578 :
九尾の復讐1:
東シナ海上空
「未確認機(アンノウン)確認・・・・・・中国軍機か?それとも韓国の民間機が誤って侵入してきたか・・・
しかし変った形状だな・・・・まるで漫画か何かのUFOみたいに光に包まれている。」
築城基地からスクランブル発進した制空戦闘機F-15Jイーグル二機が追尾する。
とりあえず中国語の警告メッセージが録音されているCDを作動させ無線にて発する。
「こちらは日本国航空自衛隊です。貴機は日本領空を侵犯しています!直ちに退去・・・・・・」
領空外へ退去するよう警告したとき二機のパイロットたちは信じられない光景を目にする。
「・・・キツネ?そんな馬鹿な!」
「ジャガー01、02応答せよ!応答せよ!」
築城基地からの呼びかけに全くどちらの機体からも応答がなく
以降の交信が途絶えた。
翌日、テレビや新聞では「航空自衛隊機二機、東シナ海上空で消息を経つ」と報じられ騒ぎになった。
ただ、付近で操業していた漁船の漁師が上空で火の玉を二つと、10本ぐらいの尻尾を
もった光に包まれたキツネのような化け物を見たという証言も取り上げられていた。
579 :
九尾の復讐2:2008/01/19(土) 05:19:28 ID:4epJ9zWr0
「コォ〜〜〜〜〜〜〜ン!」
人間の中でも特に憎むべき存在の日本人め。今のは私の挨拶代わりよ・・・・・・
破壊した戦闘機の残骸が燃えながら海へ落下していくのを眺めて彼女は思った。
私の母は人間がアジアとよぶ各地を転々とし、古代中国の殷という王朝では妲己と呼ばれ、
古代・インドの南天竺耶竭陀国では華陽夫人と呼ばれた。それぞれの国王を虜にして母は生きながらえてきた。
だが、不運にもこの国で殺された・・・・・・。この日本とかいう国では玉藻前という名前で呼ばれていた。
三浦義明・上総広常ら武士と陰陽師・安部泰成。今でもその名を聞くのも汚らわしい。
彼らによって率いられた軍勢によって母は殺された。
ただ、ひっそりと人間の権力者に守られ、平和に暮らしたかっただけなのに。
そして母はよほど恨んだのであろう。母の死骸は殺生石となり、それに近づく命あるものをすべてを殺した・・・・・・
その死から千年近く過ぎてしまった現代となってはその効力も薄れてしまったらしいが。
お母様・・・・・私はこの国の人間どもに復讐します。
見ていてください。
580 :
九尾の復讐3:2008/01/19(土) 05:21:10 ID:4epJ9zWr0
母の死ぬ間際に、私は生まれた。そして、まだ、幼く何の力も持たなかった私は
この国の人間どもの追撃を必死に逃れ、海を渡り、ヨーロッパといわれる地域に安住の地を得て何百年かを過ごした。
ただ、私に復讐の機会がやってきたのは、第三帝国とよばれた国にいたとき・・・・・・
たしか、私がエバ・ブラウンと呼ばれていたときだった。
私を寵愛していたこの国の総統と呼ばれた最高権力者の男は、人間を改造して強力な兵士を
作りだすというプランを科学者に実行させていた。当時、彼がしていた戦争の勝利に欠かせないものだったのだろう。
戦争に敗れた後も、彼の作り上げたナチスとかいう集団の残党による新組織がその技術を進歩させていた。
私はエバとは別の新しい女性の姿となり、幹部科学者として肉体改造や洗脳などの技術を学んでいた。
しかし、結成後二十年ぐらい経った頃であろうか、その組織は暴走した二体の改造兵士により崩壊させられた。
壊滅後も私は各地を転々としながら生物遺伝子工学の研究を続け、そのうちに、あることを発見した。
とある化学物質に私の血液を添加して作られた溶液は、それを注入した生物を私のような姿に変えることができるということを。
アフリカという土地に潜伏していたとき、実験用の猿に注射したところ微妙にキツネのようになった。
そして私は何種類もサンプルを作り上げては野に放した・・・・
それらはキツネザルと呼ばれ、自然界に適応している。
実験を繰り返しながら、私は考えていた・・・・・人間をキツネにしてやることを。
そうすれば、人間に化けて周囲に怯えながら暮らすことは必要なくなる。
そして人間をキツネ化して支配し、私は首領としてこの世界に君臨するの・・・・・
そうね・・・人体実験にはそうだ・・・お母様を殺した日本人とかいう人種にしてあげましょう・・・
そして、まず日本という国の支配を手始めにすべての国を支配してやる・・・・・
こうして私は日本へと向かった。
581 :
九尾の復讐4:2008/01/19(土) 05:22:35 ID:4epJ9zWr0
東京・港区 関東テレビ
「・・・・・以上、福岡からでした。」
中継が終わり、東京のスタジオに切り替わる。
「はい、どうもありがとうございました。王手をかけた福岡ハードバンクファルコンズ、優勝できるでしょうか?
