カブトとワームの激しい戦い。しかしそれを肉眼で捉えることはできない。ライダーマンと氷川には、カブトとワームが「消えた」としか感じられなかった。
しかし、何かが自分達の周囲で動いている。それは感じられた。その時、小沢が冷静に、しかし大きな声で言った。
「気をつけて!さっき倒した方が立ち上がった」
二人にダメージを負わされたワームが、いつの間にか復活していた。そして成虫へと変態していく。
(成虫になられたら…勝てない!)
同時に同じことを考えながら、ライダーマンとG3は、突差に走り出した。G3がワームに組み付く。ライダーマンが右腕のマシンガンアームを構える。
嘲笑うような声をあげながら、ワームは超高速の世界に入った。
(…!?)
動かない。ワームは身動き一つできなかった。両腕ごと、G3に抱き締められる格好で拘束されている。如何に高速で動けようとも…
いや、高速の時間流に身を沈めているが故に、静止しているも同然のG3は、まるで微動だにしない石像の様にワームを締め付けていた。
あるいは、急造のWライダーに傷を負わされていなければ、組みつかれもしなかったかもしれない。振りほどくこともできたかもしれない。
(!!!)
次の瞬間、ワームは自分の頭部に何かがじわじわと食い込んでくるのに気が付いた。マシンガンアームの銃口が、僅かに頭部に残った傷の穴に突き刺さっていた。銃口から発射される弾丸。
低速の、亀やナメクジの歩みに等しい速さで、弾丸が食い込んでくる。それは地獄の苦しみだったが、身もだえしても、G3の拘束を解くことはできなかった。何発もの弾丸が、永遠とも思える苦痛をワームに与えた。
G3とライダーマンにしてみれば、組み付いたワームが、恐ろしい速さで痙攣・振動し、直ぐに動きが止まった。それだけだった。
永遠とも思える地獄を、ワームが味わったことなど知る由も無かった。
Gトレーラーで尾室が叫んだ。
「システムダウン!限界以上のパワーを出してしまったようです!」氷川が疲れきった声で言った。
「ああ…限界以上だったよ。」
G3は、ワームの死体を離した。そして、そのまま氷川は地面に仰向けに倒れてしまった。
「おばあちゃんが言っていた。限界の壁に見える物は、壁では無い。自分の弱い心だと」クロックオフしたカブトが二人に近付いて来た。
「戦士らしい戦いだと認めよう。自分の限界を越えられる人間のようだな」
と言いながら、右手を氷川に差し出した。
氷川はカブトの手を掴み、立ち上がった。
「君のアーマーはすごいな。もう、あいつを倒してしまったのか。何ていう名前なんだい?」
右手を離し、カブトはそのまま天を指さした。
「俺は、天の道を総て司る男。この姿の時はカブトと呼んでくれ。ライダー、カブトだ。」
ライダーマンが頷いた。
「仮面ライダーカブト、か」
カブトは二人に背を向けて歩き出した。そして言った。
「また、一緒に戦う日が来るかもな。あばよ」
氷川はその背中を見ながら言った。
「仮面ライダーカブトか。誰があんな強いアーマーを作ったんだろう?」
ライダーマンの右腕が、いつの間にか、五本の指を持つ普通の手に変わっていた。その手を氷川と握り合う。ライダーマンは口元に僅かに笑みを浮かべながら言った。
「私もこれでサヨナラだ。ショッカーを追わなければならない。君も仮面ライダーだな。私から君に仮面ライダーの名を捧げよう」
「ありがとうございます。ならば、仮面ライダーG3ですね。仮面ライダー…か」
ライダーマンとG3が去った後。ワームに吹き飛ばされていたガンガンジーが気絶から目覚めた。
「あら?誰もおらん。どないなっとんや?そうかそうか。ワテの強さに恐れをなして、尻尾まいて逃げよったな?あーはっはっはっ!」
一週間ほど後。レストラン・アギト。
850円のランチを食べる氷川の姿があった。シェフ姿の津上翔一(沢木哲也)が腕を組みながら呆れた声を出した。
