平成歴代ライダー総出演の特別編

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211平成ライダーグランプリ(第10コーナー・8)
――俺の選択は正しいのか。
――そもそも、今だかつて一度も使われたことのないこのカードの力で、本当にアレは止まるのか。

そんな疑惑に押しつぶされそうになりながらも、
剣崎はカードをスラッシュしようとした。

そのときである。

「剣崎ィイイイイイイイイイイイッ!!!!!!!!!!」

彼方から轟いてきた大音声に、剣崎は――否、会場に集う全ての人々は、
観客席のてっぺんを振り仰いだ。

そこに立つ男の姿を、ライダーシステムによって増幅された視力で確認し
剣崎は思わず絶句した。

「……た、」

なんと、さきほどコースアウトの末に、変身解除状態で海に消えたはずの

「…… 橘 さ ん っ !?  いっ、生きていたんですか!!!」

うむ! と、頼もしい満面の笑顔で頷き返したその男は、まぎれもなく

仮面ライダーギャレン、橘朔也そのひとであった。
212平成ライダーグランプリ(第10コーナー・9):2008/12/25(木) 00:16:54 ID:ikm4Ta230

その声、そして姿は、明らかに死者のそれではない。それどころか

さっき散髪してきたばかりのように爽やかな髪型と、
いつの間にか着替えたらしい黒いタキシードの効果もあって
むしろ落下する前よりも生気に満ち溢れているようにすら思える。

このたしかな現実を前にして、
『あの状況からどうやって助かったのか』などという些細な疑問を抱く人間は、
この場には1人として存在しないのだった。

「これを使え!!」

タキシードのふところから取り出した一枚のカードを、
華麗な手さばきで放り投げる橘。

カードは風に乗り、二大巨獣の上空を回転しながら通過し、ブレイドの手に収まった。

「……そうか! 分かりました、橘さん!!」

先輩の無事に狂喜した勢いで既にキングフォームになっているブレイドは、
そのカードを見た瞬間、一瞬にして橘の意図を察した。

ハートの9、ジェミニゼブラ。
213平成ライダーグランプリ(第10コーナー・10):2008/12/25(木) 00:17:57 ID:ikm4Ta230
『Gemini.』『Rock.』

『……Double-Petrifaction』

「うおおおおおおおおおっ!!」

奇跡が起こった。

ジェミニの力で2体に分身したブレイドキングフォームから放たれる
ロックの石化波動を受けて、
これまで誰にも止めることのできなかったパワードイクサーと、キャッスルドランの生身部分が
灰色の巨大石像と化し

なおも勢い余って二周ほど回転した後、地響きを立てて停止したのである。

「くっ……」

だが、あまりにも巨大な2体の運動エネルギーを封じ込め続けるには、
キングフォームの全力を集中し続けることが必要だった。

だから、剣崎は叫んだ。

「行けっ!!」

カリスに。そして、その隣で見守っていたクウガに。
214平成ライダーグランプリ(第10コーナー・11):2008/12/25(木) 00:18:28 ID:ikm4Ta230
――たとえ自らはリタイアすることになっても、レースを最後まで完遂させる。

そのブレイドの自己犠牲の精神を感じとったカリスとクウガは、
もはや言葉も不要とばかりに
それぞれの愛車をスタートさせた。

2人が――そして、ちょうど後ろから殺到してきた他の全ライダーたちが、
2体の巨像と対峙して立ち尽くすブレイドの両側を次々に通過し



静止してなおコース全体を塞ぐ障害物たちの唯一の突破口、
大きく開け放たれたままのドランの口の中へと、続々と飛び込んでゆく。

多くの犠牲と戦いの末に――

レースは今、終局を迎えようとしていた。


(続く)