【響鬼】鬼ストーリー 伍之巻【SS】

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413北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:13:24 ID:u0cdl4RS0
センメンキの死から一夜明けた北陸支部内の空気は、筆舌に尽くし難い程沈んでいた。当然と言えば当然なのだが、いつもの騒がしい事務所の様子を知る者ならば強い違和感を覚えた事だろう。
鬼小島商事にはセンメンキ、そしてレイキ、チョウキを除く全ての鬼が集結している。だが、香菜の姿はこの場には無かった。
額に血管を浮かび上がらせたトツゲキが、静寂をぶち壊すかのように荒々しくドアを閉めて外へと飛び出していった。
「待ちなさい!」
呼び止めるべくなぎさが声を掛けた。鬼小島は未だ戻ってこない。
「止めても無駄だぜ。あいつはまだ若い。割り切れないんだ」
煙草に火を着けながらサッキが告げる。
「ですが、京都での戦いを終えた今、こんな形で死ぬだなんて犬死にですよ!」
「死に犬も猫もねえよ」
トツゲキの肩を持ち反論するソゲキを、サッキは容赦無い一言で黙らせた。
「どうせ行く当ては無いんだ。暫くすれば頭冷やして戻ってくるさ」
「同意見だわ」
そう言ってメッキが頷く。
「……どうして弥子ちゃんをさらっていったのでしょうね」
まるで独り言のようにぼそりと呟くソゲキ。そう、連中が何故弥子を狙ったのか、それが未だに分からないのだ。
と、今まで黙っていたジュウキがドクハキに向かって尋ねた。
「彼女の出身について聞いていないか?」
「出身ですか?」
「出身と言うか、ルーツだな。先祖が何処出身かとか……」
「それなら……」
そう答えたのはなぎさだ。昔、弥子がそういう話題を口にしていた事を思い出す。
「確か……亡くなられたお父様は元々関西の出身らしいわ。苗字もそれが由来だって、弥子ちゃん……」
やはりな……とジュウキ。どうやら彼は、弥子が拉致された理由の見当がついたらしい。
414北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:16:07 ID:u0cdl4RS0
「憶測の域を出ないが……おそらく彼女のルーツは大和葛城山。記紀神話に登場する一言主を祀る行者の末裔が今も暮らしていると言う」
「行者の末裔?……まさか」
「修験道の開祖・役小角」
ざわめきが起きた。猛士の人間でその名を知らぬ者はいない。前鬼・後鬼という二人の鬼を従えたとされる、伝説の人物だ。
「しかし、字が違うのでは?」
ソゲキが尋ねるも、ジュウキはあっさりと否定した。
「確かに『葛城』の『ぎ』は『城』と書く。しかし『延喜式神名帳』には『葛木』と記載されているんだ」
「あなたの仮説が正しいと仮定して、じゃあ連中が弥子をさらった目的は……」
メッキのその問いに対し、今度はトゥキが口を開いた。
「そのオモヒデ教という集団について書かれた報告書を読んでみたのだが……」
そう言って周囲を見回す。
「五箇山の事件の目的は蠱毒の法を用いて本尊を作るためだった……それで間違いはないな?」
「ちょっと待ってくれよ、トゥキさん」
煙草を灰皿に押し付けながらサッキが口を挟んだ。
「じゃあ何か?あの連中、懲りずにまた人体実験まがいの事をやらかそうとしているとでも言うのか!?」
「弥子は行者の血を引いている。何に使うにしろ最高の素材だ」
「それに元々巫女と言うのは、神の依代として死ぬ事が前提の役職だった」
ジュウキとトゥキが、まるで打ち合わせでもしたかのように順番に告げてサッキを黙らせた。
415北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:18:48 ID:u0cdl4RS0
「……弥子ちゃんがピンチなのは分かった。で、俺達はどうすればいい?奴等の潜伏先すら掴めていないんだぜ?」
苛ついた口調でコイキが尋ねる。彼も自分自身の無力さに腹を立てていた。トツゲキとの違いは、自分を律する事が出来るか否かぐらいである。
それに対し、トゥキは「簡単だ」と答えた。
「もし連中が何らかの儀式を行おうとしているのであれば、少なくともその儀式の地を割り出す事は出来る」
儀式と言うのは、基本的に日時や場所、更には用意する物や参加者の身なり等が事細かく決められているものだ。だからこそ「儀式」なのである。少しでも条件が異なれば、それは成立しない。
「そういうのに詳しい専門家が猛士には居るだろう?私から話をつける」
「ああ、あの人か……」
サッキの脳裏に、五箇山の一件で協力してくれた中部の鬼の姿が浮かび上がった。両肩から大きな翼を生やした、中部最強の太鼓使い……。
「またあの男に借りを作るのは癪だけどね」
是非もなしといった感じでメッキが呟く。
話が纏まりトゥキが中部支部へと電話を掛けている間、なぎさがドクハキに話し掛けた。
「らしくないわね。さっきから殆ど発言してないじゃない」
「そうですか?」
「パートナーが誘拐されて落ち込むようなタマじゃないしね。……具合でも悪いの?」
「私はいつも通りですよ」
「それなら良いんだけど……」
どこか納得のいかない顔をして、なぎさは傍を離れていった。
416北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:22:39 ID:u0cdl4RS0
「……事情は分かった」
電話口のカラスキは、落ち着いた口調でそう答えた。
「儀式の地に関しては追って知らせる。ただ条件が一つ」
「聞こう」
「どのような結末であれ、包み隠さず全ての顛末を私に知らせてほしい」
「協力してもらう以上、それは当然の権利だ」
そう告げるトゥキに、カラスキは一言「感謝する」と述べた。
通話を終え、受話器を置く。あとはカラスキから連絡が来るのを待つだけだ。
その知らせは、予想以上に早くもたらされた。二日後、東天に明けの明星が輝く時、某山中で儀式が執り行われる可能性が極めて高い――と。
ばつが悪そうに事務所へ戻ってきていたトツゲキも含めた全員に、この事が伝えられた。
「タイムリミットは夜明けまで、か」
「早めに行って待ち伏せましょう!」
血気盛んにそう提案するトツゲキを、メッキが諌める。
「仮に私達が先行して、それに気付いた連中が儀式を中止したらどうする?」
「それは……」
「可能性は否定出来ないわよね?」
言い返そうとするトツゲキだったが、メッキの有無を言わさぬ気迫に押されて黙ってしまった。
「サッキが『夜明けまで』と言ったが、もう少し時間はあると思ってもらって構わない。あくまでも『儀式が始まる』のが明けの明星の輝く時であり、規模にもよるが終わるのはもう少し先になるだろう」
トゥキがそう説明する。
「さあ、これから作戦会議を始めるわよ。意見のある者は積極的に発言するように!」
現場周辺の地図を広げながらメッキが言う。全員が彼女の周りに集まりだした。
417北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:26:13 ID:u0cdl4RS0
真夜中の山野を一糸乱れぬ動きで駆け抜けていく影二つ。影は呼吸を合わせ、月明かりだけを便りに足元の悪い山道を駆け続けていた。
殺鬼と突撃鬼。表の仕事でも組んで行動する事の多い二人だ。
木々の間を抜け、疾走する二人。今、オモヒデ教が儀式の準備を行っているこの山には、四ヶ所から北陸支部の鬼達が攻め上っている。敵の戦力は(おそらく)霊鬼と蝶鬼の二人のみ。つまり。
「二ヶ所で足止めを受けても、残った二組は儀式をぶっ潰しに行けるという事」
そう告げるメッキの声が脳内で再生された。それはつまり、他の組に何かあっても見捨てるという事だ。
進み続ける二人の前に、一つの影が立ち塞がった。霊鬼だ。
(二分の一に当たっちまったか)
内心舌打ちする殺鬼。よりによって戦闘経験豊富な支部の最古参が相手だ。ただでは済むまい。
「……やる前に一つ聞きたい事がある」
今にも飛び掛からんばかりの突撃鬼を制して、殺鬼が尋ねた。
「霊鬼さん、あんた長年の友人を殺しちまっても何とも思わないのかい?」
無言。言葉を続ける殺鬼。
「それとも、完全にそれに支配されちまっているのか?」
そう言って霊鬼の右上腕に嵌められた御鬼輪を指差す。
ショウケラのような低級な魔化魍は術者が腕に嵌めて命ずることで操れるが、鬼を操る場合は術者と鬼両方が嵌めて始めて効果を発揮する。そう、少なくとも御鬼輪はもう一つあったのだ。
周囲を警戒する殺鬼。落ち着きを取り戻した突撃鬼もそれに倣う。百戦錬磨の霊鬼の事だ、何か呪術的な罠を仕掛けている可能性が高い。この場に杯鬼がいればもう少し楽だったろうに――そう思う。
霊鬼が音撃棒・阿頼耶識を両手に構えた。対する殺鬼と突撃鬼も、それぞれの音撃弦、「降魔」と「紅蠍」を構え直す。
「でええい!」
「紅蠍」を大きく振り上げた突撃鬼が、霊鬼に向かって突っ込んでいく。それに対し霊鬼は、「阿頼耶識」を手に立ったまま迎え撃つ素振りも見せない。
「おい!」
殺鬼が叫ぶも、火の着いた突撃鬼は誰にも止められない。
「ちっ」
殺鬼もまた飛び出していく。ただ、微動だにしない霊鬼の態度だけが気掛かりだった。
418北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:28:56 ID:u0cdl4RS0
山道を駆ける影二つ。一人は月光に照らされた異形の体に奇妙な文様を浮かび上がらせ、もう一人はライフル銃に似た武器を両手にしっかりと抱えている。杯鬼と狙撃鬼だ。
と、彼等の進行を妨害するかのように――否、明らかに悪意を持って妨害するために大量の蝶が現れ、両者の周囲を飛び交った。
「来たか……」
「蝶鬼さん!」
黒紫蝶の群れを掻き分けながら、式神を操る本体を探そうとする。だが蝶鬼の姿は何処にも見当たらない。
「おい!」
蝶鬼を探す狙撃鬼に、杯鬼が呼び掛ける。この蝶、何かがおかしい。
と、近くの茂みから一匹の黒紫蝶がふらふらと飛び出してきた。しかしそれは、ただの式神ではなかった。全身が燃えていたのだ。その蝶が、二人の周囲を飛び交う蝶のうちの一匹に触れる。引火。
「うおおっ!?」
激しい音を立てて、何十何百もの蝶の群れが一斉に燃え上がった。二人を取り囲んだまま。
419北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:32:33 ID:u0cdl4RS0
飛ぶような動きで木々の間を抜けていく滅鬼。その後ろを少し遅れながら、バズーカ型音撃管を背負った重鬼が続く。黙々と山中行軍する二人。
そんな二人の目の前に、何本かの木が倒れてきた。周辺に魔化魍の気配は無い。だが、人間の気配はある。しかも滅鬼達のよく知る人物の……。
「隠れてないで出てきたらどう?」
そう言われ、木立の間から一人の影が歩み出てきた。代田だ。
「いい度胸ね。それとも、以前支部長にお仕置きされた事への意趣返しかしら?」
だが、どれだけ挑発されても代田は何も答えない。それどころか、薄笑いを浮かべている。
「代田さん、本当にどうして……」
重鬼に問われ、漸く代田が口を開いた。
「私はね、実験さえ出来れば何処でも良いのだよ。教祖様は猛士以上の好待遇で私を迎えてくださった!ここでなら人体実験も好きなだけ出来る!」
「教祖様?」
オモヒデ教々祖・江川狂天は霊鬼に心を壊されたまま精神病院に入院中の筈だ。あの一件で幹部達も軒並み逮捕されている。彼等が出てきたという話は聞かない。戸草もその点を不思議がっていた。
――新しい教祖を擁立し、纏め直したのか。
「お二人も教団に迎えたいのだが……来る訳ないな」
「あら、分かってるじゃない」
と、代田が片手を上げた。それを合図に木々の間から筋肉質の男達が大量に現れる。おそらく教団の信徒達であろう。だが、その筋肉の盛り上がり方は異常だ。
「私の人体実験の集大成だ。たっぷり可愛がられてくれたまえ」
「薬か……」
過剰なまでのドーピングを受け、人間兵器と成り果てた者達が、無言のまま滅鬼達ににじり寄ってきた。
420北陸支部鬼譚 〜血戦〜:2008/09/29(月) 00:37:18 ID:u0cdl4RS0
山道を駆ける毒覇鬼と小粋鬼。小粋鬼にとっては久々の変身だ。今のところ妨害の類は一切無い。
走り続ける毒覇鬼に向かって小粋鬼が尋ねた。様子がおかしい――と。それを聞いて周囲に意識を巡らす毒覇鬼。しかし何もおかしな所は無い。
「気のせいじゃあないですか?」
「お前の事だよ」
真剣な口調で小粋鬼が続ける。
「数日前から変だ。俺の目は誤魔化せねえぞ。何があった」
毒覇鬼は答えようとしない。
「……まあ大体の予想はつく。ただ水臭いと思ってな」
「……」
「気付いていないとでも思ったか?」
俺を舐めるんじゃねえぞ、と小粋鬼は笑った。
「……最後の仕事になるな」
ぼそりと小粋鬼が呟く。やはり毒覇鬼は答えない。
月を見やる。まだまだ高い。時計を持ってきていない以上、時間を知る術は月の動きだけだ。
二人は儀式の地へ向けてただひたすら駆けていった。