「仮面ライダー?なんなんですか?それ」
「いいから。あなたも今日からそう名乗って下さい。」
「だから、なんで?ですか?」
「勇敢で、高潔な戦士は仮面ライダーなんです。今度変身することがあったら…仮面ライダーアギトって名乗って下さい。」
「はあ…良く分かんないけど、分かりました。そうします」
「ちょっと、忙しいんだから、早く戻って…!」
厨房から声がした。とりあえず、今日は平和だった。
第一部・終了
おばあちゃんは言っていた
頑張った職人さんにはGJを贈れと
第一部参加された皆様GJ
カブト登場にも関わらずG3とライダーマンで最後迄貫いたのが個人的に嬉しかったっす
37 :
幕間?:2006/03/24(金) 00:14:01 ID:J8mAtpsJ0
ゴルゴム神殿。
シャドームーン「これで全部だな」
バラオム「お手を煩わせて申し訳ありません、シャドームーン様」
揮ったばかりのサタンサーベルを携えたシャドームーンの周りに、多くの
改造怪人が死体になって転がっていた。否、厳密には改造怪人ではない。
半分ワームの姿になった中途半端の状態で死んでいる。
念のためにサタンサーベルから電撃を放ち、死体を全て完全に灰にする。
ビシュム「まあ、まだ怪人は十分残っておりますが」
ダロム「ゴルゴムの人類抹殺計画の妨げになりかねません。今後も厳重に
チェックを続け・・・」
「そんなことは問題ではない」
「?」
三神官の前で、シャドームーンはおぞましい殺気を放っている。
「私にこのような手間を掛けさせたことが許せん。今後も醜い蟲どもは
全て念入りに始末しろ」
「は、ははっ!」
う〜ん、面白いじゃないか〜
続きに期待してます
第二部 序章
−菊池西洋洗濯店 ある日の昼下がり−
今日も俺はバイトだ。ったく・・・かったりぃ。
もう3月だってのに外は寒いし・・・最悪だ。
熱いのも嫌だが、寒過ぎるのもウザい。
「巧!!今日は店番しておいてよね。啓太郎と遠くのお客さんの配達があるから。」
と、1人だけで留守番だ・・・まぁ、あの草加がいないだけマシだけどな。
−ガラガラ−
店の戸を開ける音・・・客か。
面倒くせぇーな・・・ったく。
「ここの店は誰もいないのか・・・まったく。
実に不愉快な店だな。」
店の奥から出てきた俺に向かって口を聞いてきたそいつ。
・・・なんか嫌な予感がするぜ。
そいつは、なんだ?
作務衣に身を包み、なんだか偉そうに突っ立ってやがる。
「・・・いらっしゃい。」
俺はまぁ、それなりに挨拶をした。まぁ、俺的はそれなりに、だ。
だが、そいつは洗濯物を机にドンと置くと笑いながらこう言いやがった。
「お前、店員失格だな。せっかく俺が洗濯物を持ってきてやったというのに
実にやる気の無い返事だ。それが客を待たせた店員の言葉か?」
・・・確かに。だが、こいつ。
なんだか言い方に棘がねぇか?・・・気に食わねぇ。
「・・・すいません。で?名前は。」
俺は適当に謝り、適当に受け流す。
こういうタイプはあまり係わり合いになりたくないからな。
しかし、そいつは名前を聞いただけなのに。
人差し指を上に掲げてなんだか言い始めやがった・・・あ〜なんだよこいつは。
「天の道を往き・・・総てを司る男」
はぁ?なんだ・・・そりゃ。
−同時刻 ビストロ・サル−
「啓太郎、ここみたいだね。早く行くよ」
啓太郎と私は、特別な依頼でここまで来た。
何でも沢山のコック衣を台無しにしたらしい・・・って話。
「へぇ〜なんかお洒落なお店だね。」
相変わらず啓太郎は呑気に笑ってる。
まだ、店の前の看板は「CLOSED」なってるけど・・・ノックしてみよう。
「・・・あの、すいません。まだ開店前なんですけど。」
「いえ、あの・・・菊池西洋洗濯店のものです。」
啓太郎の言葉に店から出てきたコック着の青年は驚く。
「あ〜!!そうだ、そうだ!!クリーニング屋さんね!!
