452 :
ブーツ人間:
グロン地獄軍団サソコモリ編
ACT.1『メタモルフォーゼ』
春の夜のとばりが下り、夕闇の中、女子大生の神谷メグミは、一人家路を急いでいた。
「すっかり遅くなっちゃつた。ミチル、待ちくたびれてないかしら?」
メグミの手には、プレゼントの入った紙袋が提がっている。
今日は、ルームメイトの吉田ミチルの19歳のバースデイ。
メグミとミチルは、中学の頃からの友人だ。今は、マンションの一部屋を二人でシェアして、暮らしている。
そして、今夜、二人だけで、ささやかなパーティーを開く約束をしているのだ。
人通りの少ない路地を歩くメグミは、電柱に取り付けられた『ストーカー注意』の立て看板に、ふと目をとめた。
「そう言えば、ここは、暴行事件があった場所だわ・・・」
一週間程前、この路地で、若い女性が複数の男たちに乱暴されるという事件があったばかりだ。しかも、犯人たちは未だに、捕まっていないのである。
「怖い、怖い・・・」
メグミは身震いし、自然と足取りも速くなる。
453 :
ブーツ人間:2006/06/19(月) 10:07:12 ID:87i0+TM+0
ふいに、彼女の背後で、ガサッという物音がした。
「だ、誰!?」
びくっとして、メグミが振り蹴る。
すると、ニャーという鳴き声とともに、電柱の陰より子猫が顔をのぞかせた。
「なんだ、驚かせないでよね、猫ちゃん」
454 :
ブーツ人間:2006/06/19(月) 10:17:58 ID:87i0+TM+0
ほっと安堵のため息をついたの束の間、突然、バサバサという羽音を立てて、頭上より巨大な影が舞い降りてきた。
今、その巨大な物体は、メグミの前に立ちはだかっている。
「一体、何?」
薄暗い街灯に照らし出されたその異様な姿に、メグミは愕然となり、目を疑った。
455 :
ブーツ人間:2006/06/19(月) 10:23:48 ID:87i0+TM+0
そいつは、体長2メートル余り、頭はコウモリ、
両腕にサソリのはさみを持ち、背中にはコウモリの翼、
極めつけは、臀部から太く長いサソリの尾がのびていた。
まさに、サソリとコウモリが融合した醜悪な獣、この世の生き物とは思えない合成生物キメラ。
456 :
ブーツ人間:2006/06/19(月) 10:43:34 ID:87i0+TM+0
「何なの、この怪物は!?」
奇怪な獣を前に、メグミは恐怖で足がガクガクと震え、立っているのが精一杯だ。
獣は、地の底から鳴り響くような不気味な声で、
「俺様は、グロン地獄軍団サソコウモリだ」
と名乗った。
「グロン?」
彼女には訳が判らない。
457 :
ブーツ人間:2006/06/19(月) 11:01:51 ID:87i0+TM+0
「グロンは、やがて、人類に代わって、この世界を支配する神をも超越した存在なのだ
その偉大なグロンの実験体第一号として、お前が選ばれた事を、栄光と思うが良い」
「私に人体実験をしようというの!?」
身の危険が迫り、メグミは叫び声を上げて、その場から逃げ去ろうとする。
「誰か、助けてーっ!」