「謀略教授 SSヘルマリオンU」
【アジト 訓練場】
「さあ、お前たち! あいつを捕まえるまで餌抜きよ。餌が欲しけりゃ、とっとと捕まえなさい。フフフ」
センチピードマリオンが『地獄の選別』の合格者達に教育を施していた。
少年少女たちはどこかの特撮番組の戦闘員のような黒づくめの格好をしている。男子は全身タイツ、女子はレオタードに網タイツ。腰に赤い
サッシュを巻いていた。
「おい、フンコロガシマリオン、ガキどもに捕まったら、パンチとキック10発ずつだからね」
「ヒ、ヒィ・・・・・パンチ、キックいやです〜・・・・・・」
かつて、いじめっ子人生を歩んできた元T大生の男は、自分がいじめ続けてきた相手であったスタグビートルマリオンに拉致・改造され、
ここでは改造前とは全く逆の生活を送らされていた。まさに因果応報である。
「嫌なら、捕まらないことね。さあ、お逃げなさい!」
センチピードマリオンに蹴られて、フンコロガシマリオンが汚物を転がしながら猛スピードで走り出す。
当然ではあるが改造されていない子供たちには追いつけるわけがない。わざと子供たちをしごいて楽しんでいた。
センチピードマリオンは改造前とは180度性格が変わってしまった。
息が上がっている子供には容赦なく彼女のムチが飛んだ。
「遅い!佐竹!勉強できても、ドン臭いわね。開栄中学は合格確実でも、ソルジャーマリオンへの道のりは遠いわね!アハハハハ」
邪悪な笑顔が浮かぶ。
「きゃははは でね〜 兵隊さんがいっぱい来たけど、ドカーンって吹っ飛ばしてやったんだよ〜 この前のフランスは楽しかったなぁ。」
「左様でございましたか。骸教授様も喜んでおられたことでしょうね。」
「うん!」
マリオンヘイルとホーネットマリオンが話しながら訓練場へ入ってきた。
「センチピードマリオン、どきなさい。マリオンヘイル様がフンコロガシで遊びたがっていらっしゃるわ。」
ホーネットマリオンが命令口調で言う。
「骸教授様により、私はガキどもの教育を命令されてます。その際、施設内の設備やフンコロガシマリオンの利用は私の裁量でいつでも
使っていいことになってるんですけれどもねぇ。」
ホーネットマリオンの横柄な態度が少し気に障ったらしい。
「あなた、新入りでしょう。少しは気を使いなさいよ。」
「あら、そんなの関係あるの?ソルジャードールはみな平等なはずよ。骸教授もおっしゃっていらしたわ。」
ホーネットマリオンは言い返されてムッとしていた。
「ねぇねぇ、ムカデちゃん、だめぇ?」
マリオンヘイルが悲しげな表情でセンチピードマリオンを見つめる。
「いいえ。そんなことございませんわ。マリオンヘイル様。どうぞ、遊んでください。ガキどもには訓練用小型プペロイドと格闘訓練をさせます
ので。」
にっこりとマリオンヘイルに優しい笑顔を見せて言った。その笑顔は彼女が改造前に子供たちに見せてた優しいものだった。
「おまえたち、さっさと移動しなさい!マリオンヘイル様の邪魔になるでしょうが!」
そして彼女は振り向き鬼の形相でムチを振るって、子供たちを追い立てた。
センチピードマリオンは場所を移動する際、すれ違いざまに耳元でささやいた。
「あんな身内がいるくせに、よく組織の中で、堂々と振舞えるわね。恥ずかしくないの?あなたの身内おかげでどれだけみんな迷惑してるか
知ってるの」
ホーネットマリオンはセンチピードマリオンの後姿を憎悪に近い感情で睨みつけていた。
【東京近郊 閑静な住宅街】
「・・・・・・・さ、仕事です!」
警視庁公安部の田中が紗希の背中をポンと軽く叩いて、ワゴン車から部下をつれて飛び出していった。
紗希も空中に舞い上がりながらビーマリオン、ディソルバー・サキに変身する。
そして、「山口」と表札のかかっている大きな家の2階のある部屋の窓ところまで飛んでいく。
玄関や庭から田中たちやそれ以外にもヘルメットに黒っぽい出で立ちの男たちがこの家の中に侵入していく。
彼らの手にはピストルやサブマシンガンが握られていた。
【東京近郊 山口家】
「どうだ?恵美、体のほうは大丈夫か?」
内閣総理大臣・山口忠一が愛しい孫娘の見舞いに長男宅を訪れていた。解放直後に会いたかったのだが、
総理大臣という多忙な立場であるためそれは叶わず、国家公安委員長より報告を受けただけにとどまっていた。
「うん。おじいちゃん、ごめんなさい。心配かけて・・・・。」
「謝ることなんか何にもありゃせんよ。とにかくよかった・・・お前が無事に戻ってきて。」
「ほかのみんなが今、どうなってるのか心配・・・・・。」
「友達のことか?任せておきなさい。おじいちゃんが自衛隊を使って助け出してあげるから。心配しなくても大丈夫だよ。」