続く
421高鬼SS作者 ◆Yg6qwCRGE. :2008/09/29(月) 00:48:36 ID:u0cdl4RS0
>>398
>先代隠形鬼にあまりに勝手な改変をしてすみません。

どうせ本来はお蔵入りする予定だった筈のキャラなので、好きなように使ってやって下さい。
今回の話は、今のところあと二回で終わらせる予定です。
422名無しより愛をこめて:2008/09/29(月) 10:59:08 ID:cgYNRrYgO
堀北真鬼
423名無しより愛をこめて:2008/10/04(土) 23:05:30 ID:/LmczCkM0
とりあえず、銃ライダーはクウガペガサスF、ゾルダ、ゼロノスが3強ってことで
424皇居の〜  ◆COP3Lfy.8w :2008/10/07(火) 18:16:15 ID:/tKwFqkE0
ご無沙汰しておりました。
久々の投下です。
 二人の半鬼は無言のまま風に溶け、呼吸を十回重ねるころには江川が消えたバリケード
の前に居た。入り口は外部からの進入を拒むように硬く閉ざされ、数時間前とは真逆の相を
呈していた。これより先は人にあらざる者達の世界だとでも言っているようだ。潮風のは
らむ妖気はいよいよ濃さを増し、真夏の太陽の下にもかかわらず薄暗ささえ感じさせる。

「行きます」

 押し殺した声で史郎が言った。
 人差し指と中指を立てて結んだ剣印を額にかざし、頭部に再びまばゆい光を纏うと、そ
こにはもう人間の姿はなくなっていた。
 二人が二匹へ。
 半鬼からまた再び鬼へ。

