おまいらウルトラQの脚本を創ってください。再×3

このエントリーをはてなブックマークに追加
551名無しより愛をこめて:2008/01/30(水) 06:54:37 ID:DlGOusvj0
552A級戦犯/幸せになる方法:2008/01/30(水) 17:18:01 ID:Vmnn9Qjf0
ウルトラマンの体には紫の燐光を放つ巨大なリボン、ジャンクションへと連なる建築途中の高速道路が、海蛇のように絡み付いている!

「そうだったのか!」南が驚き叫んだ「上空を探しても見つからなかったわけだ!敵は道路そのものだったのか!」
愉快そうに朝比奈は笑った。
「ハハハハ…あの紫色の光は五次元世界の……何処にでもいる微生物のようなものなのだ。僅かな隙間を通り抜け、出入り口と直接接続している高速道路を拠り代にしてるのさ!」

メリメリッという音を立て、ウルトラマンは絡みついた高速道路を引きちぎると、すかさず十字に組んだ腕から光線を浴びせかけた。
コンクリートの建造物などひとたまりもない!
……はずだった。
しかし高速道路は砕け散るどころか煙すら上げない!
いやそれどころか、千切れてバラバラになったはずの部分がたちまち再結合を果たしてしまった!
553A級戦犯/幸せになる方法:2008/01/30(水) 17:19:06 ID:Vmnn9Qjf0
「どんなに強くともウルトラマンが攻撃できるのは『現在』の存在に過ぎぬ。だが、『あれ』は『現在』『過去』『未来』にまたがって存在している。ウルトラマンの倒せる相手ではないよ。」

光の巨人に向かってコブラのように鎌首をもたげていた高速道路が、突然二つに分離したかと思うと、それぞれが巨人の左右の腕に絡みついた。

「時間分裂!」思わず山田が叫んだ。
「そうだよ。キミとワタシのように、本来別の時間に存在しているものを、同一時空に出現させる現象さ。」そして恐ろしい笑みを浮かべて言い足した。「…思い出してきたじゃないか。」

銀と赤の胸が高く厚く隆起した次の瞬間、ウルトラマンは紫に光る高速道路をバキッという音とともに引きちぎった。
だが、五次元の妖怪と化した高速道路はあっという間に再生すると、オプチカルプリンターの合成映像のように更に分離して襲い掛かっていく。

「無駄だ、無駄だ」嘲るように朝日奈は言った。「…死も破壊も、みな時間の中での変化に過ぎぬ。現在・過去・未来が一つの存在は永遠不滅の存在だ。」
「現在・過去・未来がひとつの存在!?」
山田の脳裏に、ある神話に語られる名前が浮かびあがった。
「まさかそれは!」
「そうだ!見るがいい!!」
朝比奈は雨空高くを指差した。
山田は朝日奈の指差す方を振り仰ぐまえに、自分が何を見るかを知っていた。
彼は総てを思い出していた。
そこにあるのは、夜空を蓋する雨雲などではない。
そこに見えるのは……星空だ。
空に吸い上げられつつあるとき南も見上げた、地球ではだれも見たことの無い星の配列と星の大きさでもって渦をまき、沸き立つ異界の星空だ。
ぞくっと震えを感じつつ、山田は呟いた。
「……イオグ・ゾトス」
「そう!星空などではない!」
まるで選挙演説でもするような姿勢で、朝日奈は一気にまくしたてた。
「偉大なる五次元の神!ヨグ・ソトースが、私が扉を開くそのときを、あそこでああして待っているのだ。」
554A級戦犯/幸せになる方法:2008/01/31(木) 17:21:36 ID:gAGdK/f80
「さあ、『彼』をこれ以上待たせてはいけない。」
朝日奈は山田の方へと向き直った。
「キミの知識で扉を開け放つのだ。そしてゴミクズどもに全き死を!」
アジ演説家かテレビ説教師のように、山田に手を差し伸べる朝日奈。
…がしかし!
差し伸べられた手を、山田は決然と跳ね除けた。
「嫌だ!」
「なんだと!?」
「ボクはこの世界を壊したくない!」
「なにを言うのだ!?」
再び山田の精神を己の支配下に置こうと、覆いかぶさるように朝日奈は迫った。
「オマエはワタシの過去、ワタシはオマエの未来の姿。今はこの世界を壊したくなくとも、いずれオマエもこの世界の破壊を望むようになる!それがオマエの未来なのだ。」
しかし、負けじと山田も言い返した。
「判ってるさ!オマエの言うとおり、ボクもいつかはこの世界を壊そうと考えるようになるのかもしれない!」
「それなら今こそ……。」
「でも、それは今じゃない!!今のボクは、この世界、安田さんのいるこの世界を壊したくないんだ!!」
ついさっきまで山田を支配していた朝日奈の奇妙な力は、完全に失われていた。
南のもたらした事実、安田が自分のこと案じてくれていたという、ただそれだけの事柄が、山田の心の支えとなっていたのだ。
「……そうか……あの女のためなのだな……」
朝日奈の目に、冷たい狂気がきらめいた。
「それなら…残念だがあの女は……」
555A級戦犯/幸せになる方法:2008/01/31(木) 17:22:09 ID:gAGdK/f80
「…残念だがあの女は……」
安田の死は、今の山田にとっては世界の終わりと同義だ!
「…あの女は、もうこの世には……」
けれども朝日奈が山田の最後の希望を断ち切ろうとしたそのとき、下界へと続くランプを指さし南が叫んだ!

「山田さん!あれを見るんだ!!」

紫の燐光の中、小さな人影が、渦巻く風に吹き嬲られながらも、山田の立つジャンクションへと続く斜路を必死に上ってくる。
バーン!!
そのとき、河川敷で戦うウルトラマンの放った光線のスパークが、一瞬辺りを昼間と見まごうほどの明るさで照らし出した!
「安田さん!」
「なんだと?!」
歓喜に満ちた山田の声と、怒りを含んだ朝日奈の怒号が交錯した。
「何故だ!?なぜあの女が!?……そ、そうか、ウルトラマンめ!」
ウルトラマンは五次元存在と戦うためにだけ出現したわけではなかった。
安田を乗せた橋が荒天に舞い上がる寸前、彼女の体を橋の上から川の向こう側へと転移させていたのだ!
556A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/01(金) 17:27:04 ID:nj7BCuy60
「僕は五次元との扉なんか開かない!絶対に!!」
山田が胸を張って朝日奈の視線を跳ね返すと、南も大声で朝日奈に迫った。
「もうオマエの負けだ!観念しろ!!」
だが、山田と南は知らなかった。
朝日奈という男は、現世における戦いでは如何なる相手にも負けたことの無い男なのだということを。
総ての謀が潰えたように見えるこの瞬間にあって、彼の手には最後のカードが握られていた。
557A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/01(金) 17:27:52 ID:nj7BCuy60
「同じ私だと思えばこそ、採りたくは無かった手段だが……」
朝日奈の目に怪しい光が灯った。
「……キサマの知識と記憶!根こそぎコチラに戴かせてもらおう!!」
突然、猛禽の爪のように鋭いカーブを描いた朝日奈の指が、ガッシとばかりに山田の頭蓋を鷲掴みに捕まえた!
「キサマが持っていったものを返してもらうぞ!」
微かな光がドクン…と脈動しながら朝日奈の指に吸い込まれた。
「や、止めろおおおっ!」
山田は、相手の手を引き剥がそうと必死にもがくが、朝日奈の手のひらはタコのようにな吸い付いて離れない!
「なにを逆らう?…それはもともと、私のものなのだぞ!」
……再びドクンッ!
朝日奈の指が蛭のように蠢くたび、蛍のような暖かい光が、山田の頭から吸いだされていく!
ストン…と不意に、それまで必死に抵抗していた山田の動きが、ノロノロしたものになってきた。
「や、山田さん!?どうしたんだ?」
朝日奈は蔑むような笑みを見せた。
「人はパンのみに生きるに非ず。いま私はコイツの脳から、あらゆる知識と記憶を残らず吸い出しているところだ。」
「なんだと?!」
「ほどなくコイツは、中身の無い、空っぽの人形へと成り果てる!」
「そ、そんなことはさせない!!」
南は、上着の下から自動拳銃を取り出そうとしたが、黒光りしているハズのそれは真っ赤な錆にまみれており、南の手の中で崩れ去ってしまった!
「残念だったな」
老人のような長い歯を見せ、朝日奈は笑った。
「奪い返した我が知識をもって、私自身の手で、五次元との扉を開いてやる!!」
……もう、山田は殆ど動いていない。
古着のように朝日奈の腕からぶら下がっているだけだ。