ちょっと、待っててください!!あ、どうぞ店の中に入って。」
店の中に招かれた私達を待っていたのは、店主らしき女性と
こちらを不思議な目で見つめる少女・・・
「いやぁ〜ホントすいませんね。急ぎで届けてもらって・・・」
壮年の店主らしき女性が笑う。
同時に横にいる青年が申し訳無さそうに頭を下げている。
「すいません、いやマジで。俺が厨房で派手に衣装に調味料こぼしちゃった
ばっかりに・・・」
その様子を見て、すかさず隣にいた大人しそうな少女が言う。
「いつものことだ、加賀美は加賀美だからな。ボクは何があっても驚かない。」
そのフォローのようで批判めいた言葉に加賀美という名前の青年はさらに項垂れている。
嫌な空気を察した真理が言う。
「そ、そんなことないですよ。加賀美さん?も明るくてすごく素敵な感じで・・・」
真理の言葉に項垂れていた加賀美の目が輝く。
「そうですかね!!いや、ホント嬉しいな〜いやぁ。」
「あまり図に乗るな。加賀美はそうやってまたすぐミスをするんだ。」
少女の言葉にまた項垂れる加賀美。
今度は何故か穏やかな空気が流れ、真理や啓太郎、店主までもが
笑っていた・・・そんな平和なある日の午後の話。
−第二部 序章 完−
リレー小説以外の短編SSとかの投下もOKですか?
いんでないかい?
ただ、中断すると勝手に続きを書いてしまうかも…。
自分が続きを書くという断りを入れればいいのでは?
コテハン必須になるでしょうが。
「剣・響鬼」両作品最終回後の世界で、明日夢が2代目ブレイドになるという
展開は駄目?
>>46 他作を貶めさえしなければなんでもOKなんでは
俺もストロンガーとカブトの共闘でも書こうかな
どうやら、タイムベント
神崎「どうやら、タイムベントを使い過ぎたようだ。何かがずれている」
全く違ったパラレルワールドと、神崎らミラーワールドの仮面ライダーが存在する世界が、歪みながら繋がった。
時は江戸、自らの体を鍛え、人を喰らう妖怪『魔化魍』と戦う『鬼』。
彼らは長い間魔化魍同様の存在として恐れられてきたが、戦国の中生まれた鬼達を支える『猛士』
なる組織の手助けも合って、鬼達が恐れられる事はほとんど無くなった。
中には鬼の力に目をつけた諸国大名に選ばれ、家臣としておいたり、直属の護衛として扱ったり
と、それなりに優遇されたものもいた。しかし、選ばれぬものは農民として苦しい生活を送る
ものも少なくは無く、鬼達の間でも貧富の差は激しくなっていった・・・。
そんな中、全国各地の鬼達に、一通の文が届けられた。
「『大蛇』なる脅威の噂あり、即、江戸へ来られたし。」
この物語は、我々が知る『響鬼』の物語の世界とは大きくかけ離れた歴史を持つ『響鬼』の世界に
伝わる「大蛇の乱」なる合戦の英雄「暁鬼」なる鬼、そして、その仲間「切裂鬼(きりさき)」、
「欺鬼(あざむき)」の三人の、旅の記録である・・・。
「淡々といってんじゃねえよ、神崎!」
暗い廃屋に呼び出された仮面ライダー龍騎・城戸真司は怒った。
「只でさえ他のライダーの戦いを止めるだけで苦労してるってのに、この上
まだ面倒が増えるってか?」
「だがお前は、多くの悲しむ者が出るのを放ってはおけまい」
「・・・・・・」
神崎は真司の性分を見越していた。舌打ちする真司。
「一人でやれとは言わん。事態の収拾に協力するなら、出来る限りの援護は
してやる。それと」
「俺も協力する」
仮面ライダーライア・手塚深雪が物陰から現れた。
「・・・手塚もか。しょうがねえな・・・」
「別次元の存在と接触するには、ミラーワールドを経由するのが便利だろう」
「判ったよ」
手近の鏡の前に並ぶ真司と手塚。
「変身!」「変身!」
ミラーライダーに転じた二人は、鏡に飛び込んだ。
>>51 風見志郎は、久しぶりに日本の土を踏んでいた。
(ショッカーが再び暗躍している)
という立花藤兵衛からの連絡を受けてだった。立花が現在、経営しているというバイクショップを目指して、バイクを走らせていた。
地方都市の、広いがさして交通量の多くない道路。その時、女性の悲鳴が聞こえた。
「いやーっ!何これっ!」
「む…!?」
風見は、バイクを止めた。駐車している乗用車から、白い糸の様な物の束が伸びている。
糸は女性の首に巻き付き、車に引きずりこもうとしているように見えた。
「デストロン?ショッカーか?」
風見は女性に駆け寄り、改造人間のパワーで糸を引き千切った。
「逃げなさい!」
女性は逃げていく。乗用車から、再び糸が風見に向かって伸びてくる。
