「翔一君! だめぇっ!!」
何かを受信した真魚の悲痛な叫びが、観客席に響き渡ると同時に―
全ては、0コンマ5秒にも満たない一瞬のうちに起きた。
空に浮かぶ紋章とキャッスルドランの左右の巨大窓を続けざまに粉砕して
パワードイクサーの胴体中央に達したアギトのライダーキックが
その巨体を貫通、真っ二つに叩き折ったことによって
いきなり逆進してきたイクサーの後ろ半分に顔面から突っ込んだ上に後ろからイクサーの前半分に激突されたドランの巨体がバウンドして宙を舞う。
ドランの上に乗っていた響鬼が宙に投げ出されガタックと龍騎サバイブもドランに激突され
イクサジャッジメントをモロに喰らったダークレイダーとその上に乗っていたナイトサバイブもろとも吹っ飛ばされる中、
宙に浮いた重機の残骸と城の投げかける巨大な影の中を
無人のマシントルネイダーとカブトのカブトエクステンダーが通過する。
一瞬の間を置いて落下し、路上に叩き付けられるキャッスルドランとパワードイクサーの残骸。
巻き込まれたライダーたちも次々と落ちてきたが、
この時点ではまだ、全員が無事だった。
だが。
「「そんな……!!」」
奇しくもこのとき、
マシントルネイダーに着地して振り返ったアギトと
後方からやってきたクウガは
全く同じタイミングで同じ驚愕の声を上げた。
呆然として見守る彼らの眼前で、
パワードイクサーの後ろ半分から生じた、凄まじく巨大な青い火柱が
倒れたキャッスルドランを、響鬼を、イクサを、ナイトサバイブをそしてガタックたちを飲み込み
昼日中の青空が闇夜に変わったかと思わせるような圧倒的な光芒と爆音を上げて
天に聳え立ったのだ。
……パワードイクサーに搭載されていた、全てのイクサポッドの連鎖的大爆発。
外見上、荷台にせいぜい3個くらいしか乗っていないように見えるイクサポッドではあるが
素晴らしき青空の会が誇る謎収納システムによって隠されていた残弾の実数は、
実は少なくとも数十個に及ぶのである。
巨大ファンガイアの常識外の防御能力を突破すべく生み出された、この
「投げても投げても無くならないイクサポッド群」の超絶破壊力は
パワードイクサー自体が破壊されるという想定外の事態に陥った今、
イクサ自身も含めた多くのライダーたちを焼き尽くす地獄の業火と化した。
イクサの、ナイトサバイブ、龍騎サバイブの、ガタックのそして装甲響鬼の、
これまで彼らの肉体を、その強固な防御力によって幾多の攻撃から守ってきた装甲が
次々に耐熱限界を越え爆発四散してゆく。
「ひっ、ヒビキさああああんっ!!」「れぇん!!」「真司っ!!」「加賀美っ!?」
明日夢と恵理と美穂とひよりの絶叫が観客席に響き渡る中
名護の最期を冷ややかに見つめる恵は人知れず気絶していた。
誰も生き残ることはできないこの空前の大惨劇をよそに、
ただひとり悠然と走り続けていたカブト(現在一位)は
不意に左手を宙にかざし、そっと呟いた。
「やれやれ。まさかこいつまで使うハメになるとはな……」
全てのゼクターが持つテレポート能力、『ジョウント』の放電とともに
前方の空間に現れたハイパーゼクターをキャッチし、
流れるような動作で左腰に装着するカブト。
その全身が眩い光芒に包まれ、ハイパーカブトの姿となり
「……ハイパークロックアップ」
『HYPER! CLOCK‐UP!!』
白い閃光を周囲に放ちながら、ハイパーカブトはこの時間軸から消えた。
(続く。)