太陽系外惑星グリーゼ581C
この惑星にはかつて人類とそっくりな生命体が存在し、
21世紀現在の地球と変わらぬ社会システムが構築されていた。
科学技術は現在の地球より少し進んでおり、文明は高度に発達し、
更に繁栄し続けるかにみえた・・・
いや、し続けていたに違いない。あの種族が現れなければ・・・・
グリーゼ581C構成国家J 首都「東の都」 首相官邸
「国防大臣、女王陛下も心配されている例の事件だが、
調査のほうはどうなっているのかね?」
「首相、その件については目下、軍情報部が調査中です。
現在まで判明してることは、わが国だけでも行方不明者が2000人。
世界各地で目撃される正体不明の飛行物体が関与している可能性が
高いようです。この飛行物体の解明に全力を尽くしております。」
「そうか・・・。引き続き調査を続けてくれたまえ。」
国家J 国防省内情報部本部
「10年前に戦争で勝ったと思ったら、今度は謎の飛行物体か・・・
軍事国家Aの残党が飛ばしてるんじゃないだろうなぁ?」
「少佐、巷のゴシップなんか信じちゃだめですよ〜 軍情報部員
とあろうものが。」
部下の女性部員が冗談に乗ってきた。彼女は俺のいる部署の
アイドル的存在だ。階級は少尉。24歳。
「いや、ゴシップとはいえ、侮るなかれ!だ。俺達は情報のプロだ。
はじめからゴシップという偏見だけで切り捨てるのは良くないぞ」
「はい。肝に銘じます。」
「よろしい!・・・・・な〜んてな」
「からかわないでください!少佐。こっちは真面目なんですから。」
「すまんな。でも、ゴシップも容易に切り捨てちゃいかん。実際、
軍事国家Aの科学力は相当なものだったぞ。やつらなら
開発してもおかしくない気がしたんだ・・・・・・でも、まあ、結論を言えば
やつらとの関連は限りなく可能性はゼロに近い。」
敗戦により、戦犯すべてが処罰され、軍隊は解体。軍事国家Aは
現在、国家Jを中心とする超国家機関「世界連合」の支援を受け、
平和国家として穏健派が政権を運営し、再建中である。
旧政権派の不穏分子は存在するが航空兵器など所有して
いないことは確認済みである。
ちなみに軍事国家Aとは建国300年足らずの新興国家で、グリーゼの極西地域
の白色人種冒険家が発見したグリーゼ11番目の新大陸全域を領土としていた。
人種構成は冒険家の発見以降、極西地域から宗教的迫害を逃れてきた白色人種と、白色
人種国家の植民地より労働力として連れてこられた黒色人種とで成り立っていた。
国家成立とともに徹底した合理主義、科学万能主義を貫き
広大な国土から取れる豊富な資源を元に経済産業国家として発展した。
同時に軍事国家としての裏の顔があった。政治は民主主義体制であったが
世界同時不況の折、独裁者が出現。強大な軍事力を背景に周辺の諸国を侵略していった。
一方、極東地域では国家Jが盟主として君臨していた。
国家Jは万世一系の王族により統治される惑星内の大国である。
実際の政治運営は国民投票で選ばれた評議院議員の中から選出された首相を
中心とする首相府が執り行う。
人種構成は黄色人種が人口の9割以上を占める。建国以来4000年の
歴史を誇り、伝統ある国家として文化面では各国の尊敬を集めていた。
伝統に見合った技術の蓄積はやがて機械産業革命を起こし、世界
屈指の工業国家となり、同時に経済も発展させ、海洋通商国家として
12の海すべてを勢力下においていた。
そして両国を中心とするグループに全世界は2つに割れ、7年に及ぶ大戦となった。
結果、国家J陣営が勝利を収め、国家Jは11の大陸すべてに影響力が
及ぶにいたった。世界の覇権国としての地位を得たのである。
衛星α
「当機はまもなく、衛星αスペースポートに到着いたします。」
機内アナウンスが流れる。
・・いよいよαか・・・ついに人類も宇宙旅行できるようになったんだな。
少佐から休暇いただいたし、αの地下都市でバカンスをエンジョイしなくちゃ^^
現在、国家J主導で、宇宙開発プロジェクトが進行中であり、その一環として、
衛星αの地下都市建設がさかんに行われている。2年前には一般の移住者が受け入れられた。
人口は世界連合関係者やその家族等を中心に5000人ほどとなった。
観光リゾート娯楽施設も整備され,定期的に星間連絡シャトルが往復している。
・・・さあて、宇宙リゾートを満喫しなくちゃ。
私はシャトルのタラップを降りた。地下都市に入る手続きをすべて終えて、
まず、最初に開発記念公園に向かった。記念公園内には博物館がある。
衛星α開発のすべてが分かる。で、博物館を、見た後は・・・・・・
あ〜、したいことがいっぱいあって、整理できないよぉ。
あれこれ考えてるうちに、公園についた。
博物館に向かおうとしたそのとき、爆音が響いた・・・・・・
・・・・地下都市総合行政庁舎の方向からだ・・・・
テロ?だとしたら実行犯は旧A軍前政権派の残党か?
