おにゃのこが改造されるシーン 素体8人目

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35THE NEXT脳内補完(ネタバレあり)・1/5
 ――これからどうなってしまうのか。まったく先が見えない。
わたしは、わたしたちはどうなるのか?どうすればいいのか?――

 昨日、わたしの勤める会社は秘密組織「ショッカー」の人体実験場
となった。わたしたちの知らぬ間に、社内には「ナノロボット」と
呼ばれる人工の細菌のようなものが散布され、気づいてみると
社員のほぼ全員が苦しみ悶え、肉体を醜く変形させて死んでいた。
実験を生き延びたのは社長と秘書のわたし、たった二人だけだった。
 ジャガーの扮装をした「ショッカー」の男はわたしたちを「選ばれし者」
と呼び、悪趣味にも花束まで差し出した。だがわたしには自分を
そんな風に見ることはできなかった。理不尽な実験の対象に選ばれ、
無辜の命を落としていった社員たちへの哀悼。そんな残虐な行為を行う
組織への怒り。そしてその中で自分だけ生き延びてしまった、という
罪責感のような感情。それらの気持ちが先に立った。

 実験後、わたしたち二人は半ば強制的に自動車に押し込まれ、今いる
施設に収容された。わたしたちは着ている衣服を下着まではぎとられ、
別々に引き離されて、「最終調整」と呼ばれる処理を受けさせられた。
ぬるぬるする気味の悪い液体の入った水槽に浸けられ、幾度となく
信じられない強さの電流を流される拷問。それは「不統一なナノロボットと
改造組織を協調させ統合する」ことを目的とする処理である、とジャガーの
男は言った。「要するに、肉体が完全に生まれ変わるための下準備だ」と。
たしかに、電流を受けるたび、自分の体が少しずつ自分のものでは
なくなっていくような、いや、それどころか人間の体ではなくなって
しまうような、不気味な感覚が増していった…。
36THE NEXT脳内補完(ネタバレあり)・2/5:2007/11/06(火) 11:11:40 ID:0HTXpyuH0
 ――否。実のところわたしの体はもはや人間のものではなくなって
いるのだ。あの実験を生き延びたわたしたちの体はすでに「改造」
されており、わたしと社長はジャガーの男と同じ「改造人間」として
生まれ変わっている、というのが男の説明だった。
 生まれ変わった、と言われても、特別に力が強くなったとか、感覚が
鋭くなったとか、そのような自覚はなかった。しかし男によれば
「最終調整」を経て、「仮面」を着けるとき、改造組織は活性化し、
わたしの体は本来の力を発揮するという。

 「仮面」――最終調整の終わった者は仮面を装着する。そのとき
「改造された人間」は真の「改造人間」として心身ともに覚醒する。
男はそう説明した。そしてわたしの最終調整は終わった。間もなく
わたしの元に「仮面」が届けられ、わたしはそれを着けて「宣誓式」
に向かわなければならない。
 わたしは一向に乾く気配のない水槽の液体に濡れた裸身のまま、
何もない薄暗い小部屋で、床にうずくまりひざを抱え、「宣誓式」
への招きがいつくるのかと怯えている。
「宣誓式」が終わるまで、服を着ることは許されない。首領の前で
新たな存在へ生まれ変わる、という象徴的な意味があるのだという。

 少し前、一人の少女が同じ運命を先にたどった。同室の先住者
であった彼女もまた非道な「実験」の生き残りで、わたし以上に
繊細で傷つきやすい心の持ち主だった。死んで行った友人たちを悼み
理不尽な運命を嘆き悲しむ心に満ちていた。その彼女に黒い男たちは
強引にセミのような「仮面」をかぶせようとした。少女は泣きわめき
抵抗した。恐らく彼女もまた、「仮面」をかぶってしまった改造人間が
こうむる変貌を、見知っていたに違いない。
37THE NEXT脳内補完(ネタバレあり)・3/5:2007/11/06(火) 11:12:41 ID:0HTXpyuH0
 抵抗も空しく、「仮面」をかぶせられた彼女の肉体は硬直し、
やがてその場に崩れ落ち、泣き声もぴたりとやんだ。しばらく
うずくまっていた彼女は、やがてゆっくり立ち上がると、
誰に導かれることもなく、自ら「宣誓式」へと向かって行った。
 しばらくして、「仮面」を脇に抱えて帰って来た彼女の顔付きは、
もはやあの繊細で傷つきやすい少女のものではなかった。その目には
狂気が宿り、口元には冷酷で傲慢な笑みが浮かんでいた。彼女は
改造人間として選ばれたことに感謝し、死んで行った友人たちを
「愚民」と呼ぶ、「ショッカー」の一員へと完全に変貌していた。

