190 :
ダイレン:
改造よりも、ストーリーのが今回力いれちゃいましたが、エピソード1です
「地獄より生まれし天使」
――楽しいはずだった
動物公園へ遠足へ行った帰りにそれは起きた。ヘラクレスカブトムシのような化け物がバスを襲撃したのだ。
世間では"遠足の小学5年生 全員行方不明"と、なっていることだろう。現に子供達は秘密結社・ヘルマリオンによって拉致されたのだから。
目の前で担任の木下智恵美はムカデの怪人に改造された。ヘルマリオンでいう、改造超兵"ソルジャードール"である。
ムカデということで、センチピードマリオンと名付けられた。木下の変わり果てた姿である。
「きゃあ!!」
白い服で肌を包む由美。彼女はセンチピードマリオンによる"恐怖の選別"の合格者である。
それは2つある地獄への分かれ道。合格すれば、改造への適齢期への育成を受ける。不合格者はその行く先すらわからない。
ともかく、由美は容姿が可愛いという理由で合格したわけだ。そして、その教育を受けることとなった。
まずは体を鍛えさせられる。ノルマは小学5年生でありながら、大人と同じ程に厳しい特訓がなされる。
知識についても、"ヘルマリオンによる世界征服"を4時間程授業をさせられる。また、女子については発育育成のためのジュースを飲まされる事が良くある。
由美は体育と称されたトレーニングの時に倒れた綾を介抱しようとしたがプペロイドに邪魔されて、ぶたれたところだった。
綾はプペロイドに引きずられて休養室へ連れて行かれる。休養室と言っても、治癒用のカプセルがあるだけだ。
だが、女子はこのアジトの総司令である骸教授の意向で大切に扱われている。
191 :
ダイレン:2008/05/11(日) 14:21:53 ID:rjatU1DTO
ぶたれた由美は頬を押さえて再び筋肉トレーニングへ戻る。とはいっても、女子は筋肉を付きすぎないように柔軟はかりさせられる。
「くそ!よくも由美ちゃんを……」
隣にいた健一はプペロイドへ殴りかかりに行った。虚をつかれたプペロイドは倒れたが、巨大な触手……いや、腕が健一の頭を掴んで床へとたたき伏せる。
「うぐっ……」
「あらぁ?健一君、下等動物の君がやるべき事は筋肉トレーニングでしょ?」
「僕らは……お前らのペットじゃ……ない……」センチピードマリオンはそのまま健一を上に上げて、子供達に見せつける。
「君らはペットじゃないわ〜。家畜よ。出荷されるために太らされる豚と同じね」
「き、きの……し……うわぁ!」
締め付ける力が強くなり、健一の頭がキリキリと痛みを感じてくる。
「由美ちゃん、羨ましいわね〜。勇敢な王子様に気にいられて……」
「木下先生……健一君を放してください……」
由美にはもう1本の腕を向けて軽く払う。それでビリビリと破けた由美の服から白い乳房が見えた。
「ふふふ……健一君、あなた勇敢に見えるけど、ずっと一緒にいる好きな子も襲えないの?所詮は臆病童貞野郎じゃない」
「な……」
「いっちょ前に勃たせてるんじゃないわよ」
放り投げられた健一の前にセンチピードマリオンは立って妖しげに笑った。
「フフフ……いいこと?二度と木下なんて下等動物だった時代の名前は呼ばないこと……」
その夜、由美は中々寝れずにいた。綾は帰ってきた後もふらふらで、健一には自分のせいで痛い思いをさせたからである。
192 :
ダイレン:2008/05/11(日) 14:23:19 ID:rjatU1DTO
トイレに向かった由美は、物音を聞いてチラッとそちらを覗いた。すると、健一がまだ筋力トレーニングを続けていたのである。
「健一君……」
「!?。由美ちゃん……どうしたの?こんな夜中に……」
「それは健一君でしょ?体に悪いよ……」
「……力が欲しいんだ……。あいつらを倒して、脱出するための力……」
それは全員で共通な願いである。しかしながら、その力の差は歴然たるものがある。
「だからって……あいつらに勝てないよ……」
「諦めなきゃ………諦めなきゃ、きっと道が開けるはずだ。僕が……きっと君をここから出してあげるから」
この地獄のような生活の中で、芽生えた希望と信頼。由美は健一の顔を見入っていた。
窓から入ってくる月の光が2人を照らし出す。高鳴る鼓動と、湧き上がる衝動で由美は健一に抱きつく。
すると唇が触れ合い、2人は微睡みの中に入る寸前まで気持ちが高ぶった。
"ビーーーー!ビーーーー!ビーーーー!"
