直線コースでしか使用できない必殺技による猛ダッシュで後続を大きく引き離した三台のマシンが
間もなく『そこ』に到達しようという頃、
パワードイクサーとキャッスルドランの戦いはまさに泥沼の様相を呈しつつあった。
お互いの尻尾や荷台に噛み付こうと同じ場所をグルグル回り続ける双方の巨体が
コースを端から端まで完全に塞ぎ、
ひき潰されることを怖れて逃げ惑うトルーパーらの前を行ったり来たりしていたのである。
さらに、善と悪とのアルマゲドンの如きこの光景を前にした
事情を全く知らないガタックと龍騎サバイブが
揃いも揃ってキャッスルドランの方を攻撃し始めたことが、
より一層混乱に拍車をかけていた。
なお、この時点で既に周回遅れになることが確定な上にこの2人は
ここに駆けつける際にコースをショートカットし最短距離を飛んで来てしまったために
バイクを捨てたイクサに続く第二、第三の失格者となっている。
――そういえば、こいつが最後の一人になるところを見たことがないな。
かつて自分が引き起こした複数回のライダーバトルを回想しつつ、
そんな感慨にふける神埼士郎だった。
ヘタに自分が接近してイクサの視界に入れば、さらに名護を激昂させてしまう。
そんな今さらながらの逡巡ゆえにオロオロするしかないキバ(紅渡)の背後から、
「邪魔だ! どけっ!!」
見たこともないSFマシンが猛然と疾走してきて二大巨獣の方へと向って行った。
「そんな……。もう先頭の人が……!?」
呆然としてそれを見送るキバ。
実際にはそれは、最後尾集団のさらに後からやってきた
現在最下位のカイザだったのだが
このまま行けばこのレースがどういう結末を迎えることになるのかを、
彼は身をもって証明することとなった。
高速回転するキャッスルドランの側壁に激突し逆ウィリー状態で宙に浮いたところを、
入れ代わりに飛んできたパワードイクサーのシャベルで木っ端微塵に粉砕されるジェットスライガー。
それは、ここを通過してゴールインしようとひた走る全てのライダーたちの
近未来の姿かもしれなかった。
一方、キャッスルドランの周囲を飛び回りながら攻撃を加えていた龍騎とガタックは、
ドランの屋上にジャンプしてきた新たな介入者を目撃し叫んだ。
「モンスター!?」
「……ワームかっ!!」
答えはそのどちらでもなかった。
「ほっとけないんだよね。こういうの」
三対一でけなげに戦うキャッスルドランのピンチを、見るに見かねて加勢しに来た
装甲響鬼である。