「む…?これは?」
糸は車の中からではなく、鏡のように磨き上げられた車のボディの表面から伸びていた。車に映し出された風景の彼方にある別世界から伸びている様に見えた。
糸は首、足、体に巻き付き、その鏡の奥の別世界に風見を恐ろしい力で引きずりこむ。
「変身!V3!」
異空間に引きずり込まれながら、風見は仮面ライダーV3に変身した。
54 :
保守:2006/03/30(木) 02:15:28 ID:UE69tKaW0
夜中にこっそりあげてみる
>>53より
今まで風見=V3がいた場所と左右が逆になった風景が広がっていた。
しかも何処もかしこも無彩色で、人間は何処にも見当たらず、不気味な静けさ。
そんな世界の中で、口から吐いた糸でV3を引っ張っている、巨大な蜘蛛に
人の上半身が乗った生き物ともメカともつかないもの、ディスパイダーがいた。
「何者だ・・・怪人じゃないらしいが」
地に叩き落されたV3に、ディスパイダーは迫り寄って押さえ込み、蜘蛛の大きな
口を開けて捕食しようとしたが、
「V3パンチ!!」
轟音がしてディスパイダーの巨体が吹き飛ばされ、ビルにぶつけられてずり落ちる。
糸を力任せに切断し、V3は立ちあがる。
ディスパイダーも立ちあがってくる。
「ほう・・・しぶとい奴だ」
56 :
名無しより愛をこめて:2006/04/03(月) 23:48:58 ID:gPCl7QW70
期待ほすあげ
57 :
2005:2006/04/03(月) 23:52:06 ID:8dooSmRo0
前スレの続き書いてもよかですか?
覚えていてくれている人がいればいいんだけど
>>57 任せます。出来れば粗筋を教えてくれると助かります。
>>57 お願いします
でも、まとめサイトにうpしてあるのではなかったですか?
誰かまとめサイトのアドレスを貼っていただけませんか?
61 :
59:2006/04/05(水) 19:41:06 ID:u4HQ+Zc+0
>>60 どうも有り難うございます
>>58 >>60さんがアドを貼ってくれました。ここで前回までの話が読めます。
>>57 ということで、よろしくお願いしますm(..)m
62 :
名無しより愛をこめて:2006/04/08(土) 00:31:50 ID:oXztezhP0
,,ゞ.ヾ\\ ゞヾ:ゞヾ ノノ ゞヾ . ゞヾ ゞヾ .ゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾ ,,.ゞヾ::ゞヾゞ:ヾ ゞ:.y.ノヾゞ..ヾ .ゞ,'ヾ ゞヾゞ ;ゞヽ,.ゞ:,,ヾゞヾ;
ゞヾゞ;ゞゞヾゞ;ゞiiiiii;;;;::::: イ.ヾゞ, .,; ゞヾゞ___// ;ゞ ゞヾゞ;ゞ
ゞヾ ゞ;ゞ iiiiii;;;;;::::: :)_/ヽ,.ゞ:,,ヾゞヾゞ__;::/ ゞヾゞ;ゞヾ;ゞゞ;ゞ
ゞヾゞ;ゞ iiiiii;;;;::::: :|;:/ ヾ;ゞゞ;ゞ ヾゞ ,
ヾ;ゞゞヾ;ゞゞ |iiiiii;;;;::: : |:/ ヾゞ `
ヾ |iiiii;;;;;::::: ::| ` `
` |iiiiiiii;;;;;;::: :| ` ` ` ` ,
` ,|i;iiiiiii;;;;;;::: :| ` ` ` ` ` ` `
` |ii,iiiiiii;;;;;;::: ::| ` /^l 土日期待あげ それ それ ,
,|iiii;iiii;;;;;:;:; _,―-y'"'~"゙´ | ` ` `,
` |iiiiiii;;;;;;((,,, ヽ ´ ∀ ` ゙': ` , いあ いあ
` |iiiiiiii;;ii;;;;;;~ :ミ .,/) 、/) ハ,_,ハ
, |iiiiii;iii;;;;i;;:: ::゙, "' ` ´''ミ ` ,:´∀` ';
` |iii;;iiiii;::;:;;;;::: ミ,, , , ミ ミ,;:. ,ッ
,,.,.v. ,..Mv|M|iMiiii;;vii:i;;:ミvii;;.,vつiii:..v ,iつ.,iv.v.i ,i....i iii,,,v.,.. ,゙.".'.",゙. ,...`,Y,⌒.ヽ,.. ,
,.,.. ,v.vv..v. v,,,v.. ,,,v,.,.. ,..v.vv. ,,,.. vv,,,,.,.. ,.v... ,v,v,..vv ,,,v,v.,.v. v,...v. v,,,.v.v ,,,v,v.
