515 :
ブーツ人間:
グロン地獄軍団サソコウモリ編
ACT.2 『増殖』
「メグミ、遅いわねぇ・・・・・・」
吉田ミチルは、リビングのソファで退屈そうに背伸びをした。
ここは、吉田ミチルと神谷メグミが、二人でシェアしているマンションの一室である。
今日は、ミチルの19歳のバースデイだ。
これから、二人だけで、ささやかなパーティーを開こうと約束しておきながら、ミチルが帰ってくる気配は、いっこうに無い。
壁の掛け時計を見ると、既に針が9時を指している。
キッチンのテーブルの上に、にぎやかに並ぶパーティー用の料理も、すっかり冷め切っていた。
「帰る途中で、事故に遭ったとか・・・まさか、そんな事あるはずないわ!」
ミチルは、自分で不吉な事を言っておきながら、自ら否定していた.
「しかたない、携帯に電話を入れてみよう」
ミチルが携帯電話を手に取り、ボタンを押そうとしたまさにその時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
「あっ、噂をすれば、きっとメグミだわ」
ミチルは、急いで玄関へ向い、チェーンロックを外してドアを開けた。
516 :
ブーツ人間:2006/06/23(金) 20:49:45 ID:9xkiP3bN0
「もう、メグミ、遅いじゃ・・・・・・」
ミチルは、途中まで言いかけた言葉を飲み込み、思わず絶句してしまった。
ドアの向こうに、着衣のブラウスをびりびりにやぶかれたメグミが、泥だらけの手提げ袋を手にして立っていたからだ。
「どうしたの!? メグミ」
驚いたミチルは、慌ててメグミの手を取り、部屋の中へと引き入れた。
だが、メグミは、グスグスと泣きじゃくっているばかりで、ミチルの問いかけには答えようとしない。
それでも、やっと、大粒の涙を溢しながら、
「男たちに乱暴されたの・・・・・・・」
とだけ、たどたどしく語ってくれた。
一週間程前、この近隣の路地で、若い女性が複数の男たちに乱暴されるという事件があったばかりである。
ミチルは、すぐに、その事件の犯人の仕業に違いないと察した。
517 :
ブーツ人間:2006/06/23(金) 21:59:13 ID:9xkiP3bN0
「すぐに、そのやぶれた服を着替えた方がいいわ」
ミチルは、泣きじゃくるメグミの手を引き、彼女のプライベートルームへと連れて行った。
だが、ミチルは気付いていない・・・ほんの一瞬だけメグミが、冷たい薄笑いを浮かべた事に・・・
518 :
ブーツ人間:2006/06/23(金) 22:11:43 ID:9xkiP3bN0
「メグミ、大丈夫?」
ミチルは、マグカップを片手に、メグミの部屋のドアをノックした。
メグミが、部屋に入ってから、もう30分近く時間が経つ。
「・・・・・・」
返事が無い、心配になったミチルがドアを開けると、パジャマに着替えたメグミが、ベッドの上に起き直った。
「良かった。大分、落ち着いたようね」
ミチルは、マグカップをメグミに手渡し、
「ホットミルクを入れてきたわ、飲んで」
と言うと、ベッドの片隅に腰を下ろした。
「ありがとう」
メグミは、丁寧な手つきでマグカップを受け取ると、ホットミルクを一口飲んでみた。
ところが、思いがけず、メグミは、ミルクを吐き出してしまった・・・
何故なら、サソリ人間となったメグミは、もう、普通の食べ物や飲み物を受け付けない体質へと変わっていたからだ。
519 :
名無しより愛をこめて:2006/06/23(金) 23:09:34 ID:9xkiP3bN0
「メグミ、気分が悪いの?」
「だ、大丈夫よ。ちょっとむせただけだから」
そう言われても、ミチルは、メグミの体調を気づかい、彼女の顔色を窺う。