激戦の日本シリーズ、ファルコンズが今日勝てば五年ぶりの日本一です。ファルコンズファンは楽しみですね。」
司会の女性アナウンサー・三浦亜矢が笑顔でコメントする。
「お目覚めテレビ、もうお時間となりました。今日は全国各地、天気は晴れで気持ちのよい一日です。
これからお仕事のみなさん、いってらっしゃい!」
さわやかな曲調のエンディングテーマとともに手を振る亜矢の明るい笑顔で番組が終わる。
582 :
九尾の復讐5:2008/01/19(土) 05:43:16 ID:4epJ9zWr0
「お疲れ様でした。」
亜矢は番組関係者との反省会を終え、同僚で一期後輩の小野美代子と雑談しながらアナウンス部に戻ろうとしていた。
「美代ちゃん、先に戻ってて。」
「うん、わかった。お疲れ様〜」
美代子と別れ、トイレの個室に入ろうとしたときだった。
「亜矢ちゃん、久しぶりね」
声の主はかつて関東テレビの看板アナとして活躍し、今はフリーとなっていた大島春美であった。
「あ、春美さん、お久しぶりです。今日はこちらでお仕事ですか?」
「フフフ そうよ。別のお仕事・・・・・・・・・・」
彼女の笑顔に違和感を覚えた。それはとても不気味なものだったのだ・・・・・いつもの春美さんじゃない!
「わたしもお会いできてうれしいですわ。三浦義明の末裔、三浦亜矢・・・・・」
スカートスーツの似合う見知らぬ美しい若い女性がいつの間にか春美の横に立っていた。
この人はいったい何をいっているの?三浦義明?末裔?
「あのぉ あなたは?」
亜矢は尋ねた。
「フフフ 私は千年ほど前、あなたの祖先に殺された九尾狐の娘・・・・・」
顔がキツネのように変り、彼女の着ていたスーツが破れ、九本の尻尾を持つキツネの化け物が現れた。
「きゃ〜〜〜〜!」
亜矢は悲鳴を上げた。
春美に目を向けると、彼女の顔は狐祭りにでも参加する人間のように白塗りで、鼻筋から額かけての部分と
目じりには赤い隈取り模様が浮かび、三対のヒゲが鼻を中心として左右に生えていた。
頭髪はそのままだが、耳はキツネそのものである。
衣服が破れ、あらわになったその肉体は、太い一本の尻尾が生え、両手の爪は鋭く、胸部から下腹部にかけては
白い毛がびっしりと生え、それ以外の部分は黄色い毛で覆われていた。
「亜矢さん!どうしたの?」
美代子が悲鳴を聞きつけて他のアナウンサーや社員ととも女子トイレに入ってきたとき、
亜矢の姿はなかった。ただ、引き裂かれた衣類や狐のような黄色い毛が大理石調の床に散乱していた。
583 :
九尾の復讐6:2008/01/19(土) 05:46:20 ID:4epJ9zWr0
東京・多摩地区 秘密アジト
都心から離れた閑静な住宅街の一角にある洋館。そこは元々、私が所属した組織のアジトの一つである。
組織の壊滅後、残党が経営する不動産会社が所有していた。幹部だった私を彼らは喜んで迎え入れられた。
私は実験を兼ねて、志願していたこともあり、下級戦闘員だった彼らを、キツネ怪人に改造した。
実験は成功だった。そして、彼らは新たな首領である私に忠誠を誓っていた。
洋館の地下にある手術室。そこの手術台に全裸の女性が拘束されていた。
「フフフ ようこそ 三浦亜矢さん。歓迎するわ。」
私は仇敵の子孫に話しかけた。
「こ、ここから出してください、お願いです・・・・・」
涙目で彼女は懇願する。