「何?」
乳房を慌てて隠した由美。警報が鳴ったということは、恐らく非常事態が起きたのだろう。
2人は急いで友達を案じて、寝室へと向かった。
「いったい何があったの?」
「わかんない。もしかしたら、誰か助けにきてくれたのかも……」
男子と女子全員が集まり、中央へと集まって基地画像を見る。
すると、蜂のような姿をした女性がプペロイドを切り刻んでいく様子が見えた。
「あれ、ソルジャードールなんじゃない?木下先生と同じ……」
玉崎と名札が張られている光が声を上げる。子供達はある英雄を思い出す。
かつて、自分達が生まれるよりずっと前にショッカーという組織を滅ぼした仮面ライダーというヒーローがいたことを。
それを受け継ぐように、あのヒーローは自分達を助けにきてくれたのだろう。
193 :
ダイレン:2008/05/11(日) 14:24:27 ID:rjatU1DTO
「不合格組のみんなの収容所に入ってったぞ……やった!俺達、助かっ……」
ぬか喜びと言うのはこういうことなのか。そこへプペロイドが入ってきた。
「ワレワレハ、コノキチヲホウキスル。キサマタチヲウンパンサセテモラウ」
大量に入ってきたプペロイドが子供達を襲い始め、網などを行使して拘束をしていった。
逃げ惑う子供達も、大多数が捕まっていた。健一は由美の手を引っ張って開いたままの扉に向かって走った。
「健一君、みんなが……」
「……………!??。危ない!」
伸びてきた紺色のゲジゲジした腕。由美を狙ったものだったが、察知した健一が代わりに首に巻き付くのを許してしまった。
「うわぁっ!!」
「健………」
「……逃げ……るん…逃げ……由美いぃィィ!!」
その言葉に突き動かされ、由美は足を進めた。たった1人、その部屋を抜けれたのである。
だが、どっちへ行けばいいのかわからない。由美はただ走り回るしかなかった。
「……部屋?」
不合格組の収容されている部屋だ。そこにはさっき蜂のような姿をした女性が入っていったが……
「ここから行けば……出口があるかも……」
一歩部屋に入った由美はそこで驚愕した。服だけが部屋の中で落ちていたからである。
しかも、服にばべっちょりとした液体が絡まっていたのである。
「みんなは……いったい……」
下がった由美は声を失った。友達の愛美が、美由紀が、宏治が、修一が、クラスメート達がカプセルの中で液体に包まれていたからである。
まるで死んだ魚のような目をしている。由美は戦慄を覚えた。
「いや……何なのこれ?……あたし……いや……」
194 :
ダイレン:2008/05/11(日) 14:25:37 ID:rjatU1DTO
震えている由美の首に触手が巻き付いてきた。締め上げられて、宙に浮いた由美は脚をバタつかせる。
「あぐ…………いや……」
その怪物は醜かった。イソギンチャクのような触手に囲まれ、その口からは唾液が垂れまくっていたのである。
「美味そうだな……さっき喰ったガキよりも……」
「く………喰った?まさか……う……おぢでだ……ぶぐぅ……」
あれは確か真紀と涼太の服だったような気がする。由美は理解した。襲撃があり、逃がすならせめて……と喰らったに違いないのだ。
友達を失った悲しみと共に、自分もそれに乗じて喰われることに悔しさを感じる。
触手が何本も体に巻きつき、由美を口へと誘う。抵抗しようにも酸素が薄くなった由美は意識を落とす寸前。入れられるはずもない。
(死にたくない……死にたくないよ……)
すると、由美はすごい力で引き寄せられるのを感じた。目を開けると、それは気色悪い触手ではなく、もっと機械的な触手だった。
改造装置が暴走を始め、イソギンチャクマリオンを弾いて由美を拘束したのである。
「きゃ……何よ……何なのよ……」
白衣を突き破って触手が体に絡まっていく。制御が効かない改造装置は大きい衝撃を由美に走らせる。
「ああぁぁあぁぁあぁぁ……いや……だめぇぇぇぇ!!イヤアアアアアアアアァァァァァ!!」
遺伝子配列が急速に変わっていく。様々な遺伝子が由美に流れ込み、それは触手の自壊によってやっと止まった。
煙が広がり、プペロイドの残骸の山から反逆の使徒たるビーマリオン・サキが出てくる。
「??。何かしら?」
基地内であるのに突風が吹き荒れる。気配を感じてビースティンガーを構えると、さっとサキは改造装置へと近づいた。
195 :
ダイレン:2008/05/11(日) 14:27:10 ID:rjatU1DTO
先ほど試験管の中に入っていた子供の誰かが改造されたのだろうか?
だとしたら、可哀想だが倒さなくてはならない。サキは針を最大に伸ばしたのを乳首から取り出し、槍のように構える。
すると、煙を裂いてイソギンチャクマリオンが吹き飛んで壁に激突した。どうしたことだろう?、と思っていたら、白い羽が降り注いできた。
サキの前には白鳥の姿を纏っている少女が飛んでいた。しかし、明らかに他のソルジャードールと違う。
この少女は自分自身の意思で戦っている。しかも、限りなく人間の姿に近い。
白い大きな翼、それを小型化したような羽も両腕に付いている。かつ、羽毛の鎧を纏っていて、まるで天使のようである。
「スワンサーベル」
少女の手に舞い散ったはずの羽が集まり、白鳥の嘴を伸ばしたような剣を形作る。
すると、少女は猛スピードでイソギンチャクマリオンに向かって飛ぶ。伸ばしてきた触手を蕎麦のように切り、その先をイソギンチャクマリオンの胸へと突き立てる。
「今、戻してあげるね」
その言葉の後に少女は翼を広げて、羽を飛び散らす。それがイソギンチャクマリオンに張り付いていき、光り出す。
「な………何?」
サキは目を疑った。喰ったのであろう少年と少女をイソギンチャクマリオンが吐き出し、自身も少年の姿へと戻ったのであった。
少女は試験管のガラスを全て叩き割り、数を確認しているようだった。サキは気になって足を近づける。
「君、ソルジャードール?どうして……」
「……けてください」
「え?」
「みんなを………助けてください!!」
30分後、紗希から連絡を受けた長田達が子供達を保護した。そして、紗希の目から離れない少女が1人……
藤宮 由美である。合格者組で唯一助かり、そして改造された少女。そして明らかに異質である能力。
これはただ友達を助けたい、たったそれだけのために戦いを選ぶ純粋な少女の物語……その始まりである。
つづく