これだけ厳重な地下都市にうまく忍び込んだもんだね・・・・
衛星α地下都市の治安部隊はJ軍の最精鋭特殊部隊からの出向者から編成されてるのに・・・
お気の毒なやつら・・・・さっさとやられちゃいなさい。
5日前 国家A 最大都市「決して眠らない都」郊外 過激派アジト
「爆弾は手に入ったか?」
「ああ、国家D製の超強力樹脂爆弾さ。これで、Jどもの占領司令部を吹っ飛ばせるな。」
「3日後には一斉蜂起だ。各地で同志が国内や国家Jの50の攻撃目標を破壊する。」
「同志諸君。諸君達モ『主』様ノ配下トナルノダ。」
突然部屋に響いた機械のような声に全員の視線が入り口に集中する。
「なんだ・・・・・!誰だ、貴様は!」
部屋の入り口に異形の者が立っている。
「A陸軍識別コード40050ダ。」
・・・・蟻のような姿になっているが、たしかに彼の面影が残っている。
「どうしたんだ?・・・・・・40050」
「我々ニ最強ノ支援者ガツイタ。君達以外ノ同志ハスデニ集合シテイル。」
「どういうことだ?」
「私ニツイテ来イ。」
部屋にいた全員が蟻男に従って、アジトの外へ出た。
出たと同時に全員光に包まれた。
衛星α地下都市 シャトル発着基地「スペースポート」 少尉到着15分後
「なんだ、あれは?・・・」
管制官は目を疑った。光に包まれた飛行物体が基地上空に姿を現したからだ。
飛行物体は、地面に向けて黄色い光を照射した。すると、1500体はいただろうか・・・・
蟻のような人間と蜂のような人間が地上に姿を現した。
彼らはゲートを易々と突破し、地下都市に侵入した。
治安部隊と激しい戦闘を繰り広げたが、多勢に無勢・・・・・500人の治安部隊は
壊滅した。死体には紫の斑点が浮かび上がっている。
地下都市はあっという間に占領されてしまった。
。
地下都市・開発記念公園
私は爆発のあった、総合行政庁舎のほうへ向かってみた
治安部隊がもう包囲してる頃ね・・・・・えっ・・・
総合行政庁舎の前は黒や青の異形の者で溢れ返っていた。
爆発したのは治安部隊の戦闘装甲車両だった・・・・・・
庁舎の職員は全員、頭の後ろで手を組まされている。
いったい何が起こったの・・・・・・・
庁舎の職員は全員、頭の後ろで手を組まされている。
私も蜂のような青い人間に捕まり、職員達と一緒に拘束された。
しばらくすると地下都市に、巨大な立体画像が浮かび上がった・・・・
映し出されているのは蟻のような人間・・・・
触角、真っ赤な目・・・・・まさに異形のものだ・・・・
異形の者は、機械のような抑揚のない声で話しだした。
「私ハ奴隷生物xxxxx号。誇リ高キ国家A陸軍ノ上級大将ニシテ、『主』様ノぐりーぜ攻略部隊最高指揮官デアル。」
「我々、国家A軍ハ偉大ナル『主』様ノ配下ニ入リ『主』様ノ命令ニ従イ、代行者トシテぐりーぜヲ統治スル。」
「コレヨリ地下都市住民ノ諸君ニハ我々ノヨウニ肉体ヲ改良シ、新生ぐりーぜノ住民トシテ相応シイ姿トナッテ
イタダク。我々ハ・・・・・・・」
・・・・・この生き物は、もとは人間・・・・いやだ、改良なんてされたくない。
演説はさらに続いたが、「改良」この言葉が気になって、聞いてはいなかった。
同時に、この演説はグリーゼ各国に流れ、全世界は恐怖した。
J軍を中心とした各国家の連合軍は衛星αに鎮圧部隊を送ったが、
あっけなく敗れ去ってしまった。
3日後 国家J 首都「東の都」
鎮圧部隊が壊滅して2日が過ぎた、各国は防空体制を固め、警戒を続けている。
・・・・なんだあれは!