「本当は八つ裂きにして殺してあげたいところだけど、あなたは、自分の祖先が犯した罪を身をもって償うのよ。
私の寛大さに感謝するのね。フフフフフ。」
「身をもって償う?」
「そう、私の家来にしてあげるわ。キツネになって懸命に償うのよ。フフ」
注射器にキツネ化促進剤を詰め、彼女に注射した。
「い、いやぁーーーーーーー」
彼女の悲鳴が広い室内に響く。
584 :
九尾の復讐7:2008/01/19(土) 05:48:06 ID:4epJ9zWr0
しばらくすると、徐々に亜矢のスレンダーな体に変化が現れる。
全身に黄色い毛がびっしりと生える・・・・・そして胸から股間にかけて生えた毛はさらに白く変る。
形の良い乳房は白い毛に覆われ、ピンク色の乳首が露出しているのみとなった。
「はぅあぁぁ〜〜〜〜」
亜矢は下腹部を激しく振って暴れる。白い毛で覆われているが、時折、ピンク色の割れ目も見える。
やがて、尻の尾?骨のある部分が変化をはじめ、それは一本の太い尻尾となっていった。
「フフフ さあ、身も心もキツネになるのよ・・・」
私は大島春美という名前だったキツネ人に洗脳装置のスイッチを押すように命じた。
我々には大変心地よく聞こえる音波が手術室に響き渡る。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜」
人間には苦痛なようで、亜矢はまだ人間の名残を残している顔を歪める。
苦痛で歪んでいる顔はやがて白粉を塗ったかのように白くなり、
目じりと鼻筋から額にかけてのラインに赤い隈取模様が浮かび、
左右に三対の長いひげが鼻の下辺りから水平方向に伸びる。
「や、やめて・・・・・・た、たす・・・・・コ、コン、コン」
耳がキツネのように変形していく・・・・・・
「コン・・・コン・・・・コンコン・・コォ〜〜〜〜ン!」
やがて、顔もキツネ人と化した彼女は人間の理性を消失したかのようにキツネのように鳴き始める。
「フフフ またかわいらしいキツネの誕生ね・・・」
改造が終わり、拘束を解かれた亜矢は私の足元に跪き、頬を摺り寄せていた。
585 :
九尾の復讐8:2008/01/19(土) 05:49:49 ID:4epJ9zWr0
東京・文京区 桜女子学園
「おはよう〜、千春。お先に〜」
「あ、舞子。おはよう。」
自転車に乗った十七、八歳ぐらいのセーラー服の少女が声をかける。声をかけられた少女は上総千春。
彼女は校門を抜け、生徒用玄関へ向かう。
千春の通う桜女子高校は中高一貫教育の全国屈指の進学校で、東大や早慶に毎年多くの合格者を輩出していた。
テレビタレントの藤川怜もOGである。
センター試験まであと二ヶ月ちょいか・・・・・・千春は日々近づいてくる入試のことで頭がいっぱいだった。
教室へ入ると、先ほど自転車から千春と挨拶を交わした菊池舞子が手を振った。
「ねえ、知ってる?関東テレビの三浦亜矢がテレビ局から失踪したんだって。」
千春は鞄を自分の席に置いてから、舞子らの話の輪に加わった。
彼女たちは人気女子アナの失踪事件の話題で盛り上がっていた。
「変質者の仕業じゃない?女子アナオタクとかいるみたいし・・・・」
「ストーカーかな?・・・恐いよね・・・・・」
口々に言い合っていると、担任が入ってきた。そして朝のホームルームが始まった。
「今日は、インフルエンザの予防接種の日です。希望者は、昼休み、体育館に行くように。」