「おじいちゃん・・・・・なんで私だけ助けたの!みんなといっしょがよかったのに!」
「仕方なかったんだ・・・・・いろいろな事情があってね・・・・でも近いうちにみんな助け出すから・・・・・」
「近いうち?・・・・それはいつなの?・・・・・・」
「みんなで話し合って決めてるところなんだ。」
「まだじゃあ、決まってないんだ・・・・・」
「そ、そうだけど・・・・・すぐ決まるよ。そんなものは」
「・・・・いよ・・もう・・・フフフフ」
恵美がうつむいて、ブツブツしゃべりだした。
「恵美、どうしたんだい?・・・恵美?」
孫娘がいつもと違う様子であるのに気づいた。
「遅いよ・・・・もう手遅れだわ。アハハハハ」
バリバリ・・・恵美の着ていた服が敗れ、孫娘はタマムシのような化け物に変わった。
「う、うわぁ・・・・・・・か、か、怪物〜〜うわぁ〜〜〜」
慌てて孫娘の部屋を飛び出そうとするが、腰が抜けてしまい、立てない。
「怪物とはあんまりだわ。今の私にはジュウェルビートルマリオンって立派な名前があるのよ。おじいちゃん。いや、内閣総理大臣、山口忠一。
お前たちが馬鹿面さらして私達を探し回ってる間に、お友達はみんな、とっくに生まれ変わっちゃったわ。」
「め、恵美・・・・・・そんな・・・・」
「恵美だなんて汚らわしい。下等動物のときの名で呼ばないでよ!私はお前が来るのを待ってたんだ・・・・・お前を操り人形として
使うためにね・・・そういうわけだからヘルマリオンに協力してね。おじいちゃん♪私の体がきらめくのをじっと眺めなさい!ホラ・・・」
「よ、よしなさい!恵美!」
「その名を二度と口に出すな!ジジイ!」
ジュウェルビートルマリオンの体が幻想的な光を放ち始める。2、3分ほど凝視してしまえばその煌きの催眠効果により、人間は「操り人形」と
化してしまう。
バターン!
大きな音とともに部屋のドアが開いた。そして拳銃やサブマシンガンを構えた男たちがなだれ込んできた。
「総理、ご無事ですか?警視庁です!」
SPと田中の部下が、総理の身体を確保し、安全な場所へと立ち去る。
拳銃を構えたスーツ姿の田中の背後にはSATの隊員がサブマシンガンを構えていた。ヘルマリオン内部の協力者『F』に疑念を抱いた警視
庁公安部は裏取引で解放された山口恵美の行動を24時間体制で監視しており、山口家には盗聴器が仕掛けられていた。今日の山口総理
にはSP以外に公安部外事3課の長田の配下の監視実行部隊「田中班」のメンバーと警視庁のSAT2チームが総理に悟られることなく極秘に
「もしもの事態」に備えて同行していた。そして、その「もしもの事態」は発生し、当局の悪い予感は的中してしまった。
また、解放直後、帰宅した恵美に「操り人形」にされていた母親は突入開始と同時に拘束され、同じ目にあっていた経産省の幹部職員であ
る父親は役所に出勤するため玄関を出た直後、送迎の公用車の中に乗っていた公安部の人間に拘束されていた。
「くそ・・・・あと少しのところで・・・・・・お前ら、私の邪魔をした代償は高くつくよ・・・・・・」
ジュウェルビートルマリオンが公安部の警察官やSATを血祭りに上げようとしたそのとき、
「それまでよ!ソルジャードール!無駄な抵抗はやめるのね!」
窓の外から声がした。そこにはディソルバー・サキが浮かんでいた。
「お前が、ビーマリオンか・・・・・・フン、裏切り者の未完成体が!」
口から溶解液を吐き出したが、ディソルバー・サキはひらりとかわす。
「ビースティンガー!」
乳房を刺激し、発射する。
ジュウェルビートルマリオンの素早く避ける。
2体は空中で激しく火花を散らす。
お互いパンチやキックを繰り出すが、なかなか相手に致命的な打撃を与えられない。
「なかなかやるじゃない・・・・・でも、あなたはまだ動きに隙がある!」
ディソルバー・サキは大技を繰り出す。
「ビースラッシャー!」
「!!!」
ジュウェルビートルマリオンの右脇腹が裂け、緑色の血が吹き出す・・・
「ぐぅ・・・・・・」
ジュウェルビートルマリオンの顔が苦痛で歪む。
「ごめん・・・・・あなたを殺したくはないけど、こうするしかないの・・・・・・」
とどめを刺すため2発目のビースラッシャーを食らわそうとしたそのとき・・・・・
「スワローテイルストーム!」
右の方から聞こえた声とともにディソルバー・サキの視界が黄色くなり、標的のジュウェルビートルマリオンの姿が歪んで見えはじめた。
「助けに来たわ!ジュウェルビートルマリオン」
アゲハマリオンが現れた。
「さすが親友ね・・・アゲハマリオン、恩に着るわ・・・・」
