轟轟戦隊ボウケンジャー 宇宙のプレシャス(R指定)
【Task.∞ 未来へ(1/5)】
「…pipi…太陽型恒星反応アリ…コールドスリープ解除…pipi…太陽型恒星反応アリ…」
…………どれだけ旅を続けたのか…何年…何光年…人類が作り出した単位が無意味に思える程…私達は遠く長い旅を続けていた…
コールドスリープとリップ・ヴァン・ウィンクル効果のお陰で殆ど齢をとっていない私達は…既に人類の作り出した文明全てを超越してしまったのかも知れない…
「プレシャス」という文明の足跡を捜し求める事すら無意味に思える……
……太陽系を脱出するまでは各惑星…矮惑星…小惑星の探査…観測…地球へのデータ送信と目まぐるしい忙しさだった…私の卑小な目的など達するヒマも無く…
冥王星でのゴードム文明遺跡を発見した時の興奮は恐らく人生最高のものだった…しかし…それが最初で最後のプレシャス発見…
太陽系脱出後…ボイジャーは次のプレシャスを目指す為…目標を太陽系型惑星系に絞り…光速の99.9%の亜光速航行に移った…そして私達は個々のカプセルでコールドスリープに入った……
……太陽型恒星に近づく度に覚醒し通常航行に移行…各惑星を観測…そして無反応なのを確認すると再び亜光速航行…コールドスリープ…永遠とも思える繰り返し…
無数の恒星系を通り過ぎ…無数の惑星を見た…地球型惑星も数知れず…でもプレシャスは無かった……
……亜光速航行中はもちろん星の粒など見えない…星虹以外の一切光の無い『闇』の世界…
「真墨はこんな世界を一人で抱え込んでいたのかな…」
そんな感傷に浸っていたのも始めのうちだけ…次第に私は何の感慨も受けない様になり…自分の卑小な目的も忘れていった……
……そして…いつからだろう…覚醒しても目覚めたカンジがしなくなったのは…体は目覚めているのに心は冷え切ったまま…
心を『闇』の世界に置いて来たように……
【Task.∞ 未来へ(2/5)】
「……妙です…観測し得る全ての恒星ベクトルと宇宙背景放射が変化して…まるで一点に収斂され……」
「収斂される?そうか……ビックバン後、膨張しきった宇宙は収縮し始めるって説は知っているな?」
「……ビッグクランチですね…そして…収縮しきった宇宙は再び膨張して宇宙は幾度と無く再生を……」
「振動宇宙論か…それも有り得る。この変化というのは宇宙が収縮に転じたからかも知れん。」
「……つまり宇宙が…特異点に帰…る……」
「特異点…つまり『無』か…そうかもな………………………………宇宙の果てに行ってみたくないか?」
「……え……」
「このまま収斂されるベクトルとは逆に進路を取り続ければ…これはちょっとした冒険だな。」
「……久しぶりに聞く…そのセリフ……」
「そうだな自分でも忘れていた…………恐らくこれが最後のミッションになる…いいか?」
「……はい……」
「じゃあ、最後に地球を見ておくか?」
……もちろん本物の地球は見えない…それに…とっくの昔に赤色巨星と化した太陽によって…
モニターに映し出された地球は最後にキャッチした極微弱な光をムリヤリ補整した単なる青白い点……
……涙が溢れた…とめどなく頬を伝った…私は頬を拭う事も忘れ…ただただモニターを見つめた…
驚いた…まだ…こんな心が残っているなんて…
そう…私には確かに見えた…ただの青白い点が…緑豊かな青い惑星に……
……どちらからともなく一緒のカプセルに入る…この旅で初めての事…
「……牧野さん…ボイス…ワガママ言ってスイマセン……真墨…高岳さん…お別れも言えずゴメンなさい……蒼太くん…菜月…………私…幸せだよ……」
…冷え切った『闇』を温める互いの肌の温もりを感じながら…私達は永遠の眠りに向け目を閉じた……
……そして……全ては『無』に……
【Task.∞ 未来へ(3/5)】
「…pipi…太陽型恒星反応アリ…コールドスリープ解除…pipi…」
……目覚めれば『無』が待っているのは判っている…最後にこんな夢を見せるなんて神様というのも余程…意地が悪いらしい…
「……ら……きろ……くら…起きろっ!」
…………!?…夢じゃない!