彼は連絡事項を伝えると、1限目の授業のクラスの教室へと向かった。
586 :
九尾の復讐9:2008/01/19(土) 05:51:39 ID:4epJ9zWr0
昼休みになり、千春は席で次の授業で使う英文解釈のプリントの問題を解いていた。
「あれ、どこかに行ったと思ったら、舞子は受けてきたんだ?予防注射。」
教室に帰ってきた舞子に気づき、千春が言った。
「そうだよ。やっぱ、受けとくに越したことはないしね。」
他愛のない会話を交わしつつ、五限目の授業に入った。
そして授業中に異変は起こった。千春のクラス四十人のうち十五人ほどが床に倒れこみ、もがき苦しみ出した。
しかも、これは千春のクラスだけではなかった。他の教室でも同じ光景が見られ、生徒だけでなく教師のなかに
も異常を訴える者がいた。
「聡美、聡美ぃ〜 しっかりして!・・・・」「山田先生、大丈夫ですか!・・・・・」「美香!どうしちゃったの!」
学校中、パニック状態となっていた。
そのうちに異常を訴えた者たちの体に異変が起こった・・・・
「キャァ〜〜〜〜!」
制服が破れ、毛で覆われた体が露出する・・・・
尻尾が生え出す者もいた。
苦しんでいる当人も周囲の者も驚いている・・・・・
「な、なんなの?これ・・・・」
「し、しっぽ?・・・え、これ私から生えてるの?」
「いやぁぁあ〜〜、見ないでぇ〜〜!」
あるものはショックのあまり言葉を失い、あるものは泣き叫び、あるものは発狂した・・・・
「た、たすけて・・・・千春・・・・・・・」
「舞子、しっかり・・・・・」
千春は顔以外はキツネのようになったしまった親友を膝の上に抱いていた・・・・・
やがて、校内放送のスピーカーから不快な音が響き出す!
「きゃあ、なに、この音!」
頭を押さえてしゃがみこむもの、耳を押さえて叫んでるもの・・・・校舎内の人間がすべて苦しみ出す。
「コォ〜〜〜〜ン・・・・・」「コンコ〜〜ン!」「コン!・・・・」
体が変化していた者たちの顔にいよいよ変化が現れた。キツネ人となった生徒や教師が覚醒し出した・・・・・
キツネのような耳になり、ヒゲが生え、頭髪はそのままであるが、
顔は狐祭りに参加しているキツネのメイクをした人間のような顔に変ってしまっていた。
「コン、コーーーーン!」
「きゃ!舞子・・・そ、その顔・・・・」
舞子が千春から離れ、天井を向き四つんばいになって雄たけびを上げ出す。
不快な音波はいつの間にか消え去り、その後、キツネ人たちは自ら立ち上がって歩き出し、
残りの人間を人質に取るかのように出入り口をふさぎ始めた。
人間の姿でいるものたちは皆、恐怖のあまりに呆然としている。
「コン、コーン!私は九尾狐。新しく仲間に加わったものたちよ!上総千春を捕まえてくきなさい!」
校内放送のスピーカーから私は命令した。
私は、にっくき上総広常の末裔、上総千春が通う高校を襲撃した。事前準備として
この学校に予防接種に訪れる予定だった医師や看護師を事前に拉致して、キツネ人に改造しておいたのである。
そして彼らにはインフルエンザのワクチンではなく、私の血で作られた薬剤を注射させていたのだ。
上総千春が予防接種を受けていれば楽に事は運んだのだが・・・・・・・
しかし、それも想定内のことだ。しもべに捕まえさせればよいだけのこと・・・・