 ふわり。
 
 鬼の筋力が百キロを優に超える肉体を宙へと運び、忍びの体術が重力を感じさせない動
きを見せる。バリケードのパイプの骨組みと金網が立てる軋みだけが、一瞬前までそこに
何者かが居たという余韻であった。
 史郎は今太陽を背負い、バリケードの天辺から更に十米の高みにいた。不安定な足場を
使ってなんという跳躍であろうか。
 重い身体が、重力の縛鎖から解き放たれたほんの一瞬、

「射!」

 史郎が鋭く発した。同時に地に向けた馬手より放たれる、音激鼓・波面(ナミモ)。
史郎の顔とほぼ同じ高さに藤色の音式が二機、滲み出すように姿を現し、

 凝────ッ

 大地を叩く清き雄叫び。
 そこかしこより挙がる苦悶の咆哮。
 雑多な放置物の間を、文字通り音の速さで満たしてゆく。同じくらいの速さで、史郎の
中で御所守としての思考も急速に展開してゆく。

 
 着地まで一秒弱。
 目標、十六。
 目標が立て直すまで二秒と推測。
 鼓の展開まで〇・五秒。
 鼓の範囲内のショウケラ、五。
 一撃で粉砕する──。

 いつの間にか諸手に握った撥を振り上げ、体を弓形(ゆみなり)に反らし、そして着地
ざま、

 ずしん!

落下の加速と反りのエネルギーをまとめて一気に叩きつけた。
 音激打・大津波の型。
 三米に展開した鼓は、一瞬、紺碧の輝きを放ち、その下で、魔化魍共は断末魔を上げる
間無く塵と還る。

 残り十一。
 残り一秒。

 大技の反動が全身に鉛の鎖のごとく纏わりつき、圧し掛かる。膝を折りたくなったが、
気力で耐えた。

 〇・五秒のロス。
 残り〇・五秒。

 音撃鼓を拾い、再び展開する時間は、無い。身体を大きく捻り、溜めをつくった。一か
八、倒せれば儲けもの。倒せなくても大きなダメージを与えることは出来るはず。手近の
一匹に狙いを定め、大きく踏み込んだ。己の身体を渦と見立てた一撃必滅の奥義──。

「乾坤一滴の型ぁっ!」

 遠心力の乗った一撃が横凪に。
 胴体に喰らい、吹き飛ばされたショウケラは、建材の山に突っ込みセメントの粉塵を巻
き上げた。史郎、渾身の一撃であったが、師の予想を裏切る結果には至らなかった。
 動揺は、ない。
 弓手の撥を腰に収め、念鼓を練る。
 右の一匹。
 行くぞ。
 触った。念鼓を張った。返しの撥だ。
 次。
 後ろから。
 回避。掌打。
 しまった、増えた。
 撥以外で攻撃しては駄目なのだ。
 触れて、逸らす。
 こうだ。
 十。
 糞。
 速い。かわすだけで精一杯だ。
 同時に来る。

 式。

 念鼓、返し。
 あと九。
 また同時。

 式。

 まずい。これでは電池が持たない。
 鼓。
 撥。
 砕。
 回避。
 糞。触れなかった。
 もう一度。
 今度は返しが。
 落ち着け。数は減ってる。
 集中しろ。
 七。
 複数、間に合わない──。

 コンクリートで満たされたゴムタイヤに、固く重い物体を連続で叩きつけたような音だっ
た。
 多方向からの攻撃をまともに受け止め、頭だけを両の腕で抱きこんだ姿勢で背中を丸めて、
史郎は微動だにしない。

 やったか?
 やったか?

 取り囲み、見上げ、歯の無い口で、口々に。
 口腔の、不気味な血色ちろちろと。
 鉄の異形は、動かず。

 やったな。
 ああ、やった。
 今ぞ。喰うてしまえ。

 うねり。
 七体の異形、怒涛のごとく。
 鉄の異形、波面に漂う花弁(はなびら)のごとく。
 
 なんと?!
 なんと?!
 動けるぞ!
 動いたぞ!?

 叫んだときには既に、囲みの外へと漂い流れ。
 掲げた馬手には音撃鼓。
 人差し指にぶら下がる吽形の時化波。
 上空を、得意げに旋回する音式一機。

 音速の同時攻撃を不可避と判断した瞬間、鬼力を全身に巡らせ、身体を一時的に金剛石
のごとき硬さへと変化させることで、これを凌いだのであった。鬼闘術・身鎧功(しんがいこう)。
 
「これで、積みだ」

 苦しげに搾り出した声を合図に、太鼓が大きく展開した。
430皇城の〜  ◆COP3Lfy.8w :2008/10/07(火) 22:00:02 ID:/tKwFqkE0
というわけで拾壱終了です。
これっぱかりの文章をでっち上げるのに数ヶ月。遅筆もいいところですね。
おまけに連投規制に引っかかって「サル」とか言われる始末 笑