(…ボクは……何だ?いま……どうなっているんだ?…ここは…どこ……なんだ?)

「総ての知識と思考を失い、廃人になるがいい!」
朝日奈が狂気に満ちた叫びを上げた。
558名無しより愛をこめて:2008/02/01(金) 17:30:59 ID:nj7BCuy60
なんと!
まだ終わらない!?
でも、来週には確実に終われる。
やっとここまでたどりつけた。
これの投下が終わったら、他の人が投下開始しないか見た上で、次作の投下を開始します。

駄作で長々とスレを汚し、申し訳なし。

559A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/05(火) 17:29:56 ID:lha6kRTO0
山田がいる場所…
そこは…総てが暮れてゆく「夕暮れの世界」だった。
身の回りの様々なことどもが次々に闇へと沈み、世界はみるみる狭く小さくなっていく。
世界だけではない。
ふと気がつくと、山田には自分の手足すら無くなっていて、ただや薄暗がりの中、「自分」という概念だけが漂う状態に成り果てていた。
まもなく、感じ、考えている「自分」すら消えてなくなるに違いない…。
そんなことを感じていると……
ふいに闇の中から一人の女が現れた。
560A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/05(火) 17:30:27 ID:lha6kRTO0
「死ねよ!ゴミ屑ども!」
天を振り仰いで朝日奈が叫んだ。
「今こそ扉を開きて、五次元世界の神をこの三次元世界に招き寄せん!!」
叫びながら朝日奈は、空中にある種の「図形」を次々と描き始めた。
もう全く動かなくなって朝日奈の足元にころがる山田に、安田が縋りついた。
「山田さぁん!」
安田は泣きながら必死に山田を揺さぶるが、山田は糸の切れた操り人形のようにガクガク首を前後させるだけだ。
「イオグ・ゾトス!!」
朝日奈が両手をかざして音声(おんじょう)を上げる。
すると、それに呼応するように「異界の星空」が、激しく沸き立った次の瞬間、猛烈な勢いで星空が……降ってきた!
ついに開放された扉に向かって、無窮の彼方から異次元の神が突進してくる!
三次元の世界を消滅させるために!
561A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/05(火) 17:30:57 ID:lha6kRTO0
(…あれは……誰なんだ?)
黄昏の闇の中から現れた女…。
アヒルのような唇をした、一重瞼の、長い髪の女だ。
場面が前触れもなく不意に変わって……
寒々とした冬の宵だった。
木枯らしに吹かれながらアヒル口の女が誰かを待っている。
(誰か?……それはひょっとして…)
ひょっとしてボク?そう思う間もなく、またも場面が変わった。
アヒルのように唇を突き出して何か言う女。
笑っているアヒル口の女。
手を振っているアヒル口の女。
同じアヒル口の女が次々現れるたび、山田の心に暖かいものが広がっていく。
やがて…青い空と白い雲をバックに、アヒル口の女がこちらを見下ろしていた。

「大丈夫ですか?」

…心配そうに女が手を差し出した手を消滅したはずの自分の手で握り返した瞬間、山田は「女」の名前を思い出した!
(…安田さん!)
闇の中、山田は叫んだ!
「そ、その記憶を、消さないでくれ――――っ!!」

562名無しより愛をこめて:2008/02/06(水) 08:37:55 ID:9M5qIJSM0
…いや、校正なしの一発勝負で投下してるだけあって、酷い文章だ。
我ながら自己嫌悪に陥る…。
563A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/07(木) 17:17:44 ID:Dva5ooG80
「死ねよ!ゴミ屑ども!!」
天を仰いで朝日奈がもう一度叫んだ!
「現在・過去・未来がひとつのもの」が来る!
「始まりが無く終わりも無いもの、殺すことも傷つけることも適わぬもの」が降臨する!
それを阻止すべく、ウルトラマンがジャンクションに迫ろうと試みるが、無数に分裂する異次元高速道路に阻まれ果せない!
「そうはさせんっ!」
手の中の赤錆びた拳銃をその場に叩きつけると、南は朝日奈に向かって突進しかけだが、たちまち見えない何かの一撃で後ろに弾き飛ばされてしまった。
「現在だけの存在であるキミが、現在と未来の存在である私に、何かできるとでも思ったのか?」
歪んだ喜びに顔を輝かせ朝日奈はまたもあの言葉を叫んだ!
「死ねよ!ゴミ屑………」
…だが、まさにその瞬間だった!
祈りにも似たある「思い」が、ジャンクションを貫いた!

《 そ、その記憶を、消さないでくれ――――っ!! 》

「ぐ!ぐがああっっっ!?」
勝利の絶頂にあった朝比奈が、突然見えないバットで殴られたように仰け反った。
顔を押さえて二三歩よろよろと後ずさった直後、両手のひらの下から現れた表情は別人のようだった。
悪い夢から覚めたような顔で辺りを見回したかと思うと、朝日奈は、まず足元に泣き崩れる安田、そして頭上の星空を突進してくる存在を見上げた。
「…お……おおおおおおおおおおおおおおおっ!」
…南には何が起こっているのか、全く判らなかった。
朝日奈が奇妙な叫び声を上げると、以前山田が「神の視点」と評したジャンクションの突端に向かって駆け出したのだ!
その手には、いつの間にか拾い上げた鉄パイプが握られている!
猛スピードで降下してくる「星空」が、太陽の数倍もの大きさで迫るさなか、朝日奈はある言葉を叫びながら「神の視点」へと鉄パイプを振り下ろした!!
564A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/07(木) 17:18:32 ID:Dva5ooG80
「…そのときヤツは叫んだんです。『この世界、壊させるもんか!』と…」