苦境に立たされていた状態のジュエルビートルマリオンの口元が笑っていた。
「久しぶりね。ビーマリオン。あなた、ホーネットマリオンの妹なんだってね。出来損ないの身内がいるのって苦労させられるのよね・・・・・・・
まあ、私の兄、フンコロガシマリオンは組織を裏切ったりはしてない分、マシだけど。フフ。」
「うう・・・・・目がくらむ・・・どうしたの私・・・・・・」
頭を抱えて苦しむディソルバー・サキ
「本当はあなたを殺すなり捕虜にするなりできるんだけど、あるお方の命令だから今日はこの辺にしておいてあげるわ。フフフ」
余裕を見せるアゲハマリオン
「ビーマリオン!今度、会うときはタダじゃすまさないわよ・・・・・・・この傷のお返しキッチリさせてもらうわ・・・・・」
アゲハマリオンに抱えられたジュウェルビートルマリオンがリベンジを誓う。
「ジュウェルフラッシュ!」
ジュウェルビートルマリオンが叫ぶとともに2体は強烈な閃光に包まれた。
「き、消えた・・・・・・でも、なぜ私にとどめを刺さなかったの・・・・・・・」
スワローテイルストームをまともに喰らったダメージの影響でなぜなのか考える余裕など全くなかった。ふらふらと公園の林の中に舞い降り、
仰向けに倒れた。
約3時間後、ディソルバー・サキは当局に無事発見され救助された。
【警察病院】
人間態になった紗希はベッドで、新聞を読んでいた。新聞の社会面には総理大臣の長男の経産省官僚宅に空き巣が入ったという記事が
隅っこに載ってた。ちなみに事件の目撃者は全員、公安部によって口止めされていた。
「もう、新聞が読めるようになったんですか。すごい回復能力ですね。」
ベッドの横に見知らぬ男が立っていた。
「警察の人・・・ですか?」
「いいえ。私は陸上自衛隊中央情報隊の者です。根岸と申します。」
「自衛隊・・・・ですか?」
陸上自衛隊中央情報隊は防衛大臣直轄の部隊である。おそらく、根岸はその中でも「現地情報隊」といわれるヒューミント(対人情報収集)
を行う部隊に所属するのだろう。本来の活躍の場は自衛隊がPKOで派遣される地域であり、そこで情報収集や対人工作活動を行うことを任
務としているが、今回は事態の重大さにより、ヘルマリオン対策に投入されたのであろう。全国の警察の公安部門、公安調査庁、自衛隊・・
さまざまな組織が動いていると思われる。
「はい。あなたに是非、協力していただきたいと思いましてね。野々村紗希さん。
我々はヘルマリオンの拠点を発見しました。N県の山中にね。現在、政府上層部では攻撃作戦を立案中です。今回の作戦は米軍も積極的
に参加するようです。ご存知でしょう?先日、ボルチモアが攻撃されて、太平洋上に展開中の第7艦隊が襲撃されて、壊滅したのを。」
「はい・・・・テレビのニュースで見ました。私も出来るならアメリカに飛んで行って助けてあげたかったです・・・・」
紗希が唇を噛みしめながら言った。
「そのアメリカでは9・11のときなど比較にならないぐらい大統領をはじめ国民がみな怒りに燃えています。極東地域の投入可能な戦力は
すべて使われるでしょうし、本土からも精鋭部隊が派遣されるようです。」
「そんなすごいことに・・・・・・・・」
紗希は驚く。
「あなたは明日、退院の予定です。警察とは話がついています。明日から朝霞駐屯地など我々の施設で共同訓練していただくとともに
隊員達にヘルマリオンのソルジャードールやプペロイドについての紙の上の情報では分からない点などについてにレクチャーをお願いした
いのです。」
「わかりました。こんな私でよろしければ・・・・・・ただ、私、探偵の仕事が・・・・・・」
「それなら心配無用です。そちらは私達がなんとかしておきますので。」
「そうですか・・・・どうも・・・・」
「臨時ニュースです。カリフォルニア州ロサンゼルスが正体不明の敵に攻撃を受けました。ロサンゼルスは在留邦人も多く、その安否が
心配されています。繰り返します。日本時間午前・・・」
何気なくついていたテレビの画面に流れていた主婦向け情報番組が中断され、男性アナウンサーが深刻な表情でニュース速報の原稿を
読み上げていた。紗希と根岸はテレビの画面に釘付けとなった。
【ロサンゼルス】
中心部のダウンタウンが焼き払われていく・・・シティー・ホールが跡形もなく崩壊し、チャイニーズ・シアターも炎に包まれ、サンセット通りに
沿うようにハリウッド方面へ破壊の嵐が吹き進み、世界一の映画の発信地は地球上から消滅した。ビバリーヒルズも焼き尽くされた。
「およ?遊園地見っけ!ガッぢゃん、あそぼ。きゃはははははは」