とりあえずあと二章ほどで完結させるつもりでありますので、気長にお付き合いくださいませ。

皇城輩
431名無しより愛をこめて:2008/10/08(水) 19:57:49 ID:XVfLvePH0
年内の完結を期待しています。
432北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 22:44:40 ID:CIEMe7aW0
真夜中の北陸支部では、なぎさが一人、応接セットのソファに腰掛けて時計を眺めていた。
自分も戦いに赴こうか――静寂の中でなぎさはそんな事を考えていた。こう見えても彼女は――僅かな間ではあるが、嘗て弦の鬼として戦っていた。その時使っていた音撃弦と音撃震は、今は確か関西の鬼が使っている筈だ。
――やはり行こう。
じっと帰りを待つのは性に合わない。それに……先程から嫌な胸騒ぎがする。虫の知らせと言うやつだろうか。
嫌な胸騒ぎと言えば……。
ドクハキ達が出撃してから、香菜の自宅に何度か電話を掛けてみたのだが、彼女が電話口に現れる事は一度も無かった。
(無力ね……。一般人とは異なる力も、知識も、繋がりも……何一つ今の状況を覆すには至らない)
電気は点けたままにしていく事にした。万が一行き違いになった場合、明かりの灯っていない部屋が彼等を迎えるような事があってはならない。
重い足取りで、階下へと続く階段を下りていく。
「!?」
玄関の戸を開けたなぎさの前に、大きな影が立ちはだかった。
433北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 22:47:59 ID:CIEMe7aW0
全身に重度の火傷を負った杯鬼と狙撃鬼は、背中合わせになりながら次の攻撃に備えていた。火傷は酷く、鬼の治癒力をもってしても皮膚の再生には時間が掛かった。
音撃管・弧光のスコープを覗きながら、狙撃鬼が蝶鬼の姿を忙しなく探している。見えない場所から一方的に狙われる恐怖――いつも魔化魍相手にしている事が、今は自分の身に降りかかってきている。
「……杯鬼さん、先に行って下さい」
杯鬼の方が皮膚の再生が早いのを見て、狙撃鬼が声を掛ける。それに対し杯鬼は、無言で頷くと足早にその場から離れ始めた。そんな杯鬼に向かって、茂みの向こうから再び黒紫蝶の群れが襲い掛かる。
銃声が響いた。狙撃鬼が、杯鬼へと向かう黒紫蝶の群れを撃ったのだ。一発の圧縮空気弾が、無数の蝶を纏めて吹き飛ばす。
杯鬼の姿が見えなくなるまで、狙撃鬼は「弧光」を撃ち続けた。蝶の群れもあらかた一掃する事が出来た。と、そこへ拍手の音が――。
「ブラボー!」
「蝶鬼さん……」
いつの間にか蝶鬼は近くの木の枝に腰掛けて、こちらを見下ろしていた。蝶鬼に照準を合わせる。だが、それとほぼ同時に蝶鬼が変身鬼弦を鳴らした。飛び出してくる黒紫蝶。しかしどこか様子が変だ。
「これは……」
ひらひらと飛ぶ黒紫蝶の一匹が狙撃鬼の肌に触れた。その瞬間、彼の全身から力が抜けていくのが感じられた。片膝を付く狙撃鬼。
「どうだ、この俺様と霊鬼さんとの合体技は?」
「合体……?」
よく見ると蝶の表面に何やら文字が見える。否、これは……。
「言霊……」
それは、霊鬼の力によって具現化した力ある言葉だった。何やら凡字の様に見える。
「そいつは真言だ。読みは『オーム』。元々は印度神話のヴィシュヌ、シヴァ、ブラフマーを指し、宇宙の真理を表す言葉らしい」
神の言葉を乗せた蝶々の群れは、風に乗って舞い、狙撃鬼を覆いつくした。その黒紫の幕に触れる度、狙撃鬼の精神がじくじくと削り取られていく。
434北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 22:50:48 ID:CIEMe7aW0
「ああああああああああ!」
悲鳴が上がった。その様子を蝶鬼は複雑な表情で眺めている。
「狙撃鬼、俺はお前の事、嫌いじゃなかったぞ」
「あ……ああ……」
狙撃鬼は、最後の力を振り絞って「弧光」の銃口を蝶鬼の声がする方向へと向けた。視界は黒紫蝶の群れに塞がれていて何も見えない。今まで培ってきた経験だけが頼りだ。
「南無八幡大菩薩……御手もて引かせ給え」
祈りの言葉を呟き、引き金に掛けた指に力を込める。
銃声が轟いた。
左肩を鬼石で抉られた蝶鬼が、忌々しそうに舌打ちをした。完全に息の根を止めるべく、黒紫蝶の群れに指示を出そうとする。だが。
「ぐはっ!」
激しく吐血を繰り返す蝶鬼。彼は昔から病弱であり、長時間の変身による肉体への負担は、他の鬼のそれを遥かに上回る。……時間が来てしまったのだ。
これ以上の戦闘は不能と判断し、黒紫蝶と共に蝶鬼が引き上げていく。後には、全身の変身が解除されたソゲキが横たわっていた。
(僕には聴こえる……勝ち鬨代わりに奏でられる笛太鼓の音が。勝利は、僕等の……)
魔弾の射手は、その戦いの人生を静かに終えた。
――ソゲキ、死亡。
435北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 22:54:27 ID:CIEMe7aW0
「おい突撃鬼……聞いてるか?」
殺鬼の呼びかけに突撃鬼が答える事は二度と無かった。彼の体は、近くの木の幹に寄り掛かったまま、動かなくなっていた。
殺鬼もまた、満身創痍である。
予想通り霊鬼は罠を幾重にも張り巡らしていた。いの一番に飛び掛かっていった突撃鬼は、結果的に殺鬼の盾代わりとなってしまったのだ。
「……ふふ、ははははは!」
突然気が触れたかのように笑い出した殺鬼を見て、霊鬼の動きが止まった。
霊鬼はやってしまったのだ。彼が手に掛けた同胞はこれで二人。一線を超えてしまった。
「あんたは俺が殺す!」
突撃鬼の傍に落ちてあった「紅蠍」を拾い上げ、二刀流の構えを取る殺鬼。弾かれたように飛び出し、両の音撃弦で斬りつける。対する霊鬼は後方に跳躍し、一定の間合いを取り続ける。
殺鬼が「降魔」を投げつけた。回避のために一瞬の隙が出来た霊鬼の傍に急接近する。そして。
「死ねぇぇ!」
霊鬼の腹部目掛けて「紅蠍」を思いっ切り突き出す。だが、紙一重の差で避けられてしまった。更に間髪入れず霊鬼が手にした「阿頼耶識」で殺鬼の手を打ち、「紅蠍」を叩き落す。
「まだまだあ!」
次に殺鬼は、鬼法術・冥王之像を使用した。彼の左手に闇の塊が現れる。だが、その大きさは尋常ではなかった。使用する事で激しく体力を消耗する大技、にも関わらずこれ程まで巨大な重力場を生み出すという事は……。
「相討ち狙いか」
漸く霊鬼が口を開いた。殺鬼は自分ごと重力の渦に霊鬼を沈めるつもりなのだ。重力に捕らえられ、霊鬼の動きが完全に封じられる。その漆黒の塊は、ますます巨大になっていった。
「あんた程の男を殺すんだ。代償が俺の命なら安いもんだぜ!」
その時、物凄い殺気が両者を襲った。
「何!?」
その殺気の主に気を取られたのが不味かった。霊鬼の一撃を受け、殺鬼の体が宙に浮いた。折角大きくした塊も、無情にも消滅してしまった。
436北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 23:01:42 ID:CIEMe7aW0
隠す気が無いのか、それとも隠せないのか。闖入者は、殺気を放ちながら二人の前にゆっくりとその姿を現した。
鬼だ。しかも見たことの無い鬼だった。当然ながら北陸支部の鬼ではない――筈だ。
「……未熟」
相対する鬼の姿を値踏みするように眺めていた霊鬼が、そう呟いた。彼の言う通りその鬼は体つきも未熟で、明らかに免許皆伝を受けていない、修行中の鬼だった。そしてその華奢な体は……女。
と、その女鬼があるものを手にした。見覚えのあるそれは……。
「お前、香菜か!?」
その手にあるのは間違いなくセンメンキの霊面、しかも生前彼が使う事を躊躇していた曰く付きの面だった。
――鬼神面。
センメンキの霊面は、被った者に面のモチーフとなったものの能力を憑依させる事が出来る。例えば鳥なら空を翔け、魚なら水中を舞い、獣なら荒ぶる獣性をもって大地を疾駆する。その分制御が難しく、長い修行が必要となるのだ。
今、香菜変身体が手にしているのは、数ある霊面の中でも最も強力な、神を模した面だった。神を肉体に降ろす。ベテランの呪術者でも難しい芸当を、変身したばかりの香菜に出来る訳がない。
「香菜、止せ!」
だが殺鬼の言葉は彼女に届かなかった。香菜変身体が鬼神面を被る。それと同時に彼女の肉体に変化が現れた。その背中から太く逞しい二本の腕が生え、そのうちの一本が変身音叉を握った。センメンキの遺品だ。
音叉の先端から白刃が飛び出す。音叉剣だ。そして元々の両腕には、同じくセンメンキの遺品である音撃棒が握られていた。
雄叫びを上げながら、香菜変身体が霊鬼へ向かって突っ込んでいく。今の彼女を突き動かしているのは怒りだ。その矛先は、師の命を奪った仇敵に向けられている。
しかし香菜変身体の突撃は文字通りの猪突猛進。ワンパターンで軌道も読み易く、あっさりと避けられてしまう。冷静さを欠いた香菜変身体には、それが分からない。否、分かっていても止められないのか。
「もう止めろ!そんな事してセンメンキさんが喜ぶものかよ!」
センメンキの名を出されて、香菜変身体の足が止まった。だがそれもつかの間、殺鬼の方を向くと、怒りと悲しみに満ちた声で語りかけてくる。
「センメンキさんは関係ありません。これは私自身の問題です。この人を倒さないと、先へは進めない!」
437北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 23:05:45 ID:CIEMe7aW0
センメンキさんとの約束が果たせない――そう言うと香菜変身体は、四本の腕を滅茶苦茶に振り回しながら再び霊鬼へと向かっていった。制御するのに精一杯で、折角の神の力を使いこなせていないのだ。
そんな香菜変身体を軽くいなすと、霊鬼は彼女の手から音叉剣を奪い取った。次の瞬間。
「止めろぉぉぉぉ!」
殺鬼が間に割って入ろうと飛び出すも、遅かった。振り下ろされた刃が、香菜変身体の霊面を割った。そして……。
「!」
音叉剣が、香菜変身体の胸に深々と突き刺さった。最期の力を振り絞り、香菜変身体が霊鬼の右腕に嵌められた御鬼輪に触れる。そして触れた手に渾身の力を込める香菜変身体。彼女は、御鬼輪を砕くつもりなのだ。
「もう止めろぉぉぉ!」
殺鬼の悲鳴にも似た叫びが山中に木霊した。
それから数分後、殺鬼は虫の息となった香菜変身体の上体を抱え、その手を握りながら声を掛けていた。
「おい、しっかりしろ!」
「あとは……頼みま……す」
「死ぬな!お前を死なせちまったら、あの世のセンメンキさんに顔向け出来なくなる!」
「あなたの事……嫌いでした。いつも……煙草臭くて……」
「馬鹿が……」
「遺言……まm……」
香菜変身体の全身から力が抜けたのを感じた。
「畜生……」
たった数時間の間に、目の前で二人も死なせてしまった。長年同じ釜の飯を食べてきた仲間を。無力。無念。そんな思いが駆け巡る。
「畜生ぉぉぉぉぉ!」
香菜の亡骸をそっと地面に寝かせると、気を失って倒れている霊鬼の方に目を向けた。その腕に嵌められていた御鬼輪は粉々に砕け散っている。それ程までに彼女の怒りと憎しみは深かったのだ。
「……後で必ず迎えに来るからな」
香菜の耳元にそう囁くと、殺鬼は立ち上がり、そのまま霊鬼の肩を担いで歩き出した。行かなければならない、こんな馬鹿げた茶番を仕掛けた張本人に会いに。この茶番をぶち壊すために。
――トツゲキ、死亡。
――柿崎香菜、死亡。
438北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 23:13:27 ID:CIEMe7aW0
信者相手に力比べをしていた重鬼が、思いっ切り地面に押し倒された。当然手加減はしているだろうが、それでも支部一の巨漢であり怪力の持ち主である重鬼が組み伏せられる姿を、滅鬼は始めて目の当たりにした。
(こいつら……)
集大成と言うだけあって、代田のモルモット達は鬼にも負けないぐらいの怪力を振るい暴れまくっていた。滅鬼も先程から防戦一方である。
このような姿に成り果てたとは言え、元は一般人。滅鬼はなるべく彼等を傷付けぬよう戦っていたが、それももう限界だった。
頭を――即ち指揮を執る代田を倒そうにも、彼の周囲には数名の信者が壁を作っている。一対一でも苦戦しているのに、複数を同時に相手するのは無謀だ。
「重鬼!私達鬼の使命を言ってみろ!」
「は!?」
「早く言え!」
突然の問いかけに面食らいながらも、重鬼が答える。
「人知れず魔化魍を倒して、人命を守る事……」
「そうだ。だが私は今この場で……」
鬼を辞める――そう宣言するや否や、滅鬼の拳が目の前の信者の顔面に叩き込まれた。全力で放たれたパンチによって、信者の鼻が折れ、歯が砕け、眼球が飛び出す。
その様子を目にして絶句する代田に向け、返り血に染まった拳を掲げながら滅鬼が告げる。
「分かったかしら、鬼の本気と言うものが?」
一撃を受けた信者は、既に事切れていた。人を殺める事は無いだろうと踏んでいた代田にとって、滅鬼の行動は予想外だった。
439北陸支部鬼譚 〜鬼哭〜:2008/10/15(水) 23:15:49 ID:CIEMe7aW0
「悪く思わないで。私はドクハキみたいに上手な加減というものが出来ないの」
次に滅鬼は、飛ぶような速さで重鬼を組み伏せる信者の傍に駆け寄り、側頭部に蹴りを叩き込んだ。頭蓋骨の砕ける嫌な音が響く。
「滅鬼さん……」
音撃管を手に立ち上がる重鬼の声は、僅かながら震えていた。
「お前は真似をしなくていい。泥を被るのは私一人で充分だ」
そう言うと滅鬼は、重鬼に向かって手を差し出した。それが何を意味するのか理解出来ず反応に困っていると……。
「音撃管を渡せ」
その言葉に、思わず重鬼が驚きの声を上げる。それもその筈、彼が使用しているバズーカ型音撃管はあくまで試作品。北陸支部はもとより、猛士の中でもこれを扱えるのは重鬼だけなのである。
渋る重鬼に対し、滅鬼が怒鳴る。
「重鬼ぃぃぃ!そいつをよこせぇぇぇ!」
どうなっても知りませんよ――そう胸中で呟きながら重鬼が音撃管を投げてよこす。それを構えた滅鬼は、照準を代田とその取り巻き達へと向けた。
「本気か!?」
さっきまでの余裕は何処へやら、代田が情けない声を上げる。
刹那、爆音が轟いた。