「コーン、さあ、千春、首領様のところへ行きましょう・・・」
笑みを浮かべて、キツネ人となった舞子やクラスメイトたちが私に近づく・・・・・
「い、いや・・・・・いやぁ〜〜〜!」
千春は逃げようとしたが、多勢に無勢、あっさりと捕まってしまった。
両脇を舞子と元クラスメイトの一人だったキツネ人に両脇を抱えられ、体育館へと連行された。
体育館のステージには綺麗な若いスカートスーツ姿の女性が立っていた。
「待ってたわよ。にっくき上総広常の末裔、上総千春!」
私は母の仇の子孫を睨みつける。そうだ、面白いことを考えたわ。
「コ〜ン!キツネ人はみな、人質を見張っている者以外、体育館に集まってください!」
私はシモベどもを体育館に集めた。
「コ〜ン、舞子キツネ!上総千春の服を全部剥ぎ取れ!」
「コーン、わかりました!首領様!コォ〜〜〜〜ン!」
「や、や、やめてぇ〜〜舞子ぉ! いやぁ〜〜〜〜〜〜!」
私はシモベの一匹に命じて、上総千春を全裸にした・・・・
「これから、裁判を始める!コォ〜〜〜ン!」
元校長だった熟女キツネ人が宣言する。
「首領様の聖母、玉藻前様を、ここにいる上総千春の祖先が殺めた罪についてです!コォ〜〜ン!」
「コォ〜〜〜ン!死刑よ!」「八つ裂きの刑よ!コ〜ン!」
キツネ人たちが騒ぎ立てる
千春は年の割には豊満な胸と股間を手で隠し、うつむいていた。
ついさっきまで仲良く話したりしていた親友の舞子やクラスメイトたちまでもが
人格が変ったかのように自分を罵倒する光景に大きなショックを受けていた。
「コォ〜ン!静粛に!」
元校長のキツネ人が静めようとしたそのとき、
「コ〜〜〜ン!待ってください!」
元人気女子アナウンサー三浦亜矢だったキツネ人が発言した。
「コ〜ン、私の祖先もこの上総千春の祖先と同様、大罪を犯しました。しかし、首領様の寛大な措置でこうして
キツネにしていただき首領様のために日夜、奮闘しております。どうかこの娘にも私めと同様、寛大な措置を
お願いいたします。コォ〜〜ン・・・・・」
あ、この人は!・・・・彼らに拉致されていたんだ・・・・・・・・
千春を戦慄の恐怖が襲った・・・・自分も彼らのようにキツネにされてしまうの?
いやだ・・・キツネになんかなりたくない!
「亜矢キツネ、よくわかったわ。お前に免じて、この上総千春も仲間にしてあげましょう。」
「コォ〜〜〜〜〜ン!ありがとうございます!首領様!」
キツネ人となった三浦亜矢は心底喜んでいるようだった。
イかれてる・・・・この人、いや、この化け物たち・・・・・千春は思った。
私はこの戯れに考えた遊びが思ったほど楽しくなかったので、この仇敵の子孫を手始めに
まだシモベになっていない人質どもを大勢のキツネ人が見守る中でステージ上で全裸にし、磔にして
公開改造してやった。
「コォ〜〜ン!」「コンコォ〜〜ン!」
次々、人質たちはキツネ人に改造されていった。
「コォ〜〜〜〜ン!首領様。私もお仲間にお加えいただきありがとうございます!コォ〜ン」
上総千春という名前だったキツネ人が公開改造の間、ずっと私のつま先を舐めていた。
「君たちは完全に包囲されている!無駄な抵抗はせずに大人しく投降しなさい!」
どうやら、うまく逃げ出した人質がいたのだろうか、警察に通報したらしい。
SATとかSITとやらが突入してきたら捕まえて、キツネ人にしてやろう。