破壊の最中に見つけたユニバーサルスタジオで遊び始めた。
「ターゲット『D』及び『E』、ユニーバーサルスタジオ内に確認・・・・・」
無人偵察機RQ-1プレデターがアトラクションで遊ぶ、少女のような姿の『D』と邪悪な天使のような姿をした生物『E』を捉えた。
「ボルチモアのときのようにはいかんぞ。怪物め。」
討伐部隊の総司令官、陸軍大将リンゼイは作戦指揮所でモニターを見てつぶやいた。
奇襲で混乱したアメリカ軍だったが、態勢を立て直し、ユニバーサルスタジオを付近に進撃した。
M1A2エイブラムス戦車、MLRS(多連装ロケットシステム)M270、M109自走榴弾砲などを装備した機甲部隊がユニバーサルスタジオを
有効射程に収める範囲で包囲するようにいくつかの陣地を展開する。
機甲部隊が包囲網を作り上げたころ、上空にヘリのローターの重低音が重々しく響いてきた。
米軍の反撃の先陣としてAH-64Dアパッチ・ロングボウ攻撃ヘリの編隊がユニバーサルスタジオ上空にさしかかる。
攻撃ヘリ部隊は遊園地の敷地内を走り回る2体の姿を確認し、そのうちの1機が30o機関砲を浴びせる。
土埃りが舞い上がり、2体は土煙の中に消えた。
(殺ったか?)
ヘリのパイロットがそう思った瞬間・・・・
「きゃははははは 戦争ゴッコだ、うわ〜い!」
埃まみれになりながらも大笑いしている少女の姿が確認されるとともに、後続の友軍機が分裂した無数のガッジーラに取り付かれているの
が分かった。
「う、うわ〜〜〜〜!」
コクピットの正面に少女が無邪気な笑みを浮かべ張り付いていた。
「ほい、お返し!」
パンチがコクピットの防弾ガラスを貫き、前席の副パイロット兼射撃手を直撃し、後部席のパイロットにはガッジーラの1匹が牙を向いて左側
から襲いかかってきた。乗員が即死し、コントロールを失った攻撃ヘリはキリモミしながら地上に落下し、爆発した。
「やっつけたぞ〜! ガッぢゃん、やったね!きゃはははははは」
一方、機甲部隊の各陣地はガッジーラの群れに襲われ、阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた。ガッジーラの襲来に対し、勇猛果敢に反撃す
る兵士の自動小銃の射撃音が陣地のいたるところで聞こえたが、やがてそれはすべて沈黙した。
「ガッぢゃん、この町の近くのアナハイムってところに遊園地がもう1つあるんだって。遊びに行ってこよ。きゃははははは」
分裂したガッジーラは次々と集合し、再び一つなろうと合体し始めていた。その様子はまるで分身の術を解く忍者であるかのように見えた。
どこかもう1箇所で「遊ぶ」ように祖父から言われていた気がしたが、アナハイムの大きな遊園地で遊んでいるうちに忘れてしまっていた。
【ワシントンDC ホワイトハウス 国家安全保障会議】
「現地の司令部からの連絡が途絶えました。あらゆる方法で連絡を試させましたが、駄目です。総司令官のリンゼイ大将の消息は不明。
おそらく戦死したものと・・・・・」
国防長官のマクファーソンが蒼ざめた顔をして合衆国大統領、フォレストに報告した。
モニターを通じて現地司令部と連絡を取っていたが、背中に羽の生えた幼児のような姿の生物が無数に飛来したかと思うと、そこで映像は
途絶えた。
フォレストは苦虫を潰したような表情で押し黙っていた。
「大統領・・・・日本での作戦ですが、大丈夫なのでしょうか・・・・再検討なさってみては・・・・・・・」
国務長官のグラントが実行の日が刻々と迫るヘルマリオン拠点攻撃作戦に不安をいだき、提案する。
「マクファーソン、例の武器の開発情況はどうなんだね?」
フォレストは重い口を開いた。
「はい、誠に残念ながら今回のロスの襲撃には間に合いませんでしたが、作戦開始日には何とかなりそうだと報告をうけております。」
「そうか・・・・」
フォレストの表情が少し明るくなった。
「グラント、作戦プランはあのままで行くよ。やつらに目にものを見せてやる。それに『極東の友達』も強力な切り札を持ってるしね。」
「なるほど・・・・・日本には『彼女』がいるのでしたね。そういえば・・・・」
グラントも納得したかの表情に変わった。
【日本国内某所 自衛隊施設】
自衛隊の特殊作戦群の隊員とデルタフォースヤグリーンベレーといった米軍の特殊部隊の隊員が共同訓練を行っていた。
そして彼女も・・・・・・
「ビースティンガー!」
プペロイドを模した標的を正確に打ち抜いていく。
その後に続いて、特殊部隊員たちが、仮想ヘルマリオン拠点に突入する。
そして、マリオンラーヴァに強力な特殊爆弾をセットする。