人々は空を見上げ、驚いた。上空には5機の巨大飛行物体が浮かんでいた。
空軍の戦闘機がスクランブル発進し、同時にレーザーやミサイルなど対空兵器が発射された。
連中、ついに攻めてきやがったか・・・・・
俺は、部下の少尉に休暇を与えたことを後悔していた。
戦闘機や地対空ミサイルは次々消滅し、高射レーザーは全く効かなかった・・・・・
しかも、グリーゼの防空警戒システムに発見されることなく侵入してくる・・・・・
恐るべき科学力だ・・・・
黄色い光が地上に向かって照射されると、ムカデ型のロボット、武装した蟻男や蜂女が姿を現した。
地上部隊もあちこちで敗北を重ねた。高出力レーザー砲で武装した戦車。プロペラを使うことなく
空中を自在に行動できる空中機動戦闘兵器。強化装甲服(パワード・スーツ)で武装した歩兵部隊。
陸軍の主力兵器はすべて彼らの前では無力だった。ムカデロボットに損害を与えた部隊もいたが
致命的な損害を与えるにはいたらなかった・・・・・・
母船らしき巨大飛行物体から、無数の小型の飛行物体も現れ、地上、海上、空中問わず目標物を
破壊していった・・・・・・
国家Jに限らず、グリーゼ上のすべての国家で似たような光景が繰り広げられた。
「東の都」中心部 国防省内
「我々情報部も武装の上、戦闘に加わるよう指示が出たぞ。」
戦闘服に身を包んだ上官が命令を伝えた。
「少佐、君達の部隊は王宮へ向かってくれ。」
「了解!」
俺はレーザー小銃を手に取り、部下達と目と鼻の先の王宮へ向かった。
王宮
「女王陛下、地下シェルターへお急ぎください。」
親衛隊将校が批難を促す。
「わかりました。皆のもの、急ぎましょう。」
女王陛下は側近や侍女たちとともにシェルターへ急いだ。
「少将殿、かならずや、生きてお戻りください・・・・・・。死なないでください。」
女王陛下は親衛隊将校に声をかけた。
将校は女王陛下に無言で最敬礼をした。
・・・・死なないでください。
将校に重くこの言葉が響いた。尊敬すべき国民すべてから愛される女王としてではなく、
来年妻となる一人の女性の言葉として深く心に響いた。
今は亡き国王陛下、つまり彼女の父親にあたる人物であるが、
国王は体が弱かったせいもあり、子供は姫君一人であった。5年前、とうとう病没し、
当時20歳の彼女が王位を継承した。親しみやすい人柄で国民だけでなく世界中の
人々から愛された国王の血を引く彼女も同様であった。そして、さらについ最近、
彼女に関連する衝撃的ニュースが全世界を駆け抜けた。
「女王陛下ご婚約!」
大戦の傷跡で暗いムードも漂っていた世界中は一気に祝賀ムードでいっぱいになった。
ご婚約の相手が、この親衛隊将校である。
親衛隊は国家J陸軍の一部隊であり、上流階級出身者の子弟や陸軍内でも選ばれた
優秀な兵士が配属される。この親衛隊将校は国王家の側近中の側近である旧上級
貴族家系の出である。素晴らしい家柄に加え、国内の最高学府を主席で卒業し、
陸軍に入隊。入隊後、幹部養成機関である士官学校で教育を受け、そこでも抜群の成績を残し、
当初より親衛隊に配属される。
スポーツ万能、人望も厚く、将来の陸軍大臣候補といわれる人物であった。年齢は
30歳。30歳になる今年、大佐から少将へと昇進した。異例の出世である。
6年前の国王家の晩餐会で2人は出会い、交際を続けていた。
周囲の関係者には周知の事実であり、将校が即位後の彼女とも常に接することができるよう
配慮していた。亡き国王が彼を花婿とするよう、実は遺言していたことにもよる。