続く
440名無しより愛をこめて:2008/10/17(金) 19:34:28 ID:bpmoWV9I0
次スレ
【響鬼】鬼ストーリー 陸之巻【SS】
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1224239622/
441名無しより愛をこめて:2008/10/18(土) 04:00:11 ID:U72y0CLC0
>>432-439投下乙です。北陸支部血みどろのラストバトル。
おなじみのキャラの裏切り・死亡展開は、胸に迫るものがあります。
今まで高鬼関連で、ここまでキテる話は無かったように思いますし。
高鬼と直で絡みがあったキャラについてはクルものもまた格別です。

>>440スレ立て乙です。
442名無しより愛をこめて:2008/10/18(土) 18:00:58 ID:M/AVwLiy0

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443あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/10/25(土) 01:58:27 ID:GnlhqHh3O
スレ埋め用のチラシの裏を貼りにきました。
(まだ埋まる前にあと1コくらい投下できそうですが)


『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏 4枚目


・ホノメキの音撃弦『柳弦(りゅうげん)』音撃震『奏弧(そうこ)』
 イメージキャラ・ほしのあきと同時期の「笑っていいとも」レギュラー
 柳原可奈子から。

・ホノメキの音撃斬『歪刀武烈』
 T.M.Revolutionのシングル曲名「White Breath」から。

・ホノメキの音撃響『無頼鋼導』
 Abingdon Boys Schoolのシングル曲名「Brave Chord」から。

・ホノメキの変身鬼弦『音星』
 イメージカラーである赤い色の宝石・スタールビーから。
 星状の反射光を見せる、稀少価値のある宝石です。

 Wikipediaより「スター効果」
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E5%8A%B9%E6%9E%9C
 反射光が鬼の隈取みたいです。
444あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/10/31(金) 22:40:05 ID:yHrk/wIaO
次スレの方で投下が始まったので、もうこちらへの投下はナイんでしょうね。
ひっそりこっそり連投で埋めていきます。


『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏 5枚目


・湯河原有志
 湯河原温泉+ギャル曽根の名付け親・中村有志。

・芦川史子
 芦川温泉+女医でタレントの西川史子。

・ヤマブキの音撃管『旗縞(きじま)』音撃鳴『上壱楼(じょういちろう)』
 イメージキャラ・寺島進の主演作『逃亡者 木島丈一郎』から。本名は
 矢島温泉+「や」のつく名前を思いつくままに。→八十八(やそはち)に。