ディソルバー・サキが制圧したところを特殊部隊員が囚われの身になっている人々を救出していく。
彼らは毎日、このような実戦訓練を繰り返していた。
実戦形式の訓練終了後、人間態になった紗希が自衛隊から支給された迷彩服姿で、特殊部隊員たちに講義する。
そして夕食の時間となり、紗希は他の隊員達とともに食堂へと向かうことがいつもの日課となっていた。
「紗希ちゃん、いよいよね・・・・・・」
「あ、福井二曹・・・・・・」
紗希は訓練生活の中で、婦人自衛官で特殊部隊員の福井真菜と仲良くなった。
ごつい男性ばかりの中で女同士。必然的に仲良くなった。年も22歳で、17歳の紗希と近く、紗希は姉のように慕っていた。
顔はモデルのように綺麗で、自衛隊員にはとても見えなかった。
「そう・・・・・お姉さんも改造されて・・・・・・」
「はい。私をかばって、ホーネットマリオンに改造されました・・・・・・」
紗希は自分が改造された経緯について話していた。
「なんて卑劣な奴らなの。ますます倒し甲斐のあるわね。」
真菜はヘルマリオンに強い憎しみを感じた。
「福井二曹はなんで特殊部隊を希望したんですか?」
「もう、訓練時間外は真菜さんでいいって言ってるのに。あはははは」
「あ、なかなかクセが抜けなくて・・・・・」
「あははは。そうねぇ・・・ヒーローに憧れたからかな・・・・・私、3人兄妹の末っ子で兄が2人いるの。その環境のせいかなぁ・・・・・男勝りな
性格になっちゃって、お人形遊びよりも外で駆け回って男子とヒーローごっことかして遊ぶのが好きだったのよねぇ・・・・・」
「へぇ・・・そうなんですか・・・・」
「うん。身近な人や好きな人を守りたいって言うのかな・・・・それで自衛隊に入っちゃった。で、やるからには最強になりたいじゃない?
レンジャー資格も取って、念願かなって、今じゃ、特殊作戦群の隊員!」
このような彼女のキャラクターはそのモデルのような外見からは全く想像できなかった。
【作戦当日 アジト 研究室】
「ほっほっほ。ついに攻めてきおったか。待ちわびたぞい。早く新しいアジトに引っ越したかったしのぉ。」
モニターに突入してくる米軍や自衛隊の特殊部隊の姿が映る。
「いろいろと組織の内情も掴まれたようじゃし、いったんリセットじゃ。奴らにやられたフリをしてやるわい。ほっほっほ。
ワシもたまにはバカンスとやらを楽しみたいしのぉ。その為に新アジトとは別に六本木ヒルズの地下にも研究所を極秘に作っておいたのじゃ。
私的な研究をさせてもらうわい。そうそう、カナブンマリオン、資金調達ごくろうじゃったの。マネーゲームの腕前は相変わらずじゃな。ホホ」
カナブンマリオンは骸教授に一礼した。そしてプペロイドたちが重要書類を搬出するのを指示していた。
彼は世間を騒がせた元IT企業社長・江森文隆の成れの果てで、今はヘルマリオンの金庫番をしている。
彼は自分を時代の寵児とさんざん持ち上げておきながら、社会の慣習に少しでも合わないことをした途端に手のひら返したようにバッシング
し、挙句の果てに犯罪者にまで貶めた世の中に大きな恨みを持っていた。そんな折、六本木ヒルズで骸教授と知り合い、自らヘルマリオン
入りを志願したのである。そして改造後は、スタグビートルマリオンやヘラクレスマリオンと同様、骸教授の腹心となっていた。
骸教授は次に参謀格のスタグビートルマリオンを呼び出し、指示を与える。
「おい、スタグビートルマリオン、出来の悪いプペロイドの処分をよろしくたのむ。あと、『不良品の蜂』の処分もな。ククク・・・・・・」
「はい。かしこまりました。それで骸教授様、お願いなのですが・・・スパイダーマリオンとマンティスマリオンをここに残してください。」
「うむ、いいじゃろ。正規のプペロイドも30体ほど付けてやろう。」
「ありがとうございます」
【アジト】
「ビースティンガー!」
『バス遠足児童大量拉致事件』の被害者と思われる子供たちを救出した後も順調にプペロイドを倒していく。
「プペロイドたち・・・・妙に弱すぎる気が・・・・・・」
サキが不審に思ったのも束の間、
緑色の鎌のようなモノが不意に左胸を掠った。
「・・!!」
「フフフフ、うまくかわしたわね・・・・ビーマリオン」
カマキリの姿をしたソルジャードールが行く手に立ちふさがった。
「私の名はマンティスマリオン!あなたをバラバラに切り刻んであげるわ・・・・・・・」
「やれるものならやってごらんなさい!行くわよ、マンティスマリオン! ビースラッシャー!」
「こしゃくな!マンティスブレイド!」
刃が二つ交差した・・・
【アジト 通路】
ダダダダダダ・・・!