王宮 正門付近
レーザー戦車が爆発する。ムカデロボから発射された光線が直撃したらしい。
ムカデロボの背後から蟻男達が光線銃を乱射する。蜂女は光線銃以外にも、胸からさまざまな破壊効果をもたらす
針や液体のようなものを発射し、兵士たちを倒していく。
「正門前の防衛陣地突破されました!戦闘配置についてください。敵が侵入してきます!」
・・・・いよいよか。突破はさせんぞ。
陣地の前に1体の蜂女が姿をあらわした。
・・・!1匹だけか・・・・・あっ、こいつは・・・・・・
「少佐。降伏ヲ勧告スル。人間ニモウ勝利スル可能性ハナイ。
我々トトモニ『主』様ノ奴隷生物トナッテ新生ぐりーぜヲ造リアゲルノデス。」
・・・・少尉。すまない。休暇なんかとらせなければ・・・許せ・・・
「全員撃て!あれはもう少尉ではない!撃て、撃て!」
かつての同僚の変わり果てた姿に、躊躇しながらも全員、レーザー小銃を撃った。
まったく効果がなかった。
「降伏ノ意思ナキコト確認。反撃開始。」
少尉の胸から、何かが飛び出したのを見たが、そのあと、俺の記憶はない。
王宮 地下シェルター近く
・・・・少将殿は大丈夫なのでしょうか・・・・・心配です。
父上についで、昨年、母上も亡くなってしまった。
少将殿までが戦死なさってしまったら、私は一人ぼっち・・・・・
どうか死なないでください。
私はシェルターへと側近の者達と急いだ。
・・・・・・・・・・・・・・!!
「オマチシテマシタ。オアイシタカッタデス。女王陛下。」
私達の目の前には、最高司揮官と名乗っていた国家A軍残党の蟻男が
大勢の蟻男と蜂女の集団を引き連れて行く手を阻んでいた。
「なぜ、あなたがここに・・・・・」
「私ノ『主』様ヨリノ命令ハ貴方ヲ確保スルコト。地下ニ要塞ナド建造シテモ
ムカデロボノ前二ハ無意味ダ」
彼らの後ろの通路側壁には大穴が開いていて、彼らを運んできたムカデロボが待機していた。
蜂女が一斉に胸から針を発射した。
私は意識を失ってしまった。
国家J 首都「東の都」
1日が過ぎた。惑星グリーゼ581C上の戦力はすべて沈黙した。
この惑星において最大の破壊力を誇る高エネルギー反応兵器は使われることがなかった。
地上の基地、海上・海中すべての搭載兵器は使われる前に飛行物体の攻撃で消滅してしまった。
わずか1日で惑星グリーゼ581Cは「主」の占領下に置かれた。
・・・・街では人々が次々連行されていく。病院であった建物は接収され、人々の改造拠点となった。
それ以外に必要ないとみなされた建物は次々壊されていった。住宅街やビジネス街は更地と化しつつあった。
そして更地のあとには徐々に巨大なドームのような建造物が立ち始めた。改造人間達の新たな生活の場となるのだろう。
王宮敷地内 王族専用病院
ここにも改造設備が持ち込まれていた。
側近や侍女たちが全裸にされ改造されていく。私も着衣をすべて脱ぐよう命じられた。
「ああ〜〜ん」「いやぁ〜〜〜〜〜〜」「ぐわぁ〜〜〜〜」
並べられた手術台からは男女の悲鳴やあえぎ声が響いていた。
「『主』カラノ命令ニ従イ、ココニ私ハ宣誓スル。私ハ主ナル種族ノ生存ト
繁栄ノタメニ、奴隷生物トシテ全能力ヲ駆使シ永遠ニコノ身ヲ捧ゲルコトヲ誓ウ」
改造を終えた侍女が機械のように抑揚のない声で宣誓する。
いよいよ私の番か・・・・・
「改造作業開始。」
私にかつてインタビューをしたことのある国営放送の綺麗で上品な30代前半ぐらいの
女性アナウンサーだった蜂女のガイダンスのあと、機械が開始を告げた。
・・・うぐっ!
