お前ら本当は井上敏樹が生き様だろ 15

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197ロマンアルバムGAレシピブック 1/6
ん、それじゃどうぞ。
ちなみに第3期(GA最高傑作にして最カオスと言われる期)開始直前のインタビュー。

――『G.A.』に参加するようになったきっかけは?
井上:マッドハウスの丸山(正雄)さんから、やってくれ、と。きっかけはそんなもん。

――マッドハウスとの仕事はいつ頃からですか?
井上:『YAWARA!』が最初だね。

――『YAWARA!』の時も、シリーズ構成でしたね。
井上:そう。『YAWARA!』は思い出深い作品だけど、あれは原作がよかったからね。やっぱり原作の力だよ。

――井上さんは、『ドラゴンボール』や「らんま1/2』など、原作ものを手がけることが多いですよね。
井上:いや、そうでもないよ。どちらかというと、原作ものはあまり好きじゃないんだけど。

――それは原作に縛られてしまうからですか?
井上:というか、カッコつけて言えば、仕事は難しい方が好きなのよ。
原作があまりによく出来ていると、ただセリフを写すだけの仕事もあるわけよ。なんか虚しくてね。
だから、かえって締切に遅れる。
写すだけだと何かかったるくて、2,3行写すと、もうゴロンとしちゃってさ(笑)。
そういう意味では、ブロッコリーとの仕事は面白いよね。

――ブロッコリーとのおつき合いは?
井上『G.A.』が初めてだね。

――参加された時には、企画はどのぐらいまで進んでいたんですか?
井上:ずいぶん前の話なんで記憶があやふやなんだけど、ほとんど何も決まってなかったな。
一応、原作に基づいた設定はあったけど、TVシリーズではちょっと無理なんだよね。
監督の中にも、俺の中にも、ドラマドラマしたシリーズにはしたくない、というのがあって、
設定を大事にする連続ドラマよりも、1話完結の、基本的にちょっとぶっ飛んだ話をやろう、というのだけは決まってたな。
――結果的に、かなりコミカルなハイパーコメディに仕上がったわけですが、
井上:確かに、何となくそういう空気はあったけど、ここまですごくなるとは思ってなかったな。
最初は、そこそこ設定を残して、もう少しシリアスな雰囲気もあったし。
でも、進んでいくうちに、みんなこっちの方が面白いんじゃない、ということになって。
今や何でもあり状態、それでよかったとは思うけどね。

――1エピソードが約10分という短さですが、最初からショートショートでやる方針だったんですか?
井上:そうだね。これまで何度か短い作品はやってるけど、シナリオを書くには短くても長くても何の問題もないんだけど、
結局、使うアイディアというのは同じだから、短い方が面倒だよね。

――「起承転結」の流れが大変ですよね。
井上:“段取りとってたら間に合わないから、起承転結は要らない”と言ったせいで、起承転結がない話が多いけどね。
“起転”で終わるとか。

――では、脚本の皆さんが出した普通のシナリオを、今のスタイルに変えていったわけですね?
井上:自然にそうなっていったという側面もあるし、結局、『G.A.』を動かすにはどういう話が面白いかというと、
やっぱりキャラクターが生き生きしないとまずいのよ。
そのためには、今みたいなスタイルが一番合っているということなんだと思う。
俺に言わせれば、『G.A.』という作品がそういう道を選んだの。ヤツらが勝手にね。
1993/6 「テーマは愛」ここでも来てます:2007/05/24(木) 19:05:10 ID:kZD8swRH0
――今回はシリーズ構成ということでしたが、たとえば『仮面ライダーアギト』のように全部自分でシナリオを書くことはせずに、
   最初から色々な人たちに書いてもらうという予定だったんですか?
井上:そうそう。ちょっと微妙なんだけど、アニメだと一人で全部書くというのは、現場的に難しいところもあってね。
本当はもっと書けばいいんだけどさ、自分で(笑)。結構アイディア勝負の話なんでね。
だから様々な人間のアイディアを取り入れて、ごった煮みたいにしても悪くないシリーズにしたんだよね。
ただ、いつかはアニメでも、自分で全部シナリオを書いてみたいけどね。
特撮物で『仮面ライダーアギト』や『超光戦士シャンゼリオン』なんかではやってるからね。アニメだと機会がない。
どうしてもアニメで俺のテイストが出せないのは、自分で全部書いていないからだと思うんだよね。
まぁ、『G.A.』の2期では2本しか書いてないから、そりゃ出ないわな(笑)。