実はクウガとダグバとの決戦の際も
アギトとオーバーロードとの決戦の際
お互い相討ちで死に掛けた際に
時空を超えて救うものがいた
そいつがカブトだった
64 :
名無しより愛をこめて:2006/04/10(月) 00:08:18 ID:YdCS8pyi0
前スレでオリジナル響鬼SSを書いていたものです。
新スレ移行に伴い、一部設定を変更し、再スタートを切ろうと思います
鬼。それは厳しい修行の果てに大自然が持つ変化の力を得た人の総称。
鬼。それは魔化魍と呼ばれる悪しき存在から人々を守る為、自分の命をも顧みず戦い続ける者達。
この物語は、そんな鬼の1人『虹鬼』の戦いの記録である。
響鬼非公式外伝―仮面ライダー虹鬼と7人の戦鬼―
一之巻…虹司る鬼
「ほう、では君はアームドセイバーに原因があると…そう言いたいのかね?」
秘密組織『猛士』本部の一角、研究開発室のデスクで室長の小暮耕之助は、目の前に立つ女性にそう問いかけた。
「はい、今回の関西、四国、九州の各支部における鬼の集団変身不能化現象は、各方面のデータから92.36%の確率で小暮先生の開発されたアームドセイバーに原因があると考えられます」
小暮の射抜くような視線にも萎縮する事無く、堂々とした態度で返答する女性は水無月美沙。猛士九州支部に所属する『銀』である。
彼女は今、ある命令を受け、同行者1名と共に吉野へと乗り込んできていた。
「提出された報告書によると、アームドセイバーの発する波動が鬼の力に干渉し、変身能力を一時的に奪うとあるが、どうも信用できんね」
「信用できない…と仰いますと?」
「そのままの意味だ。最近の鬼は鍛えが足りん連中ばかりだからな。自分の非力をアームドセイバーのせいにしているんだよ!」
苛立ち紛れに発せられた小暮の言葉。それが引き金となった。
「欠陥品ば作っておいて責任転嫁すっなんて…アンタそいでん男ね?」
突然、美沙の口調が変わった。流暢な標準語から長崎弁に変化し、音量も一気に跳ね上がる。
「な、なんだと!?」
「聞こえんかったとね? 欠陥品ば作っておいて責任転嫁すっなんて…アンタそいでん男ね? って言うたったい!」
突然の方言に一瞬虚を突かれた小暮だが、すぐに意味を理解し、顔を真っ赤にして反論を開始した。
「貴様、私の最高傑作であるアームドセイバーを欠陥品呼ばわりしたばかりか…目上の人間に対してその言葉遣いは何だ!」
「目上の人間やろうと関係なか! 欠陥品ば正直に欠陥品って言うてなんが悪かとね? こがんガラクタのせいで、九州支部の皆が迷惑しよるかと思うたら頭に来る!」
怒声と方言が飛び交う異様な口喧嘩の光景に呆然となる周囲の職員達。そんな中―
「コウキさん、止めなくて…大丈夫ですか?」
「大丈夫でしょ、今のところ口喧嘩だし…それに…」
「それに?」
「君、あの中に飛び込んで喧嘩の仲裁できる勇気ある?」
「ありません…コウキさんは?」
「ある訳無いじゃん」
部屋の隅で茶を飲んでいた1人の男だけは事態を静観していた。
男の名はコウキ。美沙の同行者にして、九州支部に所属する鬼である。
次の日、コウキと美沙は和歌山県の某山中でベースキャンプを設営。魔化魍探索を行っていた。
「しかし、ピンチヒッターで魔化魍探索するなんて…関西支部の被害も相当酷いみたいだねぇ……D−5外れ」
探索から帰ってきたディスクアニマル『茜鷹』をチェックしつつ、そんな事を呟くコウキ。
「あの欠陥品のせいで、関西支部は半数近い鬼が変身不能になったからね…動ける鬼総動員しても追いつかないんだって」
美沙も帰ってきたディスクを収納しつつ、相槌を打つ。
「ま、九州や四国も同じ状態だからね…正直、俺と美沙がこっちに来れたのは奇跡みたいなもんだよ。レンキやハバタキ、ジンキには飯でも奢ってやらないと…F−2外れ」