全身に注射針が突き刺さる・・・・・
股間にはヌルヌルしたゼリーのようなものが蠢いている・・・・
私は男性と契りを交わしたことなどまだない・・・・・
王立の学園に通っていたときの教官からご学友たちといっしょに性行為について知識のみ教育を
受けたことがあるから知ってはいるけど、体験はなかった・・・・
「はぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜」
股間のゼリーが気持ちいい。国民の前では上品でいることを強制されるけど・・・・
気持ちには逆らえない・・・・・・・
「ああああああああ!気持ちいい・・・・・」
粘液だらけになり、体毛が抜け、肌が青く変色していく・・・・・額がムズムズする・・・・・・
さっき目が一瞬みえなくなったけれども何があったのでしょう・・・・・・
あ〜気持ちいい・・・・胸も乳首が真っ赤に変わり、黄色と黒の模様が乳房に同心円状に
浮かんでくる。踵も見えないけど変化したような気がする・・・・・・
「続イテどらいばーいんすとーるニヨル精神改造作業ヲ開始スル。」
ガタガタガタッ・・・・・・・・・ゴオォオ〜〜〜〜
そのとき・・・激しい振動が襲った。大地震が発生したようだ・・・・・
揺れは2分ほど続いたあと、おさまった。
一瞬、ドライバーから、送りこまれてくる脳への刺激も停止した。
地震でつぶれた記録が100年以上存在しない国家Jの頑丈な建物に損害は当然なく
ただ、改造作業が一時停止したに過ぎなかった・・・・・
一瞬、少将殿が生き残っていてくれて助けに来てくれたのでは・・・と思った。
少将殿・・・どこにいるの・・死んでしまったの?・・・改造されてしまったの?・・・・・
また、苦痛になるくらい多くのが情報が脳の中に流れ込んできた・・・・・
・・・オマエハ、新タナル「主」トシテ、新タナル「主」トシテ・・・・・君臨セヨ・・・
さっきとちがうみたい・・・・言っていることが・・・・
何が原因で誤作動したのかわからない。有り得ない奇跡が起こったのか、地震が
なんらかの影響をドライバに与えたのか、それとも「主」種族のなかに反体制派が
いてドライバに細工をしていたか・・・定かではない。
「感情ヲ、ヨリ強イモノニ強化スル。いんすとーる開始。思考過程改良開始。
自己判断能力強化開始・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
きゃあ・・・・・・頭が割れそう・・・・・・・・・
「プログラム変更ニトモナイ、胴体部・・・再強化開始。特殊能力付与。いんすとーる開始・・・・・」
ううう・・・・・・やめてください・・・・助けて・・・・・
手術台の周りでは蟻男が機械を止めようとしているが暴走は止まらない。
「強制終了不能。対処方法ヲ伝授願ウ。」
・・・・・応援を呼んでるようですね ・・・やはり不都合があったのですね・・・・
再び薬剤注入がはじまりだした。
「作業終了シマシタ。」
私は自我をももったまま覚醒した。
「奴隷生物XXXX号・・・・・」
何を言うの・・・私はクイーン、命令するな。下等な蜂女が!身の程を知れ!
