279 :
The oneway ticket:
松田薫の章 (T)
晶子さんが手術室の扉の向こうに消えてしまってから3時間余り経つ。
あの身の毛もよだつ残酷でおぞましい改造手術は、間違いなく既に始まって
いるのだろう。
晶子さんの肉体が、類稀なる改造素体であることが判明したため、
ここの研究所の技術者達は、ごぞって「世紀の大改造手術」の見学と称し、
晶子さんの手術室へと集合してしまったようだ。
私も夏美も、降って湧いたような半日休暇…ということで、
普段なら大喜びで盛り上がり、コスチューム室に忍び込んでコスプレ衣服を
無断で着衣し、研究所内に設置されている中古機ばかりのゲーセンのプリクラ
やったりして、楽しく遊んでいる…ところだったのだが、今回はしばらく、二人とも
無言のまま、ひざを抱えて座り込んだままだった。
280 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:21:23 ID:m+o1dALp0
松田薫の章 (U)
夏美はおそらく、晶子さんから最後に言われた一言が気になっているのだろう。
それは「ことを構えた時、どちらの側に付くか?」ということ。
もちろん私にとっても、その決断の意味は大きすぎるほど大きい。
でも私のムネに一番引っかかっていることは、そのことではなかった。
なぜ、どのようにして、晶子さんは、高圧電流による耐久実験の時に、既に
この研究所が、肉体をサイボーグ化を研究している組織であることを知っていたのだろう?
そう、そしてその謎に関して、自分はその意識とは別に、既に答えに気がついているのだ。
ただあまりの恐ろしさと、待ち受ける途方もない困難さに怯えて、認める勇気がないだけなのだ。
しかし・・・・・・
薄暗い室内で、おでこを膝に当てて、眠っているように考え込んでいる夏美。
今こそ「借り」を返すべき時なのかも知れない。
「ねぇ、夏美。」
意を決して沈黙を破り、夏美に自分の決意を告げた。
「アタシね、晶子さんの改造が終わり次第、戦闘用改造人間に志願しようと思うの。」
281 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:23:37 ID:m+o1dALp0
吉岡夏美の章 (T)
「アタシね、明子さんの手術が終わり次第、戦闘用改造人間に志願しようと思うの。」
右隣で薫が、沈黙破りのその一言を言った時、ウトウトしかけていた私は、
ビックリして,おでこを膝から滑らせてしまった。
”ハアッ? アンタ、なんて言った?戦闘用改造人間に志願?
薫といい、晶子といい、どうなっちゃっているの???”
「えぇっ? い、いきなりどうしちゃったの?
だって、薫の話によると、股間のアソコから大きなドリルで串刺しにされたり、
ノコギリとかで、胴体をズタズタに切り刻まれるんでしょ。
薫、もしかして2年間カラダをいじくられ続けて、遂に"ドマゾ"になっちゃったンじゃない?」
私の軽口に、いつもなら大笑いで応えるはずの薫が、今回に限っては無表情のままだ。
282 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:28:08 ID:Kh2bQurF0
吉岡夏美の章 (U)
薫の真意はわからないけれど、私が心底ショックだったのは、もし晶子に続いて薫まで
戦闘用サイボーグになってしまったら、残された私はどうしたらいいのだ?
まさか、薫の後に、私にもこの手術を受けて戦闘用サイボーグになれというのか?
そういう私のココロを読まれたかのようなタイミングで、薫は口を開いた。
「一つ、約束する。 アタシがその改造手術に耐えて、最強のサイボーグになれたら
アタシ、絶対に夏美のことを守る。 どんなことがあっても、アタシがズタズタにされて
脳が完全停止するまで、絶対に夏美を守る。 それだけは信じてね。」
おそらく薫は、晶子に謀反?を起こさせ、自分は晶子側について
組織潰しに一役買うつもりなのだろう。 私をこの世界に引きづり込んだことを、
自らおぞましい手術を受けることで償うつもりに違いない。
しかし、このときも私の脳裏に浮かんだのは、やはり自分本位の不安だった。
改造手術も、耐久実験も、確かに言語に絶する苦痛だけれど、これから永遠に
薫と離れて、別世界で、友人も無く生きていく…とすれば、その寂しさもまた
改造による肉体的苦痛に匹敵するようなものなのではないか?
