本来レムリアでズバーンの持ち主=マスターだった男は比類無き剣豪だった。ズバーンは自らのマスターと戦果を誇りに、毎日を楽しく過ごしていた。
しかしある日ズバーンはマスターが謀反を企てている事を知ってしまう。しかもその際使う武器はズバーンではなく、感情を持たないズバーンと同型の剣だということも。マスターはズバーンに計画が発覚し、阻止される事を恐れていたのだ。
愕然とするズバーン。
衝撃を受けたのはマスターの謀反だけではない。自分は信頼されていないのか?不要なのか?他の剣と代わらない、ただの道具なのか?
苦悩するズバーンは謀反の計画を知りながらも何も出来ずにいた・・・
━謀反決行前夜━
いつもと何ら変わらなく見える街並み・・・
その一角ではズバーンとマスターが静かに対峙していた。
マスターは全て分かっていたかのような、自嘲するような、そんな笑みを浮かべつつ、ズバーンに退くよう命令を下す。
しかし、ズバーンは命令を拒否した。ズバーン自身、造られてから初めての事であった。
剣を取るマスター、応じるかのように構えるズバーン。
マスターが剣を振るう。自分に対して。
自分が倒れればその剣は他の罪なき者達にも向けられるのであろう。
しかしズバーンにはマスターに拳を放つ事は出来なかった。それだけはどうしても出来なかったのだ・・・
満身創痍のズバーン・・・今まさにマスターはとどめの一撃を振り下ろさんとしていた。
しかしズバーンにはどうでもよかったのだ。マスターに倒されるなら仕方ない、ただ、みんなも守りたいな・・・自分が機能停止する瞬間に自爆してマスターと共に・・・と考えていたのだった。
覚悟を決めたズバーン。しかし、彼に剣が降り下ろされることは無かった。
ズバーンが顔を上げるとそこには・・・自らに剣を突き立てたマスターの姿があった。
マスターはいつもの優しい笑みを浮かべ、ズバーンに何か言おうとしていた。
しかし、その口から言葉が紡ぎ出される事は無かった・・・
ズバーンには何も・・・出来なかった・・・
立ち尽くすズバーン。これから自分はどうすればよいのだ?
まさにその時
マスターの腹に深々と突き刺さった剣が動き出し、変形した!
*「あ〜あ、コイツ自殺してやんの。せっかく王になれるチャンスだったってのに」
驚きのあまり何も出来ないズバーン。
*「まだ分かんないの?ぼ く が あ や つ っ て た の。コイツ、やたらと意志強いから苦労したよ」
*「まあ死んじゃったら仕方ないけどね。とっとと次のやつ探さないと。本当に使えなかったよ、コイツ」
目の前の剣人がマスターのなきがらを足蹴にする。それを見たズバーンの中で何かが・・・弾けた。
*「お?怒ったの?何にせよその損傷で僕にかなうわけぐ・・」
もう、その場にはズバーン以外に立っている者はいなかった。
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名無しより愛をこめて:2006/10/15(日) 22:27:01 ID:ewK9wbjNO
━後日━
謀反を仕向けた黒幕は捕まり、レムリアは平静を取り戻した。街はいつもと変わらない日常を送っている。
そんな中、遠く離れた山中ではズバーンと何人かの技術者の姿があった。
技術者「本当に眠りにつくというのか?しかも、記憶の一部と言葉を封印してまで」
ズバーンは何も答えず、その代わりに剣に変形し自ら岩に突き立った。
技術者「分かった、もう何も言わない。だが・・・自らが守るに足ると感じた人間が現れた時、その時は自分の意志で行動するがいい。その時までこの国があるかは知らんがな」
そしてズバーンは眠りにつく。平和な世、自らを必要としない世界を夢に見ながら・・・