次元のカベを越えて平行宇宙へ?…ブラックホールに呑まれ時空を越えた?それとも…それとも……
「見えるか?これは現実だ!」
「…………は…はい!」
胸騒ぎに近い予感を感じた私達は、虚ろな意識の中、早速調査を開始した。
ここは太陽系型惑星系…その第三惑星は…間違いない!青い地球型惑星!!
今まで無数の地球型惑星を見てきた…でも…でも…今回だけは絶対今までとは違う!
「続けて第三惑星に接近!プレシャス反応測定だ!!」
「……………………有った…有りました!プレシャス反応です!!」
予感は確信に変わった!
「…………とうとう見つけた!これが俺達が探し求めていたプレシャスだ!!」
「はい!」
「いよいよ最後のミッションだ!コマンダーを分離し大気圏へ突入する!!」
コマンダーに大気圏脱出能力は無い…そう…この惑星が私達の旅の終着地。
逸る気持ちを抑え、ボイジャーからコマンダーを分離。
私達を乗せたコマンダーは青い惑星へと向かった。
【Task.∞ 未来へ(4/5)】
目の前に迫る青い惑星……見える!白い雲!青い海!緑の山々!何から何まで地球そっくりの青い惑星。
所々には都市も見受けられ、明らかに知的生命体…イヤ!人類と断定しても良い生命体が、この惑星には暮らしている。
地形データ収集、降下ポイント選択の為に惑星を一周後…いよいよ大気圏突入。
大地が目前に迫る…見えてきた…青い海に囲まれた島…降下ポイントに選んだ「日本」だ!!
コマンダーは雲海に覆われた山間部の森の中へと軟着陸した。
ゆっくり大地に足を着けてみる…鈍りきった体が重い…二人で顔を見合わせ苦笑した。
「さぁ!早速アクセルラーでプレシャスの位置を確認だ!」
「プレシャス反応は…北東500m!地形データと照合すると崖の方ですね!!」
私達は互いの体を支え合い…ゆっくり歩を進めた。たった500mが今の私達の体には辛く感じられる。
でも…体を包む澄んだ空気…鼻腔をくすぐる花の薫り…耳に伝わる野草のさざめき…眼前を優しく照らす木漏れ陽…そして肩に感じる互いの肌の温もり…全てが体を癒してくれた…
森を抜けると視界一杯に青い空と雲海が広がった…
さっきまで見ていた宇宙より…どこまでも広く感じる!この光景が永遠であるかの様に…地球にいた頃はこんな事感じなかったのに…
「プレシャスはあの崖の上です…………ひ…人影が……あ!?」
「…………俺達は最高のプレシャスを見つけた様だ…」
「…………はい」
「今まで…今まで本当にありがとう…お前がいなければ…俺は闇に呑まれていたかも知れん…」
「え?…………はい…私もです…ありがとうございます…私を闇から救ってくれて…」
「…………」
「…………」
「……さぁ行こう!さくら!!」
「……フフ……『アタック!!』…を忘れてますよ!…………暁さん!」
【Task.∞ 未来へ(5/5)】
「ミッション完了だ…見えるか、さくら姐さん!明石!未来は俺に任せろ!!」
「いつまでも仲間だ!」
「また会う日まで、お元気で!」
「みんなアリガト☆」
「Woom…Woom…Woom…」
「真墨、アクセルラー鳴ってるよ〜☆」
「へぇへぇ聞こえてるよ…どうせボイスだろ…」
「そうそう蒼太!『ボイスちゃん』は相変わらず完了報告しないとうるさいからね!」
「『ボイスちゃん』なんて気持ち悪りーなぁ!どうせ本当はムサ苦しいオッサンなんだろ?」
「フフ…」
「何だよ蒼太?俺様ヘンな事言ったか?」
「ハーイお終い!それまで〜!!それより真墨、早く出なよ〜☆」
「(カチャ!)ハイハイ聞こえてるぜ!如意棒回収完了だ………………………………え!?」
見えるよ…
真墨…
高岳さん…
蒼太くん…
菜月…
みんなが…見えるよ
【完】