特撮脚本家スレ12

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306ハニーの井上インタビュー 1/4
――まずは先日最終回を迎えた本編を見たご感想を伺いたいのですが。

いやあ、何の文句もないね、本当にいい仕事ができたと思う。
演出がいい、役者がいい、そして何より脚本が一番いい(笑)。
冗談抜きで、こんなに不満のない仕事は久しぶりだよ。
間違いなく、オレの代表作のひとつだね。欠点がない。しかも後半にいくに従って良くなる。
朝の枠と違って、深夜だと表現の幅も広がるから、そこはありがたかったね。

――全25話中、20話も担当されていますが?

自分の作品にしようと思ったら、それぐらいやらなきゃダメだよ。
最近のプロデューサーは作品の質よりも「なるべく速く脚本が欲しい」みたいな事情を優先させるからね。
でも、それじゃあダメだよ。
その点、久保(プロデューサー)はオレに惚れているから仕方がない(笑)

――具体的にはどんなところがお気に入りですか?

総監督をやった横山がまずよかった。
実はこの仕事までは直接の面識はなかったんだけど、実にいい監督だった。
ちゃんと脚本が読めるし、ただのアクション屋じゃないね。意外とロマンチストだし。
だからこっちも安心して脚本を預けられたんだ。
307ハニーの井上インタビュー 2/4:2008/05/22(木) 20:42:20 ID:BnoExnpm0
――そもそも久保プロデューサーからはどんなオファーがあったんですか?

テレビ企画として『キューティーハニー』をやることは決まっていたな。
『デビルマン』とか永井豪先生の作品は好きだったから嬉しかったね。
苦労したのは最初の設定作り。
ハニーを三人にするってアイデアを出したのはオレで、そこにたどり着くのが大変だった。
仮面ライダーと違ってハニーには「ハニーは一人」って固定観念があるからね。
最初はハニーのライバル役をどうするかって随分考えたんだけど、
その結論としてハニーが三人出てくるってところに落ち着いた。
決して「ハニー戦隊」じゃなくて、三人バラバラの存在。
やっぱり「ハニーVSハニー」が見たいからね。
だからミキがああなるというのも、ユキがラスボスになるというのも最初から決めていたし、
そのためにそれぞれああいうキャラクターにしたんだ。
ハニーは明るくバカで、そこから自然とミキとユキが決まる。
物事が分かっているプロの書き手なら自然とああなる配置だよな。

あとはハニーを弱くすること。
オレ自身、実は女が主人公のアクション物ってはじめてで、見せ方を結構考えたんだけど、
そこで思いついたのが「負けるヒロイン」。
男の主人公では許されないことが、女には許される。負けることでセクシーに見せることができるからな。
ミキはともかく、ハニーとユキは男では許されないキャラだよ。
308ハニーの井上インタビュー 3/4:2008/05/22(木) 20:43:00 ID:BnoExnpm0
――特に好きなキャラっていますか?

ミキとユキかな? 『アギト』の翔一がハニーなら、ミキは涼だね。
ユキは後半のキーパーソンで、「負けないキャラ」って決めていた。
あの二人はハニーの失敗作なんだけど、それをどう表現するかは悩んだね。
だからあの(体内から異物が出る)表現を思いついたときは「やった」って思った。

あとは村上がやった中条。
あれは最初からあいつにやらせるつもりであて書きした。あいつ、自分を捨ててがんばったよ。
予定外に入ってきたオカマの人格も面白くやれていたし、役者根性を感じたね。

ふせえりさんがやった田中弘美もいいキャラだったな。
あいつはひとりだけ生き残って、大幹部になって終わるっていうのも考えたんだけどな。
「ガハハハハ」って高笑いして(笑)。ああいうオバさんって、生き残りそうじゃん。

――エピソード単位でお気に入りのエピソードはありますか?

5話のミキの話と、ハニーが暴走して、中条と恋愛する15,16話。
あとはハニーの首が飛ぶ22話かな。
この辺の話は、書いていて煮詰まったときに自分でも見返してやる気を出していた。
もう何回見たか分からないよ。
309ハニーの井上インタビュー 4/4:2008/05/22(木) 20:44:35 ID:BnoExnpm0
――ストーリー全体を通していかがですか?

最初から最後まで計算どおり進んだ作品だったな。
久保は「毎回コスプレをして、潜入捜査する」みたいな流れを考えていたんだけど、
それをやめて「おバカに始まって、悲劇で終わる」という構成にした、それが本当にきれいにハマった。
前半にちゃんと悲劇の種を撒いておかないといけないんだけど、それがうまく決まったな。

――結末に関してはファンたちの間でさまざまな解釈があるようですが?

あれはさ、あのまま永遠に戦い続けるんだよ。
パンサークローは無くならないし、ハニーはアンドロイドだから歳をとらない。
だから続編だって書けるけど……まあ、自分でもびっくりするくらいきれいに決まった作品だから、ギャラ次第かな(笑)。
あるいは同じ永井先生で『デビルマン』をやりたいね。
絶対にオレ、向いていると思うから。

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井上のインタビューは色々見てきたし、基本的にいつでもビッグマウスだけど、
ここまで「我ながら傑作だ」と手放しで自画自賛してるのは初めて見たわ。
余程快心の仕事だったんだろうなあ。