ドーン! 早朝の五時ぐらいであろうか・・・体育館の通用口のドアが吹っ飛んだ。
そこからMP-5Kサブマシンガンで武装したSATの隊員が突入してきた。
「コーン!」
そこには不敵な笑みを浮かべた元名門女子高の生徒だった百体ものキツネ人たちが闇に目を光らせて待ち構えていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・・・!」
まだ、夜も明けきっていない薄暗い女子高のあちらこちらでSAT隊員の悲鳴が響きわたった。
京都市郊外・安部邸
「成正殿、雪乃さん どうやら古より存在する魔物がこの国に災いをもたらそうとしているようです。」
仕立てのよいスーツを着た紳士が数多くの骨董品が飾ってある客間でテーブルを挟んでこの大きな純和風の屋敷の
主である父娘と話していた。
「やはり千年の時を越え、復讐にやってきたようですね。それも近代科学と融合して、よりタチの悪いものになって。」
この家の当主が言った。
「そうなんです。あの魔物は本来単体のはずなんですが、どこでその能力を手に入れたのか、
人間を眷属(けんぞく)にして操っています。」
紳士が困った表情を浮かべて言った
「とにかく私たちの出番ということですね。曾根田のおじ様。」
娘が口を開いた。
「おっしゃるとおりです。成正殿。 警察のSATや自衛隊さえやつらにはかなわなかったのです。」
「私たちにお任せください、曾根田総理。彼らではオカルトには対応できないでしょうから。」
当主は言った。
当主の横に座っていた巫女の姿をした二十歳の若い娘は黙って立ち上がり、
彼女の屋敷の日本庭園の片隅にある大きな岩に向けて右腕を伸ばし手のひらを開き、目をつぶって何かを念じる。
バリバリ!
岩に亀裂が入り、砕けた。
安部成正・雪乃親子は陰陽師・安部泰成、もう一つの清明という名前のほうが世間に知れ渡っている
特殊能力者の末裔であった。彼女は一族のなかで唯一、特殊能力が使えた。
「おじ様、こちらから出向かなくても奴らの方からこの京都に乗り込んできますわ。」
「そうか。政府にできることがあったら遠慮せず何でも申し付けてくれ。」
「うふふ。ありがとうございます。おじ様。」
三時間ほどこの屋敷に滞在したあと、
この国の権力の頂点に立つ男は、公用車センチュリーに乗り、京都府警のパトカーの先導により去っていった。
「雪乃よ。何がなんでも魔物を討ち果たすのだぞ。」
「はい。お父様」
黒塗りの高級車を見送りながら親子は会話を交わした。
総理が屋敷を訪れてから三日ほど過ぎた。
「ごめんください。関東テレビと申します。京都の庭園という企画で取材に上がりました。」
関東テレビの撮影クルーが安部邸を訪れた。
「すごいお庭ですね・・・・・」
リポーターとしてやってきた小野美代子というテレビでよく見る女性アナウンサーが言った。
「キツネでも出そう?」
安部雪乃は彼女に言った。
「分かっているのよ、貴方がたが魔物の眷属であるということは!・・・・・・」
「ばれているのなら仕方ない!コォ〜ン!」
雄たけびを上げ、彼らの衣服が破れ、彼女をはじめ撮影スタッフがキツネ人の姿に変わる。
「哀れな・・・」
不幸にもキツネ人にされてしまった彼女らに同情しつつ、彼女らをこのような醜い姿に変えた魔物に対する憎しみが増した。
「コォーン!」
飛びかかってくるキツネ人をサイコキネシス波で打ち倒す!
