願いだからやめてぇ」
首を振っていやいやをする郁子。
そのつど頭部のカビから胞子がこぼれ落ちていく。
「やめよ。このアジトを殺人カビでいっぱいにする気か?」
すぐにエアクリーナーが働き、郁子が散らした胞子をすべて吸い込んでいった。
「お願いです。やめてください」
「やめろぉっ! 郁子ぉっ!!」
「これより脳改造を始める」
二人の願いもむなしく、郁子への脳改造が始められた。

ショッカーの脳改造は洗脳と機械的コントロールチップ埋め込みの混合である。
死神博士は科学班員に埋め込み用のチップを持ってこさせ、その間にリング状の装置を郁子の頭の周囲に設置する。
郁子は麻酔をかけられることもなく頭部をメスで切り開かれ、むき出しになった脳にコントロールチップが埋め込まれた。
そして表皮が接着されると、死神博士は洗脳装置のスイッチを入れる。
リング状の装置からパルスが照射され、郁子の脳に埋め込まれたチップと共同で郁子にショッカーの思考を入力し始める。
頭蓋を切り裂かれた激痛に耐えていた郁子だったが、激痛はすぐに治まり、代わりに温かい心地よさが広がってくるのを感じていた。
357ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:14:06 ID:v5lXsla50
なに・・・これ?
郁子は心が落ち着いていくことに戸惑いを感じる。
改造などと言う恐ろしい目にあったのだが、そのことが恐ろしく感じなくなっていた。
むしろ改造されたことはすばらしいことだと感じ、新たな肉体になったことが少しうれしくなっていく。
ああ・・・どうしちゃったの、私?
改造なんてされたのに・・・いいえ、改造していただいたのに・・・
ああ・・・変よ・・・変だわ・・・
人間を超えた存在・・・
私は人間を越えたんだわ・・・
ショッカーは世界を支配する・・・
ショッカーによって世界は管理されるのよ。
そうだわ、世界はショッカーのものなのよ。
ああ・・・なんて素敵なのかしら・・・
私はショッカーに選ばれたのよ。
改造人間になったのよ。
なんてすばらしいことなのかしら。
郁子の思考は瞬く間にショッカーの改造人間としての思考に書き換えられてしまうのだった。

「脳改造は終了した。起きるのだ。カビビンガよ」
死神博士がカビビンガの手足の拘束を解く。
ゆっくりと起き上がるカビビンガ。
上半身に青緑色のカビが密生したその姿はまさに異形だが、流れるようなラインは女性らしさを保っており、胸のふくらみやお尻のラインなど妙に美しさも感じさせるものだった。
「自分が何者か言ってみるがいい」
ショッカーのワシのレリーフが刻まれたベルトを手渡してやる死神博士。
そのベルトを腰に巻きつけながら、郁子はきっぱりと宣言した。
「はい、死神博士。私は偉大なるショッカーによって改造された改造人間カビビンガです。これよりは永遠にショッカーに忠誠を誓いますわ」
口元に笑みが浮かぶカビビンガ。
その様子に死神博士は満足した。
358ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:20:36 ID:v5lXsla50
「郁子、郁子っ!」
がしゃがしゃと鉄格子を鳴らす信弘。
目の前で起こったことが信じられないのだ。
妻が化け物にされてしまったなど信じられるはずもない。
「郁子っ! 畜生、郁子を元に戻せ!」
「うるさい男ね」
カビビンガが信弘を一括する。
「元に戻せ? 冗談じゃないわ。私は改造されたことを感謝しているのよ。私はショッカーのおかげでこうして改造人間カビビンガになれたのですもの」
「郁子・・・お前・・・」
信弘の力が抜ける。
もうあの優しい妻の郁子はそこにはいなかったのだ。
「くすっ。やはり戦闘員にもなれぬくずはものわかりが悪いようね。私を郁子などと言う名前で呼ぶのはやめて欲しいわ。私はカビビンガよ。カビビンガ様とお呼びなさい」
口元に手を当てて笑うカビビンガ。
その仕草がかつての郁子を思わせて、信弘はつらかった。

「カビビンガよ。あの男は使い物にならぬ男だ。お前の力を試す実験材料にするがいい」
「ありがとうございます、死神博士。早速そうさせていただきますわ」
笑みを浮かべたまま牢獄に近づくカビビンガ。
「ふふふ・・・お前のような男と一度でも夫婦だったなんてぞっとするわ。くずはくずらしく、私の殺人カビでくたばりなさい」
すっと右手で自分の胸の辺りに生えているカビをちぎり取るカビビンガ。
そしてそのままそれを信弘に投げつける。
「ぐ、ぐわぁぁぁぁぁぁ」
断末魔の悲鳴を上げて信弘は床に倒れこむ。
その体にはみるみるうちに殺人カビが繁殖し、信弘の体を溶かしてしまう。
あとには彼が身につけていたものだけが残されるのだった。
359ショッカー代理人 ◆cVfFrJRnOU :2008/05/17(土) 03:22:28 ID:v5lXsla50
「おほほほほ・・・お前のようなくずでも私の可愛い殺人カビの養分ぐらいにはなれて幸せね。感謝しなさい」
高笑いするカビビンガ。
「すばらしいです、カビビンガ様」
「カビビンガ様、どうか私たちを自由にお使いくださいませ」
純子と摩子の二人も眼を輝かせている。
「うふふふふ・・・二人とも今日からは私の手足となって働くのよ。そうだわ、死神博士、お願いがございます」
「何を考えているのだ、カビビンガよ」
お願いなどと意外なことを言い出すカビビンガに死神博士は一瞬戸惑った。
「はい。この二人を私専用のカビ少女に改造してはいただけませんでしょうか?」
「カビ少女だと?」
「はい。少女の姿はそのままに私の殺人カビをそのまま扱える能力を与えるのです。そうすればいちいち私の可愛い殺人カビをケースに入れて持ち運ぶ必要がなくなりますわ」
手の甲を口元に当ててくすりと笑うカビビンガ。
自らの娘を改造して欲しいと願い出るまでに思考が変化したことに、死神博士は大いに満足を覚えていた。
「なるほど、それはいい。よかろう。この娘たちをカビ少女に改造する」
すぐに改造の準備を指示する死神博士。
「うふふふ・・・よかったわねぇお前たち。これでお前たちもショッカーの改造人間の仲間入りよ」
「ありがとうございます、カビビンガ様」
「光栄です、カビビンガ様」
二人の少女はうれしそうに微笑んで、カビビンガを見上げていた。

やがて、都内各所に殺人カビが猛威を振るうようになり、そこにはカビの改造人間カビビンガと、それに付き従う青緑色のアイシャドウと口紅をつけ青緑色のレオタードに身を包んだ二人の少女の姿が目撃されるようになる。
ショッカーの「カビ作戦」が始まったのだった。