・ヤマブキの変身鬼笛『音帝』
 イメージカラーであるオレンジ色の宝石・インペリアルトパーズから。


 ヤマブキは、本編五之巻でヒビキの手帳に書いてあった「山吹鬼」という
 鬼の名前らしきメモから着想を得て作ったキャラクターです。

 Wikipediaより「寺島進」
 ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BA%E5%B3%B6%E9%80%B2

 今日ここの記事を読んで、「電王」のモモタロスのキャラクターは
 彼(の演じる役)を参考にして作られた、ということを初めて知りました。
 スピンオフしやすいキャラなのかもしれません。
445あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/10/31(金) 22:46:33 ID:yHrk/wIaO


『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏 6枚目


・ムラサキの音撃棒『蔵武(くらぶ)』音撃鼓『蓮華(れんげ)』
 イメージキャラ・上城睦月(仮面ライダー剣の登場人物)の変身する
 仮面ライダーレンゲルと、モチーフとなっているトランプのマークから。

・ムラサキの音撃打『錐凍猛晶』
 相川七瀬のシングル曲名「Sweet Emotion」から。

・ムラサキの音撃拍『乱動絶零』
 相川七瀬のシングル曲名「Round ZERO 〜 BLADE BRAVE」から。

・ムラサキの変身音叉『音晶』
 イメージカラーである紫色の宝石・アメジストの和名、紫水晶から。


 ムラサキは、以前このスレで連載されていた「仮面ライダー狂鬼」第九話で
 ヒビキが話していた「新潟の紫鬼」から着想を得て作ったキャラクターです。

 響鬼外伝「仮面ライダー狂鬼」第九話 父が見た風景
 ttp://olap.s54.xrea.com/hero_ss/oni/2/ss_2-361.html
446あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/10/31(金) 23:05:15 ID:yHrk/wIaO


『あなたの背中を護りたい』 チラシの裏 7枚目


・クルメキの音撃奏『糾啼破寧』
 イメージキャラ・倖田來未の両A面シングル「LOVE&HONEY」収録の「キューティーハニー」から。

・クルメキのサポーター・黒乃美苑
 漫画家の黒乃奈々絵+倖田來未の妹・歌手のmisonoから。

・アイキの音撃殴『滅沙抹鐘』
 イメージキャラ・ギャル曽根のユニット「ギャルル」のシングル「Boom Boom めっちゃマッチョ!」から。

・アイキの師匠・アンジェラ赤坂
 シンガーソングライターのアンジェラ・アキから。

・猛士東北支部の元鬼・シュウキ
 元フードファイター・ジャイアント白田(白田信幸)から。

・猛士東北支部の元サポーター・アサミ
 「ギャルル」のメンバー・あべべ(安倍麻美)から。

・猛士支給車両
 東洋の神獣から。
 『蒼龍』→青龍、『朱凰』→朱雀、『騎輪』→麒麟、『甲武羅』→玄武、『雷隠』→獅子

 幻想世界神話事典
 ttp://www.jiten.info/


 スレが埋まるには遠く及ばずネタ切れしました。チラシの裏これにて終了です。
447あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:13:26 ID:I9FL2pFwO
スレ埋め用に、1本SSを書いてみました。
今年の4月から6月にかけてこのスレで投下していたSSの後日談です。


『あなたの背中を護りたい』 番外編「受入れる想い」


 猛士東北支部の鬼、アイキが渡米してから四ヶ月以上が過ぎた。
 同じく支部に所属していた鬼、シュウキがアメリカの地で重傷を負ったことを聞きつけ、アイキは現地に急行し、献身的な介護を続ける中でその恋を成就させた。

 月に一度ほど、アイキから芦川史子の元に届くメールの内容を伝え聞き、湯河原有志は海の向こうの彼女の暮らしぶりや、その恋人シュウキの回復具合を知っていった。
「フードファイター?」
 秋が訪れた仙台の街中で愛車『蒼龍』を停め、車内で史子から掛かってきた携帯電話を取った有志は、受話器の向こうにそう聞き返した。
 基本的にシュウキの入院費用は、彼がアメリカで属していた、日本で言う猛士のような組織――人知れず人外の存在から人々を護る団体から出ている。しかし、その組織と関係の無いアイキの生活費は、彼女自身が賄わなければならなかった。
 この四ヶ月、シュウキの身の回りの世話をしつつ、異国の地でなんとか生計を立てようと様々な仕事をしていく中、たまたま働いていたカフェで行われていたフードファイトに参加したアイキは、自分の胃袋が常の人間とは違うということに気づいたらしい。
『それがね、アイキちゃんだけじゃなくて、シュウキくんもそっちの才能に目覚めちゃったみたいで』
 電話の向こうで、おかしそうに史子は言った。
『ケガも回復して退院して、今は二人して、アメリカ各地のフードファイト大会を荒らしまわってるらしいよ』
448あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:17:26 ID:I9FL2pFwO
 鬼の仕事よりシュウキを選んでアメリカに旅立ったアイキは、元より猛士への復職は頭になく、猛士支給の装備はすべて有志に預けていった。そして、渡米後に向こうでの生活が落ち着いた後、アイキから東北支部に正式な退職願いが出され、これが受理された。
 彼女が望めば、有志は復職に協力するつもりだったが、そうなる可能性がないこともまた、彼には良くわかっていた。今の状態が、アイキにとって何よりもの幸せだからだ。
「フードファイトって……あんな細っちい女と、病み上がりの男がそんなことをやってて大丈夫なのか?」
 元は鍛え上げた鬼だった二人だ。普通の人間より身体能力が高いのは当然だが、胃袋まで強いかどうかは有志にも何とも言えない。
「最初は『互いの背中を護れるように』っつってたのにな。今は『背中』じゃなくて『お腹』を護る必要があるんじゃねぇか?」
 今年の初夏までアイキのサポーターを務めていた有志だったが、彼女の渡米後はサポートする鬼もいなくなり、ここ最近は遊撃的に様々な東北支部の鬼のサポートに入っていた。
 全国的に鬼の数も減少傾向にあり、新たにサポートが必要な鬼の登録もなく、また他の支部からの移籍要請もなかった。
 そうした暇になりつつある日々の中で、たまに海の向こうのアイキとシュウキの話を聞く度に、有志は胸の奥によくわからない虚しさが増していくのを感じていた。
『ユージ』
 有志の鬱屈にもお構いなしに、電話の向こうで史子は軽い調子で言った。
『今日の飲み会、大丈夫?』
「ああ」
 夕刻になって、有志は『蒼龍』を穂村総合病院の駐車場に停め、いつもの、つばを後ろに回した青いキャップを被り、パーカーを着込んだ出で立ちをして、院内の一階で史子を待った。
 ほどなく白衣から秋用のコートに着替えた彼女がやってくると、二人は仙台の中心部へ向かった。
449あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:19:55 ID:I9FL2pFwO
 今日は、四ヶ月前に東北での任務を終えて別の支部に行っていた幼馴染みの鬼・ヤマブキが、久しぶりに仙台を訪れた日だった。
 ヤマブキから連絡をもらった有志と史子は、その日の夜に、市内の「大人の隠れ家」的なショットバー「マンハッタン」で、ごく小規模な同窓会を開くことにしていた。
 すっかり陽が落ちた頃、約束の店に着くと、二人はまばらに客がいるそのバーのカウンターについた。マスターは、必要最低限の言葉以外は発さない寡黙なタイプで、逆立てた髪に端正な顔立ちをした、30歳前後の男だった。
 有志たちより幾分若いが、絵に描いたような立派な口髭が、遠目に見ると年齢を高く見誤らせる効果を持っていた。