強い思念が外に発せられたような気がした・・・・
すると、私に命令した蜂女が吹き飛び部屋の壁に叩きつけられ、そのままめり込んだ。
国営放送のアナウンサーだった蜂女は昨日を停止した。
鏡に私の姿が映し出された。基本的には他の蜂女と同じだが、触角は他の蜂女よりも太く、股間は黄色い直毛の硬い毛に
覆われ、丸い穴だけとなってしまった性器を保護している。また、腕は肘辺りまで黄色いオペラグローブを着けたかのように変色していて、
脚は膝までの黄色いロングブーツを履いたかのようになっている。そして、背中には蜂のような大きな羽が生えていた。
「私は新たなる『主』。女王蜂女『クイーン』。私を崇めなさい。下僕ども!」
原因は不明だが突然変異体が誕生してしまった。
性格は改造前よりもキツくなり、好戦的になっていた。世界中から愛された若き女王の面影はなかった。
「不良品ト認識。処分スル。」
周りの蟻男・蜂女が攻撃してくる。
「おだまり!下僕ども!」
私はさっきのように思念波を発した。一瞬のうちに全員が機能停止した。
しばらくすると、全員が動き出し、全員が改造前の感情を取り戻した。しかし、
取り戻したのは感情のみで、思考行動パターンは変わってしまい
「主」民族ではなくクイーンに従う下僕のようになってしまっていた。
「みんな私について来なさい。王宮を取り戻すのです!」
「かしこまりました!女王陛下!」
王宮、入り口ホール
「オマエタチ、何ヲシテイル。任務ニ戻レ。」
軍情報部の少尉だった蜂女が一団を制止する。
「おまえ、可愛らしい顔をしているねぇ。侍女に加えてあげるわ。」
クイーンは思念波を出した。
「はい、ありがたき幸せです。女王陛下。私のような者が・・・・」
少尉も一団に加わった。
一団は途中阻止する蟻男・蜂女を制圧しながら、かつての女王執務室へと進んだ。
執務室の扉を開けると、見覚えのある蟻男達がいた。
「会いたかったわ。少将。やはり改造されていたのね・・・・でも、ますます素敵になったわ」
「貴様達ハ何ダ。ココガ最高指揮官執務室ト認識シテイルノカ。」
「もともとは、私の部屋、敗戦国の負け犬がいるところではないわ。でも貴方は軍人として
有能だったみたいわね。側近に加えてあげるわ。」
また思念波を発した。
「ありがたきしあわせです。女王陛下のために軍人としてのわが身をささげます。女王陛下に栄光あれ!」
「さ、次はあなたよ。少将。」
私は、少将に抱きついた。
「ヤメロ。コレ以上、接近スルナ。」
そして熱く口付けを交わした。
唾液を大量に注ぎ込む。
すると少将の体に変化が現れた。
真っ黒な巻貝のような性器の色が金色に変わり、
触角が、クイーンと同じくらい太く変わった。
「おまえはこれからは私の大事な配偶者。私以外と交わることは許されない。
いいわね。後継者の種を私に授けるのが任務です。」
「かしこまりました。女王陛下の配偶者となれて、この上ない幸せでございます。」
王宮 女王執務室
クイーンが王宮を奪回してから1日が過ぎた。
あれから後、改造されてしまった大臣たちや軍上層部、高級官僚、学者などを
解放していった。国家Jの頭脳は復活しつつあった。
「女王陛下。ご報告があります。」
「なんだ。上級大将。」
「私めは不覚にも「主」に洗脳されてました。しかし、私の洗脳が解けてしまったことが
分かってしまいましたら、大変なこととなります。そこで、提案なのですが、
私は当分、洗脳されたフリを続けます。その間、女王陛下は必要な人間を
解放していってください。解放対象者の確保は我々軍が実行します。」
必要な人間をすべて解放なさったら、太陽系第三惑星へと移住します。」
「わかった。まず、この星の者すべてというわけには行かぬのか?」
「女王陛下しか解放する力を持っておりませぬ。物理的には不可能と。」
「私には出来る自信があるのだがな。」
「いえ、もし、女王陛下になにかあってでは済まされません。陛下は
私達の生きる希望なのです。とりあえずは主要な者だけ脱出し、生存場所を
確保してから、残りの者を救出すればよろしいかと存じます。」
「わかった。ところで、その太陽系第三惑星とやらは我々の生存に適しておるのか?」
「はい、環境がわが星とよく似ておりまして、生存に適する可能性が高いと、かつてのわが国の
権威ある天文学者が申していたの覚えております。」
「我々のような知的生命体は生存しているのか?」
「わかりません。グリーゼ脱出後、一度、偵察機を派遣してみる必要があります。
我々より文明が高度であれば、移住を断念し、別の星へ移住しましょう。じつは候補はまだあります。
ただ太陽系が一番近くてよろしいかと思いまして。」
「なるほど。もし我々よりも低い程度の文明であれば、占領して奴隷にしてやればよいな。」
「はい、仰せの通りにございます。」
「移動はどうするのだ?」
「「主」から私専用に与えられた飛行物体が1機あります。それに必要な機材をつんで移動すればよいでしょう。
5万人は軽く収容できます。やつらのテクノロジーは大したものです。」
「よしわかった。早速とりかかれ!」
「かしこまりました。女王陛下『クイーン』に栄光あれ!」
<続く>