>>309-311 いやいや。そんなことないです。
一応続き書いてみました。ライダーに倒されるまで書きたいけど出来るかどうか。
平日の朝。いつもと変わらぬ通勤、通学ラッシュで車内は混雑している。
ふと一人の中年サラリーマンと思われる男性が呻き声を上げる。
「うっ、ううっ・・・」
ちょうど電車は駅に到着し、ドアが開くと大勢の人々が降りてゆく。
「大丈夫ですか?」「どうされたんですか?」
数人の男女が男性に声をかけるが、男性から反応はない。
それでも必死に声をかける大学生や慌てて駅員を呼びに行く若い女性、
ホームに倒れこんだ男性の周りはざわついているものの、会社や学校、
乗り換えに急ぐ人々の大半は男性のことなど気にも留めていなかったり、
見て見ぬ振りをして足早に去ってゆく。その中には一人の女子大生もいた。
“痴漢するほうが悪いのよ。”
一見どこにでもいる普通の女子大生に見える彼女はショッカーの改造人間 蠍女であった。
どうやら中年の男性は車内で彼女に痴漢を働いていたらしい。
それが彼女の怒りを買い、命を落とすことになったようだ。
「沙希おはよう!」
毎朝改札で待ち合わせをしている親友の由香里が声をかける。
「おはよう・・・」
「どうしたの、沙希?今日元気ないよ。何か会ったの?・・・」
「えっ?何でもないよ。ごめんね、朝から心配させちゃって。」
「ううん、何にもなくて良かった。でも何かあったらすぐ相談してよね。」
「うん。」
ふと目をやった売店の店先に並べられているスポーツ新聞には、
大手電器メーカーの役員が殺害されたという記事が書かれている。
“わたしが殺した人だ・・・”
脳改造によって殺人や拉致といった組織の犯罪行為に抵抗感など無くなっている彼女ではあるが、
長谷川沙希として生活を送っているときには、複雑な感情に襲われるようである。
“たくさん人を殺したり、連れ去っているわたしが普通に生活していていいの?・・・
いつか身近な人たちにも危害を加えたりしないかしら・・・”
「沙希!沙希ってば!」
「え?」
「やっぱり今日何か変だよ、大丈夫?」
「うーん、昨日夜遅くまで起きていたから、寝不足かも。」
「気をつけなさいよ。今日はあの宇尾山の授業があるんだから。寝たりしたら、後で呼び出されて何されるか分からないわよ。」
宇尾山とは彼女たちが通う大学の教授で、語学の権威として世間にも知られている人物である。
しかし、学内での特に女子からの評判は悪く、何かと理由をつけて女子学生を自分の研究室に呼び出し、
胸や尻を触るといったセクハラ行為をしてるとの噂である。
「あっ、そうか。宇尾山の時間は寝ないようにしないと。」
沙希も当然宇尾山のことは嫌いで、あんな人間を殺しても悔やむ人間はいない。
むしろ学生たちからは歓迎されるだろうと思い、彼女自身の意思で殺害を計画していたが、実現には至らなかった。
何故なら彼もまたショッカーの改造人間 シーラカンス男だったからである。恐らく彼はショッカーに自ら魂を売ることによって、
今の地位や名誉を手に入れたのだろう。彼以外にもスポーツ選手や国会議員、財界人といった人間たちがショッカーを構成しているという。
彼女のように一般市民として過ごしている改造人間やひたすら組織に従事する戦闘員を含めると既に組織は相当な規模になっているのだろう。
“ショッカーによる世界征服もそう遠くはない話ね。征服後はわたし達改造人間が人間を支配することになるけど、
大首領様に頼んで親しい人々には良い待遇を受けさせてあげよう。”
大学入学にあわせて地方から上京してきた自分と一番最初に仲良くなってくれたのは、由香里であった。
自分が都会生活に馴染めるように色んなことを教えてくれた。慣れないアパートでの一人暮らしで寂しくならないように何度も遊びに来てくれた。
“彼女だけは絶対裏切っちゃいけないわ。”
由香里の顔を見る度に沙希はそう思うのだった。
「じゃぁね。」
「バイバイ。また明日ね。」
改札で由香里と分かれる沙希。
サークル活動もないこの日は以前なら真っ直ぐに自宅へ帰る彼女であったが、今日は違った。
目的地は組織の裏切り者である鈴原教授の自宅。
身の危険を察知している鈴原教授は数十人の警備員を雇い、自宅に閉じこもっているという。
“今日も大勢殺すことになりそうね。”
彼女電車に揺られながら思いふけっていた。