対プペロイド用の特殊な弾丸が自動小銃M4A1から発射されプペロイドが吹っ飛ぶ。
「ヘイ、ロバート。こいつは予想以上に効くなぁ。」
デルタフォースの隊員の1人が同僚に言った。
日本の警視庁公安部がヘルマリオン内部に獲得した協力者『F』によってもたらされたプペロイドの情報は在日米軍やCIAによりアメリカ本国
にも渡っていた。また、CIAも独自の『協力者』をヘルマリオン内部に獲得しており、完全体のプペロイドを何体か入手し、エリア51と呼ばれる
施設内でさまざまなテストを行っていた。
その結果、作られた武器の一つが対プペロイド制圧用の弾丸だった。ソルジャードールに対してもある程度効果があるとされている。
それはヘルマリオンの拠点へ突入した日米の特殊部隊員たち全員に支給されていた。そして爆薬をセットする他の特殊部隊員の邪魔にな
る対象すべての排除を任務として割り当てられたデルタフォース所属のノリス少佐以下3名のチームはすでに何体ものプペロイドを撃破して
いた。
「ギギ!」
プペロイドが物陰からまた姿を現す。
「ファック!お前らなんかどれだけいても相手にならねえんだよ!ロスとボルチモアのお返しだ!クソッタレ!」
フルオート射撃でプペロイドを粉砕する。
「フゥ〜。絶好調だな。どんどんスクラップにして地獄に送ってやるぜ!」
「それなら、私が相手してあげましょうか?」
ノリスたちの目の前に、蜂のような姿をしたソルジャードールが現れた。
「出やがったな、ソルジャードール!俺たちデルタが相手だ、覚悟しやがれ!」
デルタフォースの隊員達はフルオートで弾丸をこの『蜂女』にぶち込んだ。
【マリオンラーヴァ】
「こちら、キクスイ01、セット完了しました。これより撤収します!」
真菜が指揮所に時限爆弾の設置に成功したことを報告する。
「あら、女の人もいるのね・・・・自衛隊の特殊部隊って・・・フフフ」
天井から声がした。上を見ると張りの部分にクモのような姿をしたソルジャードールが腰掛けていた。
「ようこそ。ヘルマリオンヘ。私はスパイダーマリオン。自衛隊のみなさん歓迎するわ。フフフ」
「こちらキクスイ01、敵ソルジャードールと遭遇!交戦する!」
自動小銃を撃ち、同僚が報告する。
真菜もスパイダーマリオンを銃撃するが、効果がないようだ。
「バカね。そんなもの効かないわ。死になさい!」
スパイダーマリオンが両手を自分たちのほうに向けて広げると、傍にいた同僚たちの様子がおかしくなった。
そして、こともあろうか同士討ちを始めた。
「丹羽二尉!岸本一曹!風間!」
おかしくなった3人はお互いに撃ち合って死んでしまった。
「あら、意外にもろいのね・・・・・」
クスクスと笑いながら言った。
「私ねえ、下等動物を指先から出る見えない糸で操ることができるの。あなたの仲間を操ったんだけど、弱いわね・・・・・」
「くそ・・・・!」
再びスパイダーマリオンに自動小銃M4A1カービンの銃口を向け撃とうとしたが・・・・
(くっ・・・・・・・・・・弾切れ)
「アハハ、弾がなくなっちゃったみたいね。」
「殺せるなら、殺してみろ!化け物!」
真菜はアーミーナイフで格闘戦を試みようとした。
「殺すわけないじゃない。あなたみたいな素敵な素体。フフフ」
今度は口から糸を吐き、真菜をグルグル巻きにしてしまった。
「ヘルマリオンヘようこそ。心から歓迎するわ。フフ」
「私をどうする気だ!」
「仲間になってもらうだけ・・・・」
ただそう答えて、福井を連れ去った。
【アジト 通路】
「お、おのれ・・・・・ビーマリオン・・・・・」
マンティスマリオンが黄色い血を噴出しながら倒れる・・・・・
「ヘルマリオン!万歳・・・・・・・」
マンティスマリオンは、そういい残すと体が溶解して消えた。
(マンティスマリオンか・・・・なかなか手強かったわね・・・・)
ゴン!ゴロゴロゴロ・・・・・
西洋人と思われる男の生首が4つ、サキの目の前に転がってきた。
「久しぶりね・・・・紗希、いや、ビーマリオン・・・・・」
ホーネットマリオンが目の前に現れた。
「紗耶・・・・・・」
「あなたもそいつらみたいにしてやろうかしら・・・デルタフォースだっけ?大したことなかったわね。弱すぎるわ。」
「もう、ヘルマリオンは終わりよ!目を覚まして!もとの紗耶に戻って・・・・おねがい!」
「あなたもおめでたいわね。下等動物ごときにこのヘルマリオンがやられると思ってるわけ?」
「!!・・・・どういうこと!」
「姉妹のよしみで教えてあげるわ。私達は、アジトを別のところに移すことにしたの。いろいろ知られすぎちゃったしね。
下等動物の情報機関とかに。で、あなたたちにやられたフリして、引っ越すの。引越しついでに欠陥品のプペロイドとか邪念獣とか
引越しゴミも始末してもらって、最後はあなたたちがこのアジトを爆破して、お掃除完了。」
「なんですって!」
「ちなみに、あなたは私に倒されて組織に復帰する。いやならこの場で殺しちゃうけど?あはははは」
「紗耶!やはり私はあなたを倒なければならないようね!人類の為に!」
「あら?そんなことできるの?相変わらず、しょうがない妹ね・・・・じゃあ覚悟はいいかしら?喰らえ!ホーネットスティンガー!」
ホーネットマリオンは乳房を刺激し、針を発射した。
「なんの!ビースラッシャー!」
さっと身をかわし、サキは反撃する。
姉妹の骨肉の争いが始まった!