 扉が開き、異様な人物が姿を現した。私同様裸で、しかし顔だけに、
昆虫を思わせる奇怪な「仮面」をかぶっている。そしてその手には銀色の
トカゲのような醜悪な「仮面」が抱かれている。
 ――ああ、顔は隠れていても、この体は忘れようがない。わたしを
何度も愛してくれたこの体。あの人。風見社長だ。風見社長が、
「仮面」をかぶり、わたしを迎えに来たのだ。改造人間として覚醒し、
わたしをあちら側の世界へ引き入れるために。
38THE NEXT脳内補完(ネタバレあり)・4/5:2007/11/06(火) 11:14:45 ID:0HTXpyuH0
「私はもう宣誓式を済ませた。これが君の『仮面』だ。これを着け、
栄光あるショッカーへの、永久の忠誠を誓う儀式に向かいたまえ」
 風見社長の声も、狂信と傲岸な自尊心に満ちていた。やはり以前の
彼とは別人だった。たしかに彼は、部下たちの死にわたしほど痛烈
には心を痛めていなかった。そして上昇志向の強い実業家らしく、
「選ばれし者」という言葉に敏感に反応してすらいた。しかし、
車の中での社長は「ショッカー」という組織への疑問、その強引な
やり口への憤りもはっきり表明していた。そして以前の彼は
冷静な自己批判の目を決して失わないバランス感覚をもっていた。
だが今の彼にそのような揺れや柔軟性はまるで感じられない。
「仮面」がこの人の心を変えてしまったとしか思えなかった。

「私のようなひねくれ者とは異なり、君のような純粋な女性は
必ずや、ショッカーの崇高な理想への絶対の忠誠を誓えるはずだ」
 そう言いながら社長はわたしに歩み寄り、銀の仮面を差し出した。
「いや!そんなものかぶりたくありません。それをかぶってしまったら、
わたしはわたしでなくなってしまう。そんなのいやなんです!」
 風見志郎であって、風見志郎ではなくなってしまった仮面の男は
わたしの言葉に何の返事も返さず、無言でわたしを壁に押し付け、
強引に仮面の中にわたしを押し込もうとし始めた。奇怪な仮面舞踊。
わたしは恐怖と悲しみの涙を流しながら必死に抵抗した。
「いやです。!やめてください!そんなものかぶりたくない!」
だが、未だ覚醒していないわたしが、覚醒した改造人間の力に
かなうはずはなかった。わたしの顔は丸く開いた漆黒の闇の入り口へ、
ゆっくりと飲み込まれていった。
39THE NEXT脳内補完(ネタバレあり)・5/5:2007/11/06(火) 11:15:51 ID:0HTXpyuH0
 仮面が装着されたとき、わたしの体に強烈なエクスタシーが走り、
これまで体験したことのない強大な力が体内から沸き上がるのを
感じた。わたしは最初その強大な力に戸惑い、恐れを感じた。しかし
すぐ、それがほかならぬわたし自身の力であること、そしてその力を
与えてくれた者こそ「ショッカー」であることを、はっきり悟った。
恐怖は消え、この上ない歓喜が込み上げてきた。そして、「選ばれし者」
という言葉の意味を初めて明瞭に理解した。理屈ではなく、
生々しい身体感覚として、その言葉の意味を深く感じ取ったのだ。
 ――そうなのね!これが「選ばれし者」であるということなのね!
このような者たちによって世界を作り変えることがショッカーの
使命!そしてわたしは、その一員として活動する改造人間!!――。
 選ばれなかった者たちへの軟弱な同情心は急速に色あせていった。
地べたをはいずり、そんな感情に囚われていたさっきまでの自分には
決して想像もつかない高みに、今の自分が位置していることが明確に
理解できた。彼らと自分が全く別の存在であることは、もう疑う余地の
ない自明の理だった。ショッカーの偉大な事業への賛美が心を満たした。
 わたしはすっくと立ち上がり、風見社長、いや「ホッパーボーグ・
ヴァージョン3」の方へ顔を向けた。言葉は不要だった。
「覚醒したようだね。さあ、宣誓式へ。君の手足となる6人の
仲間も待っている。旧式だが、優秀な連中だと聞いている」
 わたしは無言でうなずき、宣誓式へと向かった。そこで待つはずの、
偉大なるショッカー首領のお言葉を待ちわびながら。
<…で、冒頭の全裸シーンへつづく>