 ほどなくしてヤマブキが店にやってくると、入り口を振り返った二人は声を揃えて言った。
「ハチ!」
 本人の希望に反して、有志も史子も旧知のあだ名で彼を呼んだ。
「ヤマブキだ。ヤ・マ・ブ・キ!」
 久しぶりに、凄い勢いで二人を指さしヤマブキは喚いた。スーツの上にコートを羽織り、オールバックに口髭で強面の男が、落ち着いた雰囲気のバーに入ってきて突然叫んだため、客たちが一斉にそれを振り返る。
 マスターの落ち着いた「いらっしゃいませ」という声に対して、平静さを取り戻したヤマブキは、自分を振り返っていた客たちにぺこぺこと頭を下げながらカウンターまで進み、最後にマスターに謝った。
 10代の頃から20年近くの付き合いがあり、今では同じ『猛士』という組織に所属し、そして今年の春から夏にかけては共に闘い、東北で暗躍していた敵を退けた。
 幼馴染みでもあり、同僚でもあり、戦友でもある。三人はより一層、気のおけない間柄になっていた。
450あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:22:54 ID:I9FL2pFwO
「ユージがねー、あれ以来ずっと元気がないの」
 しばらく互いの近況を語りあった後、史子は左隣の有志を指さして、右隣の席についていたヤマブキに言った。
「あれ以来って、夏からずっとか? もう秋だぜ」
「いまだに本人が解っていないみたいだからハッキリ言うけど」
 ニヤニヤとしながら、史子は有志に言った。
「失恋の痛みよ、その症状は」
 ヤマブキが小さく口笛を吹いた。
 有志は、考えもしなかったことを聞かされてしばらく空いた口が塞がらなかったが、やがて言った。
「失恋?」
「うん」
「俺が?」
「うん」
「誰に?」
「アイキちゃんに」
 一瞬の静寂の後、有志は立ち上がって叫んだ。
「な・に・い!?」
「お客様」
 口髭のマスターの落ち着いた声で我に返った有志は、カウンター席で後ろを振り返り、自分に注目する他の客たちにぺこぺこと頭を下げ、再びマスターに向き直り謝った。
 小声になって、凄い勢いで有志は史子に訊いた。
「何言ってんだ、アヤ。俺が、何で、あんな、ギャルで、軽くて、10以上も年下で、能天気で、道具に巫山戯けた飾り付けをして、いつも化粧だ何だで人を待たせて……ええと、それから……なんだ、その」
451あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:26:41 ID:I9FL2pFwO
 有志の慌てた様子を見て、けらけらと笑いながら史子は言った。
「あり得ない話じゃないでしょ? 三ヶ月、一緒に仕事してたんだから。少なくとも、次から次へとアイキちゃんの欠点が挙げられる時点で、あなたがあの子に無関心じゃなかったことは確かでしょ。
 いい? 『好き』と『嫌い』は表裏一体で、相反するものじゃない。『好き』の反対は『無関心』よ」
 何か言おうとする有志を制して、史子は更に続けた。
「あなたたちは三ヶ月、過度の緊張を要する現場で共に過ごしていた。恋愛感情がない男女でも、そうした状況下に置かれると、緊張のドキドキを恋愛のドキドキと勘違いして、知らず知らずに恋をしていると錯覚することがあるの。
 そういう、疑似恋愛に陥りやすい環境にあなたは居たのよ」
 カクテルを飲みつつ、史子は言った。
「アイキちゃんははっきりと『シュウキ君』っていう恋愛対象がいたからそんな錯覚もなかっただろうけど、あなたはどうかなー。鈴美先生のことを引きずっていた当時のあなたに、本気の恋ができていたとも思えないけど」
「そういえば」
 ヤマブキが、思い当たった様子で言った。
「関東支部にゴウキってのがいるんだけど、あいつのカミさんはゴウキのサポーターをやってたんだよな。あ、まてよ? トウキさんのところもそうだ」
「ほうら、ご覧なさい」
 得意になって史子は有志に言った。
「本当に、身近で仕事をしている姿を見て恋に落ちたのなら、それは本物の恋愛なのかもしれないけど、ユージが絶対にアイキちゃんに対してそういう感情がないっていうのなら、それは緊張と恋愛を錯覚して、疑似恋愛してたのよ。
 で、そうと気づかずアイキちゃんがいなくなったら、今度は疑似失恋」
「疑似……失恋」
452あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:28:49 ID:I9FL2pFwO
 頭に疑似と付こうが何が付こうが、有志はそれだけは認めたくはなかった。
 だが、そう聞いてからなぜか、ここ数か月の胸苦しさから、徐々に解放されていくような感じがしてきた。もやもやとしていたものが、はっきりと形を取ると共に、不可解な感情が消えて行くのを感じ始めていた。
「関東支部の二組は、どうだろうね。まあ、始まりが疑似でも本物でも、今が幸せならばどっちでもいいけどねー」
 ここに来て、史子の声がところどころ裏返り始めてきた。呂律も少し怪しい。すっかり酔いが回ったな、とヤマブキは感じ始めた。
「あーあ、私も結婚したいなー」
 頭を低くして、伸ばした両手の先でグラスを弄んでいる史子に、有志は即座に言った。
「お前は無理無理。もう賞味期限が切れてるだろ」
「何だとぅ」
 始まったか、とヒキはじめたヤマブキの横で、二人の間に険悪なムードが漂い始めた。
「誰も食わねぇから」
「まだ切れてないし。何でそんなことが言えるのよ」
「未だに独身なのがその証拠だよ。お前こそ、何で切れてないとか言い切れるんだよ」
「じゃ、食べてみればいーじゃん!」
 ぐいと首を起こして史子は有志を睨んた。
「誰がてめえなんか」
 言いかける有志を制してヤマブキが言った。
「二人とも、明日も仕事だろ? 俺も移動があるしさ。そろそろお開きにしようぜ」
 グラスの中身をぐいと飲み干し、史子はマスターに新しい杯を注文した。
「私はまだ飲むもん。一人でも飲むもん」
453あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:31:21 ID:I9FL2pFwO
 まだ何か言い返したそうな有志を立ち上がらせつつ、小声でヤマブキは言った。
「忘れてたぜ。アヤって酒グセ悪かったんだよな。逃げ……イヤ、帰るぞユージ」
 勘定を済ませて出口に向かう二人の男の背に、カウンターから史子は大きな声で言った。
「食べてみればいーじゃん!!」
「お客様」
 マスターが静かに声を掛けても、史子は他の客には意味不明な言葉を、既に二人が姿を消したドアの向こうに連呼していた。客の注視をものともせず叫んでいる史子に顔を近づけ、マスターはより一層声を潜めて続けた。
「いいですか。私の人生と経験と魂を込めて言わせてもらう。あなたはお知り合いのお気持ちには聡いが、ご自分のお気持ちには疎いと見える。『医者の不養生』といったところでしょうか」
 医者である史子はマスターの指摘にどきりとして言葉を止めた。酔いがスッと醒めた。
「あなたは、ご自分のお気持ちに気づいていない。あなたは先に一緒に来ていた帽子の男性に、恋愛感情をお持ちだ。そしてそれは疑似ではなく、本物だ」
「何を……言ってるのよ……」
 やっとのことで、史子は反論を始めた。
「なんでこの私が、あんな――頭が固くて、仕事人間で、年収が低くて、皮肉屋で、いつもひと言多いヤツを……」
「『好き』の反対は『無関心』。あなたのお言葉です」
 史子は大人しくなってマスターを見た。客のプライベートには一切干渉しない、というスタンスをとっているかに見えたが、実際は、史子たちの会話を細大洩らさず聞いていたようだ。
454あなたの〜作者 ◆GX3Ot1s2is :2008/11/02(日) 00:33:09 ID:I9FL2pFwO
「それだけ次から次へと彼の欠点を挙げられるあなたは、少なくとも彼に無関心ではない」
 マスターは史子だけに聞こえるように囁いた。
「幸せをつかみたいなら、あなたはもっと素直になるべきだ」