283 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:30:29 ID:m+o1dALp0
吉岡夏美の章 (V)
「薫のやろうとしていることは、ちょとだけ解ったよ。
でも、それに同意するかどうかは別として、もうひとつだけ約束して。
私を一人にしないで。 私よりも、先に死なないで。」
しばらくして、薫の表情が緩んだ。
いつもの薫の小悪魔的な笑顔に比して、何故か寂しそうな笑みだった。
「その約束は出来ないよ。 だって、最初の約束と矛盾しちゃうじゃん。」
アホだと思っていた薫に一本取られ、私は返す言葉が無かった。
その後、私たちがどのような話をしたのかはほとんど覚えていない。
しかしこの会話が、薫と真剣に膝を付け合せた 最後の時間となった。
284 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:34:09 ID:m+o1dALp0
扉が開くと、ビキニ姿 の美少女が入室してきた。
改造実験用のハイパーサイボーグから、最強の戦闘用サイボーグへと再改造されることを
志願した松田薫である。
室内にいた2人の少女、2人とも二十歳くらいだろうか?、が薫の姿を見止め近づいてきた。
二人は薫と同じような細めの体型ではあるが、着衣しているエンジ色のビキニは、
彼女らが、これから薫の身に施されようとしている、恐怖の改造手術に耐えた
戦闘用の改造少女等であることを如実に示している。
「松田 薫さんね。 私は大塚 怜。 こちらの彼女は、尾又 聖衣(セイ)。
これからの貴女の改造手術に、いろいろお手伝いさせていただくわ。
さっそくだけど、ハダカになってくださる?
手術の前に、実験用サイボーグ体内メカニック臓器の排除作業始めます。」
285 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:37:20 ID:Kh2bQurF0
こわばった表情のまま、ゆっくりと下着を外してハダカになった薫の裸体の、
左からは"怜"が、左肩と左ひざ、 右からは"聖衣"が、右肩と右ひざ、を抱え込んだ。
両股を広げて宙に浮いた格好になった薫は、恥ずかしさのあまり思わず固くなった。
ハイパーサイボーグの薫であるから、もし抱きかかえていたのが生身の技術者達などで
あれば、瞬間にして彼らの首はヘシ折れ、膝を抱えている手首は千切れただろう。
しかし、最強に強化改造されている怜と聖衣は、手術台の手枷足枷以上に
ビクともしなかった。
"ナルホド 最強サイボーグさんの助手達が必要なワケだわぁ・・・"
と薫が考えた直後、金属の機械音とともに、高速で回転する大型のドリルが薫の股間を貫いた。
恐怖と激痛で絶叫する薫。
しかし、その絶叫も、薫の体内メカを破壊するドリルの大音響に消されてしまった。
そして 2年間も改造され続けた薫の改造ボディーの取り壊しにかかる時間は、
通常の再改造素体に比べて数倍かかる為、薫の味わう苦痛もそれだけ持続することになった。
286 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:40:15 ID:Kh2bQurF0
やがて薫の鳴き声混じりの絶叫が聞き取れるようになってきた。
薫のサイボーグ体の、中心部だけは、どうやら破壊できたらしいことを判断した
怜と聖衣は、今度は薫の体を、ドリルに擦るように、上下に大きく振り出した。
再び絶叫する薫。 その声すらかき消すような金属破壊音。
薫の表情は、苦痛を通り過ぎて、白目をむき、もはや廃人の様相である。
そして再び金属音が静まってきた。
薫の体内のメカは、これでほとんど粉々になったはずである。
怜と聖衣は、薫の体を揺さぶるのを止め、そのまま薫の体を
ドリルに思い切り深く突き刺し、薫の背後に備え付けてあるスィッチをONにした。
大型ドリルが、薫の体内で超高圧電流を発し、薫の体は仰け反るとともに
オレンジとブルーにスパークした。
そして口やヘソなど、体中の穴という穴から白い煙が出るようになったのを確認した怜と聖衣は、
満足そうにようやくスィッチをOFFにし、薫の体をドリルからゆっくり引き抜いた。
ドリルという「蓋」を外された薫の「人工膣」からは、砂漠の砂のように細かくなった金属の粉が
しばらくの間、サラサラとこぼれ落ちていた。
287 :
The oneway ticket:2006/12/07(木) 16:46:49 ID:Kh2bQurF0
グッタリしている薫に、怜が声をかけた。
「大丈夫ぅ? 大分苦しかったみたいね。
でも、ようやくこの段階で、貴女は改造素体のスタートラインに立ったに過ぎないのよ。
そして、これからが改造手術の本番よ。
これから貴女は、電動ノコギリで両脚両腕を付け根から切断され、五体それぞれバラバラに
改造されるの。 コケシみたいになった貴女の本体は、手術台の上で更に切り刻まれながら
機械化されていくのよ…」
これだけの恐怖と激痛を味わいながら、薫の意識は完全にハッキリしていた。
予定では、初期の段階で失神し、意識のないまま手術を終えるという算段だったのだが、
今後の更なる残酷な手術にも、覚醒した状態のまま耐えねばならないのだろうか?
これから自分に施されようとしている改造は、これまで2年間耐え続けてきた改造とは
比べ物にならないほどの苦痛を伴うのだろう。
改造手術と言うのは、サイボーグとしての完成体に近づけば近づくほど、
人間の生理からは 遠くなって行く、逆走のあり得ない片道切符のようなものなのだ。
金属製の手術台に仰向けに寝かされた足元から、
電動ノコギリの恐ろしい金属音が,近づいてきたのに気がついた薫だったが、
もはや体を硬くするだけの体力も気力も残されてはいなかった。
第3章 完