ピジョリディー
彼女は急いでいた。
「また遅刻する!」
彼女の名前は中島 沙希音(なかじま さきね)。高校2年生で
遅刻の常習魔であった。理由は一つ。彼女はスケートのオリンピック
選手で、毎朝練習が時間ぎりぎりまであるからだ。しかし、スタイル
はグラビアアイドル並であった。スケート選手には欠かせない武器、
トリプルアクセルも跳ぶ。もちろん、脚力は相当なものだ。
その脚力のせいで狙われることになるのだが・・・
「今日はぎりぎり間に合ったな〜・・・明日も間に合うといいな〜」
そう考えながら夜、帰り道を歩く。彼女の家はスケート場の近くに
建てられてたので周りに民家はない。そこがいささか不気味だと彼女
も思っていたが、静かで練習に集中できるから気に入っていた。
すでに家の前まで来ていた。あとは坂道を登るだけ・・・その時、暗闇
から、何かが出てきた。
「なんだ・・・黒い猫じゃん・・・家に連れて行ってあげよう。」
その黒い猫はほくそえんでいた。
家に帰り、すぐお風呂に行く。毎日の練習でくたくたなのだ。今日は
猫と一緒に風呂に入ることにした。
あなた・・・資質があるわね・・・
「なにか聞こえた?・・・空耳だよね・・・疲れてるから。」
あなた・・・一緒にいらっしゃい・・・
「!」
今度は彼女も気付いた。
「猫が・・・しゃべった?」
その時、足元に黒い穴が開き、彼女の姿はそこに消えた。叫び声を
残して。
「ここは・・・?」
彼女が目覚めた時気付いた事は、何かに拘束されていることと、
自分が一糸纏わぬ状態でそこに寝ているということだった。
必死に大事なところを隠そうとするが、手足が押さえられてて
動かない。
「あなたはこれから我らシックスゾーンの仲間、改造人間になってもらうの。」
さっき拾った黒猫が言った。黒猫といっても、今はアジトの中、
本来の姿、キャッディーでいるのだ。
人間の女性の体の美しいラインを残しながら、体は体毛に覆われて
おり、頭には耳が2つ生えている。
「え・・・改造人間?嘘でしょ?」
「嘘ではないわ。我らシックスゾーンの改造人間になるのよ。
あなたはスケート選手の中でもっとも脚力があるとスーパー
コンピューターが教えてくれたわ。だから、あなたのモデルは
鳩にするわ。」
この話を聞いているとき、彼女の頭の中はパンクしそうだった。
改造人間?モデルが鳩?本当なの?
「これより中島沙希音の改造を始める。」
キャッディーの冷たい声が響く。
改造の方法は、まず、対象となる人物をX線の撮影のような機械
に頭まで入れ、中に組み込まれている生物の子孫繁栄能力によって
中に入った人物を改造する。沙希音も例外では無い。
「いやっ、やだ、改造人間になんかなりたくない!」
だが、冷酷にも彼女が固定されている台は機械へ向かって
進んでいく。そして、視界から彼女の姿は消えた。
「何・・・これ・・・」
中に入った彼女が見たものは無数の触手であった。長いのも
あれば、短いのもある。そしてそれらは彼女に向かって
伸びてきた。そしてその触手は体のいたるところに入っていった。
「え?はっ、がふっごふっ、ん〜っ、ん〜!」
口の中に触手が入ってきた。何か液体を体の中に流し込んでいる。
それと、全身の穴に入った細い触手からも何か流し込まれている。
もちろん、大事なところも例外ではない。
「あっ、そこ、そこだけはやめて!」
彼女は忙しかったので、まだ男を知らなかった。
「痛い!」
そこを触手は探り当てて強引に開き汚れ無き体内へずぶずぶと
入っていった。彼女の大事なところからは血が一筋流れていた。
そして、やはりなにかを流し込んでいる。
そして、彼女の変化が始まった。
まずは体からだった。体が白く変わっていく。手の先は白い長い
手袋をしたようになった。それから乳房は白と灰色の同心円状の
模様になった。腰のあたりには灰色のラインがある。
足はやはり白く、足の先はブーツを履いたような形になり、かかと
はピンヒールみたいな形になった。顔は髪の毛の色が白くなった
こと以外は何も変わっていなかった。
機械から、変化した彼女が出てきた。
「どう?改造人間への変化は?」
「え?」
彼女は体を見て、もう元には戻れないんだと思い、絶望した。
「さあ、シックスゾーンに忠誠を誓うのよ!」
「いや・・・イヤ!」
その瞬間、彼女の体に激痛が走った。
「シックスゾーンに忠誠を誓わないとこうなるのよ。
さあ、早く忠誠を誓いなさい。」
「わ、私は・・・忠誠を・・・誓い・・ます」
「これでいいのよ。あとは埋め込まれたチップが作動して
勝手に働いてくれるから。」
その言葉の通りだった。
「私はシックスゾーンに忠誠を誓います!」
その瞬間、背中から最初は小さく、みるみる大きく羽が生えてきた。
「では、お前に名前をつけようか。お前はピジョリディーだ。」
「私は・・・私はピジョリディー!」