総てが終わり……上り始めた朝日が照らす河川敷を2人の男が肩を貸し合い歩いていた。
肩を貸された男=南は言葉を続けた。
「朝日奈は…山田さんの記憶と知識を根こそぎ奪い取りました。しかしその中には…」
肩を貸す男=万石が答えた。
「……安田さんへの思いも含まれていたんですね。」

「この世界、壊させるもんか!」
渾身の力で朝日奈が、「神の視点」に鉄パイプを振り下ろすと、コンクリートの塊に混じって、何か電気コイルのようなものがはじけ飛んだ。
そして……何かが、何処かで、閉ざされた。

「その安田さんへの思いをも自らのものとしたため、朝日奈自身が世界の破壊を望まなくなってしまったんだと……自分はそう思います。結局……」
続く南の言葉は、万石に話しかけるというより、自分自身に語りかけるようだった。
「……結局この世界を守ったのは、山田さんの安田さんとの記憶だったわけです。」
565A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/07(木) 17:19:03 ID:Dva5ooG80
五次元との扉が閉ざされると、不死身と見えた「異次元高速道路」はみるみる力を失い、ウルトラマンの放った光線を浴びるともう二度と再生・復活することは無かった。
無生物に戻った高速道路は巨大なリボンのように河川敷をのたうち、前衛的な景観を作り出してはいたが、それ以上もう動くことはなかった。

「……開きかけた五次元への扉を自らの手で閉ざすと……奪った記憶と知識を放棄し、自らは消滅する道を選んだ……。そういうわけですか…。」
万石の問いコクンと短く頷いてからたっぷり数秒間の沈黙のあと、恐る恐るといった調子で南は尋ねた。
「万石先生…山田さんは、結局、朝日奈と同じように……なってしまうんでしょうか?」
「同じように……世界全体を憎むように……ということですか?」
そう、朝日奈は山田の未来の姿なのだ。
「……朝日奈は山田さんの未来の姿、山田さんは過去の朝日奈でした。」
「それではやはり…」
……山田も朝日奈になってしまうのか?そして世界の破壊を願うのだろうか?
しかし万石は静かに首を横に振った。
「人間というのは機関車のように決められたレールの上だけを走るものではありません。
誰と出会うか、誰と別れるか、それだけで何億通りにも変化し得る。それが人間というものです。」
566A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/07(木) 17:19:38 ID:Dva5ooG80
「それなら…」
南は朝日の射すほうに顔を上げた。
「山田さんの未来を左右するのはやはり……」
……曙光に縁取られた河川敷堤防に、並んで座る二つの姿が、シルエットになって浮かんでいます。
万石先生と南刑事は答えを確かめに行くところでした。
世界はもう一度、破壊の危機を迎えるのか?
それとも……

「……あっ!」

短い叫びとともに、負傷した南を支えて歩いていた万石の足が突然止まりました。
どうかしたんですか?と、尋ねかけた南の前に、「しいっ…」と言いながら人差し指を立てると、万石はその指を朝日が縁取る堤防の方へと向けました。
さっきまで並んで座っていた二つの影は、どちらからともなく寄り沿って、いつのまにか一つの影になっていたのです。
万石先生と南刑事は、さっさとその場から退散することにしました。
だって……出歯亀は野暮ってもんですから……。

567A級戦犯/幸せになる方法:2008/02/07(木) 17:20:18 ID:Dva5ooG80
「知性」や「力」が幸せをもたらしてくれるとは限りません。
いや、むしろ「知性」や「力」は「嫉妬」や「敵意」など様々な余計なものをも引き寄せてしまい勝ちなものです。

……幸せをもたらしてくれるもの

それは、「困っている人に手を差し伸べるささやかな優しさ」。
あるいは「その手を握り返すだけの小さな勇気」。
案外、そんな他愛も無いものなのではないでしょうか?


「幸せになる方法」
お し ま い
568名無しより愛をこめて:2008/02/07(木) 17:24:11 ID:Dva5ooG80
やっと終わった「幸せになる方法」。
「ウルQシナリオ」スレに落とす駄文は、ウルQが30分番組だったのに倣い、30分ものという想定で構成してきました。
「新悪魔っこ」「ミイラの叫び」「緑の思い」「隣の芝生」「いつまでも・いつかまた」「ゴスラVSウンコタイガー」「人形の家」は、すべて30分ものという設定。
「石の見る夢」のみ、前後編の設定で1時間でした。
でも今回は30分番組枠を外し、一時間半枠での構成です。
理由は…コアになるネタが二つあったからでして…。
ひとつは「死ねよ!ゴミ屑ども!!」というセリフを生かしきるということ。
もう一つは「アルジャーノンに花束を」の変奏曲とすることです。
実は他板の某スレで、実力派の住人が「アルジャーノン」系の作品を投下されていまして。
だから私も、「私流のアルジャーノンを作ってみよう」と思ったわけです。
ただし、逆にひっくり返して、「頭の良いヤツ・強いヤツ」が、総て失った「弱いやつ」になる話として(笑)。
だから山田太郎は手術前のチャーリー・ゴードン、朝日奈礼一は手術後のチャーリー・ゴードンなわけです。
569名無しより愛をこめて:2008/02/07(木) 17:24:36 ID:Dva5ooG80
…さて、予定だと次は「木神」になるわけですが…。
「幸せになる方法」が陰謀ものだったので、「木神」を投下すると陰謀ものが二話続いてしまうわけです。
これは番組の構成バランス上、あまりよろしくない。
というわけで、投下順序の変更を検討しています。
いまのところ代打候補は単純怪獣ものの「アイドルを探せ」か「冬に鳴くセミ」のどちらか。
コンパクトに纏め、その次に「木神」を投下するかもしれません。
原作者の方には申し訳ありません。
570名無しより愛をこめて:2008/02/09(土) 07:26:21 ID:RINEVOn50
age
571名無しより愛をこめて:2008/02/12(火) 10:32:45 ID:9uhXUmaq0
応援
572A九戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/13(水) 18:54:48 ID:F5ERgMeU0
「怪獣やっつけ隊」
正式名称は……「タクティカル・オーガニゼイション・オブ・ナショナル・マシーナリー・アーミー」。和訳すると「国際機械化軍・戦略機構」。
ひらったく言うと、「金に糸目をつけない超兵器で武装したすっごい軍隊」という意味です。
ですが、条約を批准し公布したあとになって、政府ははじめて気がつきました。
「タクティカル・オーガニゼイション・オブ・ナショナル・マシーナリー・アーミー」。
これをアルファベットで略記すると……「TONMA」……すなわち「トンマ」になってしまうことに…

「トンマ♪トンマ♪トンマ♪我らがトンマ♪やること、なすこと大トンマ♪♪」

……いま、近所の小学生たちが歌いながら走っていきました。
でも、「怪獣やっつけ隊」のことを「トンマ」などと呼ぶのは、ああいう悪ガキだけです。
普通の人々は尊敬と愛情を込めて彼らを呼びました。
「怪獣やっつけ隊」と!
「やっつけ隊」の隊員は国民のアイドルでした。
男の子であれば誰でも、ついさっきトンマ♪♪と囃し立てていたような悪ガキだって心の底では、なれるものなら「やっつけ隊」の隊員になりたいと、そう思っているのです。
でも何故、「やっつけ隊」がそれほどまでに国民の敬愛を集めているのでしょうか?
それは、日本国民全員が信じているからなのです。
……
ウルトラマンとは、「怪獣やっつけ隊」隊員の誰かが変身した姿に違いないと。




