>>543 了解。ちょっとだけ書いてみる。
夏実が気がつくと、周囲は闇に覆われていた。
目が慣れてくるにしたがってそこがぽっかりと開いた空洞であることに気がつくが、
だからと言って恐怖感が薄れるわけではない。
むしろその逆で、夏実はたちまちのうちに恐怖から泣き出してしまう。
「えぐっえぐっ・・・怖いよう・・・怖いよう・・・」
ぺたんとお尻をつき、泣きじゃくる夏実。
そこにふらりと人影が現れた。
「えっ?」
涙を拭って顔を上げる夏実。
暗くてよくわからないが、夏実にはその人影が妙な姿をしていることに気がついた。
「ひゃぁっ! おばけぇっ!」
夏実は思わず目を閉じて叫んでいた。
「くすくす・・・失礼ね。私はグロンの改造人間毒毛虫女よ。お化けなんかじゃないわ」
「えっ?」
かけられた声が、思いがけず優しく幼い感じの声だったことに夏実は驚く。
そっと顔を上げると、そこには確かに奇妙な姿をした女の娘が立っていたのだ。
躰は暗い緑色をして、お腹のところには芋虫の足みたいな突起が二列でうねうねと動いている。
背中の方はよく見えないけど、鋭い毛がびっしり生えているみたいだ。
そんな躰をしているのに、顔だけは幼い少女のまま。
一体どうしてそんな姿をしているのだろう。
「あなたはだあれ?」
夏実は恐る恐る訊いてみる。
どうしてこんな所にいるのかわからないけれど、一人でこんな所に居るよりはましかもしれない。
「私は毒毛虫女。さっき言ったでしょ?」
少女は両手を腰に当てて少し怒っている。
毛虫?
そう言われるとそんな感じもするな・・・
夏実は何となく納得してしまった。
「さて、今度は私が訊く番よ。あなたの名前は?」
毒毛虫女が尋ねる。
戦闘員にできる素材を確保するためのトラップと思っていたのだが、
周囲の花を枯らしてしまい目立つことこの上ない。
もう少し改良の余地がありそうだと毒毛虫女は考えていた。
しかも罠に掛かったのがこんな女の子とはね・・・
どうしよう・・・
結構可愛いし、手元に置いちゃうのもいいかな・・・
そんな思いが駆け巡る。
「夏実。延藤夏実」
夏実は自分の名前を答えた。
きちんと挨拶するのは大事だとお母さんにも言われている。
だからきちんと名乗ったのだ。
「夏実ちゃんか。じゃあ、一緒に来てもらうわ」
そう言って毒毛虫女は手を差し伸べる。
少し躊躇ったものの、夏実はこんな所に居るよりはましだと思い、手を取った。
二人の少女の姿は闇に消えた。