小野美代子、かつては「オノミー」と親しまれた人気女子アナだったキツネ人は頭を吹き飛ばされた。
頭部を失った女のキツネ人の死体が足元に転がった。
彼女の父、安部成正も五体のキツネ人を倒した。彼は霊槍「物怪の槍」の使い手であった。
近代兵器で一体も倒せなかったキツネ人を六体、親子であっさり葬り去った。
「まだ、来ますね・・・・お父様。」
「ああ、途轍もない邪気を感じる。」
「コ〜〜〜ン!」「コォ〜ン!」「コォ〜〜〜〜ン!」
同時に何体ものキツネ人が姿を現した。
ちぃ!どれだけ居やがる・・・・
成正は槍を振り回し、打ち倒していく。だが、倒しても倒してもキツネ人は次々と雲霞のごとく湧いてくる。
「ぐはぁ!」
「お父様!」
成正は不意を突かれ、脇腹を深く抉(えぐ)られてしまった。ついに彼は力尽きた・・・・・
「雪乃・・・・ま、魔物を・・・・必・・・ず・・・グフッ!」
口から血を吐いて彼は絶命した。
彼を倒した、上総千春と呼ばれていたキツネ人が返り血を浴びた長く鋭い爪を舐めていた。
「フフフフ やはりお母様を倒した陰陽師の一族の末裔は手強いわね・・・・・」
スカートスーツ姿のロングヘアの若く美しい女性が雪乃の目の前に現れた。
雪乃の父を倒した女のキツネ人は彼女に頬ずりしている。
「オカルトと近代科学の融合した化け物め!私が退治します!安部家の名にかけて!」
・・・・人間の分際でこしゃくな奴だ。
「フフフ、どうかしら?一人で何千体も倒せるかしら?」
私は彼女に抵抗が無駄なことをわからせてやりたかった。
「な、何千体ですって?」
彼女は少し動揺した。
「我々は大量に仲間を作り出せる方法を編み出したのよ。」
「ど、どういうこと?」
「冥途の土産に教えてあげるわ。キツネ人は私の血液を元に作った薬剤を人間に注入することで作られるの。
でもね、その薬剤を気化させたものを吸い込んだ人間もキツネ人に改造できることがわかったの。
しかも特殊超音波を使って精神を覚醒させるまでの時間を短縮させる必要もなくなったわ。
ここへ来る途中、実験がてら、この京都とかいう町に散布させてもらったわ。フフフフフ。」
「な、なんですってぇ!」
私は本来の九尾狐の姿になった。
「おのれーっ!」
巫女装束の彼女は渾身の力を込めてサイコキネシスを私に放ってきた。
私の前にいたキツネ人たちを粉砕しながらサイコキネシス波が私に向かってきた。
しかし、私もサイコキネシス波を打ち返した。
サイコキネシス波同士が衝突したが、私の放ったほうのが強く、そのまま彼女を直撃した。
「む、無念・・・・・・・・」
彼女の巫女装束の白い上着、赤い袴は破れ、ボロボロとなり、力尽きた。
首領の私さえ倒せば、何とかなると思って全身全霊をかけてサイコキネシス波を打ったようだけど、それは飛んだ勘違いよ。
私が仮に死んでも彼らは生きていけるの。彼らの中からやがて九尾のキツネが現れ、新たな首領となるわ。
フフフ まあ、何はともあれ、有能なシモベを手に入れた。冥途の土産とはいったけど、死なせないわ。
キツネ化促進ガスの登場により、爆発的にキツネ人が増えていた。東京、横浜、名古屋、京都、大阪・・・・・・
主要都市はキツネ人に制圧されつつあった。特に京都は、陰陽師を倒すのに住民をキツネ化する際に、
キツネ化促進ガスが大量に使われたため完全に九尾狐の支配下となっていた。
皇族はスイスへ避難し、永田町や霞ヶ関の要人たちはかろうじて難を逃れ、福岡に一時的に政府機能を移していた。
さらにアメリカ軍が支援に加わったことで態勢を立て直した自衛隊が、キツネ人と各地で戦闘を繰り広げていた。
福岡市・仮首相官邸
「目を覚まされましたかな?」
総理大臣が優しく声をかける。
雪乃は安部邸の敷地で一人倒れてるところを救援に来た自衛隊の特殊部隊によって救助されていた。
「ご無事でよかった。お父上は残念ながら・・・・・・・。」
