轟轟戦隊ボウケンジャー 宇宙のプレシャス(R指定)
「チーフ! このままではかわしきれません!! 直につかまります!!」
星の海を押し渡り、初めて手にした宇宙のプレシャス。
しかし、その興奮と安堵はすぐさま打ち消された。
「呼び方が戻ってるぞ、さくら! 宇宙を舞台にした追いかけっこ! これは冒険だな!!」
眼前に迫る危機に直面して彼の顔には笑顔が浮かんでいる。
高揚が止まらない。今、彼は全身全霊で自らの生を謳歌していた。
傍らの女性の顔にも自然と笑みが浮かぶ。どうやら、彼に相当毒されているようだ。
しかし依然、彼らが劣勢であり、絶体絶命の危機に直面しているという事実に変わりはない。
目の前の敵は宇宙人と呼べるだけの高度な思考体系は持ち合わせてはいないらしいが、小惑星ほどの巨躯を持ち、無数の目玉を持ち、全身の至る所から触角が伸びている。
早い話が怪物だ。
奴は宝を守る番人であると同時にトラップでもあるのだ。
かつて地球で交戦したモガリと同義の存在であるといえるが、その規模は桁違いだ。
触覚は全方位へフレキシブルに展開しその先端から宇宙の常闇に無数の閃光をばら撒いている。
今は乗員二人の神がかり的な操作技術で被弾を最小限に押さえ込んでいるが、このまま浴び続ければ
いかに堅牢な装甲を誇るゴーゴーボイジャーでも宇宙の藻屑と化すだろう。
148 :
名無しより愛をこめて:2007/02/19(月) 01:03:51 ID:e7OxxSzI0
「追いかけられる方にも飽きたな…そろそろ鬼の役を変わってもらおうか」
だが、それが何だというのか。
敵の巨大さも、攻撃範囲の広さも、彼には問題ではない。
立ち塞がる障害が大きければ大きいほど彼はそれを心の永久機関の燃料にしてしまうからだ。
傍らに座る西堀さくらはそれをよく理解していた。
そんな彼だからこそ彼女は全身全霊を尽くして付いていくのだ。
「了解! 超絶轟轟合体!!」
さくらが放ったその一言を境に銀色の舟はその形を大きく変え、巨大な人型を現した。
鋼鉄の巨人―ダイボイジャーは両肩と腹部から伸びる砲門の照準を敵に向ける。
「一斉射撃!!」
襲い掛かる閃光を叩き落しながら、スラスターを一気に加速させ敵の只中へと突っ込む。
「 奴を排除し、この星域を離脱する!」
「はい!!」
追いけっこの中で敵の情報を精査した結果、熱の収束が見受けられた。
恐らくはそこが敵のウィークポイント。花火の生産地点であるのだろう。
ならば、その一転を付く事が出来れば勝算はある。
「五基のネオパラレルエンジンを連結! 奴の熱源を狙う!! いけるか、さくら?」
「当然です! “明石さん”!!」
ネオパラレルエンジンから供給される絶大なエネルギーが流れ込み、両拳を高速で回転させる。
その源は操縦者二人の想いの力だ。二人の、絆の力だ。
149 :
名無しより愛をこめて:2007/02/19(月) 01:05:38 ID:e7OxxSzI0
モニター越しに見る敵の姿がどんどん大きくなっていく。
醜悪で目を背けたくなる様なその姿は見る者に絶望と恐怖を与える効果も担っているのだろうか。
だが、さくらは恐怖などに囚われはしなかった。彼がいるから。明石暁が隣にいるから。
傍らの彼の手に、そっと自らの手を重ねてみる。
その温もりに気づいた彼と視線が交わる。
二人で微笑みあった。
「いくぞ! ハイパーチャージ!!」
二人の体を縁取るように淡い輝きが全身から立ち昇っていく。
それは機体全体を包み込み、黄金の輝きを放った。
「「アドベンチャーダブルスクリュー!!」」
二人の声が重なり、そして宇宙に爆炎が上がった。
(菜月…蒼太君…真墨、高丘さん、牧野先生、ボイスにズバーン…わたしは、幸せです――…)