――それでも、井上さんのテイストは十二分に出ているとは思いますが……。最初から、全体のプロットは作られていたのですか?
井上:もともと無い。各話のライターが責任を持って面白いエピソードを作る。お約束はそれだけなの。
連続ものじゃないのでそういうことをする必要がないんだよ。テーマも無いし。

――どうしても作品にテーマ性を求めてしまいますよね?
井上:テーマと聞かれたら「愛」と言えばいいんだよ。みんな愛なの。
例えば「友情は美しい」とか、誰が信じるんだ。書く方が信じてないんだもん、そんなの書けないよ。
俺は自分が信じてないことは絶対書かないから。
だから、友情話を書いても、必ず落とすことにしてるんだよね。俺たちってこれでいいんだろうか、みたいな。
例えば『シャンゼリオン』みたいな友情はいいと思うんだ。ああいう友情ってあると思うんだよね。
前面には出さなくても、見ていればわかる、というのはいいと思う。

――『G.A.』に参加した脚本の方たちは、井上さんから声をかけられたのですか?
井上:そう。

――小林靖子さんや金巻兼一さんなど豪華なメンバーですよね。
井上:俺は顔が広いのよ(笑)。皆さんに頑張ってもらって、助かってます。
――井上さんの中で、思い入れのあるキャラクターはいますか?
井上:別にないな。いや、みんなにありますって(笑)

――では、書きにくいキャラクターは?
井上:全員かな(笑)。まぁ、中でもヴァニラは動かしにくいね。書きやすいのは、ミルフィーユかな。
ヴァニラ編は難しいね。基本的にしゃべらないから。みんなヴァニラの話は書きたがらないな。
「誰か書く人は?」と聞いても、誰も手を挙げない。誰も書かないから、立場上、第1期の23話は書いたけど。

――色々な芸人が出てきて、ヴァニラを笑わそうとする回ですね。お笑い芸人はお好きなんですか?
井上:好きじゃないし、全然興味がない。シナリオでは、“笑いの絨毯爆撃”とか書いただけ。
芸人の部分は演出だよ。セリフはそのままだったけど。あれはコンテが上手かったね。
3期では、ヴァニラは結構変わるよ。第1期、第2期から一番進歩したのがヴァニラじゃないかな。
結構ボケキャラだし。

――ヴァニラは、ノーマッドとのコンビが最高ですね。
井上:ノーマッドはいいね。しゃべらないヴァニラに持たせたから、ますます整合性がついたというのがある。偶然だけどね。
ああいうキャラが転がっていくというのは、ヒットする番組の運に恵まれている、ということもあると思うよ。

――ノーマッドは、企画の最初から考えられていたのですか?
井上:あれは、脚本の滝(晃一)のケガの功名なのよ。
「好きなプロットを書け」と言って書いてきたのが中々よかったので、
レギュラーにしようということになったキャラクターなんだよね。そういう意味では珍しいパターン。
監督も気に入って、みんなで話している時にそんなふうになったの。