「アイドルを探せ!」
573A九戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/13(水) 18:55:19 ID:F5ERgMeU0
「…と、いうわけだ。判ったかヒルカワ?」
健康被害など知ったことかというように編集長がタバコの煙を噴き上げた。
右の眉をくいっと吊り上げ、自分では「いけてる!」と信じている顔を作ってヒルカワは答えた。
「つまりオレに……『怪獣やっつけ隊』隊員の誰がウルトラマンなのかを突き止めろってことですね。」
「そういうことだ。」
「しかし、いいんですか?ウルトラマンの人間体なんて暴きたてても?」
正体を知られたウルトラマンは自分の星に帰らなければならない…これも国民的な確信事項の一つだ。
誰かが決めたわけでもない。
もちろんウルトラマンがそう言ったわけでもない。
それでも皆、そう信じていた。
信じていたからこそ、みんなウルトラマンの正体を知りたくって知りたくってしようがないのに、ひたすら我慢しているのだ。
「…もしアンタの雑誌が正体暴きに成功したとして、もしウルトラマンが星に帰っちまったらどうすんですか?最悪、全国民を敵に回しますよ?」
「そんなこたぁ判ってる!だがな…」編集長は自分の胸をドンと叩いて言った。「…オレはジャーナリストだ!事実を報道するのは、ジャーナリストの使命だ!」
(あんたの雑誌が報道するのは、女のスカートの中ばっかじゃねーかよ)
…と、ヒルカワは思ったが、それを口に出さないだけの分別はギリギリ備えていた。
その代わり、肩をそびやかして彼は答えた。
「わかりました。ウルトラマンの正体暴き。やってやろうじゃありませんか!」
574A九戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/13(水) 18:55:59 ID:F5ERgMeU0
ヒルカワが景気よく啖呵をきった、その翌日の午前10:00ごろ……。
…ここは関東某県の県庁所在地。

「……なんだ?あれは??」
れっきとした勤務時間中だというのに、県職員たちが仕事も放ったらかして勤め先のである県庁舎を見上げていた。
「霞?」
「…まさかぁ。霞ってのは深い山なんかに出るもんだぞ。」
「じゃあ新手の光化学スモッグか?」
ドンと聳える白亜のツインタワーは、いつのまにか濃厚なピンク色の靄(もや)のようものにまとわりつかれていたのである。
「…なんだか妙にねっとりした感じの霧だな…」
「おい!屋上から何か下がってきたぞ!」
屋上からしずしず降下してきたのは、ロープに繋がれたバケツだった。
上でロープの端を掴んでいるのは、県の衛生部の職員だ。
この謎のピンクの霧が、人間に健康被害を及ぼさないか、調査すべく標本を採取しようと
いうのである。
バケツはゆっくりとピンクの靄の中に沈んでゆき……たっぷり数分以上もそのままだった。
「おい、どうしたんだ?引き上げるんじゃないのか?」
「…なんだか妙な具合だぞ。」
屋上のものたちは二三人ほどでうんうん引っ張り上げようとしているように見える。
なのに、軽いはずのバケツはさっぱり上がろうとしないらしいのだ。

「……なんか嫌な感じだな…」

誰かがそういった瞬間だった。
バーーーーーーーン!!
乾いた破裂音とともに閃光が走り、同時に県庁ビル全体の電気設備が一斉にダウンした!
575A九戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/14(木) 19:31:21 ID:INXoP8Ek0
県庁で事件が発生したその1時間後…。
警視庁不可能犯罪捜査部には、非常召集がかけられた所属部員が勢ぞろいしていた。
「県警から内々に要請があった。異常な事態なので、応援出動して欲しいとな。」
文字が消え難くなってしまった古い黒板の前に立ち、岸田警部が状況の説明を始めた。彼は新型の各種ディスプレイ装置よりも、こういう古臭い黒板の方が好きなのだ。
「今からおよそ一時間前の午前10時、××県県庁のツインタワーが濃いピンク色の靄に包まれた。」
カチッという小さな音に続いて黒板横の大型DPに光が灯って異様な光景が映し出されると、思わず凍条刑事が呟いた。
「…まるで馬鹿デカい桜の木ですね。」
コンクリート製のツインタワーの上部がピンクの霞にすっぽり覆われたその姿は、彼の言うようにまさにサクラの巨木のようだった。
「だがな凍条」ぼそっと部長が口を開いた。「…桜の木は人を殺したりしないぞ。」
部長の言葉をうけるように、岸田も言葉を繋いだ。
「問題の靄を採取しようとしたところ、ビル全体の電気設備が一瞬でダウン。
急報を受けた警備員と営繕部の職員が階段で屋上を目指そうとしたところ、例のピンクの靄が建物内にまで立ち込めているところに遭遇した。
警備員がそのまま通過しようとしたところ……目撃した営繕部職員の言葉によると、『見えないバットで殴られたみたいに』弾き飛ばされ、駆け寄ったときには…死んでいた。」
「…検死官の話しによるとほぼ即死状態だそうだ。」
補足するように部長が続けると、大きく頷いてから警部は再び口をひらいた。
「県警がヘリを飛ばして上空から孤立状態のビル上層部の内部を確認したところ、靄が内部まで侵入した階層では生存者は確認できなかったが、最上層には多数の生存者が取り残されていることも判った。ただし……」
突然部長が両目をカッと見開いて叫んだ!
「但し!少しづつ靄は階層を這い上がっておる!そして、県庁舎最上層には、県庁職員と社会科見学に来ていた120名の小学生が閉じ込められているのだ!」
576名無しより愛をこめて:2008/02/18(月) 00:07:04 ID:s9hTh1hA0
応援!!
577A級先般/アイドルを探せ!:2008/02/19(火) 12:59:16 ID:oLGAC3rW0
靄(=もや)の中にバケツが投入された直後、県庁舎全体の電気設備がダウンし、連絡も不可能な状態に陥った。
そして靄の突破を試みた者は即死。
明らかにピンクの靄は危険な性質のものだった。
電気設備がダウンしたこと、それから警備員の死の状況から考えて、ピンクの靄は高圧の電気を帯びているものと推察された。
…しかも靄は、一時間におよそワンフロアーのペースで階層を這い上がっている!小学生たちを含む生存者は、全員最上階の県議会室に集まっているが、残りフロアーは3階層、つまり、あと3時間で生存者は……。
不可能犯罪捜査部は耐電装備一式を準備し、現場へと急行した。
578A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/19(火) 13:02:49 ID:oLGAC3rW0
ちょうどそのころ……
『おいヒルカワ。』
……編集長だ。
携帯を開くと、ヒルカワが名乗るまえからからサッサと用件を切り出した。
『××県の県庁舎で大事件が起こったらしいぞ。防衛隊に出動要請があった。』
「…やっつけ隊は?」
『そっちの動きは今のところ無い。だが、連中が動く可能性は十分にあるぞ。不可能犯罪捜査部にまで応援出動要請があったらしいからな。』
「…ヤツラにまで?そりゃ大事(おおごと)だ。」
事件の現場は××県。
不可能犯罪捜査部のテリトリーは警視庁所属なので都内だ。
にも関わらず不可能犯罪捜査部に応援要請があったということは、テリトリーを無視しなければならないほどの大事件だということなのだ。
『宇宙人や巨大生物はまだ出現していない。だが、これ以上事件が大きくなれば……』
「やっつけ隊も動くと……。わかりました。こっちも早速動くとします。」
ヒルカワは、いつでも動けるよう「七つ道具」を常時放り込んであるズタ袋を肩にボロアパートを飛び出すと、野ざらしのまま停めてあるバイクに飛び乗った。
579A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/21(木) 17:38:12 ID:LYRJ7tyG0
岸田警部らが県庁舎ビル前にヘリで乗りつけたときには、防衛軍の特殊部隊と消防のレスキューまでが既に到着していた。
「…何をキョロキョロしてるんだ?」
そわそわあたりを見回す凍条に、先輩の南が尋ねた。
「いえ、『やっつけ隊』はどこにいるかと…。」
ミーハー気分丸出しの凍条に、南は苦笑いした。
「この種の事件なら、『やっつけ隊』は来ないさ。」
「え!?来てくれないんですか??」
「それはな……彼らがあまりに少数精鋭過ぎるからなんだ。」