 ヤマブキが東北を去った後も、時おり有志は史子に誘い出され、ショットバー「マンハッタン」で髭のマスターが無表情に見守る中、共に仕事後のひと時を過ごすようになった。
「ハチが居ねぇのに俺らだけで集ってもなぁ」
「前にも、ハチ抜きで、二人で野球の試合観に行ったことあったじゃない」
「ありゃぁアイキも呼んだけど来なくて、たまたま……。今日は、あんまり飲み過ぎるなよ」
 他愛のない話がほとんどだったが、二人ともごく自然に喋ったり飲んだりを繰り返していた。
 季節は流れ、秋から冬へと、仙台の街の景色は変わっていった。

 その年の冬、アメリカにいるアイキの元に、日本からの国際郵便が届いた。
 中に入っていたのは、有志と史子から届いた、二人の結婚式の招待状だった。


 ぁ ナょ ナニ @ ぉ 腹 を 護 丶) ナニ レヽ

     番 夕ト 糸扁 ぉゎ丶)。
455名無しより愛をこめて:2008/11/02(日) 00:48:17 ID:KGjKASTI0
投下乙です。
マスター、若いのに渋いなぁ。
次回作、期待してます。
456名無しより愛をこめて:2008/11/02(日) 01:43:22 ID:4QzAP3zH0
            _、_
          ( ,_ノ` )
          r      ヽ.
       __/  ┃)) __i | キュッキュッ
      / /ヽ,,⌒)___(,,ノ\

            _、_
          ( ,_ノ` )
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  トン
       _(,,)  あと    (,,)
      / |   6KB   |
457名無しより愛をこめて:2008/11/02(日) 16:42:04 ID:OTrbNC9A0
  | ヾ_,,入;:::.. `'' " ´.::; .::i! ::..  ```  :. }ツl l
  \  ノ ヾ ;:::.   .:r'' :: ll! :ヽ;:..:.   .: j,ノ ,!
    ヽ',,;l  ゙i ;::.. _ `ヽ、;;,,,,'.ィ'' _,, .::,;r'1,,,/
  ッジ::::::|  ゙ ,r'´:::;;;;;;;::>  弋´;;;;;::::ヽ'" |:::::゙'イィ
 弍:::::::::::l  /:::;r'´ ,,..-ー…ー-、 ヾ;:::'、  |:::::::::::ヒ
  シ:::::::::::l   i':::,!  ´  __  ゙  l::::l:. |::::::::::ス
  彡;:;:::::l  l:::l     ''''''''⇒;;;:,   l:::l  |::::;;ャ`
  ,r', 广'`ヽl:::l ::::. .::     ゙::.   l::l ノ^i`、
 ,イ(:::j    i::;ヘ  :;:.       .::   l::l'"  l:ヽヽ
 |;:ヽヽ   l::l  ヽ ;:.... ..  .. :  /l::l   ノ ,.イ
 |;:;:;:;\\ l::l   ', :;.:;::::::::::..::.  /  l::l,r'' /;:;:;|
458名無しより愛をこめて:2008/11/03(月) 00:45:30 ID:abUanmk80

  ∧_∧
  ( ´・ω・) キュッキュッ
  ノ つ_φ))____
 ̄ ̄\        \
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

      ∧_∧
      ( ´・ω・`)
   | ̄ ̄∪ ̄∪ ̄ ̄| トン
   |   ラーメン  |
 ̄ ̄|   作るよ!  | ̄ ̄
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
459名無しより愛をこめて:2008/11/03(月) 00:47:28 ID:abUanmk80

 .∧_∧
 (;`・ω・ )   ζζ
 /   o━ヽ====
 しー-J  |  |
        ̄ ̄彡

  ∧_∧  パッ!パッ!
 (;`・ω・ )つ━ヽ===
  o   U彡  (♯ノ
  しー-J     ̄

        ζζζ
 ∧_∧  ____
 ( ´・ω・)つ\厄巳/
          ̄¨
 ラーメンできたよ〜

460名無しより愛をこめて:2008/11/03(月) 13:13:55 ID:z4v9PKzz0

        _,l;;;;;;;;;;;;;l,,_
      ,.r'´;:  八  '::..゙ヽ
      ,.'___ _立_ __;;ミ゙;、      T T
      l厄巳厄 i王i ,.巳厄巳l     ┘貝
   ,.-'l i,.:'  ヽ:.、 ;.:' ' ヽ |,.、
   /{´iY´ヾーtッ-ヽ'' kーtr-,'´lri   二|二
   {_i,入::.. ` ̄ ̄,'i!ヽ;` ̄´ ゙::.}rリ    ⊂
   ヽ_ノiヾ ;:. _ i': ll!:,ィ ._ .: j,ノ
  ッジ::;;| ,r'´;;:> ̄弋´;;::ヽ;r1:゙'イィ   二|二
  弍::::::::l i':;r'´ ,.-ーー-、.ヾ;:;i. |:::::::ス   σヽ
   彡;:::l l::l  '  ---;:, ゙ l::l |::;;ャ`
   ,r',广ヽl::l ::. .:   ゙:.  l:lノ^i`、   一|一
  ,イ(:::j   i::iヽ  :.    .: /l:l'" l:ヽヽ  9
 |;:;.\\ l::l  ', :;:::..::. /  l:l,r''/;::;;|
461名無しより愛をこめて:2008/11/03(月) 13:25:38 ID:z4v9PKzz0

          _,l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l,,_
        ,.r'´,.    -┐   ':..,゙ヽ
       ,r' ,::;:'    ,ノ ヽ、    ゙:::.ヽ
      ,.' _.,:;:'___ _立_  ___;;ミ゙、
     .l厄巳厄巳厄 i王i ,.巳厄巳厄巳l
     l´ , "´  ̄ ̄ ̄ `'''′  ̄ ̄ ̄`.:`{
     | l ;;:.,.   ::、.       ...   '゙|
    ,.-''、.,! ,.::'    ヽ、:.゙、 ;;.:' ''  ヽ | ,.、
   ./  、/ `ヾー─tッ−ヽ''  kーtr─ツ'´〕. ヽ.
  / {´i Y::::..   ` ̄ ̄´.: "i! ::. 、` ̄´ ゙:::.、} r、 l
  | ヾ_,,入;:::.. `'' " ´.::; .::i! ::..  ```  :. }ツl l
  \  ノ ヾ ;:::.   .:r'' :: ll! :ヽ;:..:.   .: j,ノ ,!
    ヽ',,;l  ゙i ;::.. _ `ヽ、;;,,,,'.ィ'' _,, .::,;r'1,,,/
  ッジ::::::|  ゙ ,r'´:::;;;;;;;::>  弋´;;;;;::::ヽ'" |:::::゙'イィ
 弍:::::::::::l  /:::;r'´ ,,..-ー…ー-、 ヾ;:::'、  |:::::::::::ヒ
  シ:::::::::::l   i':::,!  ´  __  ゙  l::::l:. |::::::::::ス
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  ,r', 广'`ヽl:::l ::::. .::     ゙::.   l::l ノ^i`、
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462名無しより愛をこめて

          _,l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l,,_
        ,.r'´,.    -┐   ':..,゙ヽ
       ,r' ,::;:'    ,ノ ヽ、    ゙:::.ヽ         ____
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     .l厄巳厄巳厄 i王i ,.巳厄巳厄巳l         /\
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