【新アジト】
「う〜ん、今度の場所は海が見えて気持ちいいのぉ・・・・・・・」
新アジトの立地に骸教授は満足しているようである。
「さて、マリオンラーヴァの配置も無事に終わったことじゃし、早速、始めるとするかの。」
迷彩服に身を包んだ福井真菜がプペロイドに引きずられている。
「ほほう、女の自衛隊員か。なかなかいい素材じゃ。楽しみじゃわい!」
「やめろ!離せ!このクソロボット!」
抵抗し続けるが、真菜は全裸にされてしまった。
「それはクソロボットではなくプペロイドというのじゃよ、お嬢さん。ホッホッホ。さあ、改造開始じゃ!」
手術台に全裸で拘束された真菜はマリオンラーヴァに飲み込まれていった。
【マリオンラーヴァ内部】
「な、なに・・・・・水?の中なのに苦しくない・・・・・・」
ウネウネと触手が体に絡みつき、体中の穴をふさぐ・・・・
「いや・・・・やめて・・・・・・・・」
触手の先端が吸盤状に変わり体にペタペタと張り付く
そして体内に何かが流れ込んできた。
その『何か』には催眠物質が含まれているのであろうか・・・・
今まで感じたことのない暖かさに包まれ、夢を見ているような状態になった。
背中に虫のような羽が生えて空を自由に飛びまわる自分・・・・・・
(・・・・・なんて気分がいいんだろう)
『巣』に戻ってくる。多くの仲間?がいる。人?蜂?
(・・・・・怪物!)
(そうだ、こいつらを制圧しに来たんだ・・・私・・・M4A1カービンがない・・・・あれ・・・)
プペロイドが突如現れ、群れを成して私に迫る・・・・
(くそ・・・ヘルマリオンめ・・・・・・・)
現れたばかりのプペロイドがすぐに目の前でバラバラになる・・・・・
(・・・!)
プペロイドが消えたかと思うと不快な羽音とともにスズメバチの群れが現れ体に張り付く・・・・
(うわ・・・ちょっと・・・・何これ・・・)
振り払おうとするが次々と沸いてきては体に張り付く
そして耳元のスズメバチが囁く。
「オマエハ何者ダ?オマエハ何者ダ?」
「福井真菜だ・・・・陸上自衛隊、特殊作戦群・・・・所属・・・・お前らこそなんだ・・・」
「オマエハ何者ダ?オマエハ何者ダ?」
「うるさい!」
ハチまみれの右手で耳元のハチを振り払う・・・・
二の腕のハチが一瞬、離れる。そして、黒く変色した腕・・・・黒の長手袋をしてるような腕・・・・
(・・・・!!)
再びハチの群れで埋る・・・・・
体中のハチを振り払おうとする・・・・
胸が黒と黄色の・・・・ハチの腹のような模様になっていた・・・乳首は異様に赤かった・・・・
「オマエハ何者ダ?」
「またか!うるさい・・わたしは・・・・・・あれ?・・・わたしは福井・・・・・・真菜?・・・・」
(・・・しつこい!・・・・・!!!な、何これ・・・・)
ハチの群れを払いよけながら逃げてるうちに鏡張りの空間に迷い込んでいた・・・そこの鏡に映った自分の姿をみて驚いた・・・
黄色い体に黒いブーツと長手袋をした腕と足・・・・ハチの腹部のような胸・・・・・背中の羽・・・・・・側頭部の複眼に額の触角
顔は人のままだが悪役レスラーのようなメイクしたみたいになっている・・・・・
(・・・これが・・・・私?・・・・・)
「我々ト一体化スルノダ。我々ト一体化スルノダ。」
耳元のハチの囁きが不思議と心地よく思えてきた。
(そう・・・・ハチにならなきゃ・・・ハッ・・・・なに考えてるの私・・・・私は人間・・・・人間よ!)