その要求される任務があまりに高度であるが故に、人員を増やして組織を拡大することができない。また、装備が極めて特殊かつ高価であるため予算的な制約も大きく、この方面からも組織の拡大は難しい…。それが創設以来「怪獣やっつけ隊」が抱え続ける最大の悩みだった。
そうした超少数精鋭の組織を最も有効に活躍させようとする場合、避難誘導や被災民救助といった一般の警察や消防・自衛隊にもこなせる任務をやらせることは極めて非効率なのである。
そのため「やっつけ隊」が避難誘導や救助活動をすることは、明文化こそされてはいないが、禁止されていると言われている…。

「どこかにある秘密の海底基地から、ジリジリしながらこっちの状況を見つめてるんだよ。『やっつけ隊』の連中はな。」
その任務の桁違いの重さ故に、感情で動くことが許されない。
「やっつけ隊」の重責を思うと、凍条の背筋が自然とピン伸びた。
「彼らを安心させるためにも、ボクらが頑張らねばならないんですね。」
凍条が、自戒するように言ったときだった。

「……凍条さん!!」

聞き覚えのある声が、彼の名を呼んだ。
580名無しより愛をこめて:2008/02/25(月) 10:34:59 ID:kzQwLFJI0
支援!!
581A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/26(火) 12:34:04 ID:yQ2MTK4Y0
「この方は……以前にも何度か捜査に御協力いただいている近藤博士です。部下の凍条がそこでお会いしまして…。さあ、博士、さっきの話をここでもう一度…」
岸田警部に紹介され、凍条刑事に前に促されると、近藤博士は居並ぶ警察と防衛隊指揮官たちにペコリと頭を下げた。
「……さあ、博士。さっきボクに教えてくれたことを、この人たちにも説明してください。」
凍条刑事に重ねて促されると、近藤博士は意を決したように本題を切り出した!
「あのピンクの煙のようなもの。あれはバリケーンのメスの群体です。」

台風怪獣バリケーン。
怒らせると傘の部分を回転させ、タンカー船すら吹き上げるほどの突風をまき起す。
以前日本本土に上陸したときにも台風をおこされ、付近に甚大な被害をもたらした。
津波怪獣シーゴラスとならぶ、厄介極まりない「天災」怪獣である。

「まずは……35年前の上陸を正確に再現していると言われる『帰ってきたウルトラマン』の『ウルトラ特攻大作戦』を御覧ください。」
近藤博士が、手回しよくどこかから調達していたDVDを前線指揮所のパソコン端末にセットすると、ここのスレ住人にはもうお馴染みの曲とともにあの番組が始まった。

キミ〜にも♪見え〜る♪ウ〜ルトラの星〜♪♪

「当時の『やっつけ隊』…この番組ではMATということになっていますが、麻酔弾でバリケーンを眠らせた上で退治しようとしました。しかし……」
早送りの映像では、麻酔の効果でフラフラと降下したバリケーンが送電線に接触、一気に傘を回転させ始めたところだ。
「……この後のウルトラマンとの対戦シーンでも出てきますが、バリケーンはもともと細胞の活性度を高めて放電する能力をもっています。
そのバリケーンに電気を流してしまったため、逆の作用で細胞が活性化し、麻酔の効果が打ち消されてしまった。それが、このときの作戦失敗の原因でした。」
「つまり…」防衛軍の士官が手を上げた。「……博士が仰られたいのは、今回の事件は、メスのバリケーンによる放電が原因だと言うんですね?」
582A級戦犯/アイドルをさがせ!:2008/02/27(水) 12:52:45 ID:fjXizUzw0
「バリケーンのメスの群れの中にバケツを放り込んでかき混ぜたから反撃されたわけか。」
「放電攻撃だから電気系統も落ちるわけだ。」
「警備員の死の状況とも符合しますね。」
「しかしそこまでわかっているのであれば、対策は……。」
敵の正体判明により、前線指揮所はザワめきだした。
「近藤先生!」レスキュー部隊の隊長が挙手をして尋ねた。「そのバリケーンのメスというのは、一匹の大きさはどれくらいなのですか?」
「大きくてもせいぜい数センチといったところだと思います……」
「なら話は簡単だ。耐電装備で乗り込めば……」
先の防衛軍の士官も大きく頷いた。
「そうです!一匹一匹は小さいのですから我々の部隊が乗り込んで一気に……」
しかし、岸田警部は活気付く活気付く前線指揮所の面々を制すると、近藤博士に話しを続けるよう促した。
「みなさんお静かに!…博士の話には、まだ大事な続きがあります。」
「……自然界には個体間距離の大きな雌雄を、繁殖期のみ接近させるシステムがあります。」
583A級戦犯/アイドルをさがせ!:2008/02/27(水) 12:53:15 ID:fjXizUzw0
「……自然界には個体間距離の大きな雌雄を、繁殖期のみ接近させるシステムがあります。」
近藤博士のはじめた話に、岸田警部と凍条刑事を除く全員がいっせいに怪訝な顔をした。
「…典型的なものはもっぱらメスが放つ誘引フェロモンで、ファーブルの著わした『昆虫記』にも『オオクジャクサンの夜』という事件のことが記されています。」
「…あの、近藤博士」地元警察の幹部がおずおずと口を開いた。「……その話とこんどの騒動と、どういう関係が……」
「………を起すんです。」
「は?今なんと仰いましたか??」
「台風を起すと、言いました。」
ガタン!ガラガラッ!!
南刑事が慌てて前線指揮所の窓を開くと、先の防衛軍の士官が、レスキュー隊の隊長が、青い顔で次々窓から身を乗り出した。
皆が見あげるのは…空。
そこに探すのは…雲。
残ったメンバーに向かい、近藤博士は静かに繰り返した。
「バリケーンは……繁殖期にメスと交尾するため台風を起すのです。辺り一帯のメスを自分の所に吸い寄せるため……」
だが、近藤博士の言葉を遮るように防衛軍の下士官が指揮所に飛び込んできた。
「失礼しますっ!『やっつけ隊』から緊急入電です!房総半島沖、およそ20キロの地点にバリケーンが出現しました!」