「四国はウズマキさんとカイキさんの2人で頑張っているらしいよ…過労で倒れなきゃいいけど…」
「支部長は四国との連名で抗議文を送る予定だってさ………当たりだ」
「場所は?」
「地図によると…C−2だから……東に2kmってところか」
場所を確認するとコウキは愛車である『黄龍』へと走り、中から愛用している音撃武器の1つ『音撃弦・迅雷』を取り出す。
「気をつけてね。九州の山とは色々違うだろうから」
「百も承知。じゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい!」
決めポーズであるサムズアップを決めて走り出すコウキを、美沙は火打ち石で切り火をして見送った。
「ここか…」
茜鷹の先導で山道を進んでいたコウキは、目的地と考えられる河の上流へと辿り着いていた。
「案内ご苦労さん、助かったぜ」
先導の役目を終え、頭上で旋回している茜鷹に礼を言うコウキ。茜鷹も嬉しそうに声を上げる。
そして、コウキが周囲を探索しようと歩き出したその時―
「現れたな、鬼め」
「我らの行く手を阻みに来たか…」
1組の男女がコウキの前に立ち塞がった。魔化魍を育成する役目を帯びた存在、童子と姫だ。
「我らの子は腹を減らしている…」
「里へ降りる前に、鬼の骨を食わせるとしよう」
そう言い終えるが早いか、それぞれ怪童子と妖姫に姿を変える童子と姫。
それを見たコウキも―
「その姿…予想通りバケガニだな」
そう呟きながら手にしていた迅雷のカバーを外し、地面に突き刺す。そして、飛びかかってきた怪童子と妖姫を避けながら、紫色の変身音叉『音角』を取り出し、近くの岩で鳴らすと―
「いくぜ!」
音角を額に当てた。
リィィィィィン!
涼やかな音が響くと同時にコウキの全身を7色の光が包む。
飛びかかった怪童子と妖姫が光の防壁に弾き飛ばされ、再度立ち上がった時にはコウキの変身は完了していた。炎、風、雷などの力を合わせ持った『虹』の力を司る鬼。その名も虹鬼!
変身を終えた虹鬼は、地面に刺した迅雷をそのままに―
「いくぜ!」
気合と共に走りだした。
振り下ろされるハサミを左手で受け止め、間髪入れず右フックで根元から打ち砕く。更にその勢いを利用してのバックハンドブローで怪童子を吹き飛ばす。
続けて突進してきた妖姫も矢継ぎ早に繰り出されるハサミ攻撃をかわしつつ、左の連打を叩き込んで小刻みにダメージを与えた後、回し蹴りでこちらも吹き飛ばす。
フラフラと立ち上がる2体のダメージが相当なものである事を確認した虹鬼は、バックステップで距離を取ると―
「はぁぁぁぁっ…」
今までとは違う構えを取り、気合を込め始めた。瞬く間に虹鬼の四肢が風を纏っていく。
「鬼闘術! 旋風刃!!」
次の瞬間、風を纏い威力を格段に増した虹鬼の手刀が怪童子を、足刀が妖姫を切り裂いた。
一瞬の間を置き、爆発。土と枯葉へと還っていく怪童子達。
「あとはバケガニか…」
地面に刺した迅雷を抜き、周囲を油断なく見回す虹鬼。
沈黙が周囲を支配する。
3分がたち、5分がたとうとした頃、痺れを切らしたかのように虹鬼の背後からバケガニが出現した。
ハサミの一撃が虹鬼を襲う。
「っとぉ!」
斧形態の迅雷で、そのハサミを受け止める虹鬼。
「ぬぅぅおりゃぁぁぁっ!!」
渾身の力でハサミを押し返し、一旦距離を取る。そして、装備帯に装着していた3枚のディスクを取り出し―
「頼んだぜ!」
音角で軽く叩き、バケガニへ投げつけた。3枚のディスクは瞬時に『茜鷹』『瑠璃狼』『緑大猿』へと変わり、バケガニへと向かっていく。
3体の攻撃に気を取られ、バケガニの注意が一瞬虹鬼から逸れる。
「はぁぁぁぁっ…」
そしてこの好機を逃す虹鬼ではない。再度、迅雷を地面へと突き刺し、気合を込める。そして左手に風、右手に雷を纏い虹鬼が叫んだ。