葛藤し始める。
「我々ハへるまりおんトトモニ歩ム!我々ハへるまりおんトトモニ歩ム!・・・・・・」
(そう、ヘルマリオンこそ、私のすべて・・・・・ちがう!ヘルマリオンは敵!・・敵・・・・敵?・・敵なの?・・・・なんで?・・・)
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
真菜は耳を塞いでうずくまる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
意識を失う真菜
「オマエ何者ダ?」
体に張り付いていた無数のハチが消え、いつの間にか、うつ伏せに倒れていた真菜の耳元に1匹のスズメバチが止まって囁いた。
「私はヘルマリオンのソルジャードール。なにを分かりきったことを聞いてるの?」
「オマエハ福井真菜トイウ人間デハナカッタノカ?」
グシャ!
耳元のハチを潰す。
「今はそんな名前の下等動物じゃないわ・・・・・私は選ばれたの!」
【アジト マリオンラーヴァ】
目を覚ますと真菜は手術台の上に横たわっていた。マリオンラーヴァから排出されたらしい。起き上がって周りを見回した。
「ホッホッホ。スズメバチか。貴様はべスパマリオンと名乗るがよかろう・・・・・・」
骸教授が真菜に新しい名前を授ける。
「ありがとうございます!骸教授様。ヘルマリオンに私のすべてを捧げます!」
「ホッホッホ。これは頼もしい。期待しておるぞ。 おい、スパイダーマリオン!毎回で悪いが、こいつを連れてアジトの中を案内してやれ。」
「かしこまりました。骸教授様! べスパマリオン、うれしいわ。また、素敵な仲間が増えて。さあ、行きましょう。」
べスパマリオンはスパイダーマリオンに連れられていった。
【アジト 研究室】
「なに?相打ちじゃと・・・・ホーネットマリオンは・・・そうか・・・・・」
スタグビートルマリオンが骸教授に報告している。
「てっきり死んだものだと思ったがのぉ・・・・・・・う〜む。生命力は想像以上じゃ。」
「はい。ビーマリオンも瀕死の重傷となりながらも戦闘時の記憶を一時的に失ったようです。あの日、あれから自衛隊に救助されたらしく、
今、防衛医大病院に収容されてるようです。」
「そうか・・・・・また次の手を考えるとするか・・・」
バターン!
ドアが勢いよく開いた。
「じいちゃん、あーそぼ!」
マリオンヘイルが入ってきた。
スタグビートルマリオンが一礼して退出していく。
「これこれ、もっと行儀よくするのじゃ。」
「うん! てへへへ」
「そうじゃ、マリオンヘイル。この前、ロスは破壊したけど、ニューヨークを破壊し忘れたじゃろ?」
「あ、そっかー。いっけねー。忘れちった。」
「まあ、よいのじゃが。さっき、ロシアとやらが我々の軍門に下るのを拒否してきおった。奴らは最近、石油とやらで景気がいいようじゃ。
そこで西シベリアのサモトロール油田とやらの採掘設備やパイプラインを壊してくるのじゃ。それは来週でいいがな。」
「はーい!」
「失礼します。お呼びでしょうか?骸教授様。」
センチピードマリオンが入ってくきた。
「うむ。センチピードマリオンよ、下等動物のガキどもの管理に加えて、新たな任務を与えてやろう。このマリオンヘイルの教育・世話係じゃ。
よろしく頼むんだぞ。ホッホッホ」
「まぁ!マリオンヘイル様の・・・・。光栄でございます!喜んでお引き受けいたします。骸教授様。」
センチピードマリオンは、その命令に感激したらしく喜んでいた。
「きゃはははは ムカデちゃん、よろしくね〜」
マリオンヘイルは無邪気に笑う。
「ワシはちょいとまだお仕事があるのでのぉ・・・・フンコロガシマリオンとでも遊んでおいで・・・」
「は〜い、そんじゃ、行こう!ムカデちゃん。」
「はい。マリオンヘイル様、参りましょう。」
2体は部屋を出て行った。
骸教授はマリオンヘイルたちが去った後、カナブンマリオンを呼び寄せ、指示を出した。
「おい、カナブンマリオン。原油の価格がこれからもっと高騰するはずじゃ。うまいことやっておけ。」
「かしこまりました。早速、仕込みに入ります。」
カナブンマリオンはディーリングルームへと走っていった。
「これからの悪の組織には経済も大切じゃ。むやみやたらに暴力を使うばかりが能ではないのじゃよ。ホッホッホ。」
骸教授は夕凪の海を見ながらつぶやいた。
<完>