584A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/02/29(金) 15:03:03 ID:NKC3R9/H0
………
……
…………
「房総半島の沖合い20キロの海上にバリケーンが出現。現在時速7キロというかなりの低速でゆっくりと西北西に移動中だ。」
「時速7キロで北北西?……ということは!?」
…電子マップに示された約3時間後のバリケーンの到達予測地点はあの場所だった。
「見ての通り、おそらく目標は例の県庁舎ビルだ。現場からの情報によると、県庁舎ビルを襲ったのはバリケーンのメスだということだ。ならば房総半島沖に現れたバリケーンは…」
「オスだ!」
《熱血》という仇名どおり血気盛んそうなその隊員は、このドスケベ怪獣!とも言い足した。
「繁殖期、バリケーンのオスは台風を起して自分のまわりにメスを引き寄せ、生殖椀を使って一斉に交尾をするということだ。」
「…では隊長!」こんどは《風来坊》が手を上げた「あと3時間かそこらで、××県の中心部に最大風速170メートルの突風が吹き荒れるんですね?」
「実際にはもっと早いかもしれない。」冷静そうに口を開いたのは《総監》だ「…《スポコン》!バリケーンの発生させる暴風雨圏の範囲は?」
「……風速こそケタ外れだが、暴風雨圏の範囲はそんなに広くありません。ざっと1キロ弱です。」
「しかしそれなら、県庁舎ビルから19キロの地点で台風を発生させるかもしれんということだ。」
《総監》の読みに、《風来坊》に《スポコン》《熱血》が唸った。
「いずれにしても、ヤツをこれ以上陸地に近づけさせてはならん!」
隊長はヘルメットに手をかけた。
「TONMA!出動っ!」
「ラジャーッ!!」


585名無しより愛をこめて:2008/03/03(月) 07:58:36 ID:v32zBBcY0
……文章が雑なのは毎度のことだが、今回のはちょっと酷すぎ。
申し訳ないので、上のレスをリライトします。
586A級戦犯/あいどるを探せ!:2008/03/03(月) 07:59:18 ID:v32zBBcY0
………
……
…………
ここは某所某海の海底深く……。
屈強な男たちがディスプレイ・デスクを囲み真剣な声で言葉を交わしていた。
「房総半島の沖合い20キロの海上にバリケーンが出現。現在時速7キロというかなりの低速でゆっくりと西北西に移動中だ。」
「《隊長》、時速7キロで北北西?……ということは、まさか!?」
…デスク上に表示された電子マップは、約3時間後のバリケーンの到達予測地点として例のビルの建つ場所を費用時した。
「そうだ《熱血》。見ての通り、おそらく目標は例の県庁舎ビルだ。現場からの情報によると、県庁舎ビルを襲ったのはバリケーンのメスだということだ。ならば房総半島沖に現れたバリケーンは…」
「オスだ!」
《熱血》という仇名で呼ばれたその隊員は、《熱血》という言葉に恥じぬ勢いで「このドスケベ怪獣!」とも言い足した。
「繁殖期、バリケーンのオスは台風を起して自分のまわりにメスを引き寄せ、生殖椀を使って一斉に交尾をするということだ。」
「…では隊長!」こんどは《風来坊》が手を上げた「あと3時間かそこらで、××県の中心部に最大風速170メートルの突風が吹き荒れるんでしょうか?」
「実際にはもっと早いかもしれない。」冷静そうに口を開いたのは《総監》だ「…《スポコン》!バリケーンの発生させる暴風圏の範囲は?」
「……風速こそケタ外れですが、暴風圏の範囲はそんなに広くありません。ざっと半径1キロ弱です。」
「しかしそれなら、現在地点から19キロの地点で台風を発生させるかもしれんということだ。」
《総監》の読みに、《風来坊》に《スポコン》《熱血》が唸った。
「いずれにしても、ヤツをこれ以上陸地に近づけさせてはならん!」
隊長はヘルメットに手をかけた。
「TONMA!出動っ!」
「ラジャーッ!!」
587名無しより愛をこめて:2008/03/05(水) 17:18:47 ID:YFAyS0Je0
いきがかり上、他スレで集中投下中のため、ちょっとのあいだ停止しております。
他スレの駄文は、今週中に投下終了。
その後、ただちにこちらを再開いたします。
まことにもうしわけない。
588A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/07(金) 16:58:53 ID:QLe+vCOW0
「……バリケーン攻撃のため、怪獣やっつけ隊が出撃したそうだ。」
岸田警部が言うと、額の汗を拭うような仕草をして、近藤博士は応えた。
「間違いなくオスでしょう。……十中八九、ここを目指してやって来ます。メスの香りに引き寄せられて…」
「やっつけ隊が必ずどうにかしてくれますよ。ボクたちは県庁舎ビルからの救出作戦に専念しますから。」
ニッコリ笑って凍条は先輩の南とともに前線指揮所を後にした。
だが、岸田警部だけはじっと目を閉じ、何か考え事をしている様子で座り続けたままだった。
「ひとつ聴きたいことがあるんだが……」
部下たちが出て行った気配を感じると、目を閉じたまま岸田警部は静かに口を開いた。
「……近藤さん、間近に行ってその目で見たわけでもないだろうに、あんたよくあのピンクの靄がバリケーンだと見破ったな?」
「……さすがですね、岸田警部。」
博士の顔に追い詰められたような、引き攣った笑みが浮かんだ。
「……甥っ子が、携帯で連絡して来たんです。」
突然、岸田の双眸がカッ!とばかりに見開かれた。
「甥っ子…っていうとヒロシくんか?」
「通信が途絶える直前だったんだと思います。『ガラスの向こう側、ピンクの霧の中に5センチくらいのクラゲみたいなのがいる』と。」
次の瞬間、近藤博士をギリギリ支えていた何かが崩れ落ちた。
警部の前に両手をつくようにして、涙ながらに博士は訴えていた。
「岸田警部!お願いです!ヒロシを助けてやってください!ヒロシはこの県庁舎ビルに、クラスの友達とともに閉じ込められているんです。」

突き飛ばすようにデスクを揺らし、腰掛けていたイスをガタン!と後ろにひっくり返すと、物も言わずに岸田警部は指揮所から飛び出した。
589名無しより愛をこめて:2008/03/10(月) 22:25:55 ID:yvyx62lS0
応援!
590A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/12(水) 12:26:59 ID:EYcfytPy0
「作戦は、庁舎東側の非常階段区画からバリケーンを排除すること。その際、攻撃的な手段をとることは厳禁とする。
我々第一の目的は、逃げ遅れた人たちのため避難路の安全を確保することである。繰り返すが、バリケーンを刺激するような行動は絶対にとってはならない!以上である!!」
岸田が遅れて行くと、自前の耐電装備に身を固めた防衛軍特殊部隊が県庁舎ビルに今まさに突入せんとするところだった。
第一班は重耐電装備に全身を固めた「突撃班」で、非常階段区画にまで侵入した一部のバリケーンを手作業で排除する。
第二班は通常装備の部隊で、突撃班が開闢した血路を最上階へと駆け上る。
第三班は第一班同様の重装備で、ピンクの靄の遥か上をホバリングするヘリから庁舎屋上にロープで垂直降下。第二班に先駆けて逃げ遅れた人々と合流、第二班の動きと呼応して脱出を目指す。
岸田警部ら不可能犯罪捜査部の面々とレスキュー隊は、防衛隊の側面支援にあたるものとされていた。
防衛軍の士官が部下に向かって吠えた!
「脱出に要する時間も計算すると、遅くともあと一時間ほどで諸君らは最上階に達していなければならない!一秒一秒が逃げ遅れた人々の血の一滴だと思い、死力を振り絞れっ!!」
ウォーっという叫びでこれに応えると、防衛隊員たちはそれぞれの担当任務に向っていっさんに駆け出した。
「一秒一秒が血の一滴か…」硬い表情で南は言った。「……いかにも軍人らしい言い方だが、まさにその通りだ。」
「で、僕らは何をしましょうか?」
「決まってるだろ?自分たちじゃなきゃできないような仕事だ。」
白い歯を見せて南は笑うと、本部から運んできた「特殊装備」の収められたジェラルミンケースを叩いた。