総理大臣は言葉に詰まった。
「はい、存じておりますよ。天罰が下ったのでしょうね・・・・」
「天罰?」
奇妙なことをいうなぁ・・・・総理は不思議そうな顔をした。
「情報に寄れば、安部邸にはキツネ化した市民が何千体も襲ってきたそうだね。
君、一人で、撃退したのかね?私が応援に寄こした陸自の特殊作戦群が駆けつけたときには
君がボロボロの状態で倒れていたそうだが・・・・・」
「撃退なんてしていませんよ?曾根田のおじ様。私は・・・・・・・・・・」
彼女の衣服が破れ、顔が真っ白に変り、赤い隈取模様が浮かび、耳がキツネのようなものに変る。
女性SPが拳銃を構え、総理を守るように前に立つ。
「コォ〜〜〜〜ン!」
雪乃は驚異的な数で押し寄せてきたキツネ人に敗れ去り、捕らえられ九尾狐によって改造されていた。
「首領様のシモベにしていただきましたの。内閣総理大臣、曾根田晋一郎!死んでいただきますわ・・コォーン!」
「雪乃さん、君まで魔物の眷属になってしまうとは・・・・・」
総理は愕然とした。
パンッ!パンッ!雪乃だったキツネ人にスイス製拳銃P230が火を吹く。
「コ〜ン!無駄よ、そんなもの」
女性SPは動揺している様子も見せず、職務に徹し、キツネ人に銃口を向けている。
「コ〜ン!そんなに恐い顔をしないで・・・・・」
キツネ人は改造され、さらに威力を増したサイコキネシス波を女性SPに食らわせる。
彼女は拳銃を握ったまま気を失ってしまった。
「フフフ あとで仲間にして差し上げますわ。」
サイコキネシス波でSPたちを倒していく。
「フフフ もう貴方だけですわ・・・・曾根田のおじ様。」
もう何もかも悟ったように内閣総理大臣・曾根田晋一郎は目を閉じた。
「コーン!」「コーン、コォーーーーン!」
自衛隊や米軍の抵抗むなしく福岡市は一夜にして制圧された。
天神地区の渡辺通りの交差点では撃墜された米陸軍の攻撃ヘリAH64Dアパッチ・ロングボウの残骸の上で
三浦亜矢だったキツネ人が四つんばいになり、遠吠えしていた。
京都・安部邸
「人間どもの権力中枢に潜入させたキツネ女が作戦を成功させました。コーーーーーン!」
キツネ人が首領に報告する。
「首領様、もう三日もすればこの国は我々のものですね。コーーーーン!」
上総千春だったキツネ人が私の足元に四つんばいになって膝あたりに頬ずりをしている。
私が顎の下をなでてやると、彼女は目を細め気持ちよさそうにしている。
・・・・ついにやりましたわ。この国の要人どもはすべて抹殺しました。
お母様、この国はもうすぐ私の支配下となります。
私は物思いに耽っていた。
アメリカ合衆国ワシントンD.C ホワイトハウス
「そうか・・・・仕方あるまい。日本にいる部隊に撤退命令を出せ。」
側近からの報告を聞いた合州国大統領ギブソンは国防長官に指示した。
「もうあの国の指導部は崩壊し、東京市場はすべて取引停止の状態だ。国家としての機能はもはや喪失している。
同盟国として我々は手を尽くしたが、これ以上の成果は望めない。」
そして、あの得体の知れない魔物を野放しにしておけば世界の秩序を乱すどころか、
人類自体の存亡の危機だ。すでに主要国すべてのコンセンサスを得ている。
「大がかりなフォックス・ハンティングをやってくれ。」
大統領の指示を受けた国防長官は、太平洋で待機中の戦略原潜「アラバマ」に命令を下した。
京都・安部邸
「コ〜ン!首領様、札幌と仙台が陥落しました。コ〜〜〜ン!」
三浦亜矢だったキツネ人が報告してきた。
フフフ、いよいよだわ。居心地がいいのか、私は陰陽師親子を倒して以後、この広い屋敷を根城にしている。
そして、母も愛したこの都で支配者として君臨することに私は決めていた。
広い庭に出て、景色を眺めているとき、上空に強烈な閃光が走った・・・・・・
私のそれ以降の記憶はない・・・・・・人間も殺生石のようなものをつくりあげたのかしら・・・・・
<了>