――蘭花はいかがですか?
井上:最初は嫌いだったけど、最近は好きになってきた。よく見ると、色っぽいなあと(笑)。
キャラとしては一番おいしいとは思うけど、俺はセリフが書きにくいね。セリフはフォルテの方が書きやすい。
実は、蘭花が一番常識的なことを言うので、セリフがあまり面白くないんだよね。受けのセリフが多い。
フォルテが何か言って、それを受けるとか。自分から何かするタイプじゃない。
――かけ合いになってこそ、引き立つタイプなんですね。
2015/6:2007/05/24(木) 19:07:22 ID:kZD8swRH0
――では、井上さんが手がけられた話数についてお聞きしたいのですが。
  第2期の1話は、ミルフィーユ以外が透明でびっくりしましたね。第1話らしくない、とも言われたんじゃないですか?
井上:それが狙いだもんな。マジメな視聴者をおちょくるのが『G.A.』です(笑)。
でも、あの話は、本当はミルフィーユも透明だったんだよ。
俺が良心の呵責に耐えかねて、これはやっぱりまずいだろうと(笑)。
PDがクビになるかもしれないから、ミルフィーユだけ残しておいてやろうと。
プロット会議の時は、全員透明人間だったんだ。「OK、面白い、わはは」でも、それだとシナリオにならない。

――その1話では、初っ端からコショウがロストテクノロジーとして登場しましたが、
  第2期は、第1期に比べるとロストテクノロジーの話が多くなりましたよね?
井上:最初はみんなイヤがってたんだよ。よう分からんみたいな。
でも、だんだん何でもありになってきてから多くなったんだよね。
最初、ロストテクノロジーというのは、もう少しシリアスなものと言う雰囲気があったけど、もう何でもいいや、みたいな。
そのせいか、最近はますます書きたがるヤツが多くなって、第3期の特徴は「ロストテクノロジー編」かもしれないな。

――ロストテクノロジーが出てくると、『G.A.』ってSFだったんだと思いますよね。
井上:そうなんだよな。SF色がなくなって、今はお遊び小ネタ。漫才的な響きになっちゃった(笑)。
2026/6:2007/05/24(木) 19:09:42 ID:kZD8swRH0
――さて、第3期の話題が出たところで、3期の1話では、いきなりエンジェル隊が解散していて驚いたんですが……、
  第2期の最終話で、ノーマッドが「覚えてろよ!」と捨てゼリフを吐きますよね。
  それを受けて、第3期を始めようとは思いませんでしたか?
井上:思わないね。一応、視聴者には「覚えてろよ」と。1期のラストも、にせエンジェル隊が登場してそのまま終わっちゃったしね。

――そういえばそうでしたね。にせエンジェル隊が登場して終わり……、誰もが2期では活躍するんじゃないかって思いますよね。
井上:あの話は面白かったよね。また出してほしい、という希望も聞くし。
出してやってもいいけど、最後のワンシーンとかならいいんじゃない。ほんと最後の2,3秒。
「今度こそ待ってろよ」と言って、意味もなく……。で、もう出てこないの、そういうのだったらいいよ(笑)。

――やっぱり投げっぱなしなんですね(笑)。
井上:それは、にせエンジェル隊が出たことは覚えているけれど、我々はもう出さんぞ、という意味なんだよ(笑)。
つながりを求める方が間違っている。
『G.A.』を見る人間は、何も期待しちゃいけないんだよ、過去とか未来に。今、この瞬間に期待するのはいいんだけど。
我々作り手に、過大な期待をしてはいけない(笑)。明日死ぬかもしれないのにさ。

――なるほど、せつな的なんですね(笑)それでは、最後に、井上さんが第3期で目指すものとは何ですか?
井上:そうだなぁ。これ以下のものを作りたい。ここまでならギリギリOKなものを。
最高を作ろうとするのはみんな目指すんだけど、最低を作ろうとするのってあまりないと思うんだよね、番組で。
だから最低を目指したい。最低なんだけど面白い。
アンチメジャーなんだけど、メジャーみたいな作品と言うのかな。健康に悪いけど、ハマってしまう薬みたいな。
そういうのがやりたいな。


以上。GA未見の人、アニメを見ない人にはちんぷんかんぷんのインタビューですまん。