岸田警部や南・凍条刑事の向こう側で、第三班を乗せた防衛軍のヘリが飛び上がった。
上空からの庁舎最上階への侵入作戦が始まったのだ。
591A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/12(水) 12:32:11 ID:EYcfytPy0
『庁舎ビルの高さがおよそ90メートル。例のピンクの靄はさらにその上10メートル程度まで覆っています。
ヘリコプターの巻き起こす風がピンクの靄を刺激しないよう、ヘリは靄から50メートル以上高さをとっていますから、ヘリの高度は地上から150メートルぐらいの高さと言うことになります。』

警戒線の外で、テレビ中継のアナウンサーが叫んでいた。
ピンクの靄=バリケーンを刺激しないよう静かにロープが下ろされ、続いて防衛隊の隊員が、カタツムリの這うようにユックリとロープを下り始めた。
「…ラペリングという技術だ。」
上を見上げたままで、傍らの近藤博士に岸田は言った。
彼は、随分昔のことだが、研修で防衛隊レンジャー部隊の訓練に参加した経験があった。
「ヘリが空中静止している辺りには、激しくビル風が吹いているはずだ。そこから垂らしたロープが50メートル以上。取り寄せた設計図面から見る限り、庁舎ビル屋上はたいして広くない。風に煽られれば、ロープの末端は屋上から簡単に外れてしまうだろう。」
どれほどの困難なのか、想像できたのだろう。
隣でゴクリと近藤博士がツバを飲み込む音がした。
「しかも途中でバリケーンのメスの群れの中を通り抜けなければならない。刺激しないよう、細心の注意をもってユックリとね。」
「……三班の連中は、志願者だそうですね。」
「ああそうだ。そして連れて来られた全隊員が志願した。」
警部の想像したとおり、上では突風が吹いているにちがいない。
防衛隊員の掴っているロープが大きくたわみ、目指す屋上部分から一瞬大きくはみ出すのが見えた。
「どえらい勇者どもだよ。あいつらは……」
そう岸田警部が呟くと同時に、最初に降下を開始した隊員の姿が、ピンクの靄の中に見えなくなった。
592A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/12(水) 17:31:27 ID:EYcfytPy0
「手荒なことはするな。慎重にいけ。」
班長の指示とともに、耐電装備に全身身を固めた第一班が、「花いちもんめ」でもするような隊列で踊り場から前進を開始した。
自身の体をもって、バリケーンを排除する壁となすために。

23階と表示のあるエリアから上は、ピンクの靄にすっかり覆われていた。
第一班が、階段区画内に侵入していたバリケーンを、壊れ物でも扱うように一匹ずつ手作業で取り除け、その隙に第二班は、ビニール状の半透明の素材でできた一種の「トンネル」を組み立てる。
「トンネル」とは、本来対細菌兵器用に作られた検疫隔離用の装備だったのだが、材質的に不導体でてきていたので、機転の利く防衛隊員が転用を思いついたのだ。

隊員たちの体の隙間からこぼれ出そうになるバリケーンに、そっと体を寄せて通せんぼをする。
耐電装備しているので、一匹一匹の電撃なら十二分に耐えられるはずだ。
だが、何十匹もの固体に、一斉に電撃されたら命の保証の限りではない。
落雷ほどの電圧になれば、不導体であるはずの空気を通り、自動車のぶ厚いゴムタイヤを貫いて大地に抜けるのである。
第一班は「通せんぼ」の壁を作りながら、すでに23、24、25階を突破し、隊員たちの目の前は、バリケーンの水族館か養殖場といった観を呈していた。
「……よし!押し出すぞ!!」
班長の命令とともに、第一班は、26階をも一気に突破した。
……階段区画にバリケーンが侵入した理由は、27階で明らかになった。
業務区画と非常階段区画の間の金属扉が開いていたのだ。
靄を透かし見ると、非常扉に人が倒れて挟まっているのが見える。
バリケーンの靄から逃れようと、非常階段への扉を開けたところで、運悪く電撃されたのだ。
その死体が挟まって、扉を開いたままにしているのである。
「…まずいぞ。」
歯軋りしながら班長が言った。
これまでの陣形は、バリケーンを前方にのみ捉えることが前提のものだった。
だが、問題の扉のところでは、前方と扉の向こうと、両方からバリケーンを迎える形になってしまう。
「二方面戦闘は避けよ」は、戦争の鉄則である。
(……どうするか!?)
593A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/14(金) 17:06:44 ID:8U6b/83m0
防衛隊を中心とするグループが県庁舎ビルを攻略せんとしていたころ……。

千葉県房総半島の沖合いでは、「怪獣やっつけ隊」が巨大なオスのバリケーンを相手に阻止戦闘を展開していた。
《風来坊》と《スポコン》が相次いで叫んだ。
「隊長!麻酔弾が全く効きません!」「こっちも同じです。」
前回の日本上陸時よりもより強力な麻酔弾を打ち込んだにも関わらず、バリケーンは悠然と宙を漂い続けていた。
『メスの臭いに感づいてるんじゃないでしょうか?』
《隊長》の背後から声をかけたのは、ついさっきニューヨーク支部から戻ってきたばかりの《レーサー》だ。
「……メスの臭いでテンションが上がって麻酔が効かんというわけか?」
「ええ」
無線で聞いていた《熱血》が『このドスケベ怪獣め!』と吠えた。
続いて受信したのは、《熱血》とは打って変わって冷静な《総監》の声だった。
『通常攻撃に切り替えましょう。回転する傘の中心を真下に捕らえて攻撃すれば、突風の影響も最小限に抑えられます。』
冷静な話し言葉と好青年風の外観が《総監》の売りだが、実はこの青年、巨大化した宇宙人と素手で渡り合ったすえ、オイルまみれにしてから焼き殺したという、ガッツあるとんでもない戦歴の持ち主だった。
『コイツを陸に上がらせるワケにはいきません。』『ここでやっつけましょう隊長!』
《熱血》と《スポコン》が《総監》に続くと、レーダーサイトを睨みながら《レーサー》も言った。
「ボクも賛成です。今ならヤツはまだ回転していませんから、ここからミサイルを叩き込んでやれますよ。………やりましょう!隊長!!」
だが……《隊長》は部下の意見に答える代わりに、傍らの《レーサー》に尋ねた。
「……まて。それよりヤツはいまどれくらいの速さで移動している?」
594A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/14(金) 17:08:37 ID:8U6b/83m0
「……ヤツはいまどれくらいの速さで移動している?」
「現在の速度ですか?……それは……」
しばしキーボードを叩いたあと、《レーサー》はディスプレイに表示された数字を読みあげた。
「…時速15キロです。」
『15キロだと!?』
とたんに《風来坊》の声が飛び込んできた。
『さっきまでは7キロだったはずだ。』
一方《レーサー》は指を休めることなくキーボードを叩き、コンピューターから更なる答えを引き出していた。
「…やっぱりそうだ。計算によると、ヤツは更に速度を増しつつあるそうです。飛行軌道からもふらつきが無くなりました。このままだとあと5分と少しで千葉の一部がヤツの暴風圏に入ります。」
「ミサイルを発射したとして、バリケーンまでの到着時間は?」
「待ってください………出ました、4分30秒。」
ついに隊長は決断を下した!
「いまからミサイルを発射する。ヤツにミサイルを回避されないよう陽動を仕掛けよ!ミサイル着弾後は、間髪入れず、全機ヤツを真上から総攻撃!!」
「交戦可能時間は30秒しかない。絶対しくじるなよ。」
『それだけあれば十分です。』『太平洋で寒中水泳させてやるぜ!』
《レーサー》の言葉に《総監》と《熱血》が相次いで応じるのと同時に、隊長はミサイルの発射ボタンを押した!