「鬼法術! 風爪雷牙!!」
縦一文字に振るわれた左手から放たれる無数のカマイタチが、バケガニの巨体に幾筋もの傷を付け、突き出された右手から放たれる雷光が左のハサミを焼き砕く。
思わぬダメージを受け、苦悶の叫びを上げるバケガニ。だが、虹鬼の攻撃はまだ終わらない。
「どぅおりゃぁぁぁっ!!」
渾身の力を込め、迅雷をブーメランのように投げ、足3本を一気に切り落とす。
バランスを失った巨体に一気に接近し、残る右のハサミを掴むと―
「せぇりゃぁぁぁっ!」
力任せに捻じ切り、そのまま投げ捨てる。
武器と足の半分を失い、半死半生状態のバケガニの腹に蹴りを叩き込み、仰向けにひっくり返すとそこに迅雷を突き刺し捻じ込んだ。
「とどめだ!」
手早く、装備帯から音撃震『遠雷』を取り外し、迅雷にセットする。
「音撃斬! 神雷烈破!! おぉぉらいくぜぇ!!」
刃が展開し、ギターモードへと姿を変えた迅雷をかき鳴らす度、清めの音がバケガニの体へ響いていく。
そして、演奏終了と同時に、バケガニの体は木っ端微塵に吹き飛んだ。
翌日。
コウキと美沙は九州支部へと帰還していた。
「吉野から連絡をもらったよ。あの愚兄にキッチリ言ってくれたようだね。ありがとう、美沙君」
報告書の提出を済ませ、技術開発室へと戻ってきた美沙を出迎えたのは、この部屋の主である小暮耕次郎。
全国でも5本の指に入る優秀な『銀』であり、あの小暮耕之助の弟である。
「あの小暮さんと五分に渡り合う美沙の勇姿、師匠にも見せたかったですよ」
そして、7年前まで先代『虹鬼』として活躍しており、コウキの師匠を務めていた。
「今回の件で、あの愚兄も少しは考えを改めればいいのだが…その為に美沙君とコウキには吉野へ行ってもらったんだから」
「あー…考えを改める可能性は低いかと…」
「何故かね?」
「…関東支部に行っちゃったんです」
「え?」
「いや、俺達がバケガニ退治から戻ったら『関東支部の連中で試してくる』という伝言を受け取りまして…その…行っちゃったそうです…関東支部に」
「なんと言うことだ…」
美沙、そしてコウキの言葉に顔を青ざめる耕次郎。
「また、被害者が出るのか…」
「一応、私の方から関東支部の滝澤さんに、連絡は入れておきました…」
「賢明な判断だよ……何事もおきなければ良いが…」
耕次郎の呟きは美沙とコウキの思いでもあった。
その後、小暮耕之助とアームドセイバーが関東支部にひと騒動を巻き起こし、紆余曲折の末、アームド響鬼が誕生する事となる。
一之巻了
アクションシーンそのものは面白いけど、アームドセイバーのくだりは
いらん気がする。もう今更どうなるものでもないし。
74 :
名無しより愛をこめて:2006/04/10(月) 23:38:33 ID:k5lxa6aRO
天道が、翔一の料理にケチをつける展開キボン。別に俺は、
アギトのアンチじゃないからね。ここから、職人さんの腕で、
話しを膨らませてほしい。よろしく
ネタ提供するならもう少しキャラ把握してからにしろ
76 :
64-71:2006/04/11(火) 14:11:56 ID:Kj6J8pKF0
>>72 指摘、ありがとうございます。
せっかく響鬼SS専用のスレがあるから、そっちに移転します。
住人の皆さん、お騒がせして申し訳ありません。
レスなくなるとまたDAT落ちするから、内容はそんなに気にしなくてもいいんじゃないかな
うちは別に今後も来てくれてもいいですが。むしろ有難い。
ただでさえ過疎ってるし。
79 :
2005:
>>60 まとめサイトの方ありがとうございます、最新までUPされてて感激しました
書いた本人、PCがクラッシュして元データ持ってなくて
どうしようかと思っていたので助かりました