595名無しより愛をこめて:2008/03/18(火) 10:23:06 ID:MwWqopWL0
応援!!
596A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/18(火) 17:28:19 ID:iKItoq8t0
…孤島の断崖が左右に開き、その中か空と雲の色に迷彩された「何か」が猛スピードで飛び出したかと思うと、次の瞬間にはもう空の彼方の点となってしまった…。

『機動でヤツを撹乱し陽動をかける。間違っても弾は撃つな!』
副隊長格の《風来坊》の指示とともに、「やっつけ隊」の各機は猛スピードでバリケーンの周囲で旋回を開始した。
ついさっき「やっつけ隊」の基地から発射されたミサイルに気づかせぬための作戦行動だった。

通常のミサイルだと発射直後は低速で、トップスピードに加速するまで時間がかかる。そのため至近距離で発射された加速が不十分なミサイルは、動きの素早い怪獣には回避されてしまう場合があった。
そこで開発・試作されたのが、カタパルトの技術を応用し発射と同時に最大速度に達する新型ミサイルである。
このミサイルの高速性を利用して、バリケーンへの到達時間を稼ごうというのが隊長の狙いだった。
ただ、このミサイルは高速であるがゆえに飛行軌道が単調であり、遠距離だと却って軌道を読まれ易いという弱点があった。
この弱点をカバーするための一斉陽動飛行なのだ。
597A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/18(火) 17:28:46 ID:iKItoq8t0
『…来ました!』
冷静にミサイルとの距離を測っていた《総監》が無線に叫ぶと同時に、《熱血》の機がバリケーンに向かって切り込んだ!
『オレに任せろ!』
ミサイルの飛来方向にほぼ60度をなす角度から、怪物の巨体を掠めてミサイルの飛来方向とは反対へと飛びぬける!バリケーンの亀裂状の目が《熱血》機を睨み、巨大な触腕が銀と赤の機体に追いすがった!!
『むちゃだ!』《スポコン》が叫び、青ざめた《総監》の指が機関砲の発射ボタンに掛かった!
青灰色の触腕が迫る!!
だが次の瞬間…!
雲間を劈いて、稲妻のような何かがバリケーンの傘に命中した!!
巨大な金槌で引っ叩かれたように一瞬ガクンと高度を下げるバリケーン。
しかしその両眼が怒りの赤に変わって傘が回転しはじめると、バリケーンを取り巻く黒煙はたちまち黒い竜巻へと姿を変えた!
巨獣の怒りが、嵐となって海原を覆い尽くすのか!?

『全機攻撃開始!!』

《風来坊》の命令と同時に、怒りのバリケーンを、光の雨が土砂降りとなって打ちつけた!
ミサイル着弾の直後には、「やっつけ隊」の五機は既にバリケーンの頭上を押さえていたのだ!
回転する傘の中心を光弾のシャワーが撃ち抜くと、バリケーンは炎を上げ、黒煙を吹きながら、海中へと墜落していった。
598A級戦犯/アイドルを探せ!:2008/03/18(火) 17:29:53 ID:iKItoq8t0
作戦室で「…やりましたね隊長!」と《レーサー》が歓声を上げた「…ミサイル着弾から僅かに4秒。完勝です!」
「正確には3.7秒だ。」と、こたえる隊長の顔も満足げだ。
無理も無い。
前回出現時には市街地への侵入を許し、甚大な被害を発生させた難敵を、被害ゼロで処理できたのだ。
隊長と《レーサー》だけでなく、オペレーターや補助隊員たちにも笑顔が戻った。
オペレーターの女子隊員に愛想を振りまきながら、おどけた口調で《レーサー》は言った。
「それもこれも、ボクらの日頃の努力の……」
賜物…と《レーサー》が言葉を続けようとしたときだった。
女子隊員の一人、ユリコの顔色がサッと変わったかと思うと、ヘッドホンを外して立ち上がるなり、緩んだ空気を締め上げるように大きな声で叫んだ。

「大変です、隊長!横須賀港に別のバリケーンが出現しました!!」
599名無しより愛をこめて:2008/03/24(月) 10:06:05 ID:sGcFJS7J0
応援
600A級戦犯/アイドルを探せ!
新たなバリケーン出現の報が、「やっつけ隊」本部を激震となって襲っていたころ……。

県庁舎ビル突入部隊第一班の班長はついに決断を下していた。
「…時間が無い!隊を二つに分ける!『壁』が薄くなったぶん、抜かれる可能性が捨てきれん。第二班はいったん下がって距離をとってくれ!」
班長は第一班を手早く二つのグループに分けると、それぞれに前進と階段室ドアの閉鎖作業を指示した。
前の小型バリケーンの密度は危険なレベルにまで高まっており、その場に支えるだけでもかなりの体力を要するようになっていた。
しかも個体密度の上昇がストレスを高めているのか、個体レベルでの散発的な放電攻撃も始まっていた。
ニ三匹での放電ならなんとか耐えられるが、もし何十匹もが一斉に放電してきたら……。
第一班どころか後方の第二班まで全滅を免れないだろう。
さらにマズイことに、作業はすでに15分以上の遅れをだしていた。
本当なら、もうとっくに最上階である30階に到達し、へりから降下した第三班と合流できていなければならない時間であるにもかかわらず、まだ27階にしか到達できていないのだ。
バリケーンの漂うピンクの靄は、既に30階の通路に達しているかもしれない。
そうなれば、なんとかして靄を掻き分け血路を開き、ここまで繋いできた絶縁トンネルを大会議場の扉に接続するしかない。

「よぉーーーーーし!押し出せぇーーーーーーっ!!
班長の怒